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新たな専門性を身につけ、異業種に転職 「リスキリング」を成功させるには? TAMの若手社員に聞く

「リスキリング」という言葉を聞いたことがありますか?

これはテクノロジーの発展や働き方の変化に伴う、新たな業務のために知識やスキルを身につけることを指します。主に会社側が従業員に施す「再教育」の意味合いで使われていますが、最近では個人が自分のキャリアを切り開くための「学び直し」的な意味でも広がっています。

デジタルエージェンシーTAMで働く3人の若手社員も、そんなリスキリングを自ら行い、前職とは違う新たな分野で挑戦を続けている人たちです。どのようなリスキリングを行ったのか、そしてどうすればキャリアチェンジを成功に導くことができるのか、話を聞きました。

はじめての就職でモヤモヤ、転職で「やりたいこと」にキャリアチェンジ

―みなさんは、前職とは違う職種に転職されました。まずは、その内容をご紹介ください。

木村:新卒では、保育園・幼稚園のイベントなどで撮影された写真をWeb上で販売するサービスを提供する会社のエンジニアとして、営業や経理の方が使う業務システムを作っていました。そこで1年2カ月ぐらい働いて、2020年9月にTAMに入社しました。

現在25歳で、社会人4年目。今はデザイナーとして、クライアント企業のWebサイトやアプリケーションなどをデザインしています。最初は、ベテランのデザイナーさんと一緒に案件に入っていろいろ教えてもらっていましたが、今はデザイナー1人、エンジニア2人、ディレクター1人くらいの、小さめの規模の案件に1人で入ることが多いです。

杉山:僕は29歳で社会人4年目です。大学を中退してフラフラしていた時間が割と長かったんですが、デザイナーになりたいと思って、東京でアルバイトしながら職業訓練校に通って、未経験の状態で前のデザイン会社に入りました。

その会社は紙の広告が大半を占めていて、僕は不動産の広告や会社案内などのグラフィックデザインをメインにやっていました。

そこで3年半ぐらい勤めていたんですけど、Webデザインの世界を深めていきたいと思って、今年6月にTAMにジョインしました。今は、Webやバナーなどのデザインをやっています。

渡邉:私は26歳です。前職は人材紹介会社の新規開拓営業として、テレアポなどの業務をしていました。主に20代の就職・転職支援を行っている会社で、東京と大阪の2拠点で50人ぐらいの規模でした。

会社でインターネット配信みたいなことを行っていて、新規開拓営業の傍ら、その司会をやったりもしていました。

そこで1年弱働いていて、先月TAMに広報として入社しました。今2カ月目を迎えたぐらいで、まだリスキリングの途中です。

―リスキリングされた率直な理由は?

木村:大学では、沖縄でサンゴの研究をしていました。プログラミングに興味を持ったのは知り合いの影響で、たまたま沖縄で開催されていた無料のプログラミングスクールで2カ月ぐらい学んだのがきっかけです。

もともとモノを作ったり、絵を描いたりするのがすごく好きで、プログラミングも実際に手を動かして作るという作業がすごく楽しいな、と感じました。

その中でも特に(プログラミング言語の)「HTML」や「CSS」で色をつけたり、形を作ったりするのが好きだなあ、と感じて。「見た目を作る」という作業が自分にはすごく合っているし、もっとそこを強めたい、という思いが強まりました。

新卒ではデザイナー職に応募しましたが、スキルもポートフォリオもない状態だったので、すべて落とされてしまって……。エンジニアとして受かった会社に入ったんですけど、何年か後には絶対にデザイナーになろう、と思いながら働いていました。

杉山:僕はグラフィックデザイナーになりたいと思って、職業訓練校でいろんなソフトの操作などを軍隊式に学びました。カリキュラムの一部で、Webデザインとかコーディングについてちょっとかじる機会もあって、そのときには「こういう風に作っているんだ」という驚きや楽しさを感じました。

