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こんにちは、日本XRセンター人事部のmakiです!
「見た目がリアル=体験がリアル」…そんな単純な話じゃない。
XRならではの“没入感”とは、視覚や音だけでなく、「感情の動き」まで設計されたときに生まれるものだ──
今回は、XRアトラクションやゲームの企画・演出・設計を手がけるクリエイティブディレクター/ゲームディレクターのKingさんにインタビューしました。
現実とデジタルが交差する空間で、人の心がどう動くのか。
香り、導線、UIの“間”にまでこだわる彼のディレクションには、「体験そのものをデザインする」という強い哲学があります。
「制限があるから、面白くなる」
そう語るKingさんの思考には、XRというフィールドで“記憶に残る体験”を作るためのヒントが詰まっていました。
ディレクターとしての仕事の裏側から、今後XRで挑戦したい表現まで──
想像力と技術の狭間で格闘する、クリエイターのリアルをぜひご覧ください!
ー まずは自己紹介をお願いします!
King:
こんにちは、クリエイティブディレクター/ゲームディレクターのKingです。
約15年にわたり、XRアトラクション、VRゲーム、ARゲーム、インタラクティブ展示など、XR領域の多様なエンタメコンテンツの企画・演出・開発に携わってきました。
なかでも、“実体験”と“デジタル表現”を融合させた「場所性のある体験設計」を得意としています。現実とデジタルが自然に交差する、没入感の高い空間づくりを常に追求しています。
ー 日本XRセンターでは、どんな役割を担っているんですか?
King:
クリエイティブディレクター兼ゲームディレクターとして、プロジェクト全体の「体験設計」や「演出の中核」を担っています。
単にビジュアルを整えるだけではなく、ユーザーが“どう驚くか”、“どこで感情が動くか”といった「体験の芯」をデザインすることを、いちばん大切にしています。
ー 具体的には、どんなプロジェクトに関わっているんですか?
King:
基本的に、日本XRセンターが手がけるすべてのエンタメ系プロジェクトに関わっています。
ジャンルはSF、ゾンビ、和風、ファンタジーなど幅広く、どれも「世界観づくり」が重要なプロジェクトが多いです。ジャンルが変わっても、目指しているのはいつも、「その世界に本当に入り込んだかのように感じる体験」をつくることですね。
ー CD(クリエイティブディレクター)としては、どのフェーズまで関わるんですか?
King:
ほぼすべてのフェーズに関わっています。
初期のコンセプト立案から、世界観やシナリオ設計、体験構造、ゲームデザイン、アートディレクション、そして最終的なクオリティコントロールまで、最初から最後まで一貫して見ています。
加えて、施設の空間演出や導線設計、運営オペレーション、プロモーション施策など、体験に関わるあらゆる側面を俯瞰しながら、プロジェクト全体の“クリエイティブの指針”を描いています。
ー そんなKingさんが、日本XRセンターに入社したきっかけは?
King:
これまで手がけてきたAR/VRプロジェクトでの実績を評価いただき、SNS経由でお声がけをいただいたのがきっかけでした。
お話をする中で、自分が目指す“体験設計”に共感していただき、挑戦的かつ本質的なXRプロジェクトに関われる場だと感じて、参画を決意しました。
ー もともとは、どんな分野でクリエイティブをされていたんですか?
King:
キャリアのスタートは映像業界でした。
CGデザイナーとしてCMや映画のビジュアル制作をしていたんですが、次第に映像だけでは満たされなくなって…。
そこから建築、リアルイベント、ゲーム開発と領域を広げて、AR/VRのインタラクティブ演出やUXデザインなどを通じて、“体験”のクリエイティブに向き合うようになっていきました。
ー XRの世界に惹かれた理由は、何だったのでしょう?
King:
最初にXRに触れたとき、「画面の中で表現するんじゃなくて、世界そのものを創れる!」って衝撃を受けたんですよ。
映像や空間の演出で培ってきたものを、ユーザーが“実際にその中に存在する体験”へと昇華できる。
視覚・聴覚に加えて、身体感覚や空間認識にも訴えかけられる――その表現の幅に、心を一瞬で持っていかれました。
ー Kingさんにとって、XRならではの表現の魅力とは?
King:
XRの一番の魅力は、“見る”を超えた“そこにいる”という体験をデザインできることだと思っています。
仮想空間に入り込んだユーザーは、視線も、動作も、感情もコンテンツと連動していく。ただの鑑賞者ではなく、“物語の中に存在する人”になるんです。
空間に込めた空気感や感情が、ダイレクトにユーザーに届く。
それができるのがXRの凄さだし、表現者としてこれ以上にやりがいのあるジャンルはないと思っています。
ー XR体験をつくるうえで、“見た目”と“体験”は、どう違うと考えていますか?
