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次世代に「考え方」を伝えたい!創業の思いを記した”戦略史”

数々の大企業に対して「コンサルティングxクリエイティブ」で領域不問の課題解決を行うJBA。でも「JBAって何屋さん?」と聞かれると、一言では答えにくいんです。そこで、実際のお客さまとの具体的なプロジェクトを通して、担当した社員は、何を考え、どんなことをしたのか。やりがいや苦悩や仕事観に至るまでをリアルにお伝えする「事例紹介」シリーズです。

こんにちは、2013年入社で、コンサルタントの江口です。今回は、少し変わった社史制作の取組み事例をご紹介します。

プロジェクト立ち上げの経緯

社史とは、会社の歴史・過去を知るための資料ですが、世代を超えて伝承していくべき重要なルーツや精神性も記されたもので、その会社が未来に飛躍するための足がかりにもなります。

私が担当していた大手食品会社のY社さまは、今からご紹介する社史プロジェクトが走り始める数年前に創業家が経営に行き詰まり、変革の時を迎えていました。その際に新たに着任した社長は、組織が60周年の節目を迎えるにあたって、この先、数千人の社員にとって考えるヒントや迷った時のよりどころになるような社史を創りたい、と思い立たれました。時代が変わっても揺るがないものが伝承されていくように。この先、数千人の社員が立ち往生してしまわないように。

「考え方を伝承する」ためのこだわり

Y社さまにとって初めての社史作成とあって、過去の記録がまとまった資料のようなものは、どこにもありませんでした。そこでご相談を受けた私たちは、創業家で前社長でもある会長のご経験を聞き取る取材からスタートしました。

事実が不明確なところについては、OBの方や当時を知る社員の方にも追加でインタビューをしました。客観的な事実を洗い出すその取材は、1年間にもわたりました。そして最終的には「考え方の伝承」が目的ですから、単に事実だけではなく事実の背景となる細部にこだわり「なぜ?どうやって?」を引き出すことを大切にしました。

また、お話を聞き始めてすぐに、食品業界に関する専門的な知識が必要だということがわかったので、途中からはその分野の専門性を持つ大学教授に同席いただいて、知識の裏付けをしていただき、質問の切り口をより良いものにしながら取材を繰り返すという工夫もしました。

多くの時間をいただきましたが、会長も快くお話して下さり、「今までこんな観点で経営の話をしたことはなかった、凄く良い機会だった」とおっしゃってくださいました。

社史ではなく「戦略史」である意味

できあがった冊子は、これまで創業家が必死で作り上げてきた「経営の考え方」が教典のように示されるものになりました。会長へのインタビューで社員のだれも知らなかったような創業家の物語をふんだんに聞くことができたので、全ページに、次の世代へと向けた会長ご自身の言葉を取り入れました。普通の社史というものはだいたい事実しか扱いませんが、ここには、その事実の裏側にあった考え方までがちりばめられています。

「商品の誕生秘話」や「工場の建て方」など、社員の皆にとって馴染みのある会社の資産についての特集も、他に類を見ない面白いものになりました。今も稼働しているある工場は、いつ、なぜ、そこに建てられたのかというような背景について、立地を迷った際に生産地・消費地の双方のメリット・デメリットを洗い出して検討したというようなエピソードが細かく伝えられています。新商品開発、人材育成、組織作り・・・あらゆる意思決定の裏には、会長の一貫した経営哲学があったということが、若手の社員にも良く伝わる冊子になりました。

このような内容なので、タイトルは「社史」ではなく、あえて「戦略史」としました。社長の期待通り、若い社員が未来への打ち手に迷った時、ここに書かれた「考え方」に立ち戻ってヒントを得ることができる、Y社さまならではの、素晴らしい冊子が出来たのです。

使われ続ける戦略史

実はこの「戦略史」が完成してから、もう10年がたちます。しかし、今(2020年現在)でもこの冊子はY社様の中で役立てられ、様々な効果を生み続けています。

まず、新入社員は新卒でも中途でも最初に必ず読むべき教本としてこれを渡され、業務に入る前に会社の大切な前提を知るという流れが定番になっています。「お客さまセンター」にもこの戦略史が置かれており、外部からの問い合わせに答えるための教科書のような役割も果たしています。ユニークな「戦略史」は業界内でも噂になり、Y社さまと信頼関係のある会社への貸し出しを相談されることもあります。

使われ続ける社史というのも珍しいですが、丁寧な取材を通して、単なる事実だけではなく経営の「考え方」もあわせて言語化したことには大きな意味があったと思います。


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