デザイナーが取り組むチーム運営「DesignOps」とは? | スパイスファクトリー株式会社
こんにちは。UXデザイナーの永田です。みなさんは「DesignOps《デザインオプス」という言葉をご存知でしょうか?近年、デザイン組織の成長とともに注目を集めているこのキーワード。実は特別な概念...
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2025年6月、デザインツールFigmaに、新たな生成AI機能「Figma Make」のベータ版がリリースされました。プロンプト(指示テキスト)1つで、デザインとコードを自律的に生成するというこの機能は、瞬く間に世界中のデザインコミュニティで注目を集めています。
私たちスパイスファクトリーは、デザイン組織の生産性と創造性を最大化するため「DesignOps」を推進しています。
今回は「DesignOps Tool Unit」の視点から、具体的なツールの活用事例をご紹介します。
Figma Makeという未来のツールを、当社のデザイナー3名がいち早く試し、そのリアルなファーストインプレッションについて意見交換した内容を、この記事でレビューします。
「実際のところ、仕事で使えるのか?」
「他のAIツールと何が違う?」
といった現場の率直な疑問から、私たち専門チームが目指す「AIをパートナーとして共創するデザインの未来」まで、余すところなくお伝えします。
▼ DesignOpsに関してはこちらをご参照ください
Figmaは、WebサイトやアプリケーションのUIデザインを、Webブラウザ上で直感的に作成できるデザインツールです。
その最大の特徴は、リアルタイムでの共同編集機能にあります。
デザイナーだけでなく、ディレクター、エンジニア、クライアントまで、関係者全員が同じ場所に集い、デザインプロセスを加速させることができます。
今や、プロジェクトにおけるコラボレーションの中心地と言える存在です。
Figma Makeは、Figmaに新たに搭載された、プロンプト(指示テキスト)からコードを生成するAIツールです。その目的は、アイデアや既存のデザインを、実際に操作できるプロトタイプやWebアプリケーションへと迅速に変換することにあります。
ユーザーはチャット形式の対話を通じて、AIに指示を出したり、修正を加えたりしながら、アイデアを形にしていくことができます。単に静的なデザインを作るだけでなく、インタラクティブなUIやWebサイト全体を構築できるのが大きな特徴です。
2025年6月時点でベータ版として提供されています。
図1 : Figma Makeの基本インターフェース
これまでもデザインを自動生成するAIツールは存在しましたが、Figma Makeがそれらと一線を画すのは、Figmaのエコシステムと深く連携している点にあります。
Figma Makeはテキストのプロンプトだけでなく、以下のような情報もインプットとして活用できます。
これらのように、既にあるデザイン資産をAIに直接参照させ、それを元に新たな生成や反復的な改善を行える能力こそ、他のツールにはないFigma Makeの圧倒的なアドバンテージと言えるでしょう。
実際にFigma Makeを使ってみて、デザイナーたちが何を感じ、どう評価したのか?
機能ごとに具体的な感想と活用例をご紹介します。
UI自体は直感的ですが、いきなり思い通りのデザインを生み出すのは、一筋縄ではいかないようです。
面白い発見だったのは、人間が試行錯誤してプロンプトを書くよりも、ChatGPTやGeminiといった他のAIに「Figma Makeで使いたいから、この要件でプロンプトを作って」と依頼した方が、Figma Makeの理解度が格段に上がることでした。
簡単な指示だけでは意図が伝わりにくく、精度の高いアウトプットを得るには、AIとの対話方法を学習していく必要があると感じました。
既存のワイヤーフレームを改善したい場合に、フレームを直接貼り付けて指示できる機能は非常に便利です。ただし、ファイルが重いと読み込みに失敗することがあり、ここは今後の改善に期待したいポイントです。
図2 : 実際にダッシュボード作成を指示した際のプロンプト
生成されるデザインの品質は、その用途によって評価が大きく分かれました。
ワイヤーフレームや業務システムの管理画面など、ある程度パターン化されたUIの生成精度は驚くほど高いです。
これまで多くの時間を費やしていた画面設計の叩き台を、圧倒的なスピードで作成できる可能性を秘めています。
一方で、LP(ランディングページ)のようなオリジナリティが求められるデザインには、まだ力不足な印象です。また、生成される日本語テキストに不自然な点が見られたり、UIパーツの細かな挙動に一貫性がなかったり、プロダクトレベルの品質を求めるにはまだ課題が残ります。
試行錯誤の過程をバージョンとして保存・復元できる点は非常に安心でした。指示を間違えたり、アウトプットが意図しないものになったりしても、すぐに前の状態に戻れるこの機能は、他のAIツールにはない大きな安心材料と言えるでしょう。
図3 : プロンプトを一度入力しただけで生成されたダッシュボード
では、私たちはこの新しいツールを、どのように活用していくべきでしょうか。
「この機能を入れたい」と指示すれば、関連するポップアップなどをAIが自ら判断して追加提案してくれることがあります。
この能力を活用すれば、クライアントへの初期提案や、プロジェクトのキックオフで用いるプロトタイプを、これまでにないスピード感で作成できます。
Figma Makeは、生成した複数の画面間の遷移も自動で設定してくれます。
従来、デザイナーが一つひとつ手作業で繋いでいたプロトタイプ作成の手間が大幅に削減されるのです。これにより、「ユーザーに実際に触ってもらい、素早いフィードバックを得たい」といった場面で、非常に低コストかつ迅速にプロトタイプを用意できるようになります。
私たちDesignOps Tool Unitは、Figma Makeのような新しいツールを、単なる「効率化ツール」として評価するだけではありません。これらのツールを「人間の思考を加速させ、クリエイティビティを拡張するデザインパートナー」として、いかに制作プロセスに組み込んでいくか、という視点を大切にしています。
AIによって画面設計の叩き台を作る工数を削減し、そこで生まれた貴重な時間を、より本質的な課題解決、ユーザー体験の深い洞察、そして人間にしか生み出せないクリエイティブな表現の追求に注ぎ込む。つまり、AIの活用は「妥協」ではなく、最終到達地点にたどり着くまでの可能性を「エンハンス」するための戦略なのです。
AIが作った精度の高い土台の上で、経験豊富なデザイナーが専門知識と感性をもって細部を磨き上げ、全体の品質を飛躍的に高める。DesignOpsの観点から、こうした新しいワークフローを構築し、組織全体に展開していくことこそが、私たちのミッションです。
Figma Makeはまだベータ版であり、今後の進化から目が離せません。私たちDesignOps Tool Unitとしても、デザイン組織全体の力を引き出すこうしたツールや手法の探求を、今後も続けていきたいと考えています。
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Writer: [Interface&Experience Design Div. UX Designer] MAH KAI-LE