King:
“見た目”はユーザーの興味を引くための“入口”で、“体験”はその人の心に長く残る“記憶”だと考えています。
XRでは、ただビジュアルがきれいなだけでは不十分で、“どう動くか”“どう応えるか”といったインタラクションの質こそが、体験の感情的な深さを決定づけます。
どんなにグラフィックが美しくても、ユーザーの動きや感情と乖離していれば、すぐに冷めてしまう。
“触れて、反応して、心が動く”──そこにこそXRの価値があると思っています。
ー 空間・音・動きなど、ユーザーの五感をどう設計しているのでしょう?
King:
設計の軸にしているのは「感情の導線」です。
ユーザーがどのタイミングで驚いて、どこで安心して、いつ没入するのか──
その心理の流れに合わせて、空間・音・動きの要素を調整しています。
心理学や人間工学の知見も活かしつつ、これまでの現場経験から蓄積した「こう作ると、こう反応する」というナレッジが自分の強みですね。
想定した通りにリアクションが返ってきたとき、「あ、この体験はちゃんと“生きてる”」って実感できるんです。
ー これまで手がけた中で、もっとも“没入感”を重視したプロジェクトは?
King:
2024年11月に東京ドームさんでオープンしたバトルワールド2045です。
これは世界初のマルチプレイヤーMRアトラクションで、ゲームとしての空間デザインやストーリー構成と、実際の施設レイアウト・動線設計をシームレスに融合させたプロジェクトでした。
現実世界とバーチャル世界の境界を自然に溶かし込むように、短い体験時間の中でも無理のない没入導線を設計し、プレイヤーがスムーズにその世界へ入り込めるよう工夫しました。
アトラクションの待ち列から少しずつ世界観に引き込まれ、プレイが始まる頃には“気づけばその世界にいた”という感覚が立ち上がるような体験構造を目指しました。
おかげさまで、多くの方から「本当にゲームの世界に入り込んだようだった」とご好評をいただいています。目に見えるもの”だけでなく、“空気そのもの”を設計できた実感があります。
ー 没入感を設計する中で、ユーザーの“感情”をどう動かすかが鍵になるんですね。
では、体験を「伝える・届ける」うえで、Kingさんが特に意識していることは何ですか?
King:
一番大切にしているのは、「誰に、どう感じてほしいか」を最初に明確にすることです。
ただ自分の“作りたいもの”を形にするだけだと、どうしても自己満足で終わってしまいがちなんですよね。
「どんな感情を動かしたいのか」
「どういう記憶として残ってほしいのか」
この“体験の芯”を最初に固めておくと、企画がブレなくなるし、チーム内の認識も揃いやすくなります。
ー 「どう届けるか」だけじゃなく、「どう受け取ってほしいか」まで設計しているんですね。
具体的には、どんな部分にこだわっていますか?
King:
たとえば、UIやアニメーションの“間”や“テンポ”ですね。
これはユーザーの没入感に直結する非常に大事な要素です。
1秒の遅れが「気持ちいい」と感じることもあれば、「遅い」とストレスになることもある。
その“感情の温度差”を、ユーザー目線で何度も検証しながら、細部まで調整していきます。
XRの場合は特に、身体感覚や空間認識と密接に結びついてくるので、
単なる演出以上に“心地よさ”や“違和感のなさ”を緻密に設計する必要があるんです。
ー なるほど。テクノロジーとの距離感も重要ですね。
制限の多い中で、どうやって“表現の自由”を保っているんでしょうか?
King:
まずは、どんな制限があるのかを徹底的に洗い出します。
ハードやソフトの技術的な制約だけじゃなく、運営面・導線・プロモーション・ビジネス的観点まで全部把握する。
そのうえで、「体験のコア」は絶対にブレさせない。
それ以外の部分──表現方法や導入順序、構造──は柔軟に変えながら、ユーザーに一番届く形に最適化していきます。
制限があるからこそ、「この条件の中で、どうすれば一番響くか?」という視点が生まれる。
そこに、XRクリエイティブの醍醐味があると思っています。
制約を前提にしながらも、どう“伝えるか”を丁寧に設計していく姿勢が印象的です。ここからは、XRという領域だからこそ生まれる発想や面白さについて伺っていきたいと思います。
ー 2Dや映像と違い、“空間で感情を演出する”という感覚とは?
