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山本 篤
yamamoto atsushi
従業員数7,000名、血液検査機器でグローバルシェア45%を誇る医療機器メーカーG社は医療現場の負担軽減を目指し、検査データを一元管理するITシステムを開発したが、ITサービスの販売経験がなく、初年度の導入実績は目標60病院に対しわずか16台にとどまっていた。そこでJBAは、開発担当者や医療従事者へのヒアリングや、競合分析を実施。その情報を元に導入実績のある病院の具体的な成果を可視化した動画を制作。さらに、顧客の購買行動を3段階に分解し、PRチラシやLPサイトの制作、営業担当者向けの実践的な研修プログラムまで、包括的な支援を行ったマーケティング支援事例を紹介します。
新たなサービスを広める手助けがしたい
血液検査機器メーカーが生み出した新サービスのマーケティング支援
血液検査機器のグローバルシェア45%を誇るG社。検査機器と試薬を主力とするこの医療機器メーカーが、初めてITサービスの開発に乗り出した。新たに開発したのは、顧客の検査結果や予約リスト、引継ぎ事項など血液検査に関するデータを一元で扱える管理システム。G社にとってITサービスは初めての挑戦だった。しかし「医療業界全体への価値提供」という思いが、現場の負担軽減を目指した管理システムの開発を後押しした。
この新しい管理システムを全国の病院へ導入するため、G社は営業推進部を新たに結成、初年度の売上目標として「60病院への導入」が掲げられた。しかし、集められたメンバーはマーケティングの経験がない人たちばかりで、病院の医師や検査技師へのアプローチに苦心。初年度の導入実績はわずか16台に留まった。既存の検査機器事業では年間2,000台の販売実績、国内約1,900の医療機関との取引基盤を持つG社にとって、想定を大きく下回る厳しい結果となった。
このような背景から、営業推進部からJBAに、マーケティング用の動画制作の相談が入った。JBAは以前、G社の社内向けコミュニケーション支援を手がけており、そのつながりで広報担当者からの紹介だった。担当者は山本に、製品の魅力を伝える難しさをこう語った。「医療機器の場合は、精度や信頼性という具体的な数値、製品の技術的優位性を示せば評価いただけました。しかしITサービスは目に見えない価値を伝えなければならず、どう魅力を伝えればよいのか分からないのです」
まず担当者から言われたのは「製品の魅力を分かりやすく、顧客である医療従事者に伝える動画を作ってほしい」という依頼だった。山本はまず、この製品の訴求すべき魅力を深く理解するために、開発担当者に話を聞かせてほしい、と担当者に打診。動画を作成するという趣旨で、1時間程度のヒアリングを行うことになったのである。
伝えるべき魅力を徹底的に分解する
製品開発の経緯や、顧客の声から本当に伝えるべき魅力を抽出。
開発担当者は臨床検査の現場が抱える課題をこう語り始めた。「深刻な人手不足が続いています。検査機器メーカーとして数多くの医療機関を訪問してきましたが、どの施設でも『人が足りない』『業務が追い付かない』という切実な声を耳にしてきました」
その主要因は、紙媒体への依存だった。血液検査業界では、予約管理や検査結果の共有、試薬の情報など、膨大なデータを紙で管理することが慣例となっている。それが業務を煩雑化させ、人手不足に拍車をかけていた。
「DX化は急務とされているものの、現場の抵抗が強く、なかなか抜け出せない状況が続いています」と開発担当者は続けた。「確かに、当社にはIT開発のノウハウはありません。しかし、20年以上にわたって臨床検査の現場と向き合い、業務の課題や改善ポイントを熟知している強みがあります。この知見があれば、現場が本当に必要としているIT化を実現できる。そう確信したのです」
このヒアリングを通じて山本は、G社の新システムが解決しようとしている課題と、その背景にある想いを理解。訴求すべきポイントが明確になったのである。
製品開発の経緯や、顧客の声から本当に伝えるべき魅力を抽出。
