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このnoteでは、僕らが2021年から2022年にかけておこなった「オペレーション改善」についてまとめています。
当時は1年間かけて、とにかく全力でオペレーションを作り込みました。そのときあった仕組みやルールのほぼすべてを、ゼロベースで見直して変えていきました。
その結果、単月の売上を1年で「6.75倍」まで伸ばすことができたのです。
数千万円だった売上は、数億円規模になりました。
なぜ、短期間でそれほどの成果を出すことができたのか?
今回はノウハウの棚卸しも兼ねて、オペレーション改善のポイントを振り返ってみたいと思います。当社のメンバーはもちろん、事業責任者やマネジメント職の方にとっても役に立つ内容になっていればうれしいです!
なお、ここから書く内容はオペレーション改善にフォーカスしていますが、6倍という期待以上の結果を残せたのはそこに「メンバーの頑張り」がかけ合わさったからだと思っています。それも念頭におきながら、ぜひ読んでいただけると幸いです!
そもそもなんの会社なのか
具体的なオペレーションの話をする前に、僕らのビジネスについて簡単にお伝えしておきます。
僕たちプレックスは、物流や建設、製造などの「インフラ産業」に向けて、「採用支援」「SaaS」「M&A仲介」の3つの事業を展開している会社です。
いまは創業6期目。もともとは「物流業界に特化した人材紹介事業」で起業し、徐々に支援できる範囲を広げてきました。
今回の記事で扱うのは、創業5期目のころ。主軸事業である人材紹介事業の、ある事業部を立て直したときのお話です。
コアメンバーが退職しかけ、立て直しを決意
「最近の会社の雰囲気は、正直、好きじゃない」
「このままの環境が続くなら、今後について一度考えようと思ってます」
2021年の12月、あるメンバーからこう告げられました。創業時から会社を支えてくれている、とても実力のあるメンバーからです。
僕は焦りました。
当時、僕は新規事業の立ち上げをしており、人材紹介事業からは離れていました。人材紹介には創業直後だけ関わり、それ以降は責任者に運営を任せていたのです。
一体何が起こっているのか。
相談を受けたメンバーに話を聞くと、どうやら組織の状態がよくないようでした。「これは今すぐにでも立て直さないと、大変なことになる」と感じました。
個人的には、人材紹介事業に関わるのは2年ぶり。正直とても不安でしたが、大事なメンバーが離れていってしまうのは何よりも避けたいことでした。
「とにかく全責任を取って状況をよくするしかない」と覚悟を決め、当時の担当者にも話をして、事業に入ることになりました。
妙に静かなオフィス、上がらない成果……
当時の事業部の雰囲気は、決していいとは言えませんでした。
表立ってギスギスしているわけではないのですが、妙に「静か」なのです。
売上数字もみんな「普通か、それより少し下」で固まっている状態でした。「圧倒的に成果を出している人」がいなかった。僕の感覚ですが、通常の運営ならもっと数字がばらけるはずなんです。上振れしたり、下振れしたりするはず。
「これは何かがおかしいな……」と思いました。
メンバーの話を聞いていくと、次のような状況が見えてきたのです。
ルールが強く決まりすぎていた
まず、当時の事業部には、過去数年で作り上げてきた不要なルールがいろいろ存在していました。その場その場に対応するためにつくったルールをうまく棚卸しできず、そのまま残っていたんです。
その結果、不要な動きが多数生まれ、生産性が下がっていました。
当時から、オペレーションやルールへの意識が高いチームではあったんです。ダッシュボードで数字を可視化するなど、仕組み化は徹底されていました。
ところが、そのルールや仕組みは「生産性が低いまま」の状態で固めてしまったものだった。
さらに、ルールを重視し過ぎて「ルールからはみ出たらダメ」という雰囲気もできていました。メンバーに「これ、なんでこうしないの?」と聞くと「あ、それはルールで決まってるんです」と返ってくる感じでした。
言っても変わらない雰囲気だった
生産性の低い状態で、ルールが固まっている。なかには、そのことに気づいているメンバーもいました。
ところが「こうしたほうが効率的じゃないですか?」と上司に言っても、なかなか変わらない。とにかく「ルール通りに動いて」と指示をされます。
そういう経験が積み重なった結果、
「本当はこうしたほうがいいと思うけど、変えるの大変だしな…」
「やらないほうが得だよな…」
という空気が生まれていました。
結果的に、新しいことをやる人がいなくなってしまった。「動かない組織」になっていたのです。
対話よりSlackを優先していた
