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総務省とコンサルティングファームを経て、2016年1月にfreeeへと入社した尾形 将行。入社後も、その役割を変えつつ、様々な変化を社内に起こしました。2022年現在は、CXO(Chief Experience Officer)を務めています。そんな尾形のキャリアの変遷とともに、一貫して持つ彼の思いを紹介します。
総務省での10年で、大きな視点でものごとを考える習慣が身についた
東京大学法学部在学中に国家公務員一種試験に合格し、卒業後は総務省に入省した尾形。その選択をこう振り返ります。
尾形 「当時役所では、中途採用はしていなかったので、今のタイミングで入らないと経験できない仕事があると考えました。また法学部で学んだ法律をどう仕事に活かすかを考えたときに、『作る』か『解釈する』かの選択肢のうち、『作る』方が面白そうだと思ったことを覚えています。
数ある役所の中で総務省を選んだのは、当時『これからITの時代が来る』と言われていたからです。自分もテクノロジーで世の中をよくすることに関わりたいと思って、IT分野に関連するところを選びました」
2001年からの10年間、総務省で働いた尾形。様々な業務を担当しました。
尾形 「小泉内閣時代には、地上放送のデジタル化を促進するための税制改正や、日米の通信の規制の交渉に関わっていました。
6年後、総務省からの出向で内閣官房の職員となり、情報セキュリティの仕事に携わりました。国際担当となったため、30〜40カ国に出張して日本を代表して国際会議に出席する経験を得ることができました。また、情報セキュリティは当時、日本ではITの問題と捉えられていましたが、グローバルでは国家安全保障上の課題として捉えられていたので、NATOの職員と会議をする機会もありました。
そして最後の3年間は香港に出向し、総領事館で働いていました」
尾形は公務員時代の経験をこう総括します。
尾形 「国家公務員になってよかったなと思っています。若い時期にどうやったら国や社会のためになるのかと、大きな視点でものごとを考える習慣がついたからです。
また国を代表して海外に行って、国際会議で日本政府の代表者として発言できたのは良い経験です。『自分の発言=日本の発言』となるのは最初は震えるくらい緊張しましたが、やりがいがありました」
10年間、国家公務員で働いた尾形ですが、民間企業に転職しようと考え始めます。そこには2つの理由がありました。
尾形 「様々な人と出会って民間企業で働くことに惹かれたのが、理由の1つです。内閣官房時代、省庁だけでなく、情報セキュリティの専門家や民間企業からの出向者など、様々な職場から集まったメンバーで業務に取り組んでいました。公務員という狭い世界で生きてきた私にとって、彼らの様々なバックグラウンドの人を知ることは新鮮でした。
また香港の総領事館時代、夜に大学に通いMBA取得のための勉強をしていたのですが、そこの生徒は多数の国から集まっている上に、民間企業で働いている人が多かったのです。彼ら、彼女らとの交流から、民間企業で働くのもいいなあと考えるようになりました。
もう1つの理由は、『どうやってこれからの日本をよくするか』というトピックで仕事を考えたときに、テーマを決めてそれを深く掘るというアプローチをやってみたいと思ったからです。その実現のために、スピーディーに物事が動かせる民間企業で働いてみたいと考えるようになりました」
出向が終わり帰国した尾形は、総務省に辞表を提出しました。
未来を見据えた転職。人生の糧になるプロジェクトに出会えた
総務省を辞めた尾形は、コンサルティングファームへの転職を希望します。
ビジネスの世界について基本から学びたいという思いと、いろんなビジネスに触れて次のキャリアのための資産にしたいという考えからくる選択でした。
こうして尾形は、アクセンチュアに入社を決めます。そしてある日、結果的に尾形のコンサル観を変え、人生の糧になるプロジェクトに出会うのです。
尾形 「当時、私は通信・メディア・ハイテク業界の担当でしたが、任されたのは産業用の機械を作る会社のプロジェクトで、途上国での新工場設立の支援でした。
これが厳しいプロジェクトで、マーケットやサプライなど考えることがたくさんある中、社内に蓄積された知見はあまり無い状態だったのです。4人のコンサルチームが、7年間工場のための用地を探し続けているお客様と対峙することになりました」
