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カヤックのハイカジチームは、なぜ多くのヒット作を出せるのか。チーム発足からの5年をふりかえり、全世界10億ダウンロードを成し遂げた成功の秘密や、ユニークな制作プロセスに迫る。
佐藤宗(右)
面白法人カヤックゲーム事業部・ディレクター
最近「響け!ユーフォニアム」を観て感動したので社員に布教してます。4月から3期が始まるのでぜひ観てください!
村上雅哉(左)
面白法人カヤックゲーム事業部・プロデューサー
ハイカジには日本のゲーム産業をもっと盛り上げるポテンシャルがある!
◆自信喪失を乗り越えて。試行錯誤の黎明期
ー「ハイパーカジュアルゲーム累計10億ダウンロード」の達成、おめでとうございます! 記念インタビューとして、ゲーム事業部ハイカジチームの佐藤さん、村上さんからお話を伺いたいと思います。
佐藤
ありがとうございます。ここまでの経緯を時系列で追いながら、色々なクリエイターが色々な方法でゲームをつくって、ヒットさせていることを話していきたいと思います。
ーカヤックはいち早くハイパーカジュアルゲームの市場に参入していますが、ハイカジチームはどのように始まったのですか。
佐藤
2018年に「ハイパーカジュアルゲームをつくってみよう」という社内イベントがあって、僕の応募した企画が採用されたことがきっかけでした。
今から考えると、初作の「HOPPY JAPAN(ホッピージャパン)」はハイカジのお作法にのっとっていませんでした。普通は多くの人に遊んでもらえるようグローバル向けにつくるのですが、カヤックの打ち出す「日本的面白コンテンツ」というキーワードに絡めて、日本の街並みを猛スピードで駆け抜けるゲームを企画したんです。1ヶ月くらいかけて気合を入れてつくったのですが、ヒットしませんでしたね(笑)。
村上
この時は「ハイカジ」という言葉が社内に浸透したり、他社との広告ネットワークの繋がりができたり、まだまだ「種が植えられた段階」ですね。
佐藤
当時は、ハイパーカジュアルゲームの理解度が高くなかったこともあり、リリースと同時にプロジェクトが終了してしまいました。でも、「カヤックに合っているゲームづくりだから、続けてみよう」という有志が現れて......。メンバーを4人集めて、勤務時間外にこっそり集まってゲームをつくって、あとは広告費だけもらえたらテストマーケティングができるという状態にしました。最初は期間のリミットや条件付きでの活動でしたが、「Park Master(パークマスター)」が生まれたことで正式に事業化できました。
▲指で描いて駐車するパズルゲーム。2019年にリリースしたハイカジチームの初ヒット作で、2020年1月にはアメリカで無料DLランキング1位を獲得
ー「Park Master」のヒット以前は、試行錯誤の日々だったとか。
佐藤
はい、いきなり大成功したわけではありません。「Park Master」の前にも10作くらいリリースしていましたが、「いいものをつくった!」と思っても数字が出なくて、自信喪失していました。最初は自分たちの好みに寄せたゲームをつくっていたのですが、「誰でも遊べるように、分かりやすさが重要」だという結論に達しました。ハイカジで遊ぶ人は、難しいゲーム性や駆け引きより、気軽で楽しい時間を過ごしたいんだろうな、ということが次第に分かってきたんです。
この気づきは大きかった。従来のゲームづくりから頭を切り替えたら、うまくいくようになりました。
ーカヤックが今まで制作してきたソーシャルゲームとは、つくり方や売り方が全然違うのですか。
佐藤
はい。プレイヤー層、つくり方、ビジネスモデルやマーケットの規模も全然違います。僕らには「ゲーム的にはこうするべき」みたいなノウハウがあったのですが、それが通用しないことが多々ありました。あとは、やっぱり広告ありきなんですよね。
村上
そうですね。「ハイカジの広告とは、アプリの中にどこでもドアを置くイメージ」と言っています。「入ってみたいな、楽しそうだな」という入り口をつくることで、世界中、何十億の人とつながることができるんです。
佐藤
だから、広告で見た時の分かりやすさも大事。パッと見て、「どんなゲームかすぐ判断できるか」「遊んでみたいと思えるか」を制作の判断基準にしました。最初は、「ゲームのルールを伝えるフェーズ」「ゲームの面白さを伝えるフェーズ」の二段階で考えていましたが、今は全て5秒以内に伝えるようにしています。
村上
5秒で広告が消せるから、それまでが勝負。究極的には1枚のスクリーンショットでも内容が分かるくらいが理想です。
佐藤
たしかに。静止画でもルールの大枠が分からないと、モチーフ選びに失敗していると言えるかもしれませんね。とても難しいことですが、「世界中の人に伝わるモチーフって何だろう」と日々考えています。
◆感覚値から言語化、ヒットを出す仕組みづくりへ
ー2020年に正式に事業化された後、どのようなチームづくりをしてきましたか。
佐藤
特定の人に偏らず、色々な人がグローバルローンチできることを目標にしました。そのため、僕が感覚値でやっていたことを言語化して、チームに伝えていきました。
例えば、分かりやすいことに加えて「親しみやすい・嫌われない」ことも重要なんです。広告のアートや世界観によって、見た人から「このゲームは自分向けじゃないな」と思われないためです。それらを踏まえて、慣れ親しんだゲームシステムやルールに目新しさや面白味を加えていきます。
村上
こういった様々な気づきやノウハウを落とし込んでいったところ、佐藤以外のクリエイターの活躍も大きく広がりました。それがハイカジチームの強みになっています。
ーメディア出演やイベント登壇など、業界を牽引するような立場になっていきましたよね。ちなみに、おふたりのお気に入りのゲームや、印象に残っているゲームは何ですか。
佐藤
まず、「Ball Run 2048(ボールラン)」です。テストマーケティングの前の僕の予想では「それほど伸びないゲームかもしれない」と思っていたのですが、群を抜いてKPIが良かったんです。自分の感性は当てにならないこともあるんだな、と気づかされました。
村上
ゲームには「リスクとリターン」がある方がいい、と言われますが、「Ball Run 2048」はそういう駆け引きの要素が極度に低い、おもちゃに近いようなゲームなんです。それが大ヒットしました。
佐藤
全く新しい領域を手探りしていた中での学びでした。
▲カヤック第6弾のハイパーカジュアルゲーム「Ball Run 2048」。左右にボールを転がし、同じ数字を合体させていくランゲーム。直観的に遊べるだけでなく多彩なギミックも楽しめる(2021年リリース)
村上
「Noodle Master (ヌードルマスター)」も同じタイプで、シンプルなルールで遊べて、麺のASMRがなんだか癖になる。そのくらい、分かりやすさと心地よさに振り切ってもいいんですよね。
佐藤
分かりやすさだけはみんなに守ってほしