「愚痴のない組織」をつくるには?|福岡でコツコツまじめにやってる会社の平凡な日常
「こんな会社、他にあるんだろうか?」 朝礼に参加するたびに考えるのです。 コウダプロという会社は、自分がこれまで出会ったことのない唯一無二の会社だなあと。 たとえば、ひとりの社員のことを会社のみんなで真剣に考え、本人に対して「どう在る(being)と良いのか」を率直に伝えるのも、その特徴のひとつ。 ...
https://note.com/koudapro/n/n6f3c6668bc2d
「人生に無駄な経験はない」
皆さんはこの考え方に賛成ですか? それとも反対ですか?
コウダプロ社長の幸田八州雄さんは、この説について「半分本当で、半分嘘」とこの日の朝礼で話しました。
「確かに、苦しい経験や辛い出来事は心を揺さぶり、人間を成長させて、魂を磨くものとなります。苦しい経験や困難を乗り越える過程で、人間性に深みが増し、他者の気持ちを想像できるようになることもあるからです。でも、人生において無駄なことはあります」と幸田さん。
例えば
・自分の課題や悪い癖に気づいていながら、それを改善せずに突っぱね続けた
・本当は「こうした方がいい」と分かっているのに、頑なに認めず意地を張っていた
など
この期間は言い換えると「心を開いていない期間」。重要なのは心を開き、気づきを得たら即受け入れて、行動すること。そうすることで、人生における無駄な時間を最小限にし、本当に意味のある経験を積み重ねることができるのです。
コウダプロでは「心を開く」という言葉がよく出てきます。「心の柔らかさを保つ」「柔らかい心を持つ」といった表現がなされることもあります。
今日は「セレンディピティ(偶然の幸運な発見、とも訳される)」というキーワードから、話がスタートしました。
実際にあったセレンディピティから、心を開いて、偶然の中に意味を見出せる人々と共に歩むことで、新たな可能性が生まれるといった話題へと広がっていきました。
こんにちは、プレスラボの池田園子(@sonokoikeda)です。2023年12月より、月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
前回(2025年2月)の朝礼noteはこちらから。
皆さんは日頃、セレンディピティを意識することはあるでしょうか?
セレンディピティといえば、故スティーブ・ジョブズが2005年、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの中で、自身の経験を通じてその重要性を語ったことが、世界的にも知られています。
ジョブズは過去の出来事と現在とのつながりを「Connecting the Dots(点と点をつなぐ)」と表現しました。
ここで、ジョブズ自身のセレンディピティをざっと振り返ります。リード大学に入学したものの、明確な目的を見出せず6ヶ月で中退したジョブズ。その後も興味のある講義に聴講生として参加し続けて、カリグラフィーのクラスに出会います。
その世界に魅了された経験が、Macintoshコンピュータに美しいタイポグラフィを導入する際、大いに役立ったとジョブズは後々振り返っています。その後、唯一無二のコンセプトとセンスでアップルが世界を席巻したのは皆さんもご存知の通り。ジョブズの成し遂げてきたこと、彼の人生そのものがセレンディピティといえます。
ここまで説明した後「セレンディピティの核心は、偶然や無関係に思える点と点が、後に意味を持ったつながりになること。人生はそうした偶然によって形成されている」と幸田さんはまとめました。
幸田さんのセレンディピティ事例もひとつ、紹介されました。若き日の幸田さんが東京で働いていたときの同期と食事に行ったときのこと。取り留めのない話の中で、同期がこんな発言をしたのです。
「他人に言うべきではない話は身内に対しても黙っておく——そんな感性を持っていたら、どんなに無能な人間でも、この世界を生き抜いていける。俺のじいちゃんがそう話してた」
翌日、幸田さんは多忙な上司の代わりに、取引先を接待する役目を担いました。そこで、取引先から「幸田さん、上司との関係、良くないでしょう?」と言われたのです。
なぜそう思うのですかと聞くと、「打ち合わせでおふたりを見ていて感じました。いろいろあったんですね?」と重ねて問いかけられ、その後も何度か「どうなんですか?」と振られます。
本音や若干の悪口を吐き出したい気持ちを抑えながら、幸田さんは一貫して「僕、実は近く退職する予定なんです。上司にはお世話になりました。感謝しています」と言い続けました。
この流れで「そうなんですよ〜。聞いてくださいよ〜。上司は〜」と打ち明ける人は多いのではないでしょうか。何度も聞かれていることもあり、うっかり口を滑らせてしまう人もいるでしょう。でも、幸田さんは愚痴や悪口を一言も言いませんでした。
