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「お客さんの会社にメンバーとして入る」これからの「上流の仕事」、TAMベテランメンバーが語る

「より上流の仕事をできるようにならなければ」――。

会社で働く中で、よくこんな言葉を耳にします。しかし、若い人からするとそれはとても難しく、まだまだ先の仕事のように聞こえるかもしれません。

そもそも「上流の仕事」とは、どのようなものを指すのでしょうか? また、今の仕事から上流へと移行していくには、どうすればいいのでしょうか?

デジタルエージェンシーTAMのプロデューサー兼ディレクターである、小栗朋真さんと飯田健さんに話を聞きました。

株式会社TAM 共創プランニングチームリーダー 小栗朋真
TAM歴20年、コピーライター/プランナー出身の右脳型プロデューサー。困難を乗り越えるプロジェクトマネジメント力でクライアントとの長期に渡るパートナーシップを築く。趣味は石花(ロックバランシング)とファミリー野宿
株式会社TAM プロデューサー・ディレクター 飯田健
1989年京都生まれ。新卒では大手電機メーカーにてマーケティングを担当。仕事の傍らデザインとコピーライティングを学び、Web制作会社を経てTAM入社。クライアントにMBS毎日放送様、ミズノ様、サクラクレパス様など。認知からコンバージョン、拡散に至るまでの動線をフルファネルで設計・企画する

上流=コンサルの仕事、ではない

―お2人とも「プロデューサー兼ディレクター」という肩書きですが、それぞれどんなお仕事ですか?

飯田:お客さんの「こういうことをやりたい」を案件化していくのがプロデューサーの仕事。設計図を描くところですね。そしてその設計図を実際に作るのがディレクターの仕事かな、と僕は思っています。

小栗:僕は最近、ある会社のECサイトに携わっているんですけど、最初の4~5カ月は僕がメインで窓口をやって、コンセプトづくりや方向決めをしていました。今はそれを元に制作フェーズに入っていて、現場の得意なディレクターにバトンタッチして僕は全体を統括している、という感じ。これはプロデューサー業かな、と思います。

ほかにも、「案件単位ではなく、お客さん単位」で話をさせてもらっているところがいくつかあって、小さい案件も含めて継続的に声をかけていただいています。比較的制作寄りの仕事ですが、それを僕が広げてからディレクターに渡すので、それもプロデューサー業と言えるかもしれません。

―コンサルタントが担うような、いわゆる「上流の仕事」といった感じですね。

小栗:それとは、ちょっと違うんですよね。こちらのプランやアイデアを買ってもらって、あとは制作会社にまかせる、というのではなくて、「お客さんとタッグを組む」のが僕らの「上流」の考え方です。

長くお付き合いしていきたいので、一緒に作って、成果も一緒に体験して……というのを絶対にやらないといけない。むしろ、コンサルティングだけでは成果が出ない、というのを体験したお客さんが、僕らに仕事を振ってくれるケースが増えてきています。

飯田:僕らにとって上流の仕事とは「お客さんの会社にメンバーとして入ること」というイメージがありますね。お客さんのマーケティングや広告宣伝部の一員になると、中のことがすごく分かるし、「今度こんなことをやったら面白いですよね」という話も、雑談みたいに自然に出てくる。

お客さんにとっても、会社のビジネスや戦略について深い理解のある僕らに相談すると、仕事がうまく進む、という感じだと思うんですよね。

ただ、その会社の社員になるわけではなく、あくまでもWebやデジタルマーケティングのスペシャリストという形で入るという意味では、いろんな知見に基づいたコンサル的な提案もやっぱり必要になります。ただ、それをメインの業務にしているわけではないという。

なぜ、上流の仕事をしなければいけないのか?

―よく、「より上流の仕事をできるようにならないければ」と言われます。

小栗:いわゆるWebサイト作りみたいな、やることが決まっていて、設計図通りになにかを作れる会社はいっぱいあるので、より上流の、さらに付加価値の高い仕事をするというのは、1つ大事だと思っています。

もう1つは、お客さんにとっても上流の仕事を一緒にやるパートナーが必要ということですね。上流で全体を俯瞰して、制作も運用もするという、全部一貫してできるパートナーです。

飯田:デジタルマーケティングが主流になってきたことで、複雑さが増しているんですよね。

かつてのマス広告なら、テレビ、ラジオ、新聞など、4、5つぐらいのメディアを統一して管理していればよかったけど、デジタルになると、「広告はこっち、Webサイトはあっちに頼んで……」みたいなことが起こるので、バラバラになりやすいんですよ。

それを、サービス自体のクリエイティブも含めて統括できるような存在、さらに、新しくどんどん生まれてくるSNSや広告媒体などのタッチポイントについても提案できるような存在、というのは、今必要とされているんだろうな、と感じます。

―個人的には、なぜ上流の仕事に携わっているのですか?

小栗:自分の存在意義を感じられるから、というのが大きいですね。お客さんに頼りにされたい、「モテたい」と思って、ずっとやってきました(笑)。

飯田:言われたことをやるだけじゃなくて、自分たちが「本当にやったほうがいい」と思うことをできるのが、上流のいいところかな、と思います。

例えば、「広告を出したい」と相談されたとき、広告を出したその先のランディングページや商品がちゃんとしていなかったら、「たくさん人が来ても意味ないやん!」と思うじゃないですか。上流の仕事だと、そこで「まずはランディングページを整えてから広告を出しましょう」という提案もできる。

「もっと効果の出やすい順番があるのになあ……」と思いつつやるような仕事は減るわけです。

小栗:僕らはそうやって “口出し” しながら上流に上ってきました。

どうすれば、上流の仕事に就けるのか?