「何しに来たんだ?」という雰囲気のお客様の厳しい言葉から始まり、初めは相手にしてもらえなかったといいます。
それでも尾形たちは、一緒に現地まで行き、4日間で7つの州の工場候補地を見て、交渉を担当しました。
また、「7年間検討しても、経営陣に了解を得られないのは、彼らのやり方にも問題があるのではないか」と考えた尾形たちは、経営陣への提案プロセスも一緒にときほぐしていきました。
尾形 「最終的に経営陣に了解をもらった時には感無量でした。どんなに不利な状況でも、根気強くお客様の本当にやりたいことを一緒になって掘り出せたこの経験から、こっちがエキスパートじゃなくても貢献できることがあるし、お客様に寄り添って一緒に課題を発見して解くことこそがコンサルタントの価値と気付きました。
それにこの成功体験で、いい意味での楽観主義者にもなれましたね」
そうして尾形は、入社から3年半後、戦略コンサルティング部門のマネージャとなります。
そんな3年半を挑戦と成長の日々と振り返るほどに、充実した思いで仕事に取り組んできた尾形ですが、ある時2度目の転職を考え始めます。そこには2つの理由がありました。
尾形「1つ目の理由は、ビジネスの基礎体力をつけるという目的が達成できたと感じたからです。またそう感じると同時に、自分がもともと総務省に入った理由を思い出しました。それは『テクノロジーで世の中をよくしたい』ということ。これからはそんな仕事をもっと具体的なレベルで、事業会社に入ってやりたいと思いました。
2つ目の理由は、体力です(笑)。コンサルティングファームは労働集約型の業態で、私は子どもの野球チームのコーチもやっていたので、サービスやプロダクトを持つなど、レバレッジのきくビジネスをしないと体力が持たないと思いました」
こうして2度目の転職活動を開始した尾形は、すぐに外資系の大手企業に内定を決めました。ところが、ある人物に会うことで別の道を歩むことになります。
尾形 「内定先が、大学の後輩がかつて働いていた企業だったので、何かアドバイスをもらおうと、久しぶりに会うことになりました。その後輩が今freeeでCFOをしている東後 澄人です。
その際に、彼が働いていたfreeeを紹介されたのですが、面白そうな会社だなと思い、後日遊びに行きました。そこで紹介されたのが、CEO佐々木 大輔でした。
佐々木からは『政府とどう付き合えばいいか』『金融機関とどう向きあうべきか』など色々な質問をされ、私が答えると、『違うと思うんだけどな〜』などと言われ、なんだか不思議な時間でした。家に帰ると採用チームの方から『内定です』とメールが届き、『あれ、面接だったんだ!』と気がつきました」
こんな偶然とも言える2つの出会いが、尾形のfreeeへの入社につながります。
freeeで働くことはそのまま社会への貢献にも繋がる
東後、佐々木と出会い、freeeで働く選択肢ができた尾形。最終的には、freeeを選びました。
尾形 「ベンチャーの社長ってもっと傲慢だったり自信家だったりするのかと思っていましたが、佐々木との会話では、すごく地に足がついた質問ばかりが並んでいたので、真面目な会社だと思いました。ここなら自分に合っていそうだと感じたんです。
また『テクノロジーで世の中をよくしたい』と考えている私に対して、freeeの事業はピッタリ当てはまるものでした。ベクトルが日本の中小企業やスモールビジネスに向かっているのも、公務員とコンサルという自分のバックグラウンドから考えても共感を持てました。
それに当時のミッション『スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるよう』というのも、ビジネス的には大きなことをしようとしているのに、まるで政府の掲げる理念かと思うほどパブリックな印象があり、freeeで働くことはそのまま社会への貢献にも繋がるのではないかと考えました。
あとはまあ、後輩の東後もいるので、困った時は相談すればいいなと(笑)」
こうして2016年1月、freeeに入社した尾形。事業開発部門にアサインされました。
尾形 「1から必要な会計知識とプロダクト知識をキャッチアップしていきました。入社2日目には映像資料を見ながら『freee会計』を使ってデモをすることになり、スピード感がすごいなと思った記憶があります。
事業開発は文字通りfreeeの事業を開発して行くチームなので、freeeがこれからどんな世界を実現していきたいのか、他社や既存の会計ソフトが持つ思想とどう違うか、などを中心に理解し、自分で語れるようにしました」
尾形はキャッチアップを終えると、すぐに現場に出ます。
