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弁護士ドットコムでは、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」「BUSINESS LAWYERS(ビジネスロイヤーズ)」、Web完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」などを中心に、各種サービスを開発・提供しています。
各サービスが成長し組織が拡大していく中で、MVV(Mission Vision Value)を策定し、組織的一体性を作り出す試みを行っています。
事例:
クラウドサイン インサイドセールス部のMVVについて
キャリア事業部のビジョン・ミッション・クレドについて
今回は、2021年10月から約4か月にわたって検討し策定に至った、クラウドサイン営業部のMVVについてご紹介します。クラウドサイン事業本部で営業部長を務める田口 修さんに、営業部独自のMVV策定に至った背景やプロセス、策定した内容、策定したことで感じる変化などについて語ってもらいました。
【Profile】
クラウドサイン事業本部 営業部 部長
田口 修(Taguchi Shu)
2016年10月弁護士ドットコムに入社。入社後は法律事務所(弁護士)を対象としたWebサイト制作サービスの立ち上げや、プロジェクトマネージャーとして商品企画・プロダクトマーケティング・営業などを経験。
2019年10月クラウドサイン事業本部のインサイドセールス/フィールドセールス責任者に就任。現在は、主にフィールドセールスを担当する営業部の責任者として従事。
趣味はフットサルとゴルフ。社内のフットサル部とゴルフ部の両方に所属するスポーツマン。
インタビュー・ライティング:Yoko Fujie(弁護士ドットコムの元社員)
MVV策定の背景 - 組織の急拡大に伴い、共通の指針が必要
ーー まずは、営業部内でMVVを策定することになった背景を教えてください。
組織の規模が急拡大し、営業部としてのフェーズが進んだことが大きいです。営業部は常に組織拡大を続けているのですが、2021年の下期(10月〜)は特に体制が大きく変化しました。社内外を問わず、周囲からの期待が大きくなっていることを感じていましたね。MVVの検討を始めたのは、まさにそんなタイミングでした。
すでにクラウドサイン事業本部としてのMVVはありましたが、事業部全体で掲げているMission(Rule Re:Maker)やVision(Keep Challenging, Never be Champions.)に対して、営業部としてはどう取り組んでいくべきなのか、指針となる営業部としてのMVVがあってもいいのかなと思ったんですよね。そこで、事業責任者からのアドバイスや人事室のサポートも得ながら、営業部MVVの策定に向けて話し合いを始めました。
クラウドサイン事業本部のMission:Rule Re:Maker
クラウドサイン事業本部のVision:Keep Challenging, Never be Champions.
ーー 営業部長の立場として、MVVの必要性をどう感じていましたか?
私自身は弁護士ドットコムに入社するまで、営業会社で営業職として仕事をしてきた経験が長く、「数字」にコミットして成果を出すことが営業組織としてのゴールだと捉えていました。コミットすべき目標が数字として明確だったからこそ、これまではMVVのようなものの必要性を感じていなかったんです。
一方で、組織が急拡大するにつれて共通指針の必要性を感じてもいました。クラウドサインは大きな社会課題に取り組み、これから国民的サービスとして推進していくフェーズの事業です。様々なバックボーンを持つメンバーが増えてきた今、営業メンバー全員の目線や意識を合わせるためにも「営業部独自のMVVを作ろう」という話が出た時は、営業部長として前向きに捉えていましたね。
MVV策定までのプロセス - 伝わるように“尖らせる”
ーー 策定まで、どのような手順・議論を重ねていきましたか?
まず、営業メンバー全員を4グループに分けてオフラインでワークショップを行いました。人事にファシリテーターを務めてもらい、全員で話し合うところからのスタートです。ワークショップでは「クラウドサインで働く理由」「クラウドサイン営業部で実現できていること」「クラウドサイン営業部が実現していきたいこと」の大きく3つを、営業メンバーそれぞれに考えてもらいました。
そこで出てきた内容を軸に、営業部のマネージャーたちと「営業部のあり方」を議論していきました。最初はMVVに当てはめていく形ではなく、「ありたい姿」「行動指針」のような観点で考えることから始めましたね。マネージャー全員と並列で話し合い、意思統一をしていきました。
ーー 実際にMVVの形にまとめていく段階では、どのような難しさがありましたか?