最初の就職はいかにもデザイン会社というところで、かなりスキルの高いデザイナーさんが上司にいたりして。そこで鍛えられはしたんですけど、同時に挫折する部分もあって……自分はグラフィックデザインの分野にあまり向いていないのではないか、と思ったりしていました。

そんな中、時代の流れでWeb制作の仕事もちょいちょい入るようになってきて、会社の中でほかにそれができる人がいなかったので、自分の立ち位置を確立できたというか。

でも、まわりに知識を共有できる人がいなかったり、「我流でやってる感」がすごくあって、だんだん限界を感じるようになってきたんですね。会社でWebの仕事をやるようになって1年ぐらい経ったあたりから「Webの会社に行きたいな」と思い始めて、リスキリングを意識するようになりました。

渡邉:私は大学時代、観光学部で「街づくり」とか「地域創生」といった活動をしていて、地域の方々とふれ合っていく中で、魅力の訴求の難しさとか、いろんな課題があることを知りました。同時に、留学や旅行を通じて海外の魅力を感じた時期もあって。以来ずっと、海外と日本の地域の魅力的な人や文化をつなげられるような人になりたいな、と思っています。

前職は人材紹介会社ということで、社会の動向だったり、働き方だったり……いろんな事情を知れるのが魅力だし、挑戦してみようと飛び込んでみました。でも、将来的には「街づくり」や「魅力をつなげる」みたいなことをしたいので、そこにずっと所属するイメージではなかったんですね。

TAMからお話をいただいたときは、「広報」って自分の目指すところに通じるものがあるんじゃないかな、と思いました。無形商売なのでそれを人に広めるって大変だなって、今でも思っているんですけど、自分にスキルが身についた先には、地域や人をつなげることにも活かせるんじゃないかなと思って、挑戦し始めたところです。

転職準備で休日にリスキリング

―具体的にはどんな風にリスキリングをしたのでしょうか? またその際に大事なことはなんですか?

木村:まず、リスキリングは自分の好きなことじゃないといけないなと思って……私はたまたま「自分はデザインが好き」というのを知れたからうまくいったというのはあります。どうやってその「好き」を見つけるか、が難しいんですけど、チャンスがあるときに挑戦してみるというのがコツかなと思います。きっかけは本当になんでもいいので、実際に行動に移してみる。

「好き」を見つけてから実際にそのスキルを身につけるのも大変で、辛いこともあるんですけど、好きだから続けられました。前職では朝から晩まで仕事をしていたので、休日を使って情報収集をして、デザインの勉強ができるサービスを自分で見つけてやってみたり、デザインのイベントがあったら必ず参加してみたり。小さいことなんですけど、空いた時間はデザイナーになるために投入していました。

杉山:自分の場合は、会社の業務の中でもWebデザインのスキルを磨くことができる環境ではあったんですけど、どうしてもそれだけでは足りないというか。割合としては紙が重視されてる会社だったので、あまり本格的なWeb制作というのもなくて、それは業務時間外で勉強する必要がありました。

妻がWeb制作会社のフロントエンドエンジニアなので、出身高校のホームページとか、知り合いのスタイリストさんのポートフォリオサイトとかを、夫婦で副業的にちょくちょく受けたりしてましたね。

あとは会社の仕事でも、外部のエンジニアから聞いた仕事の進め方などを自分の中に取り込んでいって、Web制作のリテラシーを高めて、徐々に舵を切っていった感じです。

渡邉:私は転職前に「広報」の素地を磨くというのは正直なかったのですが、オンラインセミナーに参加してみたりとか、自分が今後活かせるかもしれないスキルを磨くことに土日を割く時期がありました。

リスキリング中の今も、本やネットで情報収集をして、できるだけ必要なスキルを吸収するようにしています。

―どうすれば、前職とは違う職種に転職できますか?

