1
/
5

移動で日本の体験を変える──NOT A GARAGEが目指す姿

「世界中にあなたの家を」──NOT A HOTELはこのコンセプトのもと、一つの場所に縛られない新たなライフスタイルのあり方を提案してきた。

そのコンセプトは、2025年7月に発表された新事業 「NOT A GARAGE」 によって、さらに拡張しようとしている。多彩なモビリティを“使いたい分だけ”所有できるこのサービスでは、オーナーがヘリコプターやクルーザーなど、特別な乗り物をシェアし、自由に楽しむことができる。

建築という物理的な「点」から、移動という時間軸を伴う「線」へ。この事業拡張の背景には、どのような狙いがあるのか。上級執行役員 CFO兼CSO 江藤 大宗氏に、NOT A GARAGEの構想、そしてその根底にある思想を聞いた。

NOT A GARAGE | NOT A HOTEL

複数のモビリティを必要な分だけ所有できる新モビリティ事業「NOT A GARAGE」

リリース初日で200件の問い合わせ

━━━まずはじめに、NOT A GARAGE(以下、GARAGE)のリリースを終えて、いま率直に感じていることを聞かせてください。

江藤:最初に感じたのは、このサービスが確かに世の中から求められているという実感です。

数年前、実はモビリティ事業を始めたいと社内へ伝えたときには、「ハイエンド層向けの、尖ったサービスになるのではないか?」といった懸念もありました。ところが、実際に寄せられた反応はそれとは真逆。

これまでのNOT A HOTELは、高価格帯なゾーンを突き詰めてきましたが、今回は必ずしもそうではない価格帯もご用意していきます。このメッセージがしっかりと伝わり、「モビリティが民主化されれば、自分たちも使えるかもしれない」と感じてくださった方が多かった。そこが、今回の一番の収穫だと思っています。

江藤 大宗:上級執行役員 CFO兼CSO。慶應義塾大学卒。JPモルガン証券株式会社にて投資銀行業務に従事。M&A、株式引受業務の実務を経て、エグゼクティブ・ディレクターとしてインフラセクター企業を担当。2020年8月、NOT A HOTELに参画。執行役員CFOを経て、2024年1月、NOT A HOTEL2nd 代表取締役CEOに就任。2025年4月、NOT A HOTEL上級執行役員 CFO兼CSOに就任。

━━━SNSだけでも大きな反響がありましたよね。

江藤:リリース初日だけでも、おおよそ200件の問い合わせをいただきました。別荘以上に維持費がかかる船については、ネガティブな反応もあるだろうと想定していましたが、船の維持管理コストをよく理解している方々からは、「このクルーザーがこの価格で利用できるなんて」という、想像以上にポジティブな声が多く寄せられました。しっかり伝わっている、届いているという実感を得られましたね。

“移動”そのものを楽しみに変え、経由地や拠点での過ごし方にも選択肢が広がる

━━━今回の反響には、何がもっとも起因していると思いますか。

江藤:GARAGEはNOT A HOTEL同様、「これまでになかったもの」を追求しています。

ヨットや高級クルーザーのシェアサービス自体はすでに世の中に存在しますが、今回販売を開始した「SUNREEF 80 POWER」は、約80フィートというスケール、双胴船(カタマラン)という形式、そして東京近郊ではなく瀬戸内海(NOT A HOTEL SETOUCHI)を航行するという独自性がある。

多くの人が「あったらいいな」と思い描く体験を実現できたことは、大きな意味があったのではないかと。

日本初上陸のカタマラン「SUNREEF 80 POWER NOT A GARAGE EDITION」

江藤:また、印象的だったのは、コストだけでなく体験そのものの価値を重視する声が多かったこと。

一泊あたりの料金を単純に比較するのではなく、「貴重な時間をいかに豊かに過ごすか」に重きを置く方が増えている。GARAGEは、まさにそのニーズに応えられます。

SETOUCHIでの宿泊体験に加えて、船でのクルージング、将来的にはヘリコプターでの遊覧も組み合わせれば、一泊で三泊分にも匹敵する濃密な時間を過ごすことができる。

こうした宿泊前後の体験にも染み渡る「NOT A HOTELらしさ」に共感し、喜んでくださるオーナーが多かったことは、私たちの思想が確かに浸透してきた証だと感じています。

NOT A GARAGEによって拡張する特別な体験

「進化」を可能にする、2つのコア

━━━GARAGEのリリースにあたり、江藤さんが最も重視したコアメッセージとは何ですか。

江藤:二つあります。まず一つ目は「体験の立体感」です。これまでの「建物」や「食事」といった体験に、「移動」という新たな軸を加えることで、サービスの次元をもう一段高めたいと考えました。宿泊、食事、乗り物といった複数のサービスを、一つずつバラバラに購入するのではなく、一つのプラットフォームでシームレスにつなぐ。お迎えの車から専用の待合室まで、一連の時間をデザインすることで、NOT A HOTELでしか味わえない価値を生み出せるはず。

