“チームにとっての最適”と“自分にとっての最適”がズレた瞬間。技術的こだわりとチーム開発のバランスを考える
「自分にとっての最適」だけで進めていなかったか?
開発チームのとあるエンジニアのお話。
―― チーム開発と、技術的こだわりのあいだで気づいたこと
エンジニアとしてある程度経験を積むと、「自分なりのベストプラクティス」が自然と増えていきます。
あのときのバグ、このときの失敗、成功体験。
知識と経験が重なって、自分の中に「こうすればいい」が蓄積されていくのです。
そしてそれは、時に“独善的な正しさ”として立ちはだかることがあります。
そういう瞬間がありました。
ある日、プロジェクトでAPIの設計方針についてチームで議論になりました。
私は「RESTの原則に則った設計にすべきだ」と強く主張。
中途半端なRESTは後々保守がつらくなる、と。
過去の痛い経験から、そこには譲れない想いがありました。
けれど、チームメンバーの一人がふとこう言ったんです。
「それ、全部RESTである必要ある?現場側が見て理解しやすいのが優先じゃない?」
一瞬、カチンときました。
「いや、正しい設計をしたほうが絶対にいいに決まってる」
そう思いかけた自分に、ふと違和感を覚えました。
このプロジェクトの目的は、開発者としての自己満足ではなく、
業務現場の人たちが使いやすく、運用しやすいシステムを“チームで”提供することだったはずです。
誰かの正しさより、みんなで進められる“最適解”を見つけること。
理想的な設計より、今のチームとスケジュールにフィットした現実的な選択をとること。
そこでようやく、自分の中の“こだわり”を言語化し、背景も整理したうえで、
「それでも今は簡略化して、次フェーズで改善する方がいいかもね」と引くことができました。
開発は一人でやるものじゃない。
「自分にとっての最適」は、ときに「チームにとっての足かせ」になる。
もちろん、こだわりや理想はあっていい。
でもそれを“押しつける”のか“共有して選択肢にする”のかで、チームの空気も成果も大きく変わります。
正しさを武器にするか、共通言語にするか。
その選択を間違えないことが、チーム開発で信頼を築く第一歩かもしれない。