こんにちは。ヒット屋事業部の安藤です。
普段は化粧品の商品企画を担当しています。
商品開発(アイケア)の一環です
商品企画という仕事は、まだ世の中に存在しないものを形にし、しかも「売れる」「競合に勝てる」「自分自身が100%の愛情と自信を持って提案できる」という条件がそろって、初めて一人前になります。
とてもやりがいのある仕事ですが、同時にとてもハードな一面もあります。
今回のnoteで私がお話ししたいのは、日常の業務とは別軸にある「狂気体験」についてです。
ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
2025年4月下旬、上司の原口さんから突然こう言われました。
「安藤さん、ATPやりますか?」
当然ながら「ATPって何ですか?」と聞き返したのですが、返ってきたのは「今日の朝思いついたんですよね〜」「これやったらすごいことになりますよ!」などの“はぐらかし”だけで、肝心のATPの正体はわかりません。
ただ、これまでに数々の無茶ぶりを受けてきた経験から、私はすぐに悟りました。
これは、また何かしらの無茶ぶりだな、と。
そして私は圧に耐え切れず、表向きには 「どんなことも全力でやる☆」をスローガンにしている手前、 「ATPやります!」と答えるしかありませんでした。
すると原口さんから、ようやくATPの全貌が明かされました。
ATPとは「安藤特別プログラム」の略で、業務とは関係なく、1日1つ商品企画をする。それを100企画になるまで続ける。
全貌が明かされた瞬間、理解が追い付かず無になりました。
思わず、まぶたを閉じて深呼吸したい。。
そんな衝動に駆られました。
頭が真っ白になるって、こういうことなんだと。
それぐらい狂気的な取り組みだったのです。
普段の業務でも商品企画の大変さを身に染みて理解しているため、「本当にできるのか……?」というそこはかとない不安が押し寄せてきましたが、一度「やります」と宣言した以上、後には引けません。。
こうして、私のATPが始まりました。
■1日1企画×100本という狂気
まず、ATPの基本構成は決まっています。
・商品名
・その商品をひと言で表すと?
・商品特徴
この3点セットです。
そして、ただ自由に企画すればいいわけではありません。
「ヒット屋として実際にクライアントに提案できそうな商品であること」という大前提があり、
さらに企画ジャンルも【スキンケア/ヘアケア/ボディケア/ペットケア/サプリメント/健康食品】という6カテゴリにガチッと縛られていました。
つまり、本当に「ただの思いつき大会」ではないのです。
実務で戦えるレベルの企画力が問われる、わりと本気のプログラムでした。
…と頭で理解しつつも、一瞬「100も出すならユーモア枠で、テントウムシのふりかけとかぶっこんでみようかな?」と自分の中のふざけた思考がよぎりました。
でも、冷静に考えればわかります。
そんなもの提出したら、企画力どころか人間性や社会人としての信用まで持っていかれる…。
大切な何かを失うのは嫌なので、テントウムシの企画は選択肢から消え去りました。
こうして1日1企画がスタートしたわけですが、プログラムが始まった瞬間、私の1日のリズムは変わりました。
業務とは無関係とはいえ、“まだ世の中に存在しない商品をゼロから考える”という行為は想像以上に難しい。
10分で終わるようなライトなタスクではありません。
普通に1日のスケジュールの中にATP時間を確保しないと回りません。
まして当時の私は、化粧品検定1級の勉強も並行していた時期。
脳もメンタルも、毎日ゴリゴリに削れていきました。
企画自体は大好きです。
でも、「毎日1商品つくる」 となると話は別。企画が修行に変わりました。
100本という数字が重くのしかかってきました。
「ATPっていつ終わるんだろう…」
不安になってカレンダーを確認すると、終了予定日は10月ごろでした。
10月か…。
夏が終わっても、まだATPは終わらないのか…。
季節がひとつ終わるのに、ATPは終わらないという現実。
まあ、100もあるしな。お遍路だって八十八か所巡るんだ。
修行ってそういうもんだろ…。しょうがないよな…。
お遍路に比べたらATPは着替えもいらないし、外に出て歩いたりしなくていい。できる!たぶん。おそらく…。
一旦100という数字のことはあえて忘れることにしました。
■とにかくやるのみ!
最初の10本くらいは、本当に迷走していました。
当たり前ですが今までこの取り組みをやった人がいないので前例を見れない。
どんな方向性で?どのくらいのボリュームで???