また、当時は仕組み化を促進するために、対話よりもslackを優先していました。そのため、対話による細かい情報連携が減っていたんです。
事業部のメンバーに当時の話を聞くと、対面で質問しようとしたら「チャットで聞いて」と返されるような感じで、部内の交流も少なかったそうです。
情報を明文化するのは確かに大切です。でも、テキストだけではなかなかすべては伝わりません。テキストの情報があったうえで、実際に話してシェアすることで深い学習は実現できます。
しかし、当時はそれができておらず「ただ書いているだけ」になっていました。
・ルールが強く決まりすぎている
・「言っても変わらない」という空気ができている
・仕組み化のために、対話よりSlackを優先している
これらの結果として、なんとなく「冷えた雰囲気」の組織になっていたのです。
ドアをあけて部屋に入ったときの、すこし白けた感じ……。
「これを変えないと先はない」と思いました。不要なルールは洗い出して撤廃し、ゼロからあるべき姿を作り直す。新しい事業をつくるつもりで、V字回復させなきゃいけない。
そして「このチームは絶対に勝てる!」という熱を取り戻す必要がありました。
オペレーション改善は「順番」が命
僕は、オペレーション改善は「順番」が命だと思っています。
組織の状態に気づいて焦ってしまうと、つい「あれもこれも問題だ。早く改善したいから、全部一気に変えよう!」と思ってしまいます。
でも、そこはグッと我慢しないといけません。
一気に変えると、組織が崩壊してしまうからです。
どんなにいい施策でも、メンバーがついてきてくれなかったら「絵に描いた餅」で終わります。戦略が先走ってしまったらダメなのです。一気に変えるのではなく、組織の温度感をみながら、的を絞って順番に、リズムよく変えていかないといけない。
それを見極めるために役に立ったのが、PL(損益計算書)による試算でした。
今回は、事前にPLを「15パターン」ほど作っておきました。
売上に関わる指標を考えられる限り細かく洗い出し、「この指標が○%改善すると、このぐらい売上が伸びる」という試算をいくつもやりました。「楽観的」「現実的」「悲観的」なPLを、それぞれ5パターンずつ用意しておいたのです。
徹底的に事業のシナリオを想定しておく。
実際に改善を始めたら、毎月1つ1つの指標を追っていきました。「今回は入口単価が〇〇円だったから、このPLに当てはまるな」と。そうすれば「次はどの指標を改善すればいいか」を可視化でき、次の打ち手がすぐに考えられるんです。
これをメンバーにも共有し「この施策をやったら、どの指標がどのぐらい伸びるのか」をイメージできるようにしていました。
そのPLに「ストーリー」はあるか?
とはいえ、ただPLを書くだけでは、大抵の場合うまくいきません。
PLでは伸びる計算でも、うまく実際の事業に反映できないのです。「この指標が○倍になれば、売上が2倍になる。よし、この指標を強化しよう!」→「全然数字が伸びてこない。みんなやる気がないんじゃないか?」みたいになってしまう。
では、そんな「絵に描いた餅PL」と、きちんと実現できる「いいPL」の違いはなんなのか?
それはPLに「ストーリー」があるかどうかだと思います。
いいPLには、ストーリーがあります。指標を動かしたときに、メンバーの「感情」はどうなるか?「動き」はどのように変わるのか?
「指標Aを上げると、営業が慌ただしくなるな」「指標Bを高めるには、人事で3ヶ月仕込みが必要だな」というように、一人ひとりのメンバーの様子をイメージできるのです。
具体的には、次の4つのポイントをみて判断しました。
- 時間軸:施策を実施し、実現するまでに、どのぐらい時間がかかるか。
- インパクト:実現したときのインパクトはどのぐらいか。
- 工数:実施するときにかかる工数はどのぐらいか。
- ダウンサイド:実施した場合にリスクはあるか。起こりうる失敗はどんなものがあるか。
たとえば「営業力を高める」だと、時間はかかるがインパクトは大きく、ダウンサイドはありません。だから施策自体はすぐに実施し、指標の高め方はゆっくり段階を踏んだほうがいい。
「採用して仲間を増やす」だと、すぐにできてインパクトも大きいですが、一歩間違えると退職や組織崩壊などのダウンサイドが発生します。だからすぐに飛びつかず、タイミングや要件を考えたほうがいい。
これらを想像したうえで、施策の順番を見極めていくんです。
「こうなれば売上2倍だ!」と試算するだけでは、ただの数字遊びです。そうではなく、指標ひとつを動かすごとに、きちんとメンバーの情景が浮かび、連動していき、売上につながるまでの「ストーリー」がみえていることが大切。
さらにいえば、それができるレベルまで指標を細かく分解しておくことが重要です。
では、実際におこなった施策を見ていきます!
①全国制度を廃止し、エリア制に移行
最初にやったのは、エリア制度への移行です。
いきなり人材紹介業界ならではの話なのですが、これがとても重要でした。
当時は、申し込みをしてくださった求職者の方に「全国一律」で、すべてのキャリアパートナーが対応していました。それを「エリアごとに担当を分けて」対応するように変えたんです。
そもそも全国制度にしていたのは、コロナ禍で首都圏の採用ニーズが低下したときに、リスクを分散するためでした。その制度がそのまま残ってしまっていて。
全国の求職者さんに対応するとなると、ご紹介する企業も、千葉だったり大阪だったり、仙台だったりします。そうすると、地域ごとの企業さんの知見が全然たまっていきません。
毎回「どこだったっけな……あ、ここだ。この会社さん、いいんですよ。えっと、なんで良いんだったっけ……」みたいな感じで、提案の質も上がらない。
提案の質が低いと、転職意欲がかなり高い求職者さんでしか成果が出なくなります。転職をまだ迷っているような方は、いい提案を受けないと転職しないので、成約に至らないのです。
エリア制度にすれば、担当者が特定のエリアへの理解を深めやすくなります。
そのエリアの企業について知れば知るほど、求職者さんにご紹介するときも、会社の魅力を具体的に話すことができます。「この企業さんはこういう思いでやっていて、こういう担当者さんがいて、こういう仕事をやってるんです」と。
結果的に、提案の質を高め、成約につなげやすくなるのです。
まずは「メンバーの課題感を汲んだ施策」を
ここでのポイントは「メンバーが感じている課題」をきちんと把握していたこと。
「全国一律で対応するのが辛いんです」というのは、メンバーへのヒアリングでも、多くの声があがった課題だったのです。
根本的な変更なので、下手に打つとダウンサイドも起こります。でもしっかり変更できれば数カ月後に大きなインパクトとして返ってくる。また、後になればなるほど、変更が重たくなる施策でした。
だからこそ真っ先に改善することにしたんです。
何かを変えようとすると、チームに少なからずストレスがかかります。だからこそ、まずはメンバーも「変えてほしい」と感じていることを、ちゃんと変えていくのがとても大切です。
戦略ありきではなく、メンバーの声を聞きながら変えていく。
そうするとみんなからの信頼を得ることができ、その後の改善も格段にやりやすくなっていきます。
②求職者様への登録-対応率の向上
次の課題は「求職者様への対応率が低い」ことでした。
当時は、求職者さんに対して、ご登録いただいたのに声かけできないままになっているケースがありました。
本当は、登録してくださったすべての求職者さんに声かけすべきです。でも、当時は全国制度だったこともあり、メンバーの提案力もまだ高められていません。まだ転職を迷っているお客さまだと、成約に至らないことも多かった。
だからみんな「緊急度の高い求職者さん」を中心に対応するようになっていたのです。
本来はいい転職ができていたかもしれない求職者さんが、たくさん眠っている。そんな状態は、求職者さんや企業さんのためにもなりません。対応率を上げ、しっかりすべての求職者さんに向き合う必要がありました。
あえて一時的に集客を絞り、筋肉質なチームに
この課題に対してやったことはすごくシンプル。すべての登録者様を、担当を決めて、きちんとアサインしただけなんです。
これだけなら「やろう」と決めれば一瞬でできます。
もちろん、ただアサインしただけだと急に商談数が増えて、みんな対応しきれなくなってしまいます。だから同時に、集客の数を思い切って減らしました。
マーケティングのコストを少し削り、3割ほど集客を減らす。その代わり、アサイン率を35%ほど増やしました。
すると、対応数は「少し増える」ぐらいで留められます。
集客を減らすと、売上も微減する可能性があります。だけどアサイン率を改善すれば、売上はそんなに落ちないと予測していました。何よりまずは「利益率」を改善することを優先したかったんです。
だから最初は集客を減らし、アサイン率を上げて、利益率を高める。そうやって組織を筋肉質にしていきました。
集客を減らしたことで、緊急度の高い方だけでなく、もっと幅広いお客さまに対応しないと、成果が出せなくなります。必然的に営業の難易度は上がるので、そこはメンバーにも事前に共有しました。
そうやって「すべてのお客様にきちんと対応する」習慣をつけ、営業力を高めていったのです。
結果的には、対応率が当初の1.6倍に。
ほとんど全てのお客さまに、きちんと対応できている状態になりました。
③とにかく採用!
