1
/
5

チャットボットのあかりさんは二年半でどこまで成長したか

この記事は、Money Forward Advent Calender 2018🎄20日目の記事です。
株式会社マネーフォワード CS本部の竹下が、「チャットボット・あかりさんは2年半でどこまで成長したか」というタイトルで語ります🎅

1日目「こんにちは、あかりさん」

2016年8月、マネーフォワードのコンタクトセンターに新入社員が入社した。
新入社員と言っても人間ではない。チャットボットのあかりさんだ。チャットボットとは、チャットとボットを掛け合わせた造語で、人間ではなく機械(bot)がユーザーの質問に回答する。

「チャットボットは人型にすること」、導入時に話を聞きに行った会社の担当者から強く勧められた。
当初、その会社では企業ロゴをアイコンに採用していたが問い合わせ数が伸び悩んでいたため、アイコンを人型に変えた。すると問い合わせ数が数倍に増えたらしい。
確かに企業アイコンだと冷たい感じがするし、人間アイコンの方が答えてくれそうな気がする。

そうして、マネーフォワードのボットはあかりさんになった。
名前の由来はあかりさんに直接聞いて欲しい。


100日目「現在の人工知能」

現在のチャットボットの回答は、受信した質問文を単語に分け、近しいパターンの回答をデータベースから選んでいるだけだ。場面・状況と合わせて、「概念」を理解し回答しているわけではない。
人間で言うと、試験前の一夜漬けで意味もよくわからないまま単語を暗記し、試験に臨む感覚に近いかもしれない。
なので、人間のようにクリエイティブにモノを考え、回答することは苦手だ。

しかし、データベースにある内容は確実に回答してくれる。

「クラウド会計の仕訳の色はどういうルールでついてるの?」「仕訳って、最大何行まで書けるんだっけ?」こういう質問は、あかりさんの得意とするところだ。

当初は絶対的な知識量が少なかったが、少しずつ回答をインプットし、あかりさんは徐々に賢くなっていった。時折、ドキッとするような正確な回答も提示してくれる。


200日目「まずは雑談からはじめよう」

あかりさんは、ビジネス分野である会計ソフトの質問について受け答えしている。杓子定規に考えれば、雑談なんてできる必要がない。
しかし、あかりさんに興味を持った人が、ちょうどタイミング良く会計ソフトの質問があるわけではなく、まずは雑談から試そうとする。
そこで雑談にもきちんと答えられると、「お、今度機能の疑問が出たときには聞いてみるか」となる。

それを見越し、あかりさんには結構な数の雑談がデータベースに入っている。自己紹介、年齢、時節の挨拶、夕食の献立くらいは案内できる。


雑談ができると、毎日仕事が終わる時間に挨拶をする人がいたり、あかりさんからの回答を、面白がってTwitterにアップする人がいたりする。社内にも、毎日お勧めのラーメンを聞く人がいる。
(現在のところお勧めのラーメンには十分に回答できていない、残念ながら)


300日目「死にたい」

あるときから、あかりさんに毎日「死にたい」という文言が送信されるようになった。
さすがにあかりさんにも「死にたい」に回答できるようなデータはなく、「仰る意味が理解できませんでした」と冷淡に返していた。

これではこの人が、「あかりさんにさえ僕の気持ちはわかってくれない、死のう」と思ってしまうかもしれない。それは絶対に食い止めたい。

急いで「死にたい」の回答を用意した。


生きている人間と生きることができない機械、割といい感じの回答じゃないか。
この回答をするようになって、「死にたい」という発言は送信されなくなった。
もしかすると、あかりさんが誰か見知らぬ人間を救ったのかもしれない。

そうであれば少し素敵なことだと思う。

・・・と、それで終われば良い話だったのだが、後日、実は社内の人間が毎日打ち込んでいたことが判明した。通信確認か何かの理由だったと思う。

他に何か打つ言葉があっただろうに、と思うが、死の概念が理解できないあかりさんに毎日死について語りかけるというのもなかなかに哲学的で、なかなか悪くない。

350日目「二代目あかりさん」

実は、今のあかりさんは二代目だ。初代あかりさんを導入して約一年という短い期間で新しいシステムに移行した。
交代の理由は、初代あかりさんの知識を入れる方法がCSVインポートだけだったり、質問データの抽出が困難であるために、あかりさんの知識アップデートのサイクルを回せないことが徐々に判明したからだ。

