「幸せに働く」を支える3つの哲学--性善説・4ゲ主義・違いへの敬意|福岡でコツコツまじめにやってる会社の平凡な日常
10月初旬に行われたコウダプロの朝礼では、社長の幸田八州雄さんから3つのテーマが語られました。概要をお伝えすると、「性善説に基づいた組織づくり」「4ゲ主義」「立場の違う者同士リスペクトし合う」という内容です。 ...
https://note.com/koudapro/n/n54be7232ad67
「こざっぱりしている人」や「淡々としている人」が好きです。自分もそうありたいと思います。こざっぱり=サバサバしている、考え方がシンプル、淡々=冷静で、気持ちの上下変動が少なく、落ち着いている。そんな美しいあり方だと思っています。
だからこそ、11月10日のコウダプロ朝礼で語られた、幸田八州雄社長による「こざっぱりする・淡々とする」とそれにつながる「心を開く」というふたつのテーマに大いに共感しました。
どちらも日々忙しく過ごしていると見落としがちな心の持ち方に関する内容であり、個人にも組織にも共通する深い示唆を含んでいます。
朝礼の前半では、幸田さんが「エゴを大きくしないこと」「問題の芽を早く摘むこと」の重要性を語りました。後半では山﨑慶之さん(ニックネーム:山ちゃん)が講話を担当。
7月まで所属していたアスガール事業部の事業部長 松尾充展さんのあり方に、山ちゃん独自の視点でフォーカスし、「心を開いているメンバーが集まる組織は変化が速い」という実例が共有されることとなりました。
こんにちは、プレスラボ(@presslabo)の池田園子です。月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
前回(2025年10月)の朝礼noteはこちらから。
最初に幸田さんは「エゴを大きくしないことの大切さ」について語りました。一般的に立場や役職が上がるにつれて、周囲の対応が丁寧になったり、意見を聞いてもらいやすくなったりするようになります。それはうれしい・ありがたい変化である一方で、「自分はすごい」「自分の考えは正しい」と錯覚しやすくなる危険をはらんでいると指摘しました。
そうならないために、幸田さんは「自分なんて大したことない」「自分が立派な人間になれるわけがない」などと、謙虚さを持ち続けるよう努めています。人は放っておくとエゴが膨らみ、慢心し、そこから崩れていく。有名人や知人を問わず、そういう人の顔が何人か思い浮かびませんか?
「人間はすぐ調子に乗る。その結果、うまくいかなくなった人も少なくない」。幸田さんもそうおっしゃいます。そして、それは個人にも当てはまるし、組織にも言える。会社も生き物のようなもので、エゴが大きくなりすぎると一気に崩れていくというのです。
だからこそ「こざっぱり・淡々」と構えておく必要がある、と幸田さんは強調します。こざっぱりはコウダプロ憲法第十三条、淡々は第十一条で定められています。
このあり方は、コウダプロ憲法第十二条「芽を摘む」という考え方とも通じます。「芽を摘む」とは問題の芽を早い段階で見つけ、素早く摘み取るということ。こざっぱり、淡々とした心を保つことが個々人の人間性を磨き、ひいては組織の健全さを保つことにつながるのです。
続けて幸田さんは「個人や組織がこざっぱり・淡々とできているかどうかを測るリトマス紙がある」と話しました。それは「問題の発見・解決の速さ」です。
問題の発端を小さなマッチの火に例え、「爪楊枝の先ほどの水で消せるうちに気づいて、消すことができれば、それはこざっぱりしている証拠」と幸田さんは説明します。即消火できる=問題が大規模化する前に収束させた、ということ。逆に、火が燃え広がるまで放置してしまうと、取り返しのつかない事態になるのは明らかです。
コウダプロ憲法の「芽を摘む」とは、初期対応の速さのことでもあります。小さな違和感を放っておかず、できる限り迅速に向き合い、解決する。その実行の積み重ねが組織を強くします。
現実に、コウダプロではそれが実践されています。たとえば木曜日に発生した小さなトラブルが、週明けの月曜朝にはすでに解決している、といった圧倒的スピード感。
多くの会社では感情の調整や立場の配慮などで数週間かかるような課題を、わずか数日、もっというと土日抜きに1営業日でクリアしていることに驚きしかありません。その背景には、問題を引きずらない・誰のせいにもせずに向き合うといったスタンスがあるように思います。
