医療体験を変えるベンチャー・メドレーが担うミッションとは
間違ったネットの情報はもういらない。日本の医療をウェブから変えることをもくろむ医療サービスがある。 (1/3)
http://ascii.jp/elem/000/001/178/1178332/
広報の阿部です。医療介護の課題をインターネットの力で解決するというビジョンに魅了され、メドレーに入社して2年半。たくさんの人から「メロディーですか?」と聞かれ「いやメドレーです!!!」と回答していた時期を経て、最近では新聞や雑誌、Web、テレビにラジオと、幅広く登場機会をいただけるようになりました。めざましテレビ、おはよう日本などなど、私が小さい時から観ていた番組でもご紹介いただくことができました。
医療xTechの広報はすごく面白いです。自社のプロダクトが多くの人の医療体験を変えていることを実感できますし、国の動きと密接に関わっている業界ゆえに、市場のうねりをリアルに感じることもできます。
医療に限らずX-Tech分野の皆さんは、こうしたワクワクを感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。
でもこうも思いませんか。X-Techの広報、難しいッ!
そこで、私が2年半ほど「医療xTech」で試行錯誤してきた結果をまとめてみました。「こうしたらいいんでは」「うちはこうしてる」などの議論がここから生まれて来たら、業界のノウハウ構築にもつながるのではと思っています。
X-Techって面白いの?と思っている人がこれを読んで「なんだかやりがいありそう」と思ってもらってもらえたら、それだけでも嬉しいです。
そもそも何が難しいのかというと……
iPhoneみたいなプロダクトだったら、触れた瞬間におおぉってなりますよね。ただ医療xTechの場合、プロダクトを見ただけでパッと未来へのインパクトを想像してもらうのは難しいかもしれません。
例えば弊社がプロダクトを提供する「オンライン診療」(スマホやPCのビデオチャットで医師の診療が受けられる)は「自宅にいながら診療を受けられる」というのが分かりやすいメリットですが、実はその先に、これまで通院を中断してしまっていた人が通院しやすい環境を整えることで、治療継続率が向上することに繋がります。……と、この辺までお話しすると、ゆうに10分を超えています。
業界が複雑で広大なので、パッとすごさを伝えづらいのです。
例に挙げた「オンライン診療」は、医師法のような法律はもちろん、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」「診療報酬」などの様々なルールが絡んでいます。
もうここまで話しただけで「いいから2分で説明して」ってなりますよね。
ただシンプルに説明しすぎると、実際との乖離が生じます。1行で言うならどういう表現が適切なのかと、何度記者さんに聞かれたことか……。
こうしたことに悩み続けた2年半、大切だなと思ったポイントは2つです。
私自身、入社の際に「これはすごい未来をつくる会社だ」と思ってメドレーに入社しましたが、じゃあそれはどんな未来なのか、見てきたかのように説明できるかというと、全然できませんでした。
そこで、まずは会社がどのような医療の未来を描いているのか、なぜそう思ったのかを代表に教えてもらうことからはじめました。そしてそれをメディアの皆さんに伝えながら、メドレーが目指す未来について、代表の口から話す機会を増やしていきました。
事業と少し離れて医療全体についても話す機会を持とうと、様々な医療機関の院長などにインタビューしに行く企画を始めてみたり。(日本医師会の会長にご登場いただけたときは感動しました)
記事上の表現が、伝えたつもりだった内容と異なることもありました。でもこうした経験から徐々に「このエピソードは、会社の想いを分かりやすく伝えられる」「こう話すと誤解されがち」「この用語は専門的で分かりづらい」といったポイントが見えてきはじめました。
さらに、会社や代表の思いをメディアの方がわかりやすく伝えてくださることで、「メドレーは何者で、何を目指している会社なのか」を社外の人が知ってくれる機会も増えてきました。
「会社が目指す未来の凄さを実感するのに10分はかかる」という悩みは、これで少し解決したことになります。最近では、代表が書籍を出したことで、さらにこういう悩みは少なくなりました。「本を読んで採用ページから応募しました」という嬉しい話まで!
