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これが士業の生きる道。法務×経理キャリア対談 #1

「どの専門職も、プラスアルファで何かを掛け合わせないと生きていけない。」

ウォンテッドリーでは、様々な専門的バックグラウンドを持ったメンバーが活躍しています。異業種からの転職を決めた理由は人それぞれですが、大きく共通する要素が「自分のできることを広げたくてベンチャーの道を選んだ」ということ。

そこでWantedly Blogでは、監査法人から大手ベンチャーを経てウォンテッドリーに入社した経理の仁位元信と、ウォンテッドリーの法務部門立ち上げメンバーとして加わった植田貴之の2人の対談を通じて、専門人材の自己活用法について掘り下げてみることにしました。

監査法人/アドバイザー時代の事業との距離感

写真左:植田貴之(法務)、写真右:仁位元信(経理)

ーー ウォンテッドリーの管理部門で活躍されているお2人ですが、ファーストキャリアである監査法人と法律事務所ではそれぞれどんなことを経験されましたか?

仁位:
監査法人に3年半務めている間、製造系の大きなメーカーとその子会社を主に担当していました。業務内容は上場の会計監査や内部統制の監査がメイン。2、3年経つ頃には主査と呼ばれる現場責任者を任されていて、チームで担当するグループ会社のうちの1社を見ていたという感じです。

植田:
会社の規模感としては、ウォンテッドリーよりもだいぶ大きかった?

仁位:
長年の伝統があるような企業で、海外にも子会社があったので規模感はだいぶ違いますね。監査をしていても「今まではこうやっていたのに、なぜダメなのか」というような議論になってしまったり、なかなか新しい方向に進みにくいというような困難にしばしばぶち当たりました。

植田:
確かに、大きな企業だとこちらがアドバイスをしても意思決定まで時間がかかることは良くありますよね。

僕は著作権をはじめとする知的財産権をメインに扱う法律事務所に5年いました。基本的にはコンテンツを扱う会社や個人がクライアントで、著作権に関連するビジネスの相談役になったり、紛争発生時の対応をするのが主な仕事です。プログラム、着物、キャラクターの著作権に関する裁判など色々な案件を担当させていただきました。

一方で、一般民事案件も割と広く担当させてもらっていたので、5年間でだいぶ幅広い案件に携わらせていただきました。この幅広い経験は、今のスタートアップでの業務に本当に役立っていると思います。

仁位:
法律事務所の場合、アドバイザーのような立場で顧客と向き合いますよね。一方、僕の前職である監査法人の場合は、会社や個人よりも市場を守るために仕事がある。担当している会社からお金をもらっている身ではあるけれど、その会社が変なことをしていたら、きちんと言わなくてはいけない。そういう意味では、法律事務所とは逆かもしれません。

植田:
弁護士は、会社や個人が利益を最大化するためにはどうしたらいいかをまず第一に考えますからね。契約書1本作るにしても、考えるのは本当にその会社のためになるのか、という一点だけ。スタイルは色々あるかとは思いますが、僕は相手企業のことは基本的に考えなかったです。

ただ、実際にアドバイスをした後にどうなったかというのは分からないことが多いので、最後の最後まで関与できないもどかしさはありますね。僕の場合は中小企業のクライアントが多かったので、割と近い距離で仕事をしていた方だとは思いますが……。

デジタル時代の士業に求められる「キャリアの掛け算」

仁位:
業務をする上でのもどかしさは、どちらの士業も感じることが多いのかもしれませんね。監査の中でアドバイスをする一方で、僕たち自身は事業会社での実務経験がない。「なんでアドバイスをしているんだろう?」と思うこともしばしばありました。

植田:
アドバイザーとしての立場だと、最終的な意思決定に携わることはほぼないですね。だからこそ、いろいろな事業を見ているうちに「自分だったらこうするな」と考えてしまう。4、5年目には、実際に当事者になってやってみたいという気持ちが大きくなっていました。

基本的に弁護士というのは、個人のスキルを買われて依頼をもらう職業です。自身の知識や経験で仕事をしていかなければならないので、自分の法曹知識になにか独自の経験軸を掛け算しないと遅かれ早かれキャリアに限界がくるのではないかということはよく考えていました。

さらに弁護士のキャリアの特性として、ひとつの法律事務所に一生勤め上げる人はほとんどいません。つまり、自分たちでキャリアパスの設計をしなければならない。かつては、別の事務所に行くか、独立する人がほとんどでしたが、近年は、インハウスローヤーになる、自ら起業する、事業側にキャリアチェンジするなど選択肢の自由度はとても高くなっています。

仁位:
プラスアルファで何かを掛け合わせないと生きていけないというのは、どの専門職にも言えることかもしれませんね。でも、意外とその発想を持っている人って少ない。

植田:
職人気質で、ひとつの分野を極めたいという人が多いのは確かですね。それは間違いではないけれど、僕はそこでは勝負できないと思ったので、掛け合わせる方向でいこうと。

「デジタル変革」をキャリアの追い風に

ーー 仁位さんは、会計士としての知識にどんな要素を掛け合わせたいと思っていますか?

