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人材も人的資本開示も“ユニーク”に──「kaonavi universe」公開までの道のりとは

Contents

・経営戦略とも連動し、“カオナビらしさ”が表れた指標を開示
・人事課題が数値で可視化され、社内外に共有しやすくなった
・“あらゆる個性が集まり、世界をより良く変えていく”意思表明としてのサイト“「kaonavi universe」
・パーパス実現に向けたコミュニケーションの土台に指標を活用していく


2023年3月決算期から上場企業を対象に義務付けられた「人的資本の情報開示」。カオナビでは自発的な情報開示にも重きを置き、人的資本経営に関するウェブサイト「kaonavi universe(カオナビユニバース)」を2023年7月に開設しました。
サイトのコンセプトは「人の個性は無限の可能性」。多様な個性、価値観を大切にするカオナビらしさをクリエイティブ面でも追求し、人的資本に関する考えと独自指標を含む20項目以上の指標を公開しています。
公開までにはさまざまな試行錯誤を重ね、経営陣とも何度も議論を重ねたという同プロジェクト。今回の取り組みを契機に、カオナビ独自の人材戦略や施策への理解を深め、従業員がより働きやすい環境づくりに力を入れていくというコーポレート本部長 兼 総務労務グループ マネージャーの杣野 祐子さん、コーポレート本部 総務労務グループの竹治 恵理香さんに、公開までの舞台裏をお聞きしました。

Interviewee

コーポレート本部長 兼 総務労務グループ マネージャー
杣野 祐子
ITベンチャーやアパレル企業にて契約業務、知的財産権業務、コーポレートガバナンス業務等、企業法務全般に従事。2018年にカオナビに入社し、上場に向けた内部統制の構築を担当する。2019年よりコーポレート部門責任者を務める。

コーポレート本部 総務労務グループ
竹治 恵理香
人事BPO企業やコンサル企業で、人事システム導入やクライアント向けの人事システムリプレイスプロジェクトに従事。2017年にカオナビに入社し、評価報酬制度の改定や人事制度の変更、人事施策の実行などを担当する。

経営戦略とも連動し、“カオナビらしさ”が表れた指標を開示

──まずはお二人が担当されている業務について教えてください。

杣野:
コーポレート本部長として人事含め管理部門全体を統括しています。今回、人的資本の情報開示義務に対応するにあたり、人事を中心としたメンバーでチームを組みプロジェクトを推進しました。

竹治:
総務労務グループのメンバーとして、人事制度改定も含めた人事労務業務をメインに行っています。今回のプロジェクトでは、主に数値データの集計や、施策紹介に関する部分を担当しました。

──人的資本の情報開示について、いつからどのようなプロセスで準備を進めていったのでしょうか?

杣野:
2023年から人的資本開示が義務化されるのを見越して、2022年の秋頃から年明けにかけて準備を進めてきました。人的資本の情報開示義務は有価証券報告書に情報を記載することですが、タレントマネジメントサービスを提供している会社だからこそ、義務以上のものを模索し、お客様にとっての良い事例になるようなものを公開したいという思いがありました。そこで、「何を開示すべきか」、「カオナビならではのストーリーは何か」などの議論を重ねてきました。

──情報開示においては、経営戦略と人事戦略との連動性を重視したとお聞きしました。

杣野:
人的資本経営の指針の一つとして経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート」でも、人的資本経営とは単なる人事施策や人事だけの取り組みではなく、経営戦略と連携して事業の発展に寄与するものと考えられています。
カオナビでは、従来からパーパスやバリューといった経営戦略の根幹となるものと人材戦略を関連付けてきました。改めて、この点をより明確にし、人的資本開示のストーリーや重要指標を決めています。 まずは、他社の事例をリサーチし、各社各様のストーリーや大切にしていること、人事の指針をしっかりと打ち出していることが分かりました。そこでカオナビらしさを打ち出すためにも「独自のストーリー」と「独自の指標設定」の2つを重要ポイントとして意識しました。

──プロジェクトチームとしてはどのような体制で作業を進めていったのでしょうか?

杣野:
人的資本開示は企業によってIR部門が担当するケースもありますが、データの内容自体人事が扱う要素が強いため、カオナビでは、人事・労務メンバーを中心に進めることになりました。経営戦略と連動する以上、経営陣も議論に加わるべきだという考えから、まずチームでたたき台を作り経営会議で定期的に議論を重ねました。
はじめに「経営戦略とどう連動させるか」や「どのように独自性を打ち出すか」など方針の大枠を固め、次に指標の選定に移っていきました。経営陣とも議論を重ねていく中で、多方面からの意見の取りまとめには苦労しました。しかしながら、経営陣と現場のメンバーが一緒に議論するケースはこれまであまりなく、双方にとっても良い経験になったと思います。

──今回、独自指標を含む20項目以上の指標を公開しています。この項目に至った経緯は何だったのでしょうか?