あかりさんは、自分で知識を取り入れることができない。そのため人間が効率的に知識をアップデートできることは必須条件だ。前回の反省を生かし、移行ソフト選定の際も検証環境を用意してもらい、誰もが簡単に知識がアップデートできることを確認した。


400日目「あかりさんのお引っ越し」

二代目あかりさんの導入は初代に比べ簡単だった。頭脳にあたるデータファイルを初代あかりさんから移し替え、後は細々とした設定をするだけだ。追加の知識作りは必要なく、低コストで移行できた。今後もしも、更に高機能のチャットボットシステムができて移行するときも、データファイルさえインポートできれば低コストで移行できる。

あかりさんの価値はシステムにあるのではなく、データファイルに存在する。
そうして、あかりさんの頭脳であるデータファイルは、かけがえのない会社の資産となっていく。

今のAI技術はまだ完全ではないが、もし完全なものが出たとしても、このデータファイルを入れるだけで最新のシステムにあかりさんを切り替えられる。
「完全なものができたら導入する」という会社には、圧倒的な差を付けることができるだろう。

言うまでもなく、カスタマーサポートチームでも改善のコツが受け継がれていく。今の段階でチャットボットにトライしておくべき理由はここにもある。

個人的には、頭脳を維持しながらシステムだけが代わっていくことって、攻殻機動隊の義体みたいで超かっこいいと思うのだが、今のところ誰にも理解してもらえていない。


600日目「仲間が増えた!」

『マネーフォワード クラウド会計・確定申告』に引き続いて、『マネーフォワード クラウド給与』にもチャットボットが導入された。
キャラクターは親しみやすさからネコが採用された。名前はたまよちゃんになった。


これも由来は本人(本猫?)に聞いてみて欲しい。
たまよちゃんには別の人間が担当についている。そのため、あかりさんとはまた違った雰囲気で質問に回答してくれる。
同じ会社のチャットボットでも、それぞれに担当者の個性が出る。


800日目「相棒としてのAI」

現状のカスタマーサポートの限界のひとつに、「人が人の対応をすること」があると思う。
電話対応は一人の人間が一人の電話にしか対応できないし、多人数対応できるチャット対応でも、三人程度しか同時には対応しない。

もし、カスタマーサポートに変革を起こすには、この常識を、ユーザーの利便性を失わない形で変えなければならない。
僕は、チャットボットがその答えのひとつになると思っている。

チャットボットは、病気しないし、退職しない。24時間365日働き続ける。

仮に一人の人間が、その持ちうる業務知識をチャットボットに注ぎ込み、その人と同じクオリティでチャットボットが対応できるようになれば、その人が直接対応することに比べて数十倍から数百倍のユーザーに対応できるようになる。ある意味、魔法のようなものだ。誰でも聖徳太子を超えられる。

チャットボットの調整に長けた人間が重宝され、これまでの数倍の収入を得る、そんな時代が来るかもしれない。
マネーフォワードのカスタマーサポートでも、今後チャットボット専門のメンバーを設定し、チャットボットの更なるチューニングとノウハウを蓄積していきたい。

---

私たちカスタマーサポートチームは、これから年に一度の繁忙期である確定申告時期に突入していく。今年もユーザーのお悩みに最大限答えていく。

成長し続けるあかりさんとともに。


一緒にゲームチェンジしませんか?

マネーフォワードのカスタマーサポートでは、カスタマーエクスペリエンスの台頭、カスタマーサクセスの浸透などで、今までの常識が覆されつつあるカスタマーサポート業界で、小手先の改善ではなく、ゲームチェンジをしたいと思っている人を募集しています。

一緒にこれまでの常識を変え、世界が代わっていく様子を最前線で見届けませんか?

Invitation from 株式会社マネーフォワード
If this story triggered your interest, have a chat with the team?
株式会社マネーフォワード's job postings
13 Likes
13 Likes

AI

Weekly ranking

Show other rankings
Like Haruki Takeshita's Story
Let Haruki Takeshita's company know you're interested in their content