複雑で目指す未来が壮大だからこそ、丁寧に分かりやすく伝える「記事」「本」はとっても効果的です。(だからこそ、X-Tech業界にとって広報の存在はすごく大切だとも思います)
広報開始から2年以上経ち、こうして目指す未来をお伝えする記事はかなり積み上がってきました。しかし、それで一息つくことはせず、今も未来を語る場を積極的に作っています。
会社のビジョン自体は大きく変わることはありませんが、プロダクトを出したり、新しい取り組みをするたびに「その取り組みを通じて目指している未来を伝える」ことが大切だと思っているからです。
例えば、弊社は4月末に「電子カルテ」をリリースしましたが、ニュースリリースはファクト情報が中心となるため「メドレーが目指す未来に対し電子カルテがもつ意味」までは、なかなか社外の方には伝わりません。私自身も自分の言葉で説明できるようになるまで経営陣にヒアリングし、以前からメドレーを応援してくださっている編集の方に相談することで、こんな記事が生まれました。
自分たちの言葉で伝えることも大切だと思い、最近ではWantedlyやブログなどの発信も強化しています。一つひとつ、メッセージを考えながら大切に作っています。
成長フェーズごとにこうした場を持つことで、これまでと違った切り口でビジョンを説明することができます。そうして様々な角度から未来を語ることで、ようやく世の中の大勢にメドレーのビジョンがありありと伝わり、ワクワクしてもらえるようになると思うんです。
ビジョンへの共感を生む記事が増えることで、プロダクト自体にも興味を持たれやすくなりました。(プロダクト自体の面白さが取材のキッカケとなった場合も、会社がその裏側に持つ思いを知ってもらうことで、より丁寧に紹介してもらえる気がします)
さて、ここからは「法律はもちろん、ガイドラインや慣習などが複雑に絡み支えている業界である」ことが悩みのタネになります。プロダクトの紹介内容が厚い記事になればなるほど、表現的に「そういう言い方はできない」「その言い方は、厳密には違っている」という悩みが増えていくのです。
弊社のオンライン診療アプリ「CLINICS(クリニクス)」を例に紹介します。これはスマートフォンやPCのビデオ通話で、医師の診療を受けられて、薬や処方箋が送られてくるというものです。
このオンライン診療という仕組みは、2015年8月に、厚生労働省が「全国的にやっても大丈夫」ということを示す通達を出したことをキッカケに全国で広がり始めました。国が規制を敷く事業の多くは、運用に対して多くの法律やルールが絡んでおり非常に複雑です。オンライン診療も然りで、オンラインで診療してもいいからって、何でもやっていいわけではありません(この辺にご興味ある方は、社内の弁護士・田丸がブログにまとめた解説をどうぞ)。
さらにリリース当時は、医師ですら「オンライン診療って何?」というくらい市場は黎明期でした。だからこそ、少しでも怪しい表現の記事が出たら「メドレーは変な事業をやろうとしているのではないか」と思われるリスクもあります。
とはいえ、詳しくない方に細かく説明をすればするほど、混乱して逆に正しくない文章表現になる可能性も。「もうこんな複雑な分野、取材しない」と思われても悲しいですよね。
悩んだ結果、私は「オンライン診療マニア」になることにしました。
医療全体のことに対して「池上彰」になることはできないですし、専門家もたくさんいらっしゃいます。でも医療界で新しい「オンライン診療」分野については、日本で一番わかりやすく、記者さんに説明できる「世界一受けたい授業」が出来る人になろうと。
と言っても、医療者としての経験もない私は、まずは代表が話すオンライン診療を耳コピすることからはじめました。(ここまで書いて気づきましたが、なんだかんだで、オンライン診療の「世界一受けたい授業」をできるのは代表です……)
(ニコ生でオンライン診療について話してた代表)
こうして色々な記者にオンライン診療を紹介するうちに「世界一受けたい授業」のポイントが見えてきました。大きくは2つです。
説明された言葉を、相手がそのまま受け取っているか分からない。聞き逃した小さなワードが、その説明におけるキーワードだったりすることもあります。ですので、図表や箇条書きを含めた資料を作り、取材時にお渡しするようにしました。
これは結構よくて「ちょっと気になってます」という問い合わせをもらったら資料を片手に飛んで行って、10分くらいでざっと話すことができるんですね。そのあと、ディレクターさんが社内に企画を説明するときの参考資料ともなります。
(動向に定期的に変化があるので、1ヶ月に1度は見直しています)
一度お渡ししておけば、電話越しに同じ資料を見ながら「3ページ目にはこう書いてありますが、これってこういう事ですか?」と事実を整理していくこともできて、コミュニケーションもスムーズになりました。
(こういう資料作っている方がいたら、ぜひ見せ合いっこできれば嬉しいです!X-Tech界隈のみんなが使えるフォーマットとか作れたらいいなあとか思います)
実際にオンライン診療をしている医療機関にメディアが取材する時は、なるべく同席させていただくようにしていました。(もちろん、弊社のプロダクトを利用している医療機関さんに限りますが)
医療機関や患者さんの生の声を聞くことで、上記の資料だけでは伝わらないリアルな現場の様子を伝えることができ、プロダクトの価値をより納得してもらえるようになります。具体的な利用例やユーザーの感想も織り交ぜて紹介することで、出来上がりの記事や特集VTRのイメージも持ってもらいやすくなりました。
ちなみに、実際に医療機関に取材に行くと、先生方が想い溢れる方が多すぎて、記者さんも感動して熱い記事を書いてくれました。どの記事を見ても想い出がいっぱい・・。
こうした熱い記事が、さらに新たな取材を呼ぶという、広報にとっては嬉しい循環も産まれてきました。(熱い記事を書いていただいた皆さま、本当にありがとうございます)
X-Techは広報が難しいという話からはじめましたが、X-Techはなんでこんなに難しいのかというと、それほど複雑で広大な分野の未来を大きく変えられる事業に取り組んでいるからだと思うんです。難しい分、乗り越えたらすごい景色が待っているというか。
特に医療は、スタートアップや新しいプレイヤーによる変化がこれからの分野です。医療と関係なかったキャリアの方にもたくさん業界に飛び込んでもらい、共により良い未来を一緒に作っていけるよう、広報活動、頑張ります!
また、広報に悩んでいるX-Tech界隈の方や、こういうやり方がいいんじゃない?というアドバイスをいただける方のご連絡も、お待ちしております。梅雨も明けましたし、ビール片手に語り合えると嬉しいです。