「それを諦めたら経営者として終わり」個の強みを模索する、ワンキャリアの組織カルチャー(代表インタビューvol.2) | 株式会社ワンキャリア
第2回の代表インタビューは「人・組織編」です。コアバリューの1つに「個の強みの模索」を掲げるワンキャリア。メンバーの才能を見つけて投資する組織カルチャーは「人が変わる瞬間を見たい」と人への投資を...
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新卒採用メディア「ONE CAREER」を皮切りに、人事向け採用DX支援サービス「ONE CAREER CLOUD」、中途採用メディア「ONE CAREER PLUS」と事業を展開してきたワンキャリア。各事業を通じてキャリアに関するデータを集め、ミッションである「人の数だけ、キャリアをつくる。」の実現を目指しています。
その背景にある経営者の思いを知ってもらおうと、代表の宮下尚之(みやした たかし)にインタビューを行いました。その内容を全3回にわたってお届けします。
初回は「事業編」。起業を志した原点や、当時は「無理」と言われた就職活動のクチコミサービスを軌道に乗せるまでの歩み、事業家として大切にしている考え方を聞きました。
宮下 尚之(みやした たかし):ワンキャリア代表取締役社長 執行役員CEO
―経営や商売への思いはいつ頃から芽生えたのでしょうか?
宮下:神戸市出身で、父は外科医、母はピアニストという家庭で育ちました。両親はビジネスの世界からは離れていましたが、経営者という存在が子どもの頃から当たり前のものとして近くにありました。祖父は税理士法人を経営していましたし、小中学生のときに一番仲の良かった友人のお父さまも経営者でした。振り返ってみると、大手企業の経営者も中小企業の創業者もいたので、経営者にもさまざまなタイプの方がいることを実感できていたのだと思います。
―具体的に動いたのは大学生になってからですね。
宮下:大阪の大学に入ってからは、自分でビジネスを始めました。自分が真剣になれる環境をつくろうと、さまざまな仕事に挑戦しました。
そんなとき、学生時代から付き合いがある佐藤裕介さん(STORES代表取締役社長)に「このままでは長く残るものを作れないよ」と言われました。確かに、当時の自分を振り返ると、その通りでした。でも、ショックでしたね。
「自分は、長く残る価値のあるものを作れていないのか」と、かなり考え込みました。そこで初めて自分のキャリアについて思いを巡らすようになりました。でも、すぐに答えは出なくて、迷子のようになっていましたね。
―そんな中で2008年、リーマン・ショックの影響が日本にも及び、宮下さんがいた関西での就活も深刻な状況になりました。
宮下:特に後輩たちの世代が困っていました。高校時代の後輩であり、当時就職活動をしていた副社長の長澤から「今年、関西では採用イベントを実施しない外資系コンサルティングファームもあります」といった話を耳にするようになりました。関西にも優秀な学生がいるのに、東京との格差で不利な状況にある。そうなると、後輩の可能性が阻害されるだけでなく、自分たちが働く予定の会社に優秀な後輩が入らなくなるかもしれない、と考えました。
そこで、仲間と一緒に企業を関西に呼び、就活イベントを開こうと計画しました。これがHRに関わる最初のきっかけでした。
―「後輩たちも困るし、自分たちも困る」と感じ、動いたのですね。
宮下:自分たちにとってもメリットがある、かつ多くの人のためになる。両方の要素があることが、事業を生む上で重要です。自分たちがメリットを感じないと継続性がないことは、学生時代の仕事で感じていましたから。
―採用市場が冷え込んでいた中で、就活イベントをゼロから立ち上げられたのは、なぜでしょうか?
宮下:何もない若者が普通にアプローチしても、難しかったと思います。だからこそ、「サードドア」(※)を意識していました。具体的には、私自身も就活をしていたので、そこで接点があった企業の担当者の方々に「関西に来ていただけませんか」とお願いして回りました。
―就活生という立場を生かして独自の戦略を練った、と。他とは違う戦い方を選択するのは、今のワンキャリアにも通じる部分があります。
宮下:そうですね。私が事業をつくるときは、他の人が見つけられていないような「穴」や、アンチテーゼを探すように意識しています。
―アンチテーゼですか?
宮下:世の中で当たり前とされていることに対して「本当にそうなのか」と疑うことから、新たな事業のヒントが見つかります。
私は、自分ごとになった疑問に対して合理的な答えがないなら納得しない性格で、事業のアイデアを「無理だ」と言われても、それを自分のエネルギーに変えてきました。HRでクチコミサービスを作れたのも、この性格があったからだと思います。
(※)アイデアや努力によって、その人が見つけた独自の考え方やアプローチのこと。ベストセラーのビジネス書『サードドア:精神的資産のふやし方』(アレックス・バナヤン著、大田黒奉之訳 東洋経済新報社)に出てくる考え方。本著では世の中の大半の人が使う正面からの入り口を「ファーストドア」、VIP専用で億万長者やセレブだけが使える入り口を「セカンドドア」と定義。それに対し「サードドア」は「いつだってそこにあるのに、誰も教えてくれないドア」と説明し、ビル・ゲイツやスティーヴン・スピルバーグら著名人に、成功を切り開く「サードドア」を見つけたときのことをインタビューしている。
―ONE CAREERは2013年12月、ローンチとなりました。当時はどんな課題感がありましたか?
宮下:HR業界はブラックボックスで、全然データがありませんでした。「どの企業が、どのような採用活動をしているのか」「この企業に入社すると、どのようなキャリアパスがあるのか」といった悩みがあっても、解決につながる情報がない。自分たちで就活イベントをやって、そんな現状がはっきり見えてきました。HRに関する全てのデータを集める会社にしよう。そう思いました。私に「長く残るものを作れない」と言っていた佐藤裕介さんも、このアイデアには「いいね」と賛同してくれました。
―まずは新卒マーケットに特化し、就職活動に関するクチコミ収集を始めました。
宮下:データを集める構造として着目したのが食べログです。
「飲食店向けにはクチコミはあるのに、何で就職・転職領域ではできないんだろうか?」 そんな疑問があったのですが、誰も理にかなった答えは出せていませんでした。人材業界のプロ30人くらいにヒアリングをかけましたが、全員が「悪いクチコミを書いているサイトに企業は求人を掲載できない」「BtoCならいけてもBtoBは無理」といった反応でした。
ただ、食べログもBtoBのビジネスです。「食べログのHR版を作るのは無理」というロジックは通らないと思いました。目標に対して否定的な理由が出てきたとしても、それが合理的でなかったら、私は突破しに行きます。突破するためのロジックを固めるため、徹底的に戦略を考えます。
―とはいえ、クチコミをある程度集めるためには、それなりの年数が必要でしたよね? 継続できた理由は何でしょうか?
宮下:クチコミを集め始めてすぐに「これは行くな」と確信を持てました。ユーザーの熱量を肌で感じたのです。
当初は小さなイベントで、今のONE CAREERに載っているような選考対策をまとめた資料をユーザーに配っていました。その資料が評判となり、ユーザーの方から「ありがとうございます!」「これを見ながらずっと対策していました!」といった声が寄せられました。
ユーザーが選考対策に時間を投資していて、そこには圧倒的な熱狂がある。採用プロセスをオープン化することにはニーズがある。このときの確信はワンキャリアを創業した2015年以降も、揺らいだことはありません。
―ユーザーの熱狂があったからこそ、迷わずに事業を推進できたのですね。
宮下:一方で、「クライアントをどう増やしてくのか」という点は課題でした。「否定的なことを書かれるなら企業は掲載できない」という批判に答えられる解を、当初は持ち合わせていませんでした。
―どのように乗り越えていったのでしょうか?
宮下:我々の集めたデータに価値を感じてくれるお客さまが増えていったのです。
当時のONE CAREERは会員登録なしでもクチコミをある程度見られる仕様だったのですが、それをご覧になったお客さまが「メーカーってこういう風に採用しているんですね」「コンサルティングファームはこんなに早い時期から採用しているんだ」と、採用活動の参考にされ始めました。これが「事業として行ける」と確信できたタイミングです。
―求職者だけでなく、企業の採用担当者もHRのデータを求めていた、と。
宮下:このときにクチコミをご覧になっていたのは、コンサルティングファームや総合商社など、後にワンキャリアと長いお付き合いになるお客さまでした。創業2年の会社が集めたクチコミのデータに対して、名だたる大企業が価値を感じてくださっている。「アクセルを踏もう!」と決断できました。
―事業のサイクルが徐々に形になっていったのですね。
宮下:貴重なデータがたまってくると、感度の高い求職者が集まり、宣伝広告費や採用広告費をかける企業も集まってきて、さらにデータがたまる。良いサイクルが回り始めました。
―2021年にはミッションを「人の数だけ、キャリアをつくる。」に刷新しました。事業が回り始める中で言語化されたものですか?
宮下:そうです。旧知の仲でビジョン作りやブランディングのスペシャリストである高木新平(NEWPEACE代表取締役CEO、ワンキャリア社外取締役)の影響が大きいです。実際に、このミッションは彼とワンキャリアの未来について話し合う中で提案してくれたものです。「新卒採用はどうなったらいいのか?」「ワンキャリアは何のためにあるのか?」と、禅問答のようなやり取りを彼とずっとしていましたね。そして「働く人や、仕事を選ぶ人に寄り添ったサービスでありたい」という方向性が固まりました。
―ワンキャリアのコアバリューである「エンドユーザーファースト」にもつながりますね。
宮下:最近、社内のメンバーと話す中で「ワンキャリアは常にユーザーがいる環境づくりを重視してきた」という話が出ました。確かに、私は学生時代からずっと、環境づくりを重要視してきました。オフィスが渋谷にあるのも、大学生が来やすい、大学生が当たり前にいる環境だからです。
エンドユーザーの声を聞ける環境をつくってきた。だからワンキャリアの事業は伸びてきたのだと思います。
(第2回へ続く)
今回はワンキャリアの事業について、宮下にインタビューしました。ワンキャリアのことが少しでも気になった方は、ぜひ以下のリンクをのぞいてみてください。
企画・取材・編集:吉川 翔大
ライター:松本 浩司
撮影:mikico
【第2回】
【第3回】