それは、前日に同期から聞いた「これは言ってはいけない、という話を他人に言わない在り方」の話がずっと頭にあったからでした。上司との関係は他言すべきではない、という考えになっていたのです。
すると、接待の終盤で「うちで働きませんか?」と予想外の誘いを受けることに。理由を尋ねると、「幸田さんは上司と関係が決して良くないにもかかわらず、悪口を言わず感謝しています。私はそんな感性を持った人と働きたい」とのこと。その言葉を聞き、同期がシェアしてくれた教訓は本当だった! と幸田さんは実感したのでした。
その後、福岡にあるその会社で働くことを考えましたが、一点だけ不安がありました。元恋人が近くで働いていて、遭遇する可能性があり気まずい……と感じていたのです。
そんな懸念を打ち明ける過程で、取引先の方が偶然にも元恋人を知っていることが判明。その組織は結構な規模で、勤務している女性も何百人といるのに、なぜか彼女だけを知っていた——幸田さんにとって、これまで人生の流れを意識する出来事はいくつかありましたが、この一連の出来事も特徴的なもののひとつでした。
一つひとつの出来事は点に過ぎませんが、それらがつながり、意味のある線を描いていることの現れといえます。
ジョブズが語ったように、人生の点と点はやがてつながり、ひとつの線となる。そして最終的には、面や立体へと広がっていくのでしょう。
偶然をただの偶然として受け取る人と、その偶然に意味や必然性を見出せる人に分かれますが、目の前の出来事を単なる偶然と捉えるのか、それとも奇跡的な出会いと考えるのかによって、人生の深みや学びが大きく変わってきます。
ビジネスにおいても、自らの心が開いた状態で、同じように心が開いた仲間と取り組めば、決して飽きることはありません。
人生はセレンディピティに満ち溢れ、一見無意味に思える点と点も、いずれは大きな意味を持つようになります。しかし、そのつながりに気づくためには、まずは自分の心を開くことが必要です。
コウダプロは心を開いていて、偶然の中に意味を見出すメンバーで構成されています。そんなコウダプロは前にも話したように、この先、爆伸び状態が待ち構えています。
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幸田さんは、コウダプロという会社の特徴のひとつとして「事業計画を事業部に共有しない」ことを挙げました。一定規模の会社であれば、事業計画が現場にシェアされていて、メンバーはそれに向かって仕事をしていくのが一般的です。
コウダプロの規模感で事業計画をあえて現場に共有しないのは、世間的には「普通ではない」経営スタイルに見えます。しかし、これは意図的なもので、幸田さんが数字を自己目的化しても意味がないと捉えているからです。
多くの会社では、売上・利益の現状と理想の差を埋めるための営業会議が開かれます。その時間にどれほどの生産性があるのか、幸田さんは疑問に感じています。
むしろ、トップならば「どうすれば可能性が広がるのか」「どこにビジネスチャンスがあるか」「競争相手とどう戦うか」といった“戦略”に、命ともいえる重要な資源(時間)を投資すべきだと考えているといいます。
ただ、この異例の経営が成り立つのは、リーダーがメンバーを信じて鼓舞し、メンバーの一人ひとりが性善説に基づいてベストを尽くしているから。計画に縛られず、それぞれが最大限の成果を追求することで、最終的に利益が生まれているといえるのです。
このあたりで〆に入っていきます。コウダプロがこんな組織になっているのも、セレンディピティを大事にしている幸田さんが、メンバー一人ひとりが今、ここにいる理由やそこに至るまでの点と点のつながりに価値を感じ、感謝しているからではないかと思いました。
メンバーのフリートークコーナーでは、各自のセレンディピティ・エピソードが語られたり、セレンディピティという言葉への印象が良い方に変わったといった話が出たりと、盛り上がりました。
私もコウダプロの朝礼にこうして月1回参加させていただき、レポートを書く役割を任せてもらっているわけですが、ここに至るまでに少なくとも5つの点があり、それが見事につながっているなと振り返り、感謝の想いを改めて抱くきっかけとなりました。
「大切なのは、人生の流れに着目し、それを感じ取ることです。心を開いて生きていれば、その流れを察知できるようになります。そして、それを理解しながら生きるのと、何も知らずに過ごすのとでは、未来が大きく変わるのです」と話す幸田さん。
私はあくまで心を開いているつもりであり、まだ開き切れていないなと反省しました。というのも、流れを察知する力はまだ低いからです。心を開く、を人生のキーワードのひとつとして、常に掲げ続けていきたいです。
Text/池田園子