マッチング推薦におけるオフ方策評価・学習 | Wantedly Engineer Blog
ウォンテッドリーでデータサイエンティストをしています林 (@python_walker) です。先日チェコのプラハで開催された RecSys 2025 において、我々ウォンテッドリーと半熟仮想株...
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長期インターンを経て、2022年に新卒で入社したデータサイエンティストの林 悠大(はやし ゆうだい)。 Wantedly で「企業と候補者の最適なマッチング」が生まれる世界をつくろうと、静かに情熱を注ぎ続けている。
その熱量は、実務だけにとどまらない。入社4年目には、世界最大級の推薦システム国際会議「RecSys 2025」において Best Paper Candidates に選出されるという快挙を成し遂げた。
今回は若くして挑戦を続ける林に、ファーストキャリアとしてウォンテッドリーを選んだ理由、そしてデータサイエンティストとして働く醍醐味について話を聞いた。
ーー林さんは、学生時代に物理工学を専攻されていたとか。そこからデータサイエンティストを目指すにはどんなきっかけがあったのですか?
最終的には博士課程まで進み、研究者の道を考えていました。ですが、研究の世界では「成果が実用化されるまでに、50年〜100年を要する」というのが一般的で。どうしても、長期戦になってしまう。それよりも、「もっと短いスパンで社会に直結する価値を届けたい!」という思いが徐々に増していったんです。
研究者とデータサイエンティスト。一見すると遠い存在に感じられますよね。でも、実は両者には高い親和性がありまして。研究で培った「実験データを解析し、仮説を立てて検証する」という一連のプロセスは、まさにデータサイエンティストに必要なスキルなんです。
研究者としての知見を活かしながら、スピード感をもって社会貢献を目指せる。そんなフィールドとして、機械学習や推薦技術という領域に強く惹かれていきました。
ーーウォンテッドリーの存在は、どのようにして知ったのでしょうか?
もともと長期インターンを探す目的で、 Wantedly を利用していました。その中でスカウトをもらったことをきっかけに、カジュアル面談に進むことになったんです。
話を聞いていくうちに、「採用というマッチング領域で機械学習がどのように活用され、何を達成しようとしているのか」という点に興味が湧いてきまして。その場で、インターンさせてほしいと依頼したんです。
当時は、オンラインで課題に取り組む形式のインターンが多かったのですが、ウォンテッドリーでは出社して、現場で実践的な課題に取り組むことができました。当初は2週間の予定だったのですが、「担当したプロジェクトを最終リリースまで見届けたい」という思いから延長を志願したんです。
それで最終的には、3ヶ月間のインターンを経験することに。かなり融通を利かせていただき、感謝しています。
ーー長期インターンを経て、印象に残っていることはありますか?
意思決定のスピード感と、それに伴うフットワークの軽さです。たとえば問題点や議論したいことがあれば、ミーティングがすぐに設定されて、スピーディーに解決されていきました。また、「数週間前に発表された Google の最新論文を、すぐにプロダクトに応用してみる」といった、新技術への貪欲なキャッチアップの速さにも驚かされました。
最終的にウォンテッドリーへの入社を決めたのは、会社の空気感やメンバーの熱量を自分の肌で確かめられたことが大きかったですね。この環境でなら、間違いなく成長できそうだなと。
ーー現在は、どのような業務に携わっているのでしょうか?
Wantedly の推薦システムの開発・運用を担当しています。チームのミッションは「データの力で理想的なマッチングを実現すること」。プラットフォーム上の膨大なデータを活用し、機械学習を用いてユーザーが興味を持ちそうな募集を推薦していく。そうすることで、ウォンテッドリーが掲げる「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」の実現を目指しています。
ーー先ほど「成長できそう」という話がありましたが、入社後に成長を実感している点を教えてください
一番は分析力ですね。膨大なユーザーデータの中から、プロダクト改善に直結する有用な情報を抽出する力が格段に上がったと思います。
その他でいうと、言語化力と発信力でしょうか。入社後に、「議論の結論を言語化し、次回のタスクとして推進する」というプロセスにつまずいてしまったことがあって。というのも、これまでは「振り返り」の習慣がなかったんです。スピードが求められる中で、「振り返りと行動計画のサイクル」を回すことに苦労したのを覚えていますね。
それでも繰り返していくうちに、自分の意見を論理的に整理することができ、相手に伝える力も飛躍的に鍛えられたと感じています。
ーー入社されてから今までで、特に印象に残っている施策はありますか?