一方で、実際の顧客の声を聞く必要性も感じていた。その懸念を担当者に伝えると、「来週、医療従事者が集まるイベントがあるから、そこに同席してみてはどうか」との提案を受けた。そのイベントは、各医療メーカーが新商品を発表する場だった。山本はイベントの前後に医療関係者と話す機会を得て、合計7名の医療従事者にヒアリングを行った。共通して聞かれたのは、DX化への不安だった。ある病院長はこう語った。「DX化の必要性は理解しています。しかし、経費や人件費の削減効果が不明確で、導入コストに見合うメリットがあるのか、前例がなく判断できないのです」
さらに山本は、競合の訴求方法についても調査を実施した。医療業界に限らず、他業界の顧客管理システムまで視野を広げ、約30社の事例を分析。教育用動画の専門家や医療領域に精通したコンサルタントと共に検証した結果、「導入メリットの具体的なイメージ化」が各社共通の重点施策であることが判明した。
「導入のメリットをどこまでリアルに想像してもらえるか、それが今回のカギになる」
この考えのもと、山本はJBA社内の動画ディレクターと構成案を練り上げた。実際の導入事例を効果的に活用し、業務効率化の成果を具体的な数値で示す。例えば、IT化による検査結果確認時間の大幅短縮を、導入前後の業務フローと共にビジュアル化。視聴者が効果を実感できる構成に仕上げたのである。
サービスを広めるため、より本質的な施策を
依頼を受けていない領域まで自主提案。
動画制作から包括的なマーケティング戦略へ。
プロジェクトは大詰めを迎えていたが、山本の中で違和感が消えなかった。動画は顧客との接点の一つに過ぎない。より包括的なアプローチが必要だと感じていたのだ。その思いを、山本はJBAの戦略会議で率直に語った。
すると社長から力強い言葉が返ってきた。「求められていなくても関係ない。全部提案すればいい」。この後押しを受け、山本は動画納品後、担当者に新たな提案を持ちかけた。「動画だけでなく、マーケティング全体の改善案を提示させてください」。これまでの仕事ぶりを評価していた担当者は、すぐに賛同してくれた。
山本は、システム導入までの意思決定プロセスを3つの段階に整理した。多くの病院では、まず現状の業務フローに問題意識を持つことから始まる。そこから具体的な解決策の検討に入り、最終的に導入を判断する。この流れに合わせ、山本は施策を設計した。
導入プロセスに応じた段階的アプローチを設計。
第一は「気づき」の段階。ここでは、顧客自身が気づいていない課題を認識してもらう必要があった。そこで山本は、営業担当者向けのチラシと、詳しい情報を掲載したウェブサイトの制作を提案。実際の導入事例や効果、現場の声を分かりやすく伝えることで、「実は自分たちも同じ課題を抱えているかもしれない」と気づけるような設計とした。
第二は「検討」の段階。課題は認識したものの、具体的な解決策を探している状態だ。ここでは、病院が抱える様々な課題に焦点を当てた短い動画シリーズを企画。それぞれの問題に対する解決策を分かりやすく示すことで、導入への一歩を後押しする狙いだった。
最後は「決断」の段階。ここで山本が特に重視したのは、営業担当者のスキルアップだった。「どんなに優れた販促ツールを用意しても、最後は営業担当者の説明力で決まる」。この考えのもと、業界の動向から具体的な提案方法まで、実践的な研修プログラムを作り上げた。
このように、顧客の状況に合わせた段階的なアプローチを設計することで、より効果的な営業活動の実現を目指したのである。
「本当に価値あるサービスを世の中に届けたい」
成果が出るまで伴走し続けるJBAの支援スタイル
現在、これらの施策を具体化するために取り組んでおり、社内研修プログラムの作成と実施を山本が中心となって進めている。彼は営業担当者がG社のサービスの魅力をしっかりと理解し、顧客に伝えるスキルを向上させるための研修を行っている。
G社のように社会への貢献を実現するために素晴らしい商品を扱っていても、その魅力を十分に伝えられずに困っている企業は世の中にたくさん存在する。JBAは、A社の「医療の発展や人々の健康に貢献する」という使命の実現に向けて、A社やその製品の魅力を本質的に伝えるための支援を通して、A社の医療業界全体に向けた更なる価値提供に伴走するパートナーとして伴走を続けている。
今回の記事では、山本から、プロジェクトを通して感じたことや今後の展望について語ってもらいました。JBAのことが少しでも気になった方、ぜひ以下のリンクから採用情報をのぞいてみてください!
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