―お2人はどのようなキャリアパスで上流に上っていったのでしょうか?

小栗:「何でもやる」

飯田:それは間違いないですね(笑)。

小栗:僕の社会人としての出発点は、ライター兼プランナーでした。ディレクターとセットでいろんなお客さんのところに行って、企業のWebサイトや記事広告の提案書を作ったりしていました。

ディレクターはお金やスケジュールなどの話をして、僕はどっちかというと面白いアイデアで笑わせたりして、「美味しいポジション」にいました。そのころからお客さんに近かったんです。

それから経験を積んで、ライターとディレクター業をどちらもやるようになりました。そうすると、記事によってどのぐらいお客さんの売り上げにインパクトがあるのかを考えるようになりますし、直接お客さんと話をするので、「これをやってみましょうよ」と、いろいろ自由に提案できるようになっていきました。

飯田:僕のキャリアの始まりは、大手電機メーカーの空調機器の企画・マーケティング部門でした。そこで大企業での仕事をある程度経験した後、今度は中小企業向けのWebサイト制作の会社に転職しました。

すごく案件数が多くて、3年半在籍した中で、200人の社長とやり取りして200以上のサイトを作ったんですよ。その中でブランディングもコピーライティングもデザインも、学校に通ったりしながらひと通りやりました。社長といつも直接しゃべるので、営業スキルも身について。

その後に、自分のブログ運営やTAMの仕事で、SEOやマーケティング・オートメーションに注力した時期もあって……。あれこれやったので、自分がやってこなかったことでもそれなりに “当たり” がつくようになって、上流の話もできるようになったという感じです。

―経験を積む中で、上流の話ができるようになるんですね?

小栗:TAMでは、どんな案件でも「3C(自社、顧客、競合)」「4P(製品・サービス、価格、流通、販促)」みたいな、マーケティングの基本的なフレームワークをちゃんと理解したうえで、「PGST(プロジェクトの目的/ゴール/戦略/戦術をとりまとめるTAM独自のフレームワーク)」を作っているので、いろいろ積み重ねる間に、自然と上流のことを考えられるようになるとは思います。

つまり、上流の仕事をするためのなにかスーパースキルがあって身につけたわけではなくて、「これはなんのためにやっているんやろう?」というのを、面倒くさがらずに、コツコツとずっと考えてきたということですね。

飯田:それに、TAMのような組織でデジタルマーケティングに携わっていると、自分とは異なる専門性を持つ、別のチームの人とかも連れてこれるじゃないですか。

お客さんが「こういうことをやりたい」「こういう悩みがある」というときに、自分が全部を解決できなくても、「その話についてはこういう情報が必要」とか、「こういう人を連れてきたほうがいい」というのが分かるのが、上流かなと思います。

小栗:そうやって、お客さんが相談してくれる関係性があるんですよ。とりあえず、「僕らに話せばなんとかしてくれるやろ」みたいな(笑)。

―しかし、みんながみんな、そのように上流の仕事に就けますか?

飯田:僕が大事だと思うのは、自分が感じた違和感をちゃんと口に出して伝えていくことだと思います。お客さんが「ここを変えてほしい」「ここを戻してほしい」というのに対して、「分かりました」「戻します」だけでは、上がっていけない。

僕は結構、いらんことも言うかもしれないんですけど、「これってなんの役に立つんですっけ?」とか、「これだとユーザーがあまり来なさそうですよね」とか、そういうことを言うんです。だから、「じゃあ、なにが必要? 一緒に考えてもらおう」と思ってもらえるのかもしれません。

小栗:疑問に思ったことを遠慮なく言えるというのは必要ですね。ただ、その際にはポジティブに伝えることもめちゃくちゃ大事だと思います。お客さんの考えを尊重したり、マナーを守ったりすることも、もちろん大事やし。

上流の仕事の「先」にあるもの

―自分の専門性を突き詰める人と、お2人のように上流に行く人との違いは?

飯田:「必ずしも上ることがいいというわけではない」という前提はあります。僕も実は、コピーライターのように専門職として1本で勝負できるんだったら、本当はそのほうがカッコいいと思うんですけど。

そのうえで、上流に行く人との違いは、ビジネス自体に興味があるかどうか、かなと思っています。

小栗:専門職の人でも、ビジネス目線を持つ人はいますよ。ライターでもデザイナーでも、お客さんと同じ方向を見て、上流の仕事はできますし。

ただ、プロデューサーの仕事ということになると、もう少し広い引き出しを持っていて、いろんなことを俯瞰して見られるジェネラリスト的な資質が必要だと思います。

飯田:たしかに、プロデューサーはお客さんと直接つながって、ニーズを引き出せるような営業マインドも必要とされますね。

―今後、お2人はキャリア形成において、さらに上流に行くことを考えていますか?

飯田:クライアントのデジタルマーケティングを受託でやるのではなくて、TAMとして事業を持って、それをデジタルマーケティングでうまくやる、というのをやってみたいなあと思いますね。

ビジネス自体に興味があるので、すでにあるものをデジタルマーケティングで広げるだけじゃなくて、売り物を作るところも全部自分でやってみたいという。そこって「最上流」のような気もするんですよね。

小栗:僕はとにかく頼られることがとても嬉しいので、あまり「次のキャリア」というのは考えていませんが、ディレクターを中心に、1人でも多くの社員に、頼られることの喜びや仕事のやりがいを感じながら仕事をしてもらえたらいいなあ、と思います。

[取材] 岡徳之 [構成] 山本直子 [撮影] 藤山誠
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