杣野:
初めは会社としての独自性を打ち出す重要指標10個程度、女性管理職比率や男女の賃金格差など女性活躍に関するもので他社と比較可能な重要指標を5個程度、計15個程度を想定していました。たたき台の段階で数十個の指標を用意し、他社とも比較しながら絞り込んでいった形です。その中で「男女の社員比率も公表しないと女性活躍に関する評価がしにくい」など意見があがり、少しずつ増えて項目が増えて最終的に31指標にまとまりました。

杣野:
独自の指標に関しては特に議論を重ねました。カオナビは年齢や入社年数を問わず、能力に応じて成果を上げられる方を重要ポストに抜擢しています。この進捗を表す指標として当初「管理職の平均年齢」を想定していましたが、平均では端的に表現できず、結果的に「最年少管理職年齢(歳)」を公開するなど、カオナビらしい開示になったと思います。

人事課題が数値で可視化され、社内外に共有しやすくなった

──数値化したことで新たに見えてきた課題はありましたか?

杣野:
新たに見えてきたというより、抱えている課題がより説明しやすくなりました。これまで人事が肌感覚で把握してきた課題が数字として可視化されたことで、社内だけではなくお客様など、全てのステークホルダーに伝わりやすくなったと感じます。

──開示に関して社内からの反響や受け止め方はいかがでしたか?

杣野:
社内にはサイト公開と同じタイミングで共有しましたが、Slack上のレスポンスも活発で、関心高く見てもらえたのではと思います。サイトの公開後に社内勉強会を開催したところ、「数字を通して会社全体を知ることができた」「お客様にも解像度高く伝えられる」というフィードバックもありました。お客様との会話で人的資本が話題にあがっていることを再認識しましたし、事業に役立てている実感もありました。

──竹治さんはプロジェクトを進めていく中で大変だったところはありますか。

竹治:
これまでもその時々の課題に対して、カオナビのパーパスやバリューに沿ったカオナビらしい施策を打ってきたつもりでした。ですが、いざこの人的資本経営に真正面に向き合ってみて「自社の経営戦略、人事戦略は何か」と問われたとき、私はきちんと説明できないことに気づいたんです。これまで経営との連動を意識して実践してきたと思っていたものの、自分の中できちんと言語化できてないことに気づきショックを受けました。
経営陣との議論を通して人事戦略と経営戦略の連携や方針、ストーリーが固まったことで「これからこの軸を持って人事施策に取り組んでいけばいいんだ」と整理できて視野がすごく開けた実感があります。

──さまざまな指標がある中で、カオナビらしさが特に表れている指標は何でしょうか?

竹治:
兼業率の高さや最年少管理職年齢ですね。もともと内々では把握していて「すごくいい数字だな」と思っていたものを公表できてうれしく思います。
当社としては「先進的で当社らしい開示ができた」と自負していますが、他社さんでもさまざま工夫を凝らしたものが発表されていて「こういう手法もあったのか」と学ぶことが多いです。今後も引き続き、経営陣とディスカッションしながらアップデートしつづけていきたいと思っています。

“あらゆる個性が集まり、世界をより良く変えていく”意思表明としてのサイト“「kaonavi universe」

──次に7月に公開されたサイト「kaonavi universe」についてお聞きします。コンセプトを「ユニバース」にした経緯を教えていただけますか?

杣野:
「kaonavi universe」は、無限の可能性を秘めた宇宙(universe)をイメージし「人の個性には無限の可能性があること」を表現したサイトです。デザインを担当する部署と案を出す中で挙がったキーワードの一つが「universe」でした。

杣野:
ユニバースの「Uni」には「一つの、唯一の」という意味があり、私たちが目指す多様性とは対極に意味に捉えられかねないのでは?という意見もありました。ですが、私たちが求める人材「ユニークパフォーマー」の「Unique」ともリンクする言葉です。そこで、「Unique」から取った「uni」と、向きを変えるという意味を持つ「verse」を組み合わせ、「あらゆる個性が集まり、世界をより良く変えていく」というカオナビの意志を込めたサイトができあがりました。

