レジャー/アクティビティの現場で働く方々は、並々ならぬ情熱とやりがいを持っています。そんな事業者が就職先としてもっと選ばれる世の中になるために。インターンとしてジョインしてから6年、自社の成長に貢献するだけでなく、今では業界全体の地位向上を目指す田辺洋人の軌跡をたどります。
ダイビングを通して多様な人と出会い、アソビューと出会い、「本当にやりたいこと」に出会えた
「小さいころから明確な夢みたいなものはありませんでした。でも、大学時代に出会ったダイビングとアソビューの影響で、業界や世界がもっと良くなる仕事にやりがいを感じるようになりました」
そう語るのは、カスタマーサクセス・グループマネージャーの田辺洋人。彼は「大学時代をほとんど海で過ごした」と豪語するほど、ダイビングにのめり込んでいました。
「きっかけは些細なことでした。高校の部活(競泳)でお世話になった先輩が、ふと『ダイビング楽しいからやってみれば』と声をかけてくれたことです。見事にハマりました。でも、ダイビングは学生にとっては高価なレジャースポーツですよね。まともにやっていると、全然生活していけない。『だったら仕事にしてしまえばいいんじゃないか』と、週末や長期休暇に伊豆や沖縄の離島に行って、住み込みで働きながらダイビングをしていました」
ダイビングショップなどでのアルバイトを通して関わる人が増えていくと、田辺にとってのダイビングの存在が少しずつ変わっていきました。
「ダイビングをしていなければ出会っていなかったであろう人同士が出会い、交流し、コミュニティが生まれるシーンを目の当たりにする機会が多くなりました。すごく素敵な空間でしたし、将来自分もこういうことができたら楽しいだろうと感じていました」
そんな体験のさなか、就職活動の時期を迎えた田辺。周囲の学生と同じようにリクルートスーツを着て合同説明会に行くような就活には抵抗を感じ、当時増え始めていたスタートアップ・ベンチャーをメインとする募集サイトに登録したことから、アソビューの存在を知ります。
ダイビングの現場に直接入りこむことも選択肢の一つではありましたが、ITの力でレジャー・アクティビティの業界を盛り上げようとしている会社があると知った田辺は、インターン入社をすることを決意。
「ダイビングを通して出会った人たちの影響が大きいです。アクティビティのインストラクターはやりたくてやっている人がほとんど。最初は薄給ですし、『家族を養うのがやっとだ』なんて言っている人もいたのですが、都会にいるサラリーマンとは明らかに目の輝きが違うんです。
また、お客さんとして来る人たちの影響も強く受けました。ダイビングをしに来る人には富裕層がたくさんいます。その人たちから『やりたいことをやれる環境にあるならやらないとダメだ』というようなアドバイスをたくさんいただきました。
アソビューで働いていくにつれて業界の課題への解像度が上がり、ミッションへの共感も強まりました。『これ、めちゃくちゃやりたいことだな』という感覚を覚え、かつ、『来いよ』と言ってもらったので、これも1つの縁だと感じ入社を決めました」
大学時代の友人は商社や金融、コンサルなど、就職人気ランキング上位のいわば「王道」の就職活動をする中で、ベンチャー企業であるアソビューに新卒入社したのは、このような背景があったからでした。
「帰った方がいいかもしれません」新規事業への挑戦と苦難
田辺は入社3年目の2019年に沖縄へと単身移住し子会社設立、新規事業立ち上げにチャレンジしています。これは、アソビューの事業戦略のうち、バーティカル戦略にかかわる部分でした。
アクティビティに関する集客から実店舗運営、川上から川下まで全て行うというのがバーティカル戦略です。将来的に実店舗にもチャレンジすることは、兼ねてから会社として掲げていたもの。田辺は入社当初から、『チャンスがきたらやらせてください』と希望を伝えていました。
すると2019年、代表の山野のもとに、沖縄のダイビングショップのオーナーから「手放したい」という相談が持ち掛けられます。とんとん拍子に話が進み、事業譲渡が決まり、田辺に打診が行きます。
突然転がり込んだ縁をつかんだ彼は、沖縄で事業責任者としてとしてアクティビティのガイドから、予約管理、営業、総務、経理、店舗運営に関わる業務を全て担うことに。彼は英語でもコミュニケーションができるため、海外からのお客様を受け入れが可能。それがエリア内での競合優位性になり、本格シーズンには高い収益を上げることができました。
ところが、ダイビングというアクティビティはその特性上、閑散期の集客ハードルが非常に高い現状があります。田辺もそんな壁にぶつかっていました。
「実のところ、潜水資格を持っている人にしかできない仕事を受託して閑散期を食いつなぐことはいくらでもできました。ただ、アソビューのバーティカル戦略の一貫という大義名分に立ち返ると、食いつなぐだけの行動にはあまり意味がないなと。ちょうどその頃からコロナ禍となり、海外からの来客がパタッと止まってしまい……。山野さんに『帰った方がいいかもしれません』と告げました」
本社に戻るといっても、会社自体の売上が落ち込んでいる状況。当社は急きょ「事業の継続と雇用の維持」を掲げ、「在籍出向」の制度を構築していたところでした。沖縄での現場経験に加え、英語が話せる、営業職であるなどの条件とマッチしていたことから、田辺にも出向の話が浮かんでいました。