実際にMVVにまとめる段階では、方針を決めていく難しさもありましたが、特にワーディングに難しさを感じました。マネージャーたちと議論→事業責任者に提案→事業責任者からフィードバック→改めてマネージャーたちと議論、を繰り返し、結局完成までに4か月ほどかかっています。
ーー ワーディングの難しさとは?
当初はどこか当たり障りなく丸めてしまうというか、綺麗にまとめすぎてしまっていたんですよね。そのため事業責任者から「何も言っていないに等しい」というフィードバックが何度もありました。言いたいことはわかるけれど、何も言っていない。なんとなく良いことを言っているようだけれど、「刺さらない」と。実際、伝わるものでなければ意味がないので、もっとダイレクトに伝わるように、ある意味“尖らせる”ようにと議論を重ねていきました。
ちなみに、最初に事業責任者に提案して「何も言っていないに等しい」と言われてしまった内容がこちらです。
【存在意義】
・圧倒的No.1になり新しい契約の未来を創る
【ありたい姿】
・顧客の成功に向き合う
・シェアNo.1になる
【行動指針】
・顧客/事業にとって価値ある存在となる為に学び続ける
・プロダクト(事業)の進化/成長の為に顧客の真の課題を理解し届ける
・多面思考(虫の目・鳥の目・魚の目)を持った行動をする
・チーム/仲間の成長を支援する
ーー 最終的にどのようにして完成したのでしょうか?
最終的には、メンバー全員と行った最初のワークショップの内容に助けられて決まりましたね。ワークショップで出ていた内容を振り返って、「結局、このワードが言いたいことだよね」と初心に立ち返りました。結果、「営業部のメンバーみんなで作り上げた」と胸を張れる仕上がりになったと感じています。
策定したMVV - 明確化されたクラウドサイン営業の姿
ーー 決まったMissionとVisionについて教えてください。
Missionは「Focus On Customer’s Rule Remake」。クラウドサイン事業本部全体のMissionである「Rule Re:Maker」を踏襲しました。営業は常に顧客と接する立場ですので、目の前の顧客に対して「Rule Remake」を実現していくことによって、世の中全体の「Rule Remake」に貢献していきたいと考えています。
Visionは「日本一の、顧客支援型営業組織を創る」。クラウドサインの営業として目指すのは、顧客の業務課題やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に対して的確な提案を行うことです。シェアNo.1や売り上げNo.1といった指標ではなく、「顧客に選ばれるNo.1」を目指すという意味で選びました。
ーー Valueについてはいかがでしょうか。
Valueは一番クラウドサインらしさが出ていると思います。特に「Commitment」「Always Think」は、まさに私自身がこれまで営業として大切にしてきた思想が言語化されたものだと感じています。
「Commitment」は、営業部やチームに対して自分が「全力」と断言できるくらい徹底的にコミットすることです。人はどうしても守りに入って少し弱気な目標を設定したり、保険をかけてしまったりするものですが、だからこそ徹底的にコミットしてチャレンジしてほしいんですよね。もし結果的に達成できなかったとしても、無言実行より有言実行の方が良いと思っています。自分にも周りのメンバーにも、コミットしてほしいです。
もちろん目の前の顧客に対しても、コミットし続ける必要があります。数字だけではなく顧客の課題やニーズに向き合い、クラウドサインというサービスを通してどのように解決できるかを徹底的にコミットしてほしいです。些細な約束を守るとか、そういう小さな積み重ねで、信頼関係を築いていくことが大切ですよね。
「Always Think」は、思考停止せずに顧客のことを考え続ける、ということです。顧客のことを考え続けて向き合うことが、営業に求められるとても重要な姿勢だと思います。なぜそう言っているのか、なぜ必要なのか、顧客はこう言っているけれど本当にそれが問題の本質なのか。これは、自分がいち営業メンバーだったころから重要視していることです。
ーー その部分が、田口さんが思う「営業の姿」ということなんですね。
今回のMVVの話し合いを経て、「Commitment」と「Always Think」は、もともと私自身が重要視していた感覚なんだと気づくことができました。営業部にいる時点で数字へのコミットは大前提ですが、あえて営業の本質的なところに立ち返れば「営業としてやるべきことは、顧客の課題を解決すること」だと思ったんです。自分が長く営業という仕事をしてきた中で感じる、営業の最終的な価値はそこなんですよね。もちろん顧客の課題を解決するためには、プロフェッショナルとしての総合的な知識や提案力も必要なので、「Become a Professional」も重要なValueです。
営業は最前線で顧客と接する立場だからこそ、顧客の課題や必要な部分を理解できます。そして、その必要な部分にこそ自社サービスを、私たちで言えばクラウドサインを提供できるし、役立てる提案ができる。素晴らしいことだと思います。でもそれは徹底的にコミットして(Commitment)、考えて(Always Think)、見つけた課題が顕在化して初めてできることです。だから重要なんですよね。
まずは課題を認識するところから。時にはまだ“認識されていない課題”を見つけることも営業の仕事ではないでしょうか。個人的には、提案の結果はどうであれ何かしらの解決に寄与できたら、それは営業として大いに価値があることだと信じています。
MVVを策定していく中で得られた気づき - 相互理解が深まる
ーー MVVを策定する過程で良かったことはありますか?
