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2019年の初配信から快進撃を続けるカヤックのハイカジチーム(ハイパーカジュアルゲームチーム)。2022年8月には、全タイトル累計5億ダウンロードを達成! ハイカジチーム立ち上げメンバーのひとりであるデザイナーの越後さんに、世界中で愛されるヒットタイトルの制作現場の様子を教えてもらいました。一般的なUIデザインの領域から飛び出した、マルチクリエイターとしての仕事ぶりやその面白さ、ハイパーカジュアルゲームならではのデザインの特徴とは......?
越後 壮平
1986年生まれ、2013年入社
ゲーム事業部/デザイナー
趣味は献血・キャンプ・クラフトビールです
たった4人の放課後プロジェクトから始まったハイカジチーム
ー本日はゲーム事業部のハイカジ(ハイパーカジュアルゲーム)チームで活躍されるデザイナーの越後さんにお話をうかがいます。まず、ハイカジチーム立ち上げまでの経緯を教えてください。
転職前はアプリやサイトデザインをしていて、カヤックへ中途入社して9年目になります。いくつかの部署を経て、ゲーム事業部で長期タイトルの運用を担当していました。その頃から、部活みたいに就業後になると会議室に何人かで集まって、ハイパーカジュアルゲームづくりを楽しんでいたんです。そこがハイカジチームの出発点ですね。
ー少数の有志による“放課後プロジェクト”だったそうですね。越後さんはどんな思いで参加していたのですか。
「自分が好きなゲームをつくって当てたい」と思っていました。以前、ゲームチームに声をかけてもらって配属された新作タイトルが約半年でクローズしてしまい、なんだか申し訳ない気持ちがあったこともひとつの理由です。それに、4人で事業を立ち上げたらめちゃくちゃかっこいいな、という野心もありました。
ハイパーカジュアルゲームは、ゲーム自体がシンプルゆえにアイデア勝負です。それがすごく苦しいけど、面白い部分。ただ、基本的に何百回もテストして当たりが出るのを待つようなビジネスモデルなので、一回つくってダメだからと捨てるのは勿体ないんです。そこで、会社に黙ってプロトタイプまでつくって、「もう市場テストできる段階だから、アプリをリリースさせてください」と、当時のプロデューサーが役員会に談判してみたんです。半年後に結果が出なかったらチームを解散します、という条件でした。
ーなんと半年以内に、『Park Master』が大ヒットしたんですよね。
そうなんです、そのヒットが無ければ今は無い。メンバーも本業から少しずつハイカジチームにリソースを割いていくようになり、つくっては試しを繰り返しながら形になっていきました。あの人たち何か動いているよね、という空気から、2019年の終わりには利益を数字で明確に出せるようになっていきました。
▲線をなぞり車を駐車させるハイパーカジュアルゲーム『Park Master』。2019年にリリースし、2020年には、日本・アメリカ・ヨーロッパ6カ国・カナダ・オーストラリアでも無料ダウンロード1位を獲得
デザインの領域から広がるキャリア
ーカヤック・ハイカジチームのゲーム制作工程について教えてください。
ハイパーカジュアルゲームの特徴をざっくり言うと、ルールや要素が非常にシンプルで、誰でも気軽に遊べること。制作も短期開発で、すぐ実装してリリースしながら市場テストをして進めていくんです。カヤックでは、たいてい二週間に一度のペースで実装しています。
ーハイカジチームはどのような職種が集まっていますか。
基本はUnityエンジニアが多いです。専業のプランナーはほぼいなくて、ハイパーカジュアルゲームのランキングを見ながら、全員で企画を出しています。
カヤックのハイカジチームは、常に企画のストックが何百案もあります。みんながボコボコとアイデアを出してくるんです。実装したアプリを試していくうちに「当たりそうなアイデア」が肌感で身についてくるんでしょうね。
ただ、出したアイデアがずっと実装されないとそれが当たるのか見定められず、経験値も全然貯められないので、最近は自分でも実装するようになりました。
ー越後さんの肩書きはデザイナーですが、企画も実装もするのですね!
