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中途社員の働き方|薄田裕也さん―銀座のフレンチから埼玉のおふろ屋さんへ。

ゴロッゴロッとお野菜が盛られたカラフルなサラダ、カリッと焼き上げられたサーモン、旬の食材をふんだんに使った季節のパスタ、植木鉢に入ったティラミス…!?

「おふろcafé ハレニワの湯」にある「ハレニワ食堂」には、(良い意味で!)お風呂屋さんらしくないメニューが並びます。

「お風呂屋さんの食堂でしょ?」と侮るなかれ! ハレニワ食堂のメニューにはどれも「美味しい」はもちろん、「キレイ」「カワイイ」「楽しい」などなど、嬉しい驚きがたくさん! そこには、東京・銀座のフランス料理店で修行を積んだ料理長が率いるハレニワ食堂のキッチンスタッフの「お客様を喜ばせたい!」という気持ちが詰まっています。

今回は、普段はなかなか覗くことができない「ハレニワ食堂」の裏側に注目すべく、料理長、薄田裕也(すすきだゆうや)さんにインタビューをしました。

薄田裕也(すすきだゆうや)
おふろcafé ハレニワの湯 「ハレニワ食堂」料理長
埼玉県出身。埼玉県の調理師専門学校を卒業後、上京し銀座のレストランで修業を積みメニュー開発までを手掛けるようになる。得意なジャンルはフランス料理。趣味は海外サッカー観戦とNPB観戦。

熊谷の野菜が美味しいなんて、ハレニワ食堂で働き始めて初めて知りました

ーー今日はよろしくお願いします! 薄田さんは元々、東京・銀座の一流レストランで働いていらっしゃったそうですが、銀座のレストランとおふろcaféのようないわゆるお風呂屋さんの食堂だと、価格からメニューまで全く違いますよね。良いところも難しいところもあると思うのですが、まずは実際に働き始めて発見した良いところから教えてください!

たしかに、以前の職場とハレニワ食堂では違うところばかりです(笑)

実際に働きはじめて一番感じたのは、「生産者さんの顔が見える喜び」でしょうか。ここハレニワ食堂では、地元熊谷の野菜を使った料理を「楽しく、美味しく、お腹いっぱいに食べること」をコンセプトにして、お野菜を地元の農家さんから直接仕入れています。そのため僕が自分で近隣の農家さんを訪ねて仕入れたり、「取引させてもらえませんか?」と交渉したりして回っているんですが、これが僕にとってはものすごく新鮮な経験でした。

東京にいたころは、欲しい食材があれば業者の方に頼んでおけば、全国から何でも届けてもらえました。今思えば、その先にいる生産者の方の顔はほとんど考えたこともなかったです。

僕自身が最初から地産地消に興味があったわけではないのですが、熊谷にきて発想が変わりました。農家さんの顔を直接見ながら話を聞いて、こだわりや大変さもしっかり受け取って扱う野菜は、やっぱり心の持ち様も違います。一つ一つ愛情を持って大切に使いたいし、「どうやったらこの野菜たちを、お客さまに一番喜んでもらえるように出せるかな?」と自然と考えるようになります。

また、色々な方と出会う中で「熊谷って意外と面白いんだな」ということにも気づきました。それまでは、とにかく「暑い」の印象が強いし、町のイメージはあるものの国道沿いに大手ファーストフードやファミレスチェーン店が並んでいて、土日はショッピングモールに人が集まるような、割と全国どこにでもあるような場所だと思っていたんです。

でも実際は、個性的で素敵な人がいたり、美味しい野菜があったり、面白い取り組みをしていたり……外から中に来たからこそ見える魅力がたくさんありました。

熊谷の野菜って、お世辞抜きで美味しいんですよ。特に夏野菜。やっぱり日照時間が長いからですかね。味が濃くて、色も濃いんです。でもそれって全然知られていなくて、僕もここにきてはじめて知りました。

