社内ブランディング本にもインパクトある表紙デザインを | Wantedly Design
THE WANTEDLY VALUES ポスター に続く、社内ブランディングのためのデザイン、第二弾。Wantedlyデザインチームで Wantedly Culture Book 2019 表紙...
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こんにちは、Wantedly Visitチームです!前回では、いかに採用において「カルチャーやビジョンマッチ」が大事かを展開してきました。
今日は、入社の後に社員の「成功」を助ける方法について解説したいと思います。20年前のディズニー・アニメといえば、最後に王子様が現れて「その後幸せに暮らしましたとさ」というエンディングがお約束でしたが、実際には「その後」が大事になります。結婚がゴールではなく、その先の生活をより良いものにするのがゴールとするのと似ていますね。
デジタルマーケティングではこの領域を「カスタマー(Customer)= 顧客」の「サクセス(Success)=成功」、つまり顧客の成功を助ける活動、と呼びます。顧客に商品を提供する理由を、明確に「顧客が成功すること」定義し、顧客が成功することでその顧客が商品の「提唱者」になり、周りの知り合いに商品を薦めてくれる存在になります。
それと同じ考え方で、リクルートメントマーケティングでは入社後の社員のエンゲージメントを高めるための行為を「エンプロイーサクセス」と呼びます。直訳すると「エンプロイー(Employee)」は従業員、「サクセス(Success)」は成功です。つまり、従業員の成功に企業として貢献することで、従業員のモチベーションや満足度が上がり、知り合いを紹介してくれやすくなるということです。
まず前提として、なぜ「エンプロイーサクセス」なるものが生まれたのでしょうか。実はこの領域、新しいかというと、昔から存在はしていました。一方で、社会の変化に伴って方法論が変わってくる中で、最新の労働者や企業にあったエンプロイーサクセス必要になっています。
例えば、昭和的な「日本株式会社」では、従業員は家族の一員であり、各構成員は自分の意思よりも時には企業の意思を優先し、その代りに能力開発から老後の面倒まで企業が全部まとめてお世話するという形式が一般的でした。それが今は、基本的には個々人が自己の能力開発やキャリア計画に責任を持ち、キャリアフェーズに合わせて最適な機会を提供してくれる企業を選ぶという風に変化が生まれています。
また同時に、インターネットの普及で、「リファラル(社員紹介)」が非常に簡単になりました。30年前に誰かを社員紹介しようとしたら、電話をして口頭で詳細まで伝えるか、相手に募集要項の紙を送る必要がありました。今ではチャットかメールなどで募集のリンクを送るだけです。誰が紹介されたかもしっかりトラッキングされます。「リファラル」をしてくれるのは、会社に対して満足度が高い社員になります。そこで、社員の成功を後押しすることで、そういったリファラルを増やすことができます。
リファラルのメリット、それは会社にマッチした人材が来てくれるということです。既に働いている社員、つまり文化や能力がマッチしている社員と似た人を、その社員がお墨付きで紹介してくれるので、選考突破率やその後の定着、活躍の可能性が高いと言われています。
リファラル採用が前から進んで当たり前になっている米国では、下記のようなデータが出ています。
さて、ではいかに社員の成功を助けていくのでしょうか。まず前提として理解しておくと良いものに、エモーショナルサイクルカーブという言葉があります。これは、新しい環境に飛び込んだ人の精神がどう変化するかをモデル化したもので、Don Kelley と Daryl Connerが1970年に提唱しました。
入社したての時期が一番やる気が出て、その一度大きく下がった後に安定することを示しています。何か新しい環境に入ったり人と知り合うと、人は一般的にこのような反応を示すので、構造的要因と理解した上で、いかに下がった後のモチベーションを維持できるかが大事になります。
「社員の成功」、それは広義においては、どの企業もほぼ同じだと思います。それは、「社員が継続的に成果を出し、成果を出すことで成長を実感できる」ということです。というのも、そもそも「株式会社」というのは「同じ使命感のもとに集まった人々が、その使命の実現に向けて、成果を最大化するために一緒に時間を過ごしている」からです。
この「継続成果」を出すためには3つの要素が必要になります。
まず、スキルについてみていきましょう。ハーバード大学教授のロバート・カッツによれば、スキルには大きく3種類があります。
テクニカルスキルは「エクセルが使える」、「コーディングができる」といった技術的なスキル、ヒューマンスキルは「モチベーションがない部下のやる気を出す」や「チームをリードして成果を出す」など、最後に「コンセプチュアルスキル」は、「例えば自分がテクニカルスキル的に弱い領域だったとしても状況の把握や課題の本質を見出し、戦略をたてられる」といった具合です。
このあたりは文献がたくさんあるので割愛しますが、目標設定に合わせて正しいスキル開発が必要になります。そのためには、研修や上司・同僚からの継続的フィードバック、実践などが重要です。
次に、働く上でどんなモチベーションの種類があるのかみていきましょう。
かつては産業革命以降に提唱された「ハーズバーグの二要因理論」が有名でした。人間が不満足を感じる要因と、満足を感じる要因がそれぞれあり、不満足要因 = 衛生要因といわれ、それらを満たしてもマイナスがゼロにはなるものの、プラスには貢献しないという点が面白いといえます。
一方で、IT革命が起き、人が工場の機械と同等に扱われたいた頃とは大きく労働者や企業の価値観も変わった今、現在は「衛生要因」がどこの職場も過去に比べ大きく改善されてきており、それよりは動機づけ要因として大きく「Why」が大事になってきています。「Why」が大事というのは、リードジェネレーション(より伝搬しやすいメッセージ)やリクルーティング(フィルタリングする上で言語化が大事)でも挙げましたが、入社後のモチベーションもでも効果があるという意味で、大変重要といえます。また、一度しっかりと言語化し運用していくことで、様々な領域で効果が得られます。