King:
XRにおける空間は、ただの舞台ではなく「感情そのものを封じ込める容器」だと考えています。
2Dや映像では、ユーザーと映像の関係は一方向的ですが、XRではユーザー自身がその空間の“中”にいます。
だからこそ、「いつ、どこで、何を見せるか」といった“演出タイミング”や“視覚的な導線設計”が非常に重要になります。
空間に“驚きの予兆”や“気づきのリズム”を丁寧に埋め込むことで、ユーザーの感情を空間ごと演出することができる。
その瞬間に立ち会えるのが、XRの最もおもしろい部分だと感じています。
ー 制約がアイデアを生むと感じたことがあれば、教えてください。
King:
XRの制作では、常に何らかの制約がつきものです。
たとえ最新のデバイスを使っていても、ハードウェアの性能や空間レイアウト、トラッキング精度、オペレーション条件など、あらゆる面で限界があります。
でも、その制約こそがアイデアの種になることも多いんです。
たとえば、「プレイヤーがなぜこのデバイスをつけているのか?」という問いを深掘りしたことがあります。
単に“映像を見るため”ではなく、「この空間には“特殊な現象”が発生していて、それを可視化するためにゴーグルが必要だ」という設定にしたんです。
結果として、デバイスの存在そのものが物語の“世界観の一部”として意味を持ち、体験の中核に変わりました。
XRでは、「なぜそうするのか?」を問い直すことで、制限をポジティブに転換できる。そうした瞬間がディレクターとして一番わくわくする部分でもあります。
ー ユーザーに“良い意味で予想外の体験”を仕込んだプロジェクトはありますか?
King:
XRの強みのひとつは、「ユーザーが世界を能動的に探索する余白」を設計できることだと思います。
すべてを説明しきらずに“気づかせる”ことで、記憶に強く残る体験をつくることができます。
たとえば、あるプロジェクトでは、ユーザーが空間内を探索して対象物を探す──という構成にしておきながら、実は一部の対象が“他のプレイヤーの頭上”に出現する演出を入れました。
何気なく他のユーザーと目が合った瞬間、そこに突然何かが現れる──そんなサプライズを仕込むことで、「人と空間が交差する演出」が生まれました。
視線、行動、偶然のタイミングが体験そのものになる──XRだからこそ実現できる体験だと思います。
XRならではの発想や演出が求められる中で、Kingさんのクリエイティブを支えているのが、チームとの関係性や制作環境かと思います。
ここからは、日本XRセンターでの“ものづくりのしやすさ”について伺っていきます。
ー 「このチームでよかった」と感じたクリエイティブの瞬間は?
King:
自分たちで“芯”をつくり、それを一緒に尖らせていける環境だと、日々実感しています。
トップダウンで方針が決められるのではなく、まずはプロトタイプを出して、それに対してチームみんなが遠慮なく意見をぶつけ合う。そして、それをどんどん磨いていく。
その過程には、たしかな“共同作業感”があります。自分の手で作品を仕上げているという実感があり、自然とものづくりに対する誇りが持てる。
この雰囲気があるからこそ、「このチームでよかった」と本気で思えるんです。
ー 実装に向けたフィードバックの回し方で、意識していることは?
King:
定例のテストプレイを週1回行っているほか、日々のSlackなどでも、リアルタイムで意見交換をしています。
特に意識しているのは、「抽象的な指摘ではなく、実装に直結する具体的なフィードバックを出すこと」。感覚ではなく、“行動に変換できる指摘”をするよう心がけています。
また、マイルストーンや開発スケジュールに応じて、フィードバックシートを整理・共有する体制も整えています。
実装チームとの距離も近く、プロトタイプに対する改善が即日反映されるスピード感がある。だからこそ、ちょっとした気づきがすぐに“作品の質”に跳ね返ってくるんです。
ー 提案のしやすさや、作品づくりにおける自由度の高さは感じますか?
King:
はい、強く感じています。
このチームでは、“体験として面白いかどうか”が一番の判断軸です。表面的な見栄えよりも、「なぜそれが面白いのか?」「なぜその演出が必要なのか?」という体験のロジックがきちんと説明できれば、アイデアの自由度は非常に高いです。
演出手法やジャンルに縛られすぎず、“体験”そのものをどう届けるかに集中できる環境は、とても貴重だと思います。
だからこそ、ディレクターとして挑戦しがいがあり、常にクリエイティブの手を止めずにいられる現場ですね。
制作環境やチームカルチャーが、Kingさんの発想力と表現力をさらに引き出していることが伝わってきました。
最後に、これからXRで実現したいことや、挑戦してみたいプロジェクトについてお聞きします。
ー 今後つくってみたい“体験ジャンル”はありますか?