二つ目は、「重たい・高い・面倒くさい」のペインの解消です。これまでは時間やお金に余裕のある人だけが体験できた特別な時間を、もっと多くの方に楽しんでもらいたい。船やヘリコプターといったモビリティをシェアすれば、維持管理の手間やコストを抑えられます。そうすることで、一度の旅行で宿泊、クルージング、遊覧飛行といった複数の体験を、手軽に組み合わせられるようになる。

時間的・金銭的なハードルを下げ、より多くの方にサービスに触れてもらうことが狙いです。

━━━この構想は、創業当時からあったのですか。

江藤:構想自体は創業当時からありました。これは約2年前に発信したnoteの記事「"起業家ではない創業者〟の自覚」でも触れた、「第二次日本列島改造計画」にもつながります。

江藤:田中角栄氏が「日本列島改造論」のなかで高速道路や新幹線で日本全国をつないだように、私たちはNOT A HOTELの各拠点を“点”から“線”へ、そして“面”へと広げ、日本全体の価値を高めていきたい。この構想を実現するためには、拠点と拠点を物理的につなぐモビリティは不可欠でした。

当初はNOT A HOTELの拠点を「点」として捉え、その点の力で周辺地域に良い影響を与えることを目指していました。象徴的な事例がAOSHIMAのプロジェクト。開業後、青島エリアの地価上昇率は3年連続で県内1位を記録し、その成果が数字にも現れています。昨年には新たなハウスを販売し、ありがたいことに9ヶ月間で完売となりました。今後は、新ハウスに加えてスポーツエリアやパークエリアといったパブリックスペースを拡張し、AOSHIMAをさらに魅力的なビーチタウンへと進化させていきたいと考えています。

今後はAOSHIMAのみならず、SETOUCHIやISHIGAKIといった拠点を「線(移動)」で結びながら、地域同士が呼応し合い、より広いエリアへと影響を広げていくことを目指しています。

宮崎・青島を再び活気のある観光地へ

建物だけでは伝えきれない「土地の魅力」

━━━順調に拠点が増えていくなか、なぜ「今このタイミングで」新規事業に踏み切ったのでしょうか。

江藤:ISHIGAKIやSETOUCHIのような自然豊かな場所に拠点が増えるにつれて、建物やサービスだけではその土地の魅力を最大限に伝えきれないと感じるようになったんです。そこで浮かび上がったのが、「拠点と拠点を結ぶ」という課題でした。

日本中の目的地が暮らしのフィールドへと変化する

━━━これを解決するタイミングが、まさに今だと。

江藤:そうです。GARAGEは、物件というNOT A HOTELのコアプロダクトを見る「視点」を増やす取り組みです。これまでは物件を中や横から眺めていましたが、空や海から見ると、まったく違う景色が広がります。

もう一つは、物件を購入してから完成するまでの「待つ」という時間を、「楽しみ」に変えること。たとえばNOT A HOTEL MIURAのオーナーになった方には、ヘリコプターに乗って、自身が購入した物件が少しずつ完成していく様子を、自らの目で見て体験できるサービスも構想しています。

━━━それはワクワクしますね。ちなみに、この先の事業の伸ばし方は、どのようにイメージしていますか。

江藤:NOT A HOTELのGMV(流通取引総額)は年間1.5倍から2倍のペースで成長していますが、別荘市場の規模(TAM)だけではいずれ限界がきます。そこで、モビリティという別の市場に踏み出すことで、TAMを広げ、投資家や金融機関にもさらなる安心感を持ってもらいたいと考えています。 

さらに意識しているのが「時間軸」。不動産は50年単位で動く長期的なビジネスですが、モビリティはもっと短いサイクルで回ります。一つの事業スピードだけで進むのではなく、回転の早い事業を組み合わせることで、会社全体のポートフォリオを多様化できる。

今はまさに、そのタイミングだと思っています。

セカンダリーがあり、GARAGEがある

━━━成長軌道にあるブランドに“新たな挑戦”を加えることへの不安や葛藤はありませんでしたか。

江藤:NOT A GARAGEは、創業初の“NOT A XXX”と銘打つ事業です。そのため、一貫性のあるサービスでありつつも、付随したサービスにとどまらず横に並ぶサービスにしていく必要がある。そのうえでも、NOT A HOTEL 2nd(セカンダリー取引プラットフォームの構築を目指すグループ会社)をCEOとして立ち上げた経験は大きいです。GARAGEのビジネスは、このセカンダリー(二次流通)事業があって初めて成立するものなんです。

江藤:先ほども触れたように、不動産は50年単位で動く長期的なビジネスですが、モビリティはもっと短いサイクルで回るため、早くセカンダリー市場が立ち上がります。GARAGEのビジネススピードを考えると、流動市場の前準備が不可欠。不動産だけに頼ると、この準備が遅れてしまう。だからこそ先にNOT A HOTEL 2ndを立ち上げ、それを軌道に乗せてからモビリティ事業に取り組む。この順序が重要でした。