そこからはとにかく採用して、仲間を増やしていきました。
②で対応率を上げたうえで、採用して増員しながら、一度は絞った集客をまた増やしていったんです。いったん組織を筋肉質にしてから、筋肉質な状態を広げていくイメージですね。
採用要件もかなり変えました。
「目標達成意欲や成長意欲が強く、そのための努力を惜しまないこと」を最優先にしたんです。
転職履歴や学歴はまったく見ていません。
以前の事業部では「ルールを守ること」を重視していたので、採用要件もそれに合わせたものになっていました。「決まったことをきちんと守れる人」がテーマとして強かったんです。
でも、V字回復が求められるこのタイミングでは、あえて全く違うタイプの人を入れて、組織に刺激をもたらす必要がありました。
「外れ値」の優秀な仲間たち
このときに採用したメンバーは、本当に個性豊かな人ばかりでした。
営業経験はないものの、4年間ほど警察官をしていて、目標設計が明確ではない中で自分なりに工夫して成果を出していた人。
元プロ野球選手で、そこからリクルート→医療系スタートアップ→Speeeで新規事業を担当し、うちに来てくれた人。
元アイドルで、Zeep TOKYOでライブをやったりする傍ら、通信会社でトップセールスになっていた人。
彼らと話してみると、明らかに営業の才能があるのがわかりました。
とにかくバイタリティがあって、面接でもつい向こうのペースに持っていかれるのです。ただそういう人って、金髪だったり、個性的な格好をしていたり、独特な雰囲気があったりするので、ほかの会社には才能を見落とされがちだった。
僕らはそういう「外れ値」の優秀な人材を見極めて、仲間になってもらいました。
④工程ごとのアクションを明文化
このタイミングで、ようやくマニュアルづくりに着手しました。
それまでは、いわゆるマニュアル的なものがなく、メンバーごとに各工程で得意不得意が分かれていました。新しく入った人やキャッチアップのためのティーチングも実施しづらい状態でした。
そこで「お申し込み」→「面談」→「提案」→「企業さんへのご紹介」という一連のプロセスの中で、どういうアクションをして、どこに気をつければいいのか。改めて明文化していったんです。
ポイントは、マニュアルは採用の「後」に作ること。
「④採用」と「⑤アクションの明文化」を逆の順番でやると、うまくいきません。
業務の生産性が落ちているときにマニュアルを作ると「生産性の低いマニュアル」になってしまうからです。だからまずは、採用した「外れ値」の人材に、最低限のやり方だけ教えて、あとは自由にやってもらいました。
新しくて、組織のことをまったく知らない人に、いったん既存のルールを壊してもらったんです。
「属人的ハイクオリティ」を「仕組み化」する
それを実現するために、採用した新メンバーで、既存のチームとは別の「特命チーム」を作りました。
既存チームではこれまでの「常識」がどうしても染み付いています。「月の売上はだいたい○万円程度だよね」という常識ができているチームでは、短期間でそれを大きく超える記録はなかなか出せません。
だから常識に染まっていない新メンバーでチームを作り、彼らには「月〇〇万円は普通にいけるよ!」と、これまでの2〜3倍の基準で声かけをしました。そして、新しいやり方をどんどん試していったのです。
そうするとある日「属人的なハイプレイヤー」が生まれます。本当に2〜3倍の数字を実現する人が現れるんです。
ひとりハイプレイヤーがいると、どんどん基準が上がっていきます。
いちど誰かができてしまうと、その背中を見た人も不思議とできるようになるんですよね。これまでの2倍の売上を出す人がでてくる。そこから3倍、5倍、10倍……と、かつては想像もできなかった数字がどんどん上がってくるようになりました。
そうやって、いったん属人的に生産性を高めてからマニュアルをつくることで、高い基準で平準化をすることができます。
⑤企業理解を深める
ここまでは、主に求職者さんへ向き合う「キャリアパートナー」を中心に施策をやってきました。
次は、企業さんへ向き合う「法人営業チーム」の施策です。
人材事業を成功させるには、企業さんの細かいニーズもしっかり把握しておかないといけません。「企業さんはどういう人を採用したいのか?」を理解したうえで、業務内容や採用要件に合った提案をしにいく必要があるからです。
しかしこの点も、それまではほとんど言語化されていませんでした。
あるのは「この企業さんと契約しています」という情報だけで、「この企業がどういう業務内容で、どういう人を求めているか?」まではわからなかったのです。