はい、企画も出すし、簡単な実装もやっています。自分でつくれば、考えが合っていたのか間違っていたのか市場テストでちゃんと分かるようになるので。
ーそうすると、ハイカジチームにおけるデザイナーの役割や仕事内容は、一般的なUIデザイナーとはかなり異なるのですか。
手を動かす範囲が全然違いますね。ハイパーカジュアルゲームの場合、いわゆる一般的なUIデザインが必要な領域は、1割程度かもしれません。どちらかと言うと、複雑な設計をするよりもシンプルにつくるゲームなので。ガチャも無いし、アイテム強化も無いし、お問合せフォームも無いですし。
今は、実装化された時にデザインを入れる以外に、企画、アプリ内ステージの制作、レベルデザイン、AfterEffectでの動画広告の制作や3Dモデリング、Unityでのプログラミングにも手を出し始めていて、何屋か分からなくなりつつあります。
ーマルチクリエイターとして広い領域で活動されていますが、独学でなんとかなるのでしょうか......?
領域外のスキルに関しては、周囲に教えてもらいながら覚えました。声をかければちゃんと教えてもらえるので、ありがたいです。デザインにとどまらず、スキルを広げることができたと思います。
あえて要素を絞り、瞬時に伝わるデザインを意識
ーハイパーカジュアルゲームは、デザインの仕方にも何か特徴があるのでしょうか。
ハイパーカジュアルゲームはプレイ中に動画広告が流れて、そこから人を呼んでくるビジネスモデルなのですが、広告は3秒でスキップできるようになっています。3秒でゲームの内容が分かって、「このゲームの方が面白そうだな」と思わせる動画広告の見せ方が必要になります。そこがデザイナーの腕の見せどころだと思います。
ー3秒の広告なら、文字も読めないですね! 一瞬で伝わるデザインが求められる。その他には何かありますか。
すごい衝撃を受けたのは、リッチな見た目にしたら、ユーザーが減少してしまったことです。デザイナーとしてはとてもびっくりしたことのひとつです。
検証できてはいませんが、リアルな人のモデルを入れたので「こんなにリアルなキャラクターを動かすなら本格的なゲームだろう」と思われてしまったのかもしれません。隙間時間に楽しめて、好きな時に止めたり再開できたりすることを求めているユーザーには、「複雑そう」という印象を与えない方がいいのではないかと考えています。
ー越後さんにとって、ハイパーカジュアルゲーム制作の面白さや魅力はどんなところにありますか。
先ほどの例もそうですが、デザインの見た目に対して、はっきり数字で返ってくるところが面白いです。
例えば、『Park Master』 の広告の背景に景色を入れていたのですが、森や砂浜や雪景色など試していくうちに数字が良くなりました。最初は季節要因だと思っていたら、結局、ベースのアスファルトだけの背景無しのパターンが一番反応が良かった。良かれと思って背景を増やしたのですが、ハイパーカジュアルゲームのデザインはとにかくシンプルであることが大事なんだ、と実感しました。
なぜ背景無しが求められるのか、と突き詰めていくと、『Park Master』の面白さは、車を動かして失敗すると車がクラッシュして飛んでいくシンプルさなんです。ミスをしてもコミカルで楽しい、それで全米1位になっているんです。
チームメンバーの言葉を借りると、「失敗が面白いゲームが伸びる」。だから、それ以外の要素を感じさせてはいけないんだと考えました。余計なものを見せると、その分効果が落ちてしまう。ここで感じた「要素を絞る」原則が、驚きとともに僕の中に刺さっています。
ー「要素を絞る」原則。デザインって、足し算や掛け算のイメージがありました。
極端な話、要素を追加すると離脱されてしまうことがあります。『Park Master』のUIなら、駐車場と車だけでもう成り立っているんです。「これは車を停めるゲームです」と一瞬で伝えている。
1対1のゲームルールなら、1対1の関係を持つモチーフだけを持ってこないと、理解を妨げてしまいます。だから、ユーザーを迷わせないで、ゲームをすぐに楽しんでもらうことにフォーカスした設計が必要になります。そういうことから考えると、自分で企画書を書くしかないんですけれど、笑。
世界の5億人に届ける、広く浅く緻密なゲームづくり
ー先ほど、全米1位というワードも出ましたが、2021年には、カヤックが日本のハイパーカジュアルゲームにおける企業DL数No1に輝いたそうですね。なぜ快挙を続けられるのでしょうか。