現在、セカンダリープラットフォームは、POCとして始動させ、取引実績を着実に積み重ねています。「NOT A GARAGEからNOT A HOTELへ」、あるいは「NOT A HOTELからNOT A GARAGEへ」と買い替えできる仕組みには、裏側に流動市場が必要。このプラットフォームが整わない限り、次のステップには進めません。

━━━ビジネスとしての伏線があったのですね。ちなみにGARAGEのラインナップの拡充については、どのように構想していますか。

江藤:2029年3月期(NOT A HOTELの中期経営計画期間)を見据えたラインナップ案をまとめています。そのなかでは、クルーザー、ヘリコプター、車、ジェットの計画に加えて、電車やバス、タイミングを見据えながらドローンタクシーも含まれています。

江藤:また、モビリティ事業はNOT A HOTELのDestination Experiences(地域の体験プログラム)を強化するうえでも欠かせません。建物や食事といった自社サービスに、他社にはないモビリティという武器を組み合わせることで、ここでしか味わえない体験価値を生み出せると考えています。

日本の価値を上げることにアクセルを踏む

━━━先月新たに発表された「日本の価値を上げる」というミッションは、GARAGEとも深く関連しているのでしょうか?

江藤:もちろんです。GARAGEは、日本の土地に眠る魅力を、新しいかたちでそっと引き出すきっかけになれたらと考えています。

これまでは交通の便がいい場所が“一等地”とされてきましたが、GARAGEのモビリティを活用すれば、これまで不便だと思われてきた場所も、新たな魅力を持つエリアとして楽しんでいただけるはず。”一等地の定義”を変えることができると考えています。

また宿泊施設として滞在するだけでなく、「最高の時間を切り取る場所」へと意味を変えることもできます。たとえばヘリコプターを使えば、北軽井沢に滞在しながら水上でラフティングを楽しみ、さらに那須では乗馬を体験できる。一度の滞在で、多彩な体験を楽しむことができます。

NOT A HOTEL MISSION「日本の価値を上げる」

━━━最後に、江藤さんはこれからNOT A HOTELというブランドをどのように進化させていきたいと考えていますか。

江藤:目指しているのは、「日本のIP(知的財産)に価値をつけていく」ことです。

これまでNOT A HOTELが世の中に送り出してきたのは、不動産、さらにモビリティといった動産などのハードアセットを、サービスとともにワンストップで提供する事業でした。これからは、そのプロセスのなかで生まれたデザインやクリエイティブ、サービスといったソフトな無形資産を、それ自体が価値を持つものとして育てていきたいと考えています。

たとえば、建築家やクリエイターのプランがIPとして売買される市場をつくれば、これまで流動性がなく価値が見えにくかったものにも、きちんと価値付けができるはずです。その対象は「IP」に限らず、ホスピタリティを提供する“人”そのものにも広がっていくでしょう。

NOT A HOTELには建築家やシェフなど、多様なクリエイターも多く在籍する

江藤:プロフェッショナルの才能が正当に評価され、リスペクトされる市場をつくること。そこに多くのクリエイターが集まり、NOT A HOTELを起点に日本全体へ広がっていくこと。これこそが、ものづくりやホスピタリティを自ら得意としない私だからこそ実現できる、最善で唯一の「日本の価値を上げる方法」だと信じています。

そして、その価値を受け止め輝かせるためには、不動産や動産といったハードの存在も不可欠です。ハードからソフトまでを結びつける市場の流動性を整え、一つずつ形にしていくためにも、私はGARAGEのアクセルをさらに深く踏み込んでいきます。

販売情報:「AIRBUS ACH130 Aston Martin Edition

第一弾のカタマラン「SUNREEF 80 POWER NOT A GARAGE EDITION」に続き、第二弾として、イギリスの高級車ブランド、アストン・マーティンが監修した、特別仕様のヘリコプター「AIRBUS ACH130 Aston Martin Edition」を販売を開始しました。

AIRBUS ACH130 | NOT A GARAGE

NOT A GARAGEの第二弾として、英国の名門が手がけた、洗練された特別仕様ヘリコプター「AIRBUS ACH130 Aston Martin Edition」を販売開始

NOT A GARAGEのオーナー様向けの独自のカラーリングと装備を施した空のラグジュアリーモデル

本モデルは、アストン・マーティンの美学とクラフトマンシップを、世界的航空機メーカーであるエアバスの精密なエンジニアリングと融合させた、日本初上陸となるヘリコプターです。詳細は「AIRBUS ACH130 Aston Martin Edition」ページをご覧ください。

NOT A HOTEL株式会社's job postings
2 Likes
2 Likes

Weekly ranking

Show other rankings
Like Ryo Saimaru's Story
Let Ryo Saimaru's company know you're interested in their content