上記の「モチベーションの種類」を加味すると、下記の方程式が浮かび上がります。
尚、ここでいう「衛生要因」と「動機づけ要因」はハーズバーグの理論そのままではなく、「動機づけ要因」に「WHY」も含めた新しい定義になります。
「社員の成功」とは、基本的にはこの「スキル」「衛生要因」「動機づけ要因」の状況をモニタリングし、継続改善していくことに他なりません。
それでは具体的に、エンプロイーサクセスのステップをみていきましょう。
エンプロイーサクセスの基本は、第一に会社における「成果」や「成功」の定義の言語化(カルチャーやビジョン)、第二にその定量化と測定、そして第三にそれを改善するための継続的なコミュニケーションや施策になります。
「各社員が成果を継続的に出せる」状況をつくることが、社員の成功につながると書きました。一方で、その「成果」の定義は企業によって微妙に違います。ですので、その「成功」の定義付けを明確にしておくことが非常に大事になります。
「成果」が企業によって違うと書きました。成果が「短期的な売上の拡大」の企業もあれば、「一部の顧客に数百年に渡って継続してサービスを提供できること」の企業もあります。ですので、何を持って「成果」しいては「成功とするのか」の定義付けが非常に大事になります。
カルチャーやビジョンの言語化については何度もこの連載で登場しているので他のエントリに譲りますが、重要なのは、カルチャーやビジョンがしっかりと定義付けられている程、この仕事や入社時点で終わっているということです。
入社後に社員の価値観の変化だったり、任されたいプロジェクトの変化などをマネージャーが柔軟に調整していくことは大事ですが、それより大きい大前提とした根っこの部分でズレがある場合は、いくら手をかけてもその会社で定義する「成功」に到達できず、企業も社員もお互いが不幸になります。そういった人は、前回の「リクルーティング」の回でもお伝えした通り、辛いけれども落とす必要があります。
上の図では、三角形の上にいけばいくほどスキル開発、下にいけばいくほど動機づけ要因が大きくなります。
社員を入社させたあとに「そんなはずではなかった!」とならないためにも、ナーチャリングの回でも書いたように、会社で評価している価値観や方向性についてはしっかりとすり合わせておくようにしましょう。
第二ステップに重要なのが「計測」になります。これはエンプロイーアクセスのみならず、リードジェネレーションやリードナーチャリング、全てのフェーズにおいて非常に重要です。
「エンゲージメントの計測」というのは定性的な部分も多く、これまで計測が難しいと思われてきた領域でした。最近はそこに対して新しい計測のためのツールが登場しています。
計測には、週次や月次、そして四半期ごとなどに計測するツールが沢山登場してきています。いくつか挙げるならば
定量化ができたのであれば、あとはその数値を継続的に改善させていくサイクルになります。
「スキル」「衛生要因」「動機づけ要因」の中で、会社として対策を打ちやすいのが「スキル開発」と「衛生要因の改善」といえます。一方で「動機づけ要因」はヒューマンスキルを要し、最も継続的な施策が難しい領域です。
「社員の成功」を強化していく中で、まずは下の図でいう「全体的」の領域から手を付けるのをオススメします。というのも、「個別的」な領域はマネージャーの力量も大事になってくるので、マネージャー育成もしくはマネージャーの採用とセットで考える必要性が出るからです。 システム導入は運用が大変ではあるものの、一度導入してしまえば、経営レベルで社内の状況が一目瞭然になり、調子が悪い人やいい人の把握が迅速になります。
全社レベルでできることは、マネージャーを支援する体制を構築すること、また武器を配ることでしょう。
マネージャーを支援するためには、1on1やフィードバックを円滑にするためのシステムの導入があります。また、マネージャーではなく人事部が定期的に人事面談を実施するのもよいでしょう。
武器というのは、マネージャーが使えるフレームワーク、会社の方向性の明確化、カルチャーの明確化、ワーディングなどです。それらがあることで、マネージャーがゼロイチで方針を示すのではなく、会社が用意した舞台の上でエンパワーメントができるようになります。 例えば、Wantedlyではそういった「マネージャー」の「エンパワーメント」という意味でも、会社の「Why」や「How」をまとめたCulture Bookを毎年刷新しています。
社員の成功はマネージャーの力量に大きく依存します。
そのためには、会社として一定の規模になった際に、研修に大きく投資をしていくことが大事になります。マネージャーに必要とされるスキルは、プレーヤーとして必要とされるスキルとは大きく異なり、いかに「人を動かせるか」が大事になります。(先述したカッツの理論によると、「コンセプチュアルスキル」にあたる部分です。
また、逆に部下からすると、下記のような要件が大事になります
- 良いコーチであること
- チームに権限を移譲し、マイクロマネジメントをしない
- チームのメンバーの成功や満足度に関心や気遣いを示す
- 生産性 / 成果志向
- コミュニケーションは円滑に。話を聞き、情報は共有
- チームのメンバーのキャリア開発支援
- チームに対して明確な構想 / 戦略を持つ
- チームに助言できるだけの重要な技術スキルを持つ
- 目標に対する明確なフィードバックをくれる
出典:How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント - 日本経済新聞社
マネージャーにとってはプレッシャーですが、こういった項目を四半期ごとなどに部下からスコアリングしてもらい定量的にトラッキングすることも有効です。
以上、今日は入社後の「エンゲージメント」について話してきました。この連載も残り2回となりましたが、次回は「人事のキャリア」について考えていきたいと思います。
<次回に続く>