King:
これまでアクション、ホラー、ファンタジー、SFなど、一通りのジャンルは経験してきましたが、個人的にいつか挑戦したいのは「SR(Substitutional Reality/代替現実)」という手法を使った体験です。
現実と記憶、あるいは過去と現在をシームレスに行き来するような演出は、XRの次なる可能性を強く感じさせてくれます。
たとえば、“時間”をテーマに、現在と過去の風景が瞬時に切り替わるような演出。空間・映像・心理誘導すべての要素が絡むため設計も難易度が高く、アイデアが出ても実現性を考慮してこれまでは踏み込めずにいました。でも、だからこそ挑戦する価値がある。
そのハードルの先に、これまで誰も体験したことのないような「記憶に触れる体験」が生まれるはずだと信じています。
ー XRを使って、“言葉にならない感情”をどう表現していきたいですか?
King:
XRは、言語や文化を超えて“感情そのもの”を共有できるメディアだと思っています。
だからこそ、もっと挑戦していきたいのは、「懐かしさ」や「胸騒ぎ」「居心地のよさ」といった、言葉にできない感情を演出すること。
それは派手な演出ではなく、むしろ空気の変化や、光の滲み、音の消え際など、繊細なディティールの中に宿る感情です。
そういう演出ができたとき、体験した人の心の中にふと余韻が残って、「なんかあのシーン、ずっと覚えてるんだよね」と言ってもらえる。そんな“記憶に寄り添う体験”をつくっていきたいと考えています。
ここからは少し視点を変えて、日々のインスピレーション源や、創作の裏側にある“個人としての感性”に迫ってみたいと思います。
日常の中にある「非日常」──そこから生まれる表現のヒントも、きっとXRとつながっているはずです。
ー 最近影響を受けた作品はありますか?(映画・ゲーム・VR体験など)
King:
最近では、SandboxVRのゲーム全般に強く影響を受けました。
空間構成や演出テンポ、五感の使い方すべてが洗練されていて、没入感の設計が本当に素晴らしかったです。自分の体験づくりにも、大きな刺激をもらいました。
ー プライベートでよく使っているXRデバイスはありますか?
King:
Meta Quest 3を愛用しています。
プロトタイピングから調査、体験の検証まで、幅広い用途で活用しています。
ー 休日はどのようにリフレッシュしていますか?
King:
家族と過ごす時間が、何よりのリフレッシュです。
とくに子どもと一緒に外で遊んでいると、自分の中にない視点や動きにふれることで、新しい発想やインスピレーションが湧いてきます。
また、読書や美術館めぐり、イベントへの参加などもよくします。
日常の中にある“非日常”を探しにいくような感覚ですね。
ー 好きな表現手法や、影響を受けたアーティストはいますか?
King:
光と影のコントラスト、余白のある構図、そして“間”を大切にしたアニメーション演出が好きです。
感情を押しつけず、余韻として残すような表現に惹かれます。
なかでも特に影響を受けているのは、現代アーティストのオラファー・エリアソンです。
光や霧、反射、空間そのものを使って、鑑賞者の身体感覚や記憶、感情に働きかける体験を創り出すそのスタイルに強く共感しています。
「何が起きたか」ではなく、「どう感じたか」を受け手に委ねる姿勢は、私自身の体験設計の根底にもなっています。
ー 最後に、XR業界に、今後もっと増えてほしいクリエイター像はありますか?
King:
“現場感”と“設計力”の両方を持ったクリエイターが、もっと増えてくれると嬉しいです。
見た目の美しさを整えるだけでなく、「触ったときの気持ちよさ」や「思わず身体が動いてしまうような仕掛け」まで設計に落とし込める力。それこそが、XRにおける本質的な“体験”の鍵になると思っています。
XRは、デスクの上で完結するメディアではありません。
「頭で考えるだけでなく、身体で感じながらデザインする」──そういった感覚を持ったクリエイターが増えていけば、もっと多様で、もっと人の心に届くXR表現が実現できるはずです。
ありがとうございました!
Kingさんの「身体で感じながらデザインする」という言葉が示すように、XRはまだまだ新しい可能性に満ちています。
日本XRセンターでは、これからもリアルな体験づくりに挑戦し続けます。
興味を持った方は、ぜひ「話を聞きに行きたい」からお気軽にご連絡ください。
一緒にXRの未来を創りましょう!