仁位:
やっぱり、ITやプログラミングの知識は差がつく要素だと思ってますね。会計の現場では数値を見るためいろんなツールを使いますが、IT関連スキルが不足していると容易に「ツールに使われる」状況に陥ってしまう。業務フローの効率化という観点から正しくツールを使いこなすためには、データの取得経路を最短距離で設計したり、すでにある機能と自社のフローの交通整理をしたりと、できることはまだまだ残っていると思っています。

「士業」と呼ばれる分野ではデジタル変革が遅れがち、という世の中のイメージは往々にして正しいです。それは裏を返せば、これまではITの知識がなくても今までは食べていけていたということなんですね。ただ、AIやRPAの導入なども進んでいる中で、今後はそうもいかないと思っているので、ITリテラシーを高めて効率化の面でツールを使いこなせていければ強いんじゃないかな。

植田:
確かに、弁護士にも契約書の雛形を出すだけだったりとか、割と誰でも知っているアドバイスをしたりといった、典型的な業務というのはたくさんあります。そういう単純作業であったり基礎的な知識を切り売りする仕事は、インターネットやITの発展によって、今後どんどん少なくなくなっていくでしょう。ただ、それはタイムチャージで業務をしている弁護士にとっては辛いかもしれないですが、クライアントや社会にとってはいいことだと思います。

弁護士の仕事は本来、それぞれのクライアントに沿った重要な意思決定をサポートしたり、より良いビジネスモデルを作っていったり、他のプレイヤーと交渉したり、もっとクリエイティブなものであるべきだと思っていますし、それが社会のイノベーションを生み出すきっかけにもなると思います。それこそ、AIでは発揮できない価値を創造しなければいけない。

仁位:
経理もまた、「AIに仕事を奪われるランキング」みたいな企画があればだいたい一位とか二位になる職業なのですが、僕はそれは正しいことだと思っていて。やらなくていい作業は、基本やらなくていい。ただ、AIを業務に組み込むとしても、技術活用について意思決定をするのは人間なので、業務フローの設計自体に携われるようになれるかどうかが今後の分かれ道じゃないかと思っています。

植田:
そうですね。士業の業務は労働集約的になりがちなので、それが変わっていく良いきっかけになるのかもしれないですね。悲観的にならず、うまく使っていきたいと思います(笑)

組織の中で意思決定に携わる当事者でありたい

ーー キャリアの幅を作るということ以外に、事業会社に行こうと思った理由はありますか?

仁位:
監査法人は個人の力量ではなく、あくまでも組織のひとりとしてしか仕事を任されていなかったので、個人としてもっと成長できる場所がいいなと思ったのがまずひとつ。一歩踏み込んで、自ら組織を変えていくという体験をしてみたいとなると、事業会社かなと。

植田:
僕は単純に、自社のプロダクトを持ちたいというのがありました。リーガルの立場であっても、事業会社の中に入るとプロダクトの改善にコミットするチャンスもあるし、それを通じて世界を変えるチャンスもある。

仁位:
ウォンテッドリーくらいの規模感の会社を、もともと探していたんですか?

植田:
大きい会社だと部門ごとにやることが分かれていて、必ずしも自分がやりたい意思決定に携われるとは限らないので消極的でしたね。例えば総会だけやりますという部署に配属されたらプロダクトには一生触れない。だからこそ、挑戦先はスタートアップを中心に探していましたね。

ウォンテッドリーはちょうど法務の立ち上げメンバーを探していた時期で、カオスな状況にチャレンジできるという点での期待がありました。あとは、単純にウォンテッドリーのプロダクトが好きだったからという理由もあります。

「発信するバックオフィス」の魅力

仁位:
実は、僕は監査法人のあと比較的規模の大きいベンチャーに一度入社していて。植田さんの言う通り、大きな事業会社では管理部門がやれることが限られているなと痛感したんです。成長スピードはすごかったんですが、結構つぎはぎ感がある中で、そこをまた1から立て直していくのは相当困難だぞ、と。

あとは、経験年数で評価されがちなバックオフィスの世界に対する違和感もありました。個人の能力は年数ではなくてアウトプットで測るのが一番だと思うのですが、バックオフィスとして認められるには歳を重ねて経験を積むことが一般的には重視されているような気がしていて。

そんな時に吉田さんの経営管理ブログを読んで。情報を開示する文化がないバックオフィスの世界で、ウォンテッドリーの管理部門は吉田さんを中心に自社の取り組みを積極的に発信していたのが衝撃でした。しかもそのブログには、管理部門の仕事をどうシステム化して楽にしていくのかという自分が関心を持っていた領域での実践がぎゅっと詰まっていたんです。

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植田:
確かに、経理のブログって少ないイメージだけど、うちはかなり積極的に発信してますよね。

仁位:
年の功ではなく実際のアウトプットで「この人たちは優秀だ」と思えるのはすごいことだと思います。自分はそのブログを読んですぐさま「ウォンテッドリーっていいな」と思い始めましたね。こういう環境で自分も意思決定に参加できたら、すごい成長できるんじゃないかって。

後編はこちら

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