記録することを習慣に
これを改善するために、企業さんの業務内容や、求めている人の情報を細かく記録していきました。
こういう記録する仕事って、個人の売上には直接繋がらないので、実践するのがけっこう大変です。時間もかかるし、売れる営業パーソンだと「書くより話すほうが得意」という人も多かったので。
だから当時は「この会社のいいところを、具体的に聞いてきてくれますか?」「書きにくかったら気軽に質問くださいね!」と声かけしながら、ポジティブに企業さんの良い点をたくさん探して言葉にしていきました。
そうやってみんなでやり続けて、だんだん情報がたまっていきました。この活動はなかなか大変だったので、メンバーのみんなには本当に感謝しています。
ニーズをきちんと理解できたことで、提案の質が上がって、企業さんからも喜んでいただけるようになりました。何度もリピートしてサービスを利用してくれる企業さんも生まれていきました。
しかも僕らは「物流」や「建設」など、業種に特化して長年活動してきたので、いまのセールスチームの業界理解は相当に深くなっています。
彼らが企業さんとしっかり向き合って、深いインサイトを拾ってきてくれるおかげで、キャリアパートナーも安心してマッチングすることができているんです。
⑥複数提案の実施
これまでは、求職者さんへご提案している会社の「数」が少ないことも課題でした。
担当者が、関係性のあるお気に入りの企業さんだけを、求職者さんに提案してしまうことがあったんです。「お世話になっている企業さんを助けたい」という気持ちからの行動ですし、それは必ずしも悪いことではありません。
でも、求職者さんの目線に立ったら、いろんな会社を見たうえで転職先を決めたいですよね。
だからやはり、いろんな会社のことを詳しく知っておく。そして、求職者さんの希望を聞いたうえで、複数の企業さんをご提案できるのが大事です。
記録を徹底したことで、詳しい情報がわかる企業さんが増えてきて、提案先のラインナップが増えます。さらに個々人の能力と自信がついてきたことで、みんな複数提案もできるようになっていきました。「ちょっとこの会社さんも提案してみようかな」と思えるようになったんです。
⑦部門間の横連携を強化
部門どうしの横連携も、当時はあまりとれていませんでした。
マーケティングチームが集客した新しい求職者さんが、キャリアパートナーからすると対応しづらいようなことがあったんです。たとえば、企業さんがぜんぜんいない地域の求職者さんばかりだったり。
すると、キャリアパートナーは「マーケティングチームが、全然転職につながる求職者さんを集めてきてくれない」と感じます。
逆に、マーケティングチームからすると「せっかく求職者さんを集めてきたのに、しっかり対応してくれない。求職者さんに対して失礼だ」と感じてしまう。チーム全体での一体感がなく、バラバラに動いてしまっていたんです。
KPIは部門間でブリッジさせよ
この課題の肝は「KPI設定」にありました。
マーケティングチームとキャリアパートナーの動きがうまく噛み合わなかったのは、それぞれが「独立したKPI」で動いていたからです。片方のKPIを追い求めることが、片方の部門にとってはいい結果をもたらさない場合があった。
そこで、それぞれの部門のKPIがうまく「全体の成果」につながるように設計し直しました。
すると全体がうまく回り始めたんです。
たとえばマーケティングのメンバーも、単に「新規求職者さんを集客する」だけではなく、その後の「ご成約」までが自分のアウトプットだと思ってくれるようになりました。
部門を超えて、みんなで協力して成果を出す雰囲気ができていったのです。
半年ほどで急激に伸び始めた
改善をはじめてから半年ほどで、事業は急激に伸びはじめました。
各部門が本当に頑張って動いてくれて、そのすべてが噛み合ってきたのです。
来てくれた新メンバーが活躍しはじめ、法人営業が企業様との関係性を増やし、キャリアパートナーの営業力もどんどん高まっていった。その結果、ブレがある人材紹介事業にも関わらず、過去最高売上を毎月記録しつづけていきました。
そして、しばらく横ばいだった組織が、1年間で単月売上6.75倍まで成長したのです。
ここまで伸びることは正直自分も驚きで、途中で計画を3度も上方修正することになりました。
対話が飛び交い、フロアから拍手が聞こえるように
オペレーション改善を通して、チームの雰囲気も大きく変わりました。
これまでは、日々淡々と業務をこなし、ダッシュボードの数字も単なる「通知表」のようになっていました。