最近だと、「青パパイヤ」に注目が集まっています。タイ料理などによく使われるんですが、クセがなくて使いやすいのに、栄養価がすごく高いんです。これも熊谷市内で作られていて、ハレニワ食堂でも使わせてもらっています。青パパイヤなんて銀座時代には触ったこともなかったです(笑)

そんな風に、この地域ならではのものを使う楽しさと、自分がみつけた地元の魅力をハレニワ食堂を通じてお客さまにも知っていただく喜び、みたいなことはこの場所で働いているからこそだろうなと思います。

バラバラの人が集まっているのに、気づけばすっかり仲良しに

ーー青パパイヤの木はハレニワの湯にも置いてありますね! 南国風の雰囲気がマッチしています。キッチンの中の雰囲気はどんな感じなのでしょう? なかなか表からは見えない部分ですが……

自分でいうのもなんですが、ハレニワ食堂のキッチンは、数ある飲食店の中でもかなりアットホームなんじゃないかな。結構、飲食店の裏側って上下関係が厳しくて、メンバー同士もお互いにライバル視していてピリピリしているような面もあるんですが、ここはそういう感じじゃないですね。

学生もいれば小さなお子さんがいるお母さんもいるし、古くから働いている人もいれば、ハレニワの湯のファンで応募してきたような人もいる。料理を極めたくて入った人もいれば、包丁を握ったことすらなかった人もいます。

集まっている人はすごくバラバラなんですけど、不思議とすごく仲良くしていて、休みの日に一緒にお風呂に入りにきたり、退勤後にラウンジで寝っ転がりながらお喋りしてたりしてるんですよ。温泉道場は福利厚生で、パートやアルバイトの人でも同居の家族は無料でお風呂に入れるので、スタッフの家族まで含めて和んでいることもありますね。

これは温泉道場やおふろcaféのカルチャーかもしれないんですが、キッチン以外のスタッフも皆、新人さんに優しいんですよね。新しい人に積極的に声をかけている姿もよく見かけます。なので入ったばかりの人も気づいたらもう馴染んじゃってます。

僕自身もマネジメントの立場で、仕事はもちろん真剣にやるんですが、できるだけ楽しく、無理なく働いてほしい、という気持ちがあります。これまでほとんど料理をやったことがない、という人でもゼロから一緒に教えますし、シフトの希望なども遠慮せずに言ってもらえるように気をつけています。

僕は以前の職場が色々と大変で耐えられなくなって転職したので、働きやすさや厨房の雰囲気は意識している部分かもしれないです。

「もっと家族との時間を大切にしたい」―そんな中で出会った温泉道場という会社

ーー薄田さんご自身も、「プロフェッショナルな部分」と「家族を大切にするお父さんな部分」とをうまく両立されていらっしゃいますよね。それがキッチンの雰囲気にも良いカタチで反映されている気がします。
ところで、銀座のレストランからお風呂屋さんの食堂へ、というと、かなり思い切ったキャリアチェンジですよね。なにかきっかけのようなものがあったのでしょうか?

最初に答えを言ってしまうと、家族との時間をもっと大切にしたかったから、ですね。銀座のお店では約10年働かせていただいたのですが、当時は仕事ばかりで、生まれたばかりの子どもと過ごす時間もほとんど取れませんでした。

埼玉の自宅から通っていたので、通勤に往復4時間。ホワイトとは言いがたい労働環境で朝早くから夜遅くまで働いていました。「この生活をずっと続けていくのかな……」と悩んでいたときに、温泉道場という会社に出会ったんです。もともとおふろcaféの存在は知っていたんですが、それまでは「なんかオシャレなお風呂屋さんがあるな~」くらいの認識でした。

実際に会社の中を見せていただいたら、飲食事業部が立ち上がっていたり、ちゃんと業界のことに精通している人を起用していたり、ということが分かって「この会社、本気で飲食やろうとしてるんだな」と感じました。

