国内におけるフリーランス人口が約1,670万人になったというニュースをご存知でしょうか。人材仲介のランサーズがまとめた情報によると、フリーランス人口は、去年1年で57%増加。フリーランス市場は過去最大となり、働き方の選択肢が大幅に拡大。※1
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、思わぬところでプラスの影響を及ぼしました。企業と個人が対等に取引できる柔軟な社会は、すぐそこまできていますが、このムーブメント的な社会変容を、果たして「流行」で終わらせるべきなのでしょうか。
LIDDELLの答えは、否。
「インフルエンサー」という言葉がまだ馴染みのない2014年代からインフルエンサーマーケティング活動を展開してきた同社では、今後も個人の影響力をより一層高めるための事業を構想しているといいます。インフルエンサーマーケティングを中心にマーケティング・コミュニケーション戦略を展開する企業が増える中で、代表である福田は、どうしてそこまで「個人」にこだわり続けるのでしょうか。2度の創業を経て、今年過去最高益を記録した同社の代表に、次の未来のビジネスについて取材を行いました。
※1 出典
ランサーズ『フリーランス実態調査 2021』:https://speakerdeck.com/lancers_pr/huriransushi-tai-diao-cha-2021
〈プロフィール〉
福田 晃一 代表取締役/CEO
1979年生まれ。芸能プロダクションとマーケティングによるハイブリッド企業を2000年に創業。2014年にインフルエンサーマーケティングのパイオニアとなるLIDDELL株式会社を設立する。現在は、テクノロジーによってインフルエンサーと企業を繋ぎ、企業の課題解決に貢献すると共に、インフルエンサーの自立と自律を支援している。著書に『影響力を数値化 ヒットを生み出す「共感マーケティング」のすすめ』『買う理由は雰囲気が9割』がある。
エンタメ業界経験を活かし、人をメディアに新しいビジネスを開始
ーー福田代表は、2度、創業を経験したと伺いました。創業のきっかけを教えてください。
初めて事業を立ち上げたのは、2000年のことです。エンターテインメントをフックにしたマーケティング支援事業を行う会社を創業したのですが、その当時は、事業展開をするにあたっての武器を何も持っていない状態でした。
(今でこそ、「株式会社」は資本金1円から設立できるようになりましたが)、当時は、株式会社を設立するのに1000万円、有限会社が300万円という資本金が必要な時代で、さらに今のような「資金調達」と言う言葉も浸透しておらず、個人が事業を開始することは非常に苦しくも、今思えば楽しかったことを覚えています。
サービス開発を行う予算もなく、リソースは体力と時間、そして友人やサークル・学生団体といった“人のリレーション”でした。
あの当時、大学のサークルには今でいう赤文字系の大学生読者モデルやオピニオンリーダーのような影響力を持つ人達がたくさん存在していました。そういった人達には一定数のファンがいて、“ひとつのメディア”として形成されています。しかし、読者モデルという存在は「読者なの?モデルなの?」と広告やマーケティングに活用するには異端な存在と思われていて、そのマイクロなメディアにはどの企業も手をつけていませんでした。僕らは提供できる武器や商品がないなか、<人の影響力を販売する>これに商機を見出し「人」を基軸にした事業が開始されていきました。
そこから「人」をメディアと捉え、その影響力を提供する販売代理店として、人を中心としたマーケティング支援を行うようになったのです。これが、最初の創業のきっかけであり、その後のLIDDELL設立へとつながっていく背景でもあります。
ーー最初の創業後、2014年にLIDDELL株式会社を設立したと伺いました。なぜ、新たに会社を立ち上げることにしたのでしょうか。
人との関係構築や影響・共感という情緒的なものをテクノロジーやデジタルでスケールしていく新しいビジネスをやりたかったことがきっかけにあります。
そんな折に、海外では「インフルエンサー」と呼ばれる人々が登場し始めます。
読者モデル・トレンドセッター・オピニオンリーダーなどなど、名称は違うが本質的な意味合いは同じインフルエンサーのマーケティングを今まで僕がやってきた「人」を中心にしたマーケティングとデジタル、テクノロジーを併せ持つ新たなサービスとして展開できると考え、LIDDELLを設立しました。
「人の集まる場所に影響力のある人が生まれる」普遍的な仕組みを軸に事業を展開
ーーLIDDELLが展開する、「人マーケティング」とは何でしょうか。
どの時代も、トレンドは<人が集まる場>から生まれてきます。最初の創業時、僕等が行っていたのは渋谷という街のマーケティングでした。女子高生、ギャル、カリスマ店員など、渋谷にはたくさんの人が集まっており、そこからトレンドを生み出す影響力を持つ人達が生まれ、渋谷という街がプラットフォームとして機能していました。
そして、そんな渋谷にも次第に人が集まらなくなったのです。なぜなら、インターネットが勢いよく繁栄してきたからです。渋谷にわざわざ来なくても、トレンド情報が得られてネットを通じて交流もでき、買い物もできる。
そしてさらに流行の場がインターネットの中でもSNSに集中し始めます。
そのなかでも影響力を大きく持つ存在としてインフルエンサーが台頭してきました。
どの時代でも、人の集まる場所には影響力のある人が生まれて、場を移しては同じようなことが起こっている。それがリアルでもデジタルでもこの本質はこの先もずっと変わらない普遍的なことだと思います。だから、僕等が行う人マーケティングとは、人と人との関係構築のプロセス自体をマーケティングし、人が人に与える影響力をしっかり見据えていくことだと考えています。
今後、マーケティングの場がSNSからメタバース、バーチャルリアリティの世界に変わっても、そこで影響力を持つ個人(アバターなど含む)をマーケティングすることになると思います。
純粋な消費者はもういない、目指すのは企業と個人が対等に取引できる社会
ーーLIDDELLのミッションを教えてください。
ミッションは、「個人の影響力を、人々の未来のために。」です。ベンチャー企業で、まだまだ少ない社員数なので、全員がこのミッションを理解してサービスを作って欲しいです。
誰かの影響で誰かの幸せを作り、それで幸せになった人がまた誰かの幸せを作っていくという、そんな共感の連鎖、リレーションで未来の社会を良くしていきたいと思っています。
ーービジネスコンセプトは、「消費の先のマーケティング」
「消費の先のマーケティング」をコンセプトとして掲げています。
これまでのマーケティングは販売数、CVRなど消費にフォーカスされたゴールが一般的です。しかしSNSというパーソナルなメディアを各々が当たり前に持つ今、消費者は単なる消費者ではなく、その自身のメディアを使って宣伝する人にもなり得ます。
純粋な消費者はもういなく、コンシューマー(消費者)でもありプロモーター(宣伝者)でもある「プロシューマー」という存在として捉えるべきなのです。
消費はプロセスであり、消費体験を自分のSNSに投稿し、それに共感したフォロワーが同じ体験をしようとアクションを起こす。
この消費の先にある共感をゴールすることが、インフルエンサーマーケティングであり、僕等が目指す消費の先のマーケティングです。
(第二回に続く)