「新規ユーザーへ、早期に精度の高い推薦を届ける」という早期推薦のプロジェクトですかね。一定のログが蓄積されるまでは、ユーザー登録時に選んだ興味分野に基づいて推薦が約1週間続くという仕様でした。けれど、その間に「魅力的な募集に出会えないと、ユーザーの意欲が落ちる」という傾向があることが分かったんです。
そこで、初期行動ログの反映を早めることにしました。ユーザーの活動直後でも高精度な「行動ログに基づくアルゴリズム」へ切り替える仕組みに刷新したんです。
プロジェクトはインフラチームと密に連携して推進し、結果として新規ユーザーのマッチ機会を大幅に早期化させるという大きな成果を得ることに。しっかりと成果に結びついたという点でも印象に残っていますね。
ーーデータサイエンティストとしてのやりがいを感じるのは、どのような瞬間でしょうか?
やはり仮説が立証され、機械学習によってプロダクトに意図した成果を出せたときですね。データサイエンティストの仕事の難しさは、ログデータに記録されている事実だけでは、「なぜその行動をしたのか?」というユーザーの真のニーズまでは読み取れない点にあると思っていて。
だからこそ、多角的な視点から推測を重ねて、目に見えない真のニーズを探り当てなければならない。それが、データサイエンティストという仕事の最も難しい点であり、同時に存在意義だと感じています。
ーーデータサイエンティストとして、大切にしている姿勢を教えてください
「ユーザー起点」です。 Wantedly は求職者と企業の二つのユーザーを持つプラットフォーム。だからこそ、一方の利益に偏らず「両者の体験を同時に向上させる」という視点が不可欠になります。
このスタンスは、チーム全体にも共有されていまして。統計的な数値だけでなく、定性的に見たときのユーザー体験の変化を確認するということも重視しています。たとえば応募数のようなKPIだけを追って、企業の返信率が極端に低い募集を推薦し続ければ、それは双方にとってマイナスな状況になってしまいますよね。
なので、数値だけにとらわれず「ユーザーがどのような体験の変化を受けたか」を、深く掘り下げて分析していく。そうすることが、ユーザーの体験向上につなげるための近道だと信じています。
ーー林さんは実務だけでなく、研究開発にも積極的ですよね。そのモチベーションの源泉はどこから来るのでしょうか?
根幹にあるのは「ユーザーにより早く、最新の知見を届けたい」という想いです。機械学習領域って、ものすごいスピードで進化しているんですよね。私たちが立ち止まれば、一世代前の古い技術を提供することになってしまう。だから少しでも良い体験を届けるためには、常に最先端をキャッチアップしていく必要があるんです。
「RecSys 2025」への参加も、その活動の一環です。特にマッチング領域には、私たち自身が求めながらも、まだ誰も解決していない課題が多く存在しています。そこを自ら切り拓いていくことで、一歩先をいく体験をユーザーに届けられる。研究に取り組むこと。そのすべては、ユーザー体験の向上につながっているんです。
ーーウォンテッドリーでデータサイエンティストとして働く魅力を教えてください
「究極の適材適所」を実現するためには、データサイエンティストの役割は非常に大きいです。というのも、機械学習や推薦技術は最適なマッチングを実現するためのコアを担っているから。私たちが開発する推薦システムがあったからこそ、ユーザーが本来自力では見つけられなかった仕事と出会えた。そういう事実があるからこそ、マッチング数という数字の積み重ねが、とても体温のあるものに感じられますよね。
ーー最後に、今後の展望を教えてください
機械学習技術レベルを継続的に引き上げ、技術面でリードできるような存在になりたいですね。生成AIの登場により「昨日できなかったことが今日できる」というスピードで世界は変化しています。推薦の世界でも、検索×推薦×生成といった複合的なアプローチが当たり前になりつつあります。
最新技術をプロダクトへ積極的に導入し、最短距離でユーザー価値に変換する。そんな挑戦を、これからも続けていきたいですね。