続いて話題は「心を開く」というテーマに移りました。ここで話をしたのは山ちゃん。彼は8月に「アスガール事業部」から「ヒット屋事業部」に異動。ふたつの事業部を経験して、マネジメントの違いから感じた学びや気づきを共有してくれました。
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両事業部を比較しながら「どちらのよさや楽しさも感じているが、根本的にマネジメントの“主語”が違うことに気づいた」と話す山ちゃん。彼から見て、ヒット屋の事業部長、原口水月さんの主語は「コウダプロ」という会社にあり、コウダプロ憲法に純度100%で基づく姿勢を感じると言います。
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一方で、アスガール事業部の事業部長、松尾さんの主語は「アスガール」。メンバーからは「チームへの愛情が深く、マネジメントもしながらプレイヤー的側面もあり、現場に寄り添うタイプ」といった意見が上がる、頼れる大黒柱的リーダーです。
山ちゃんは凄まじい言語化力を発揮しながら、自身の見立てを話します。「松尾さんの愛社精神は10点満点中10点。対して、原口さんは20点満点中20点という感じ」と表現。続けて、ふたりのマネジメントの違いを「傘」のたとえでも説明。
「原口さんは、一人ひとりが自分の傘を持てるようにしている。松尾さんは、自分が1本の大きな傘を差して、みんなをその下に入れて守っている」。この言葉に、他のメンバーも深くうなずき、それぞれが感じることを共有しました。
この対話は比較や対立ではなく、「どうしたらさらに良い方向へ向かっていくか」という建設的な形で進んでいきます。驚くべきことに、この朝礼以前にアスガールのマネジメントの仕方、チームの空気が数日でどんどん変化していたとの情報も。そのことに気づいたのは幸田さんでした。
長年マネジメントをしてきた経験がある中で、若手から「◯◯さんのマネジメントの仕方は〜〜」と持論を述べられる——。それが批判でなくても、受け止める側の管理職の多くが反発心を抱きそうな場面です。でも、松尾さんはそうではありませんでした。山ちゃんの発言を受けて、松尾さん自身も率直に考えを語りました。
「山ちゃんが(コウダプロ内のコミュニケーションツールに)書いていた言葉を真っ直ぐに受け止め、しばらく自問自答を続けていた」。そう振り返る松尾さん。この朝礼の前週金曜日、幸田さんは松尾さんに「まっつん、心、破けたね」と伝えました。
幸田さんの言葉は、松尾さんが率いるチームが明らかに変わっていたこと、それは松尾さんのマネジメントスタイル、ひいては松尾さん自身が大きく変化したことをも意味しています。
松尾さんは「コウダプロ憲法を頭では理解していたが、今回の一連のやりとりで初めて腹落ちした」とも語りました。理屈ではなく、体感を通してすとんと腑に落ちる。この腹落ちこそ、本当の意味で人を変えるきっかけになるのだと思います。
一般的には、年次の浅いメンバーが上司に意見を伝えたり、管理職がそれを素直に受け入れたりすることは容易ではないでしょう。経験を積み重ねてきた人に自負があるのは当然ですから。ただ、コウダプロには「自己正当化しない文化」が根づいていて、素直さを持った人が多い。だからこそ、年齢や立場、経験の有無を超えて本音で対話ができるわけで、それこそが「心を開いた人が集まる組織」の真の姿です。
幸田さんのお話には「心を開く」という言葉がよく登場します。頻出の理由はシンプルで、それが非常に大事なことだから。また、そのスタンスは「自分を疑うこと。自分は未熟者だと思うこと。だからこそ、学ぶことはこれからも山ほどある、と前向きに生きること」につながるように思います。松尾さんの心の柔らかさと変化の速さは、その象徴でもあります。特に管理職の方にこそ、この姿勢のすごさを伝えたい、と感じさせる朝礼でした。
今回のふたつのテーマ、「こざっぱりする・淡々とする」と「心を開く」はつながっています。どちらも「エゴを大きくしない」ことに結びつきます。こざっぱり・淡々としている人は早く問題に気づいて、解決しようとする。心を開いている人は、自分を疑い、他者から学び続けることができる。
このふたつを併せ持つことで、個人も組織も成長していくのでしょう。そして、「自分は未熟者。生きている間、学び続ける」という、幸田さん自身も大事にしている姿勢を、改めて自分ごととしても感じることができました。
Text/池田園子