二匹目のドジョウは狙わないところが、カヤックの強みかもしれません。普通はひとつゲームが当たると同じようなものを何個もつくることがあると思うのですが、ハイカジチームのメンバーは「新しいものをつくっていきたい」という人が多いのだと思います。自分達が面白いと思えるものを、ただ追い続けている。
でも、新しく入ったメンバーは面白くつくり込みすぎて失敗することもあります。「ずっと温めていたこのゲームシステム、絶対面白いんですよ!」と意気込んでいて、たしかに遊ぶと面白いけれど、ハイパーカジュアルゲームにしては複雑すぎて市場に受け入れられない、ということも多々あります。
ー他にハイカジチームが大事にしていることはありますか。
検証し、データで測ることですかね。「ABテストで勝たないものは入れてはいけない」という鉄の掟がある。テストの結果、僕が知らないうちにデザインが変わっていることもあります。ユーザーが求めているなら、僕はそれでいいと思います。それに、ABテストさえ通れば、逆に何をしても自由なところも面白いですね。
ー事業上、難しいと思う部分はどんなところですか。
ハイパーカジュアルゲームはユーザーの入れ替わりが早いので、スピーディーに新しいタイトルをリリースし、ヒットを出し続けることが求められます。ヒットが出ないと本当に辛いですね。どれだけテストをしても当たらないという暗黒時代もあります。
試して壁にぶつかって、また試す。この繰り返しが続くので、向いている人、向いていない人がはっきりするかもしれません。
また、ハイカジチームでは、アプリをグローバルローンチさせるためには何ができるのかを、数字を見ながら自分で理解して、自走していくことを求められます。もし僕がデザインの領域しかやらなかったり、ただ指示を待つスタンスだったら、面食らう職場だと思います。会社やチームの売上になることは、何でも試そうと走り回る必要があるんです。
ー自ら動いていく必要があるんですね。短期開発という面ではスピード感も必要そうです。
基本的に仕様書が無いですからね。ハイカジチームはゲームチームの中でも一番出社率が高いチームなのですが、その場で話し合ってすぐ実装するんです。そういうフットワークの軽さがハイパーカジュアルゲーム制作のスピード感。2週間に1本テストしようと思ったら、仕様書を書いて読み合わせる時間がもったいないんです。
ー最後に、ハイパーカジュアルゲームの仕事に興味がある人へ、ひとことお願いします!
僕は「誰かの人生を動かしたい」という思いがあって、クリエイターをやっています。そういう視点で見ると、「ものすごく広く、浅く、いろんな人をちょっと楽しい気分にする」ことに振り切っているのが、ハイパーカジュアルゲームの魅力だと思っています。
カヤックのハイカジチームがつくった全11タイトルは、 累計5億ダウンロード(2022年8月発表時点) を突破しました。普通に生きていたら世界中で5億人と触れ合うことは不可能だけど、これがハイパーカジュアルゲームだと可能になる。ありがたいし、すごいことだな、と思います。
▲1作目の配信から2年9ヶ月で達成した快挙。世界のアプリダウンロード数ランキングにおいて、アプリダウンロード数年間ランキングの日本企業1位を獲得し、「Sensor Tower APAC Awards 2021」の“ベスト・ジャパニーズハイパーカジュアルパブリッシャ賞”を受賞(2021年Sensor Tower発表)
ハイパーカジュアルゲームについて「ものすごく広く・浅く」と前述しましたが、ハイパーカジュアルゲームのデザインについては、よく「ファーストフード」に例えて話をします。
一般的に、デザイナーが目指すのは、使いやすい設計やきれいなグラフィック、ユーザーの声を反映した改善など、ていねいにつくられたプロダクトを提供する「高級料理のシェフ」だとします。
それに対して、「ファーストフード」は一見シンプルであまり工夫が無いように見えるかもしれません。でも、注文後数分で出てくるスピード感や、手頃な価格のための仕入れ構造を実現するに至るまでは、ものすごい手間が隠れている。ハイパーカジュアルゲームも同様で、一見シンプルなゲームの裏には見えない工夫が凝らされていて面白いんです。
ハイパーカジュアルゲームをつくりたいと願うデザイナーが、もっともっと増えると嬉しいです。
僕の肩書きはデザイナーですが、いつか自分で企画も実装もしたハイパーカジュアルゲームで当てたいですね。きっと難しいと思いますが、これからの大きな野望です!
カヤックサイト インタビューより引用- https://www.kayac.com/news/2022/09/interview_echigo2
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