それがいつしか、みんなが日常的にダッシュボードを見て「今の自分は、どのプロセスの数字が足りないのか?」を考えるようになりました。ときには周りの人に相談しながら学びを深め、行動に移すようになっていたのです。
改善前はなんとなく「静か」だった組織は、気づけば活気づいていました。
ある日、僕が会議を終えて廊下を歩いていると、フロアから拍手が聞こえました。「なんだろう?」と思ったら、メンバー発信で、ご成約に至るたびにフロア全体で拍手するようになっていたんです。
「いよ!これはベストマッチング!」といった言葉が飛び交い、すごくいい空気に満ちていて。「本当に、たった1年で組織は変わるんだ」と実感しました。
ここまで盛り上げてくれたみんなには、本当に感謝です。
順番を見極めるためにも、メンバーとの対話が大切
今回おこなった施策を、改めてまとめておきます。
①全国制度を廃止し、エリア制に移行……メンバーの声を聞きすぐに実施
②求職者様への登録-対応率の向上……利益率UP、営業力の底上げ
③とにかく採用!……外れ値の人材を仲間に
④アクションを明文化……属人的ハイパフォーマー誕生後に仕組み化
⑤企業理解を深める……知見を記録して深めていく
⑥複数提案の実施……提案の質をさらに上げる
⑦部門間の横連携を強化……KPIをブリッジさせる
こうして見るとわかるように、施策自体はものすごく目新しいわけでもありません。あたりまえのことをきちんと徹底しただけ。
ポイントは、やはり「順番」だと思います。
「④採用」と「⑤アクションの明文化」を逆の順番でやると、うまくいかなかった。「①エリア制度への移行」なしで、いきなり②対応率を上げたり、⑥提案の質を上げようとしても、おそらく失敗していたでしょう。メンバーにかかる負担が大きくなりすぎてしまうからです。
個人的な感覚として、施策を3つ外してしまうと、もうメンバーからの信頼は取り戻せなくなる気がします。何をやろうとしても「あの人の言うことは筋が悪いから」という空気になってしまう。
だからこそオペレーション改善では、メンバーとの対話が欠かせません。
課題を見極め、適切な施策を洗い出す。そして、変化による負荷にみんなが耐えられるように、きちんと順番の見極めをする。施策ありきにならず、人と向き合うことが本当に大切なんです。
オペレーションが整うと仕事は楽しくなる
人材紹介の仕事は、ともすると「きつい」と言われがちです。
「求職者さんのサポートをしたい!」と希望をもって入社しても、いつしか数字ばかりに追われてしまう。それゆえGAPも大きく、業界全体で離職率も高いことが問題になっています。
でも、きちんとオペレーションを整えれば、この問題は解決できると僕らは知っています。
このまえ、営業のとあるメンバーに「プレックスには『お客さんのために動こう!』という空気があるから、働いていてすごく楽しいんですよね」と言ってもらいました。
向き合っている求職者さんや企業さん、そして物流や建設業界のことを100%考えて動くことができる。
それは、無理な目標設定をしたり、圧をかけるマネジメントをしなくても、きちんと成果が出るオペレーションを整えてきたからです。
業務を細かく分解し、きちんと指標をみて改善する。そうすれば、理不尽に「詰める」ようなことは起こりません。「ここの数値が足りてないから、次からここを改善してみて」という、建設的な指摘になる。
すると、組織の空気も自然とよくなるのです。
人材紹介は本来、人と真摯に向き合って役に立てる仕事です。その本質と向き合いながら、しっかりと価値を生み出せる組織であり続けたいと思っています。
ここまで色々と書いてきましたが、最後はメンバーの圧倒的な努力があって成り立っているので、今回まとめたのはあくまでコンセプト面の話。ここまで突き抜けてくれたメンバーにはひたすら感謝しかないです、、!
*
そして、最後にもうひとつだけ……
一緒に事業を伸ばす責任者を探しています!
この記事の内容は、1年前の話。そして、あくまで一つの事業部でおこなったオペレーション改善です。
あれから会社は急速に成長しました。事業部が増え、人数も売上も倍以上になりました。ここからさらなる高みを目指すために、再び各部署で、このようなオペレーション改善にトライしていきたいと思っています。
そこで、一緒に高い基準の事業を作り上げていけるマネージャーを、絶賛募集中です!!
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