こんにちは、2022年現在、freeeでプロダクトデザイナーをやっている96(クロ)です。
最近、freee社内で関係者向け(主に従業員向け)に販売されたスウェットのデザインをしたので、それについて書いてみます。
社内で販売されるスウェットって何?
freeeは創業当初から、freeeのロゴ入りTシャツを着る文化がありました。当初はTシャツだけだったのですが、さすがに冬にTシャツというのは厳しいので、ロゴ入りパーカーやスウェットも作るようになりました。
ただ、Tシャツと違って、パーカーやスウェットは丈夫で長持ちしますし、作るのにかかるお金もTシャツに比べて格段に…ということで、大量に作って毎年配るというのではなく、希望者を募って購入してもらう形に変化していきました。
近年は、毎シーズン、freee内のムーブメント研究所※で企画を考え、パーカーやスウェットを受注生産しています。
※ムーブメント研究所:freeeで人事総務を扱う部署
経緯
で、今期のfreeeパーカー・スウェットについては、freeeロゴが大きく入った定番のタイプともう2枠、計3種類のウェアを用意するという事になり、2枠の中の1枠が僕の所に来ました。
僕が話を聞いた時点では、担当する枠でどういうのを出すのか、企画が固まりきってはいなかったので、ムーブメント研究所のメンバーと色々議論しながら決めて行きました。
企画
最初は今まで通りプロジェクトチーム内でデザインを決めて出すという方向だったのですが、福利厚生の一環として会社からの補助が出るのである程度安くなるとはいえゼロにはならないので、お金を出してもらう以上、多くの人に欲しいと思ってもらえる物にしたいと思い、複数のデザインを作って投票によって最終デザインを決めるという方式を取ることにしました。
日本だとモーニング娘。から始まった(?)、アイドルオーディション番組のような感じですね。選考プロセスに参加したり見たりしていると、思い入れも生まれたりして、楽しめるのではと考えました。
また、投票によって絞り込まれるとはいえ、できるだけ広く好みに応えたいということで絞り込むデザインを2案にし、1デザインにつき多色展開をするということにしました。
- 予選:10案で投票をしてもらい5案に絞り込む。期間は1週間
- 決勝戦:5案で投票をしてもらい2案に絞り込む。期間は1週間
- 受注生産:2案でそれぞれボディカラー複数色を用意し、大人用S~XXL、子供用90~140のサイズ展開をする
デザイン検討
複数デザインを作るとなると、より幅があった方が良いだろうと考え、同じプロダクトデザインチームにいるYASさんに声を掛け、2人でデザイン案を作って行きました。
実は、以前から、freeeが好きでfreeeロゴも好きなんだけど、企業ロゴが大きく入っているTシャツは恥かしいので、freeeロゴが大きく入っているfreeeTシャツとかスウェットとかを外では着れない…という意見を何度も耳にしていて気になっていたのもあって、今回、そういう人達も着られる物に作りたいなと思いました。
ということで、我々が用意するデザイン案は、プライベートな時間に外でも着れる物にするために、パッと見、企業ロゴ物のスウェットには見えないように、街中で目立たず溶け込めるようなデザインにしようと考え、あえてよく見かけるデザインを模す形にすることにしました。
パッと見、よく見かけるタイプのデザインだけど、よく見たら実はfreeeという感じで。
デザイン案
色々案を出し、絞込み、最終的に投票対象の候補として用意された案は以下の10案になりました。
01.カレッジ古着系
02.アメフト古着系
03.ノルディックセーター
04.プロダクトツバメ並び
05.シンプルツバメ
06.ブランドイラストキャラ並び
07.ミッションタイポグラフィ
08.そろばん写真
09.スーツだまし絵
10.クラシックツバメ
予選
社内のSNSで呼び掛けをして、Googleフォームで投票してもらいました。
予選の投票は、人気の傾向で絞り込む為に、1人何案でも投票可能にしました。1週間の投票期間を経て10案から上位5案に絞り込まれます。
投票期間が終わってみると、投票者数が265人と事前の予想を越える多くの人達に投票をしてもらえました。
結果は以下。
投票結果
- 1位:03.ノルディックセーター(126票)→決勝進出
- 2位:10.クラシックツバメ(111票)→決勝進出
- 3位:01.カレッジ古着系(92票)→決勝進出
- 4位:07.ミッションタイポグラフィ(65票)→決勝進出
- 5位:04.プロダクトツバメ並び(54票)→決勝進出
- 6位:05.シンプルツバメ(52票)
- 7位:02.アメフト古着系(50票)
- 8位:06.ブランドイラストキャラ並び(35票)
- 9位:08.そろばん写真(33票)
- 10位:09.スーツだまし絵(9票)
個人的には、「02.アメフト古着系」には、結構思い入れがあったので予選落ちという結果に枕を濡らしましたが、これが民意ならいたしかたありませんw
「09.スーツだまし絵」が10位というのは、まぁ、そりゃそうですよね…という結果に。でもこれ、キッズが着てたら絶対可愛いはず!って思うんですけどね…。
決勝戦
今回も社内のSNSで呼び掛けをして、Googleフォームで投票してもらいました。
予選で絞り込まれた5案に対し、決勝戦ということでシッカリと絞り込む意味で、1人1案のみ投票可能としました。
決勝戦も投票期間は1週間。ここでの上位2案が最終デザインとなり、商品化されます。
結果は以下。
投票結果
- 1位:03.ノルディックセーター(58票)→商品化決定!!
