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貪欲にやり切る熱量がクオリティを左右する。NOT A HOTEL建築リーダーが自らに課すルール

ーゾクゾクするほどの非日常と、自宅のように安心する日常の調和、そしてこれを支える設備こそNOT A HOTELには大切なんです。

そう話すのは建築領域の責任者、綿貫將。NOT A HOTELには一人目の設計士として入社し、NOT A HOTEL NASUやAOSHIMAといったフラッグシップモデルをはじめ、現在進行するすべての建築に携わっています。

そんなNOT A HOTELの象徴でもある「建築」を語るうえで欠かすことができない綿貫が考える「NOT A HOTELらしい建築」とは何か。そして、設備設計をバックグラウンドに持つ彼だかこそこだわり抜いたポイントとは。人生への影響を与えたという生い立ちも含め、じっくり話を聞いていきます。

一人の大工との出会いから設備設計の道へ

— 綿貫さんが建築を志したきっかけを教えてください。

私が幼少期の頃に両親が自宅を新築したんですが、その時に見た大工さんの姿が、幼な心ながら純粋にワクワクしたんです。毎日大工さんについて回っていたら、木材や釘をくれて「これで何か作ってみな」と言われたことがきっかけで、ものづくりに興味がどんどん沸いてきました。あと、父親が建築に関する新聞記者だったこともあり、幼い頃からその影響を受けていたのかなと思います。

綿貫 將(@Tasuku_EDGE):芝浦工業大学大学院修了。日建設計にてホテル、オフィス、美術館、図書館、スタジアム銀行、研究所、データセンター案件の設計に従事。21年6月NOT A HOTEL参画。建築領域を管掌する。


ー その原体験がきっかけで建築の道へ?

そうでもないんです。純粋なものづくりへの興味はあったのですが、具体的に建築の道に進むとは思っていませんでした。大学進学の際、電気工学科に進んだのも「就職率がもっとも高い学科だから」という安直な選択でした(笑)。大学では周囲に建築を学ぶ仲間が日々、設計図や模型を眺めるなかで、「やっぱり建築の設計がしたい」という気持ちが強くなり、大学院では光環境という環境建築(環境建築とは地球環境に配慮し、人と自然との共生を考える建築分野)を学びました。幼少期に大工さんのかっこいい姿を目にした、あの頃の記憶がよみがえり建築の道に進もうと決心しました。

— 綿貫さんの専門である設備設計は電気工学や光環境が背景にあったのですね。新卒で入社した日建設計では、継続的に設備設計を担当していたのでしょうか?

実務である設備設計を軸に照明やスマートハウスなどに関わる学会活動や新規領域の研究にも取り組みました。担当した案件は、ホテル、オフィス、美術館、図書館、スタジアム銀行、研究所、データセンターなど多岐にわたります。

— なかでも特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

設備中心の建物用途であるデータセンターや銀行プロジェクトは印象的でした。当時、僕が在籍していた国際設計部では高い設備水準が求められているだけじゃなく、そもそも基準がないものをゼロから形づくる業務も多かったです。世界では標準となっていることも、日本では事例がない、製品がない、基準がない、法が追いついていない…そんな領域を担当していたので、「できない理由ではなく、できる方法を考える」ことが自然と身につきました。それに併せて、クライアントが真に求めるものを考え抜くこと、それを具現化する行動力、そして追い込まれた時こそ“貪欲にやり切る熱量”も持てるようになったと思います。もちろんスキルも大事ですが、最後は強い気持ちや想いがないと、大きなプロジェクトは成功に導けないことも学び、当時から仕事のモットーにしてきましたね。

「今、飛び込まないと一生後悔する」と思った

— そこからなぜ、NOT A HOTELへ?

すごく端的に言うと、「自分で考えた事業構想を実現したい」という想いが強くなり、起業を考えていた矢先、NOT A HOTELに出会ってしまったんですよ。当時、不動産ならぬ「可動産」として、トレーラーハウス型のコワーキングスペース事業をやりたいというアイデアを持っていて、その構想をずっと温めていたんです。そしたら、CEOの濱渦さんがSNSで、同じような構想の話をしていたのを発見して、「これは面白い!」と。

NOT A HOTEL EXCLUSIVEの ANYWHEREの構想とまさに一致したと?