「当時は本当に『生きるか死ぬか』くらいの感じで、わがままを言って帰らせてもらう自覚もありましたから、好き勝手言っているタイミングではないと思いました。それに出向した方が自分の経験にもなると思い、すんなりと出向することを決めました」
アソビューにジョインしてから約6年の間でも激動となる出向生活のスタートでした。
1年の在籍出向を走り抜け、改めて感じた「恩返ししたい」という気持ち
田辺の出向先企業はアートアクアリウムの運営会社。2020年夏に開業予定だったため、春にジョインしてからは法人営業を担当。コロナ禍真っ最中でレジャー施設にとっては厳しすぎる状況でしたが、キャッシュを集めるべく奔走しました。
開業前後も、コロナの影響で目まぐるしく変わる状況。その中で人員不足が発生し、田辺は館長代行を任されます。予定通り開業はできたものの、オペレーションの組み立てもままならないうえ、SNSで施設に対するネガティブな情報が拡散されたためクレームが殺到するような状態でした。
「カオスすぎて、本当に大変だった」という中でも、良いこともあったと語ります。
「仲間たちが本当にいい人たちでした。割と世代も近く、業界初の試みを1から頑張ろうと集まっていて。知恵を絞り合い、時には意見をぶつけ合いながら仕事をするその環境はすごく良かったです。出向中は予期せぬ事態の連続で、これを乗り越えてきた経験は確実に自分の中で糧になっていると感じています。」
約1年間の出向終了時、出向先にそのまま残るという選択もできました。ただ、田辺にはアソビューでやりたいことがありました。
「沖縄に行き、出向に出てから約2年間、ものすごく恵まれていたと思うんです。インターン含めまだ3年しか働いてない中で、沖縄でチャレンジするチャンスをもらえて、うまくいかない中でもまた挑戦させてくれて、称賛してくれて。そこにちゃんと恩返ししなきゃと思いましたし、アソビューのビジョンの実現をしたいと心から思っていたので出向先に残る選択肢は自分の中にありませんでした」
2021年4月に戻ってきてからは、ビジネス開発部のカスタマーサクセス・グループマネージャーとして、SMB(中堅・中小企業)の遊び体験事業者の既存営業部門担当しています。15名程度のチームへのマネジメント業務が中心で、これまでのような現場の第一線での働き方とは全く異なりますが、田辺はその業務も好んで行っています。
心理的安全性をベースにしたチームづくりには手ごたえを感じている一方で、課題に挙げるのは継続的な成果の部分です。
「メンバーのパーソナリティに助けられながらいい雰囲気はつくれていると思いますが、プロフェッショナルとして成果にコミットし、目標を達成し続けることの壁の高さに直面しています。いかに結果を出し続け、成果を安定させるがマネジャーとしての自分の課題です」
夢のある業界にしたい。そのために、偶然の出来事もポジティブに受け入れる
アソビューに出会いたての頃の田辺は、「とにかくアソビューのサービスを使えば課題解決につながるから、多くの人に使ってもらおう!」という純粋な熱量で走っていました。しかし、沖縄に移住して現場経験を積んだり、アートアクアリウム時代に採用にかかわったりする中で、この業界の構造的な課題に対する解像度が上がってきたことを感じています。
「根本は人材不足なのだろうと気付きました。そこで僕が将来的に実現したいと考えているのは、就職人気ランキングにアクティビティ事業者が入る世界です。今は商社や金融、コンサル業界がランキング上位を占めていますが、アクティビティ業界の構造的なボトルネックを解消して待遇を改善し、大企業が出てくるような夢のある業界にしたいです」
また、キャリア形成の考え方についても、新卒時代とは変化があったと言います。
「就職活動のときは、過去を振り返って、自分が今までやってきたこと、できること、嬉しいと思ったことなどの共通点を見いだしていくという、今できることありきで考えていました。今は、今できることにプラスして『今後何ができたら、キャリアの選択肢が広がるか』という考え方になりました。今できることに閉じて考えなくなったことが大きな変化です」
田辺が大切にしているのは「プランドハップンスタンス(Planned Happenstance:計画的偶発性理論)」。キャリアには偶然の要素が大きく関わってくるため、偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながるというものです。
目の前に予想しなかったキャリアの転換が訪れたときに、拒絶せずに一旦やってみる。その結果、点と点が線となり、キャリアを形づくっていく。そんなマインドで取り組んできた自負を語りつつ、田辺は今後の目標を掲げます。
「直近の目標の1つは上場に貢献することです。今、SDGsの考え方が広まり始めていますが、自然や文化、人とのコミュニケーションなどにフォーカスしたアソビューのサービスは、大量生産大量消費を前提にしていません。そのような会社が上場することによって発信できる社会へのメッセージはたくさんあると思います」
個人としてのキャリアゴールは特に定めていないという田辺。彼にあるのは、「就職人気ランキングにランクインさせることにつながるなら職種や方法は問わない」と強い信念。ダイビングから始まったアクティビティ愛を胸に、ビジョンの実現へと邁進します。