尾形 「当時はfreeeもまだまだ小さく、立ち上げまもない事業開発のチームのメンバーは2人でした。また、はじめは金融機関への提携を目的とした営業が多く、1つでも多く提案するのを目標に、1日に3〜4社、一週間のうち4日くらいは外回りをしていました」
尾形は当時をこう振り返ります。
尾形 「事業開発は成果が出るまで時間がかかります。この頃は、周りが多くの成果を出している中で自分が貢献できず、辛く感じた時期でした。
freeeは当時まだ小さなベンダーだったので営業先での立場も弱く、『freeeってどんな会社?』から商談は始まります。しかしまだユーザーも少なく、ずば抜けたテクノロジーもなかった。実績がない中で出来ることは『どんな世界を目指しているか』を語るしか方法がなく、1件の成果を出すのさえ遠い道のりでした。
それでも行動にこだわり、今日は体力的にきついと思ってからもう1通メールを送るなど、一歩でも前進することを目指しました」
しだいに尾形とチームメンバーの努力は実を結び、色々な金融機関と連携し、パートナーとしてビジネスをすることが出来るようになりました。
またそこで作り上げられたサービスは目新しく、日本経済新聞に取り上げられました。
役割を移しつつ、freeeの提供する価値を広く深く届け、世の中を変える
入社から9ヶ月後には、事業開発のチームから役割が変わり、尾形は法人事業部の責任者となりました。
尾形 「セールス・マーケティングの経験がなかったので、それぞれの部門の責任者の話を聞くところから始めました。
また当時は組織が大きくなり始めた頃で、コンサル時代に責任者をしていた経験が活きました。
具体的には経営陣と現場との間でコミュニケーションの機能不全が起きていたので、目標を新たに設定して、現場は目標に対して動きやすく、経営陣は現場でどんなプロジェクトが動いているかわかるように整備しました。それからは、みんなに気持ちよく仕事してもらうことも意識しています」
さらに尾形は全体事業の責任者を2年半担当したあと、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)となります。エンジニア組織とバックオフィスを除いた全ての組織を統括することになり、実質的に事業活動のリーダーになりました。
尾形 「事業を企画し、アサインするメンバーを決めるだけでなく、会社全体の組織運営にも携わることになりました。
その中で行ったのは、ファンクション型の組織から事業部型組織への移行です。freeeのビジネスサイドは、もともとセールス、マーケティング、カスタマーサポートなどと機能別の部署に分かれていましたが、スモールビジネス事業部・パートナー事業部など『誰に届けるか』を軸に組織編成し直しました。
これによってセールス、マーケ等の横断チームが1つの顧客セグメントに向き合うことができるようになり、ユーザー理解が進み、様々な顧客開拓活動が生まれたり、チームのミッションを作りやすくなり、何のために自分の役割があるかを認識しやすくなったりしました。
また生産性や収益性という考え方、プロダクトの戦略をOKRベースで進めていく方針などを導入し、会社としての目標設定の仕方なども変革しました」
2021年7月から尾形はCXO(Chief Experience Officer:お客様体験の最高責任者)としてプロダクトの戦略とカスタマーサクセスの責任者を兼任しています。
尾形はこれまでのfreeeでの日々を総括するとともに、これからを語っています。
尾形 「入社当時、事業開発として携わっていた業務が、今はそれぞれアライアンスチーム、APIチーム、freee finance labとして大きく強い組織となりfreeeを支えてくれているのは感慨深いですね。
今日本で会計・人事労務領域で100を超えるアプリとAPI連携が可能で、オープンなプラットフォームを作り上げている企業はfreeeしかないと思っているので、これからも注力していきたいです。また大手だけでなく地方の金融機関としっかり連携し、スモールビジネスをDXするという本質的な活動ができていると思うので、続けていきます。
さらに、もっとプロダクトの価値がわかりやすく、使い始めやすい状態に持っていくことで、freeeの提供する価値を広く深く届け、世の中を変えて行きたいと思います」
総務省、コンサルティングファーム、freeeと、さまざまな領域をわたり歩いてきた尾形。「テクノロジーで世の中をよくしたい」という変わらない思いを胸に、さらなる革新を世の中に届けるための活動を続けていきます。