──サイトでは「ユニークパフォーマー」の育成・活躍に向けた人事施策を大きく4つに分けて紹介しています。それぞれ詳しく教えてください。

竹治:
具体的には、「多様な人材」「成長支援」「柔軟な働き方」「登用・報酬制度」の4つに分類しました。

竹治:
「多様な人材」は、いわゆる性別などといった属性による個性のほかにも、本人の志向や得意分野等も含めた多様な個性を発揮して新しい価値を生み出せるチームにしていきたいという思いを込めています。

その方針を反映した施策の一つがオンボーディング施策です。入社前に職歴や得意領域、趣味特技などを記載してもらうことで人となりを把握し、各自に合った研修プログラムを組み合わせてスムーズな活躍をサポートしています。指標の一つ「オンボーディングプログラム満足度」は96.3%となりました。

「成長支援」では、ユニーク・パフォーマーが社内で活躍するだけではなく、社会でもその力を発揮してほしいという考え方のもと、社員の「やりたい」を尊重した社員起点で成長できる施策を整えています。

具体的には、自身のキャリアの志向性に沿って「マネジメントコース」か「スペシャリストコース」を選択できる「キャリアコース/ミッショングレード制度」があります。その結果は本部間異動者数や兼業率などの指標に現れています。

少し珍しい指標は離職率です。私たちは、成長は必ずしも社内だけで実現されるべきものとは考えていません。よりチャレンジングな環境がその人に合うのであれば、どんどん社外に出て活躍してほしいとポジティブに捉えています。そのため、離職率でアピールしたいことは「低さ」ではなく、「当社の離職率はこの数字で適正だ」という考えです。

「柔軟な働き方」は、生産性を高めることを目的に、いちばん成果が出せる場所を選択して働ける環境を整備しています。具体的にはハイブリッド勤務制度やスイッチワーク、スーパーフレックスなどの制度があります。

「登用・報酬制度」は、社員のさらなる成果や成長を支援するために、報酬や成長できるポジションを積極的に提供していこうという考え方です。ミッション・インセンティブ制度や登用制度、表彰制度などを用意し社員の成長に応えられるようにしています。指標としては「年間昇給10%以上の社員比率」「最年少管理職年齢」とリンクするほか、年代別・職種別の年収分布などさまざまな視点で報酬の適正配分を確認しています。

パーパス実現に向けたコミュニケーションの土台に指標を活用していく

──今後も指標のアップデートは続きますが、これまでの歩みを振り返っていかがですか?

杣野:
今回の開示は、当社にすでにある取り組みや制度を解像度高く整理し、人的資本に対する考えとリンクしながら表現を整えたものです。経営陣はもちろん、従業員や各種ステークホルダーとの対話の土台となるツールができたと思っています。今後どのようにパーパスの実現に繋げていけるか、双方でコミュニケーションを図っていきたいですね。

竹治:
会社の成長やパーパスを実現するには何をすればいいか。その道筋が見えたので実現に向けて一つひとつ必要な施策に取り組んでいこうと考えています。

──最後に、総務労務グループで今後特に力を入れていきたい取り組みを教えてください

杣野:
今回、ユニークパフォーマーサーベイというものを独自に設計し実施しました。やはりユニークパフォーマーの育成が人材戦略の要でもあるので、今後もサーベイを基軸にしながら施策の改善に取り組みたいと考えています。

杣野:
例えば、育成に関しても、中途入社の方は比較的配属部署に任せるケースが多いのですが、社内横断的な階層別研修等が必要なのではと思っています。

人材戦略や施策の設計意図を社内に向けてどのように発信するか、どうしたら理解度を深められるかも今後の課題です。人的資本開示は、社員や投資家をはじめとしたステークホルダーからのフィードバックを受けてよりよい形にブラッシュアップしていきたいと思っています。

竹治:
今年に入って総務労務グループのメンバーも増えて、積極的に施策を打ち出せる体制が整ってきました。労務以外の人事領域に携わる人たちともコラボレーションしながら、今までできていなかったことにどんどん挑戦していきたいです。

タレントマネジメントシステムを提供している会社だからこそ、そこで働く従業員の満足度が向上することで、お客様やその先の従業員の皆さんにも良い効果が波及すると思っています。それが巡り巡ってカオナビのパーパスの実現にも繋がっていく。これこそカオナビの人事ならではのやりがいだと感じます。


▼その他インタビューをご覧になりたい方はこちら
kaonavi vivivi(カオナビの「人」と「組織」が見えるメディア)


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