木村:前職がまったく違う仕事でも、絶対になにかしらは活かせる経験があると思います。私の場合はコーディングができたので、それを結構アピールして入りました。

そうすると、入った後に、私としてはデザインをやりたかったのにコーディングの仕事も来ることがあって……。そこは1年に1回の目標設定の場で、「もっとデザインをやりたい」ということをリーダーに伝えました。希望を聞いてもらえて、今はデザインに集中しています。

デザイナーとして自分ができることを証明しないといけないので、会社に入ってからもスキルを磨くことはずっとやり続けなきゃいけないな、と思っています。

杉山:転職活動では、(クラウドツールの)「Notion」を使って、副業で作ったホームページのほか、会社で作った紙のデザインの成果物とか、趣味で作ったものとかを入れてポートフォリオサイトを作りました。

それから「Wantedly」に登録して、TAMにオファーをかけたところ、トントンと入社が決まりました。

渡邉:前職で20代の転職を支援していた関係で、企業側が求職者のどんなところを見るかという知識はあったんですけど、いざ自分になったらそんなに取り繕えるわけでもなく(笑)。面接ではスキルや経験がないことを全部開示して、自然体で臨みました。

ただ、自分の先を見据えて、これからどういう行動ができるのか、なにをしていきたいのか……みたいなところは、ちゃんと提示ができたから今があるのかな、と思っています。

最初の一歩を踏み出そう

―リスキリングの一番の難しさ、困難はなんでしょう? また、それをどう乗り越えてきましたか?

木村:私の場合は、デザイナーとして入社してからが結構大変でした。というのも、デザイナー未経験だったので最初全然できなくて……。先輩にレビューをもらっていましたが、むちゃくちゃ厳しくって何回も泣いていました(笑)。

それがだいたい1年半ぐらい続きましたが、レビューを何度もしてもらううちに、デザインとプロジェクトの進め方に関して少しだけコツがつかめてきて。小さめの案件で、はじめて「デザインを1人で担当する」ということを学びました。

杉山:僕の場合は、「紙からWebへ」だったので、そこまで大きな壁を感じたわけではなかったですね。でも、自分の好きなものを見つけるというのは本当に難しいことだと思います。

前職の会社で、グラフィックデザインになんとなくフィットしきれなくて、自問自答し続けるみたいな……そこの苦しみはあったかなと思います。いろいろ内省しながら考えを固めていった結果、今はWebデザインが自分に合っているんじゃないかと思っていますけど、まだこれからも変わるかもしれないですし。

渡邉:やっぱり、最初の1歩を踏み出すのって勇気がいるし、大変だなと思います。そして、リスキリングし始めた後も、思ったようにいかなかったり、自分のスキルのなさに驚いたりするんですよ。

でも、広報というところで、自分が会社にも人にもなにを与えられるのかを考えた上で、「自分だからできること」というポジショニングを築きたいな、と思っています。

―最後に、リスキリングを考えているみなさんに向けて、一言お願いします。

木村「好きなことはあきらめるな!」と言いたいですね。私もまったく経験がなかったけど、実際にデザイナーになれたし、やればできるので。

杉山:会社内での自分の役割みたいなところを絶対視しなくていいよ、と言いたいですね。会社の中で求められることにとらわれすぎる必要もないというか。

俯瞰してみて、対世の中・対社会になったときに自分がどうありたいか、という事を考えたほうがいい。もし、会社の仕事にフィットし切れていない感じ、歯がゆい感じ、「もっとこういうことをしたい」という気持ちがあるなら、会社の外の世界を意識して考えてみるといいと思います。

渡邉:まず、リスキリングはラクじゃない。でも、やってみたいんだったら、やってみていいんじゃないかなって。死ぬわけじゃないし(笑)。ただ、自分が壁にぶち当たることも覚悟しておかないと、続かなくなってしまったり、自分が思い描いていたものに近づけなくなったりしてしまいます。覚悟を持ったうえで、挑戦することが大事じゃないかな、と思います。

[取材] 岡徳之 [構成] 山本直子 [撮影] 藤山誠、石田バレット (Barrett Ishida)
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