疑問が出ても誰にも聞けない。何が正解かもわからないし、そもそも正解はない。
正解だと正しいのか??正しさってなんだ??とほんのり哲学チックな迷いの渦の中に自ら飛び込んでいました。
また、わりと本気のプログラムだと理解はしていたものの、非常に由々しきことに「業務とは一切関係ない」事実が甘えを生みだしていました。
「先輩…これくらいで勘弁してくださいよ~。」的な気持ちが正直ありました。
当然、そんな気持ちで出している企画は、形にはなっているが厚みがない。
出した企画に上司やヒット屋メンバーからフィードバックをもらうのですが、なかなか厳しいものがありました。
また慣れていないので形にするまでに時間がかかり、時間的にもメンタル的にもパツパツでした。
その当時は現実逃避も多発していて「年末年始はATP終わってる♪どんな生活してるんだろ??」「ATPが終わったおかげで来年も良い年を迎えられそうですね。(かさじぞう風)」などと妄想をしてなんとかメンタルを保っていました。
でも、不思議なことに続けていくうちに、何かが変わり始めました。
■1日1本を続ける中で起きた変化
毎日企画を絞り出すという行為は、自分の中に変化をもたらしました。
①企画アンテナが常時オンになる
広告やお店の商品を見る視点も、人の会話を聞くポイントも変わりました。
全部が“材料”に見えるようになり、アイデアの引き出しが勝手に増えていく感覚がありました。
家族や友達が「こんな化粧品買った!」と話しをしたら「なんでその商品を買おうと思ったの?」「どこに魅力を感じたの?」などと質問攻めにして相当めんどくさい人間になっていました。そのせいで関係性が薄くなった人たちもいます。(嘘です。)
② 生活が企画のスケジュールで動き始める
移動中、入浴中、寝る前……。
気づけば全部が「企画を考える時間」に変わっていました。
アイデアは突然ふってくるので、思いついたことはすぐにメモをしていました。
③企画1本のハードルが下がる
序盤は1本つくるだけでヘトヘトでしたが、
続けているうちに「とりあえず形にする」までのスピードが上がり、
企画1本の心理的ハードルが急激に下がっていきました。
④ 迷いが減る
数をやっていくうちに、自分の中に“基準”ができ始めました。
良い企画/弱い企画の判断が早くなるのです。
序盤でいい企画になりそうなときはサクサク進むし、逆にいまいちな時は潔くやめる。
迷いを断つ潔さが少しづつですが身についていきました。
⑤失敗への恐怖が減る(これはかなり大きい)
100本あると、正直「これは微妙だな」という日もあります。
でも、それでも出し続けることで挑戦のハードルが下がり、いい意味で周り評価が気にならなくなりました。
企画が微妙なのも今の自分の実力です。
そして意外なことに「この企画微妙だけど送っちゃえ!」で送った企画がいいフィードバックをもらえたこともありました。
周囲の評価を恐れて自分の基準の中で判断せず、一度他の人に見てもらう大切さも実感しました。
■ATPが変えた企画のスタイル
100本を作り続けた結果、企画スキルに変化がありました。
というか、100本もやって変化がないと泣く。(笑)
①企画のスピードが上がった
ATP以前、私は企画1本つくるのに数日かかるタイプでした。
しかし、ATPでは 「1営業日=1企画」 が原則。
常に時間と戦い続けた結果、
“企画を形にするまでのスピード” がぐんと上がりました。
強制的に上げていかないと帰れないのも大いにあります。(笑)
②小さなひらめきから企画を組み立てられるようになった
毎日企画を出すとなると、当然ネタは尽きます。
ネタのストックなど存在しない。毎日が“枯渇スタート”です。
その状況で企画を出し続けるうち、
頭にふわっと浮かんだキーワード、映像、使用シーン、テクスチャ……
抽象的な断片からでも企画に仕上げる力 がつきました。必死です。
③使う人の感情を考えた企画が増えた
例えば、子ども向けシャンプーを企画するとき、
以前の私なら“刺激が少ない成分”を当たり前のように並べて終わっていたと思います。
でも今は、そこからもう一歩踏み込みます。
シャンプー嫌いな子どもは、なぜ嫌がるのか?
→ 顔にお湯がかかるのが怖い。
→ 泡がいつまでも残る感じが不安。
→ とにかく早く終わってほしい。
ではどうすべきか?
→ すすぎを極限まで短くできるシャンプーが必要なのでは?
また、エイジングケア要素の強い製品の企画をする際は使っていてむしろ気分が上がる要素をプラスするように意識したりするなど、成分や技術面から着想するのではなく、使う人の気持ちを考えた企画を多くつくるようになりました。
④市場の穴(新カテゴリー)を見つける力がアップした
企画あるあるだと思うのですが、企画100本を作る中で頻繁に直面したのが、自分が思いついた物がすでに市場にある現象でした(´;ω;`)
当然ながらすでに市場にあるものはATPの企画としては通らないのでここは毎日血眼になって探していました。
毎日の血眼のおかげで、市場の穴を見つける力がアップしました。
■100本が教えてくれた“自分らしさ”
100本もやると、自分のクセが浮き彫りになります。
・得意ジャンル
・苦手ジャンル
・自分の企画の傾向
これらが分かると自分でも意識してなかった部分が何となく見えるようになり、企画者としての自分を客観的に見れて面白かったです。
■ついに100本目へ
企画が95を超えたあたりから、社内から「もうすぐ100本だね!まさか普通or安直な企画は出さないよね??」的ななんとも言えない圧力(笑)をじわじわ感じていました。
そんな環境の中、ついに100本目の企画を提出。
送信ボタンを押す瞬間は手が震えて、平静を装うのに精一杯でした。
しばらくして落ち着いたのと同時になんとも言えないさみしさのような感情が生まれてきたのには驚きました。
あんなにできるのか不安だったATPは、気が付けば完全に自分の生活の一部になっていたことに気づかされました。
ATPは、単なる量の稽古ではありませんでした。
私の企画者人生において、絶対に欠かせない“基礎体力”と“視点”をくれた取り組みです。
そして100本を達成した今、強く湧いてきたのは “終わった!” という気持ちではなく、「ここからどう企画に向き合っていくか」という前向きな感覚でした。
企画は、ただ数をこなせば良くなるわけではありません。
でも、必死に積み重ねた先でしかつかめない感覚がたしかにある。
ATPは、それを身をもって教えてくれました。
これからも私は、企画をつくり続けていきたいと思います。
■おまけ
ATPを達成した翌日、なんとサプライズでお祝いが!
予期せぬお祝いにビックリです!
突然のサプライズに驚き&状況がよく分かっていない様子
なんとゴールテープまでありました!
さらに、賞状と記念品まで用意されていました…!!!!
嬉しすぎる…!!!
ATPの発案者である原口さんから賞状と記念品を受け取る様子。ありがとうございます…!
記念品の中身はオリジナルのビールグラスでした🍻
本当にありがとうございました!大切にします✨✨
終わり。