営業部全体としては、全員が集まってオフラインでワークショップを行えたことが一番良かったと思います。コロナ禍以降、これまで全員が集まる機会はなかったので。ワークショップでは新しいメンバーや所属歴が長いメンバーも含めて、全員が事業に対する想いを発信できましたし、プリセールスなどの役割が異なる部内のメンバーとの交流もできました。全員でクラウドサイン営業部としての未来の話をしたことは、とても有益でしたね。
ーー マネージャーたちとは何度も議論を重ねたとのことですが、その過程ではいかがですか?
これまでマネージャーとは数字や案件の進捗の話が中心だったのに対し、MVVの議論を行う中でしっかりと事業の中長期的な会話をする機会が持てました。「チームをこうしたい」「こうあるべきではないか」という話し合いをする中で、マネージャーそれぞれの視点や考えを共有し合えたのはよかったですね。
例えば入社したばかりのマネージャーだと、前職の知見や、外部から見た時のクラウドサインの印象も加味した意見を持っています。一方で所属歴が長いマネージャーは、クラウドサインのこれまでの軌跡を知っているからこそ持てる想いや意見があります。議論を重ねる中で、人によって想像以上に考え方が違って驚きましたし、自分にない視点もあって新鮮でしたね。各マネージャーの考え方や視点が知れたことで、相互理解が進んだと思います。
ーー 田口さん自身、何か発見や変化はありましたか?
自分自身、人生で初めて「営業部」としてのこういった話し合いをしたことで、新しい発見がありました。
クラウドサインの営業組織は私がこれまで経験してきた環境とは異なるため、自分が当たり前としていた“営業的なスタンス”を、クラウドサインのマネージャーは良い意味で持っていないと思っていたんですよね。でも議論を重ねていくと、マネージャーたちが自分と同じようなスタンスであることに気付かされました。「No.1になりたい」「他のチームに負けたくない」「今後のキャリア形成するためにステップアップしたい」という直接的な表現は印象的でしたね。
MVVを作った今改めて思いますが、責任者として見られる範囲の人数なら問題はなくても、ある程度の規模感を越えるとMVVのような認識の共有・統一が必要ですね。メンバーがスタンドプレーに走るようなことを避けるためにも、組織の拠り所が必要だと感じました。
策定したMVVの活かし方 - きちんと拠り所にする
ーー 策定したMVVを、今後どう活かしていきますか?
メンバー全員で共に作ったものだからこそ、意思決定をする時や、立ち止まって考える必要が出た時に活かしたいです。MVVから逸れていないか、MVVに紐づいて行動できているか、確認するツールとして考えています。
評価についても、定性評価の部分についてはMVVを活かしたいです。「その行動は顧客のためなのか?」「顧客の課題に対する本質的なアプローチなのか?」など、MVVの体現度合いも見て、評価していきたいですね。
ーー クラウドサインの営業として、これから世の中にどんな価値提供をしていきたいですか?
Missionである「Focus On Customer’s Rule Remake」の通り、目の前の顧客に対するルールリメイク(改善) をすることで価値提供をしていきたいです。具体的には顧客の課題解決のために、業務効率や負となっている部分を改善し続けていきます。
そして、Valueの一つでもある「One CloudSign Team」の通り顧客の声を聴き、事業としてサービスとしてより良いものにするために、事業部内へきちんとフィードバックしていきたいです。そのためにも顧客のことを常に考え続け、理解できるよう努力します。そしてサービスを追求し、より良い価値を提供し続けていきたいです。