そうなんです。「自ら起業しなくても、NOT A HOTELで実現できるかもしれない」とも思ったんです。「自分だけでやるよりも、このチームに参加した方が成長できる」とも感じたんですよね。それから濱渦さんと一度話してみたいと思いTwitterからDMをしたのですが、その時は返事が来ませんでした(笑)。

— なんと(笑)

その後、キャリアSNSで「不動産領域のメンバーを募集する」という投稿を見かけて、すぐに応募し、濱渦さんと話す機会を得ました。

NOT A HOTEL EXCLUSIVEの ANYWHERE

— さまざまな理由があると思いますが、入社の最大の決め手は何だったのでしょうか。

当時は、建物も着工していなければ建築の専門メンバーも不在の状態だったのにも関わらず、なぜか濱渦さんは自信に満ち溢れていたんですね。普通だったら臆病になってしまいそうなほどの大きな挑戦を心から楽しんでいて、すでに周囲からの信頼を集めて数億もの資金調達(当時)を実施していた。直感的に「この人すげえな」と思いました。コロナの逆境をものともせず「ピンチはチャンス」の心構えを見て、「今、この人と働かないと後悔するな」と思いました。それが入社の最大の決め手ですね。日建設計での約7年半の生活を終え、2021年6月にNOT A HOTELへ入社しました。

ゾクゾクするほどの非日常と、自宅のように安心する日常の調和

— こうして綿貫さんは一人目の建築メンバーとしてNOT A HOTELに入社するわけですが、当時のことを覚えていますか?

最初の仕事は、「NOT A HOTEL AOSHIMA」と「NOT A HOTEL NASU」を着工に導くことでした。入社して濱渦さんに「いつまでに設計をまとめます?」と尋ねたところ、真顔で「明日」と言われた時は、半分冗談だとわかりつつも驚いたことを覚えています(笑)。スピードの早さは異次元でしたね。

NOT A HOTELは建築や不動産の専門家ではない組織でスタートしたからこそ「これまでの常識」に捉われないことが多くあります。建築プロセスのスピードの早さもその一つです。設計をまとめて、施工者さんを選定して、コストを調整して...という着工までの一連の流れを、体感としてはこれまでの1/10くらいのスケジュールでギュッとやりきりました。スタートアップの強みとしてスピードが早いことは大事なポイントですが、クオリティもきちんと高めていくのが難しいところです。僕が入社した当時は、事業計画上のスケジュールや予算に対して、かなりギャップがあったので、いかに挽回・調整するかがミッションでした。

ー その時、綿貫さんが意識したポイントは何だったのでしょうか。

オーナーが体験するデザインや機能・性能は一切妥協することなく、設計の合理化を測っていくことですかね。建築設備出身として、目に見えるところにコストをかけて、目に見えない箇所の設計をいかに合理的に考えるかを強く意識しました。建築設備ってトラブルがなくて、安全であることが当たり前な世界なんですよ。しかも、お客さまの目に見えない箇所だからコストもブラックボックスになりがちなんです。そこにしっかりと向き合い、抑えられる部分は極限まで抑え、お客さまの目に見える箇所にコストを費やす。これを妥協なく、徹底してやることでこのスピードとクオリティを維持することにつながったと思いますね。

— こうして「NOT A HOTELらしい建築」はつくられるんですね。

僕たちは、長い間ずっと愛される場をつくりたいと考えています。建物とランドスケープ、そしてそこから見える景色を通じたゾクゾクする非日常感と同時に、しっかりとした環境性能や、使い勝手のよい動線、設備機能などの心地よい日常もつくり込む。その相反する体験がうまく溶け合うことがNOT A HOTELらしさを創出していると考えています。

NOT A HOTEL NASUでは、スロープを登っていく途中にNOT A HOTELが突如現れます。コールテン鋼の力強さにゾクゾクするんです。チェックインして好みの温度のサウナと水風呂でととのった後にパジャマに着替えてシェフのディナーを食べる。暖炉の火を囲み仲間と語り合う。この非日常と日常がひとつの空間で溶け合うことが長く愛され続けることに繋がっていくと思っています。

— 「長い間ずっと愛される場=サステナビリティ」にもつながりますよね。

NOT A HOTELはひとつの建物を無駄にせず「稼働率100%の建物を目指す」ことが、サステナビリティのひとつの理想系だとも捉えています。本当にいいものをつくって、最大限に有効活用するという考え方です。デザインはもちろんのこと、素材や設備投資にもこだわり抜いています。

例えば、建物の寿命を約50年と考えたときに、それと比べて設備の寿命は約15年程度と短いです。その際建物のダメージを最小限とした設備更新計画も考えています。他にも建物の外壁に、丈夫且つ経年で魅力が増していくコールテン鋼を採用するなどの工夫を施しています。

そしてNOT A HOTELは建物をホテルとして運営する際の、サービス運営組織「NOT A HOTEL MANAGEMENT」をグループ会社として構えています。土地探しや建物をつくるところから、竣工後の毎日の維持管理に至るまで、自分たちの目と手で見守ることができるのは大きな強みですね。オーナー体験をより良くしていくために、視点の違うプロフェッショナルが一緒に考えてタッグを組めるところが僕たちの真価だと思います。

MASTERPIECE - NOT A HOTEL NASUの外壁にはコールテン鋼が採用されている

— すべての体験を内製化しているのはNOT A HOTELの大きな特徴ですよね。ハードウェア(建築)とソフトウェア(スマートホームやアプリ)の融合も他にない体験を得られる要因になっていると思います。

そうですね。社内の建築チームとソフトウェア開発チームが、ゼロから創り上げたスマートハウスシステムはNOT A HOTELを象徴する体験です。従来、各メーカー・設備単位で制御や通信方式が異なることから、それらをひとつのスマートホームシステムとして統合制御するハードルがかなり高かったと思います。そこで僕たちは主に欧州で使われており、各設備を横断的につなげることができるKNXというホーム・ビルオートメーションのオープンプロトコルを採用しました。

— KNXを建築設備全体で採用することは珍しいですよね。

そうなんです。日本では部分的な採用実績(照明や空調のみ)がほとんどで、全ての設備を統合制御する事例が少なく、「実現できない」というメーカー回答からのスタートでしたね。KNXを専門とするパートナーさんの力を借りつつ、ハードウェアを建築チーム、ソフトウェアをスマートホームチームがタッグを組み実現しました。ハードとソフトの開発者が両方社内にいたからこそ、同じ方向を向いて実現できたと思います。

結果的にNOT A HOTELの建築では、家電や設備のセレクトも何ひとつ妥協することなく、すべての機器がタブレット一つで操作できるというこれまでにない暮らしの体験を生み出しました。僕たちのチームだからこそ、一気通貫でやれることにやりがいを感じています。

THINK - NOT A HOTEL NASU

多くの人の手に届くNOT A HOTELの実現に向けて

— 「すべての人にNOT A HOTELを」というミッションへの想いを聞かせてください。

僕たちはNOT A HOTELを通して、自由な暮らしの選択肢をすべての人に提供することを目指しています。そのためにまず取り組んだのが、毎年1日からNOT A HOTELを利用できる「MEMBERSHIP NFT」です。これによって建築やホテルサービスのクオリティはそのままに、一口の単位を小さくすることでより多くの方に手に取っていただけるようになりました。

今後は社内設計モデルの「NOT A HOTEL PRODUCTS」にも注力したいと考えています。自由に選べる3つのサイズと2つのカラーで、好みや暮らし方に合わせてお気に入りのモデルを選択できます。

BASE - NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA

NASUやAOSHIMAといったフラッグシップモデルを通して築いたノウハウを活かし、クオリティを保ったままに必要なものだけを残しました。削ぎ落とした分、価格を下げることができるのでNOT A HOTELを購入する選択肢を広げることができると思っています。この取り組みを通して「シンプルだけど上質な暮らし」を実現する住宅を、もっと身近な存在にしたいですね。

「すべての人にNOT A HOTELを」というミッションに向けては解決すべき課題がたくさんありますが、いつの日か「住まいに関する一番いい選択肢を考えたら、必然的にNOT A HOTELに辿り着いていた」と多くの方が言ってくださるような未来をつくりたいと考えています。

— これから多くの場所で、多くの人の手に渡るNOT A HOTELが楽しみですね。最後に、どんな人にチームに加わってほしいですか?

熱い想いを持っている人と働きたいです。内容は問わないので自分の想いを強く持って、最後までそれを遂げようとする人と一緒に、NOT A HOTELをつくりたいですね。

これまでにない「あたらしい暮らし」に取り組むなかで、壁に当たったり挫折をすることもたくさんあります。大変なときこそ「やれる方法」を一緒に考えて、領域が違くても手を取り合いながらやれる仲間が増えると、NOT A HOTELの未来は安泰だなと思っています。

熱い想いを持った方、ぜひお待ちしています。

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