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執筆者:株式会社UPSIDER 代表取締役 宮城 徹
目次
周りを見る余裕すらなかった2年間
このままでは「手遅れ」になるかもしれない
そんな中で突然届いた1通のメールと、私の葛藤
続きはUPSIDER公式noteでご覧ください!!
「みずほFGの中で、みずほを利用して一緒に成長しませんか?今まで通りUPSIDERの経営陣が決定権を持って、上場を目指していく。あくまでも、私たちはその成長をサポートしたいと考えています」
2024年10月29日。シリーズDの資金調達を実施した直後、私の元に一通のメールが届きました。送り主はみずほFGの経営幹部のお一人。突然のことに、私は動揺しました。
正直な気持ちはワクワクが半分、不安が半分。「どのように自分の中で吸収し、どのようにリアクションすれば良いのか」。これまで、経営者としてどんなに大きな判断もなるべく即断即決してきたつもりでした。けれど今回ばかりは、頭で理解できても、心がついてこなかった。一人で悶々と考えているうちに、あっという間に2週間が経過していました。
それから半年。振り返ると、この一通のメールがきっかけとなり、UPSIDERは創業以来最大の節目を迎えることになりました。
7月29日、UPSIDERは「みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)への参画」を発表しました。既存株主の持分を譲り受ける形で、みずほFGがUPSIDERの約70%の株式を保有することになります。
「業績が悪いから救済的にM&Aされたのではないか?」「メガバンクの傘下になり保守的な会社になるのか?」
もしかしたら、そのように思われるかもしれません。でも答えは、「ノー」です。
創業メンバーは株式を持ち続けますし、従業員たちのストックオプションも残ります。今後も現経営陣を中心とした経営体制で引き続きIPOを目指す計画です。事業も売上で100億円規模まで拡大しており、年間50%成長を続けています。
今回の決断は、この事業をさらに爆発的に加速させるためのもの。私たちにとって、ここが「ゴール」ではなく、ここからが新たな挑戦の「スタート」です。
このnoteでは、UPSIDERがみずほFGへのグループインという道を選ぶまでの私の葛藤と、意思決定した理由について振り返ります。
周りを見る余裕すらなかった2年間
私たちが法人カード「UPSIDER」を正式にローンチしたのが2020年9月のこと。そこからの約2年間は、周りを見る余裕すらありませんでした。私たち自身が日々の資金繰りで死にそうだったからです。
法人カードはそのビジネスモデルの構造上、自社の懐から先行してお金が出て行きます。つまり成長すればするほど、それだけ巨額の元手が必要になる。UPSIDERの場合、資金調達をしても、事業の成長スピードに全く追いつきませんでした。
中小企業やスタートアップの「資金繰り」の課題を解決するために始めたサービスなのに、その運営企業の代表である私が誰よりも資金繰りに奔走している。そんな状況でした。
もう少しゆっくり成長してほしい。
スタートアップの経営者としては望ましくない考え方ではありますが、そんなことを思うくらい、ギリギリだった。
そんな中でも、ほとんど関係性がないにも関わらず、数千万円単位でお金を貸してくださった経営者の方々のおかげで、挑戦を続けることができました。当時支えてくださった方々には本当に頭が上がりません。
このままでは「手遅れ」になるかもしれない
少しずつ自分たちの状況を俯瞰できるようになったのは、2022年に入った頃からです。この年はUPSIDERにとって変化の1年になりました。
5月に150億円、10月に467億円の資金調達を実施。エネルギッシュなメンバーが続々と加わり、事業としても組織としても、ようやく土台が整い始めました。また4月にはクレディセゾンと共同で、請求書カード払いサービス「支払い.com」の提供も始めています。
何より大きかったのが、サービスローンチから1年以上が経過し、明確にお客様の層が変わったことです。
もともと成長期のスタートアップをターゲットにして始まったUPSIDERは、お客様のほとんどが都内のスタートアップ企業でした。ただ、2022年にはユーザー層が完全に逆転し、8割以上が全国の中小企業の方々になっていました。
「支払日の数日前だけれど、何とか与信枠を増やしてもらえないか」「少しでも支払いサイト(期日)を伸ばしてもらえないか」
中小企業のお客様が増えるほど、より広いお金の悩みをご相談いただく機会が増えました。
例えば、当時からお付き合いのあるお客様の一人に、京都で老舗の和菓子屋を経営している経営者の方がいらっしゃいます。オンラインでの販売に力を入れたり、積極的に店舗を展開していらっしゃる企業です。
京都は全国的にも人口が多く、お金を巡る支援の選択肢が豊富にあるように見えるエリアです。
それでも、「UPSIDERを使い始めて、初めて与信を受けられた」とお話しくださるケースが多くあります。これは特に中小企業においては、珍しいことではありません。
中小企業向けの金融は、信用補完の難しさや、少額・高頻度対応の非効率性などから、非常にチャレンジングな領域です。人手をかけてきめ細やかに対応する運営モデルは、業界全体の担い手不足により、持続が難しくなりつつあります。
一方で、中小企業側でも担い手不足が深刻化しつつあります。経営者が経理を兼務するケースや、“1人経理”の方が重責を負っているケースも少なくありません。かつそうした方々の平均年齢が上がっており、このままでは10年後、20年後、どうなっていくのか。
これまで試行錯誤しながらサービス運営をしてきましたが、ご支援できているのは5年で8万社。決して悪くはないペースかもしれない。ただ、日本で100万社以上ある中小企業の数%に過ぎません。仮に同じペースでは、10年で20万社弱。
「このペースでは遅過ぎて、手遅れになるかもしれない」
中小企業の方々と接するほど、自分たちの成長スピードに焦りと危機感を抱くようになりました。
そんな中で突然届いた1通のメールと、私の葛藤
このような出来事が重なり、私は自分たちの成長スピードにものすごく意識を向けるようになりました。
特に2024年から2025年にかけては、日本における中小企業金融市場が激変し、転換点を迎えています。いまだかつてないほど大きなチャンスが到来しているタイミングだからこそ、
自分たちの成長スピードを数倍ではなく、十数倍上げる。そんな爆発的な打ち手をずっと模索していたのです。
冒頭で紹介した1通のメールは、そんな最中で届いたものでした。