それでいて、福利厚生や労働時間の管理など労務の部分はしっかりしているし、ひとりひとりのキャリアについても一緒に考えてくれて、すごく働く人に寄り添っているなという印象も持ちました。「仕事」と「プライベート」どちらもちゃんと大事にしているんだなと感じて、こういう場所でもっと勉強したいなと思ったんです。それで温泉道場に入社することを決めました。

ここ「おふろcafé ハレニワの湯」は2021年の9月に「おふろ café bivouac」からリブランディングしたのですが、そのときにこのハレニワ食堂も誕生しました。僕もリブランディングの企画段階から携わらせてもらい、食堂のオープンと同時に料理長に就任して今があります。

2万円のコース料理から一変、客単価1000円の食堂メニューを考えることに

ーーハレニワ食堂の料理長として働き始めて、大変だったところはどんなことでしょうか?

メニュー開発ですね。

以前に勤めていたレストランと、ハレニワの湯ではお客様の層も一皿当たりの価格も全く違います。銀座は昼はマダムと言われるような40〜50代の女性のお客様、夜はビジネスの接待利用が主でした。料理はコースのみで2万円です。

ハレニワの湯は、お風呂屋さんですから老若男女様々な人がいらっしゃいます。サウナの後にがっつりしたものを食べたいマッチョなお兄さんも、デートでオシャレなカフェごはんが食べたい若い女性も、小さなお子様連れのご家族もいます。どんな方が来ても、楽しく、美味しく召し上がっていただけるようなメニューを考えています。もちろん、それでいて頼みやすい価格帯であることも重要です。
以前のレストランとは、メニュー作りにおいて大切なことも、使える食材も何から何まで違うんです。

そういえば前職では、前菜からメイン、デザートまで一通り修行をさせてもらったのですが、その時の知識と経験が今ものすごく役に立っています。何でも作れるようになっていて良かった、と(笑)

これまではできるだけ高いレストランを経験することが勉強だったのですが、今はあえてファミリーレストランに行ったり、若い人に人気のカフェに行ったりして、「誰にでも好まれるメニューってどんなものだろう?」と研究しています。

まだまだ試行錯誤の段階で、とにかく作ってみて、食べて、フィードバックをもらって、の繰り返しです。大変といえばそうなのですが、やりがいを感じる部分でもあります。限られた予算の中で、どれだけお客様に喜んでいただけるものが提供できるか。料理人の腕の見せ所です。また、季節ごとにシーズンメニューを用意しているんですが、素案の段階でキッチンのメンバーにも意見をもらって一緒にアイデアを膨らませたりもしています。

ハレニワ食堂から、熊谷の食材を広めていきたい

ーーハレニワ食堂のメニューは、良い意味でお風呂屋さんらしくないですよね。見た目も華やかで、ちゃんと美味しい! その裏側には、薄田さんをはじめ開発に関わる方々の様々な努力があったんですね。薄田さんは今後このハレニワ食堂をどのようにしていきたいと考えているのでしょうか?

このハレニワ食堂を通して、熊谷の食材をもっと広めていきたいと思っています。先ほども地元の農家さんのお野菜について話をさせてもらったんですが、やっぱり地域に根差したお店だからこそ、地域と一緒に盛り上げていきたいという気持ちが最近ますます強くなりました。いつか、熊谷の食材だけで作るメニューも提供したいなと構想しています。

熊谷の新鮮で美味しいお野菜やお肉、ご当地グルメを召し上がっていただき、心も身体も健康になっていただく。そうやってハレニワの湯やハレニワ食堂にご来館いただいたお客様に喜んでいただくのはもちろんですが、それをうまく地域に還元する循環のようなものを作っていきたいなと考えています。

今回は、ハレニワ食堂の料理長である薄田裕也さんにインタビューをさせていただきました。薄田料理長がメニューや食材にかける想いを知り、改めて「お風呂屋さんの食堂っぽくないな~! 良い意味で!」と感じる時間でした。

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