- 2位:10.クラシックツバメ(56票)→商品化決定!!
- 3位:01.カレッジ古着系(40票)
- 4位:04.プロダクトツバメ並び(22票)
- 5位:07.ミッションタイポグラフィ(19票)
終わってみれば、予選の順番とほぼ同じ。ノルディックセーターとクラシックツバメ、強かった…。これまた個人的に思い入れの強かったカレッジ古着系が3位で落ちてしまったのは残念ですが…(以下略)。
受注開始
デザインが決まったということで、ムーブメント研究所(freeeで人事総務を扱う部署)が、注文ページを作ってくれ、注文受付が開始されました。
注文受付期間が終わり、集計したところ、
- ノルディックセータータイプ:大人用237点、子供用80点の計317点
- クラシックつばめタイプ:大人用213点、子供用22点の計235点
- 合計:552点
という、予想以上に多くの注文が集まる結果となりました。(いやぁ…良かった…)
振り返り
みんなで選ぶ投票形式にしたことで、よりfreeeメンバーの好みに合わせたデザインができ、多くの人に購入してもらえるようになったのかもしれません。
当初、企画を持ちかけられた際には、デザイン1案出して終わりというような内容でした。でも、freeeの大事にしている「マジ価値※」を考えて行った結果、複数案を用意し、しかも選ぶプロセスを参加型にし、最終的に出すデザインも2案にすることになり、単純に手間という点ではかなり膨らむ事になってしまいました。(管理コストが増えるにも関わらず、ムーブメント研究所のみんながノリノリで一緒にやってくれたのはありがたかったです)
※マジ価値:本質的(マジ)で価値ある=ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをするということ
従業員向けにグッズ類を作っている方々、手間は少しかかりますが、こういうアプローチもありますので、良かったらやってみてくださいませ。
ちなみに…
先に書かれていた、
で、今期のfreeeパーカー・スウェットについては、freeeロゴが大きく入った定番のタイプともう2枠、計3種類のウェアを用意するという事になり、2枠の中の1枠が僕の所に来ました。
の、残りのもう1枠は、freeeでカスタマーサクセスをやっているhiroさんが中心になって、我々とは全然違うアプローチの物を作っていました。
制作秘話(秘話?)をhiroさんが書かれているので、よかったらそちらもご覧ください。
蛇足
最後に、ちょっとお堅い話をしてみます。
企業が、自社ロゴ入りのTシャツなどを従業員に配り、着てもらうというのは、従業員に歩く広告になってもらうという事になります。それは良いとか悪いとかではなく、PR手法の1つということでしかなく、それによって少なからず企業の認知が広がりますし、多く場合、従業員もそれを同意の上で着ているものだと思います。
そして、お揃いの服を着るということで、チーム感、一体感が生まれるという効果もあります。スポーツチームや部活、イベント関係でよくやられていることです。ただ、これには危険性もあります。
例えば、みんなが同じ物を着ているということでそこに排他的な雰囲気が生まれ、着ていない人に疎外感を感じさせてしまったり、着るか着ないかで仲間なのかを測られる踏み絵のように見えてしまったりする事があるのです。
もし、広告塔の役割を負ってもらうということではなく、自社へのエンゲージメントを高めたいと考え、企業ロゴT入りのTシャツ等を配ろうとするのであれば、一旦、立ち止まり、どうしたら従業員の人達が自社に対して親しみを感じてくれるのだろうか? どうしたら自社に対して感じている親しみをブーストできるんだろうか?という視点で、考え直すことをお勧めします。
プライベートな服で何かのブランドのロゴ入りTシャツを着るというのは、そのブランドへのエンゲージメントが一定以上ある結果の1つです。ブランドのロゴ入りTシャツを着ることでエンゲージメントが発生するわけではありません(厳密に言うとそうじゃないケースもあるのですが)。エンゲージメントが低い状態であれば、そもそもその服を買って着るということがありませんし。
そして、エンゲージメントが一定以上あったとしても、みんながみんなブランドのロゴ入りTシャツを着るわけでもありません。
(かく言う僕自身も、業務で必要な場面以外ではfreeeのロゴの入ったTシャツを着ていません。それはfreeeに対してエンゲージメントが低いわけでなく、エンゲージメントの高さをロゴTシャツを着ることで表現するタイプではないからというだけです。と言っても、業務上必要な時に着ているのは、嫌々ではありません。必要だと考えれば、主体的に着ていますw)
今回、デザインする事を引き受ける事にしたのは、自社ロゴの入った服を着るか着ないかという二者択一の状況を緩和し、「着る」ということにも幅を持たせる事で、従業員の趣味嗜好の多様性を少しでも受け止められるようにし、企業ロゴTシャツで窮屈に感じてしまう人を減らしたいという意図もありました。そして、それは、きっと、エンゲージメントの高さを表現するか否かで人を振り落とすことを減らし、エンゲージメントが高まる人を増やしていけるはず。
なんだか最終的にめんどくさい話になってしまいましたが、こんな風に考える人を増やしたいなと思って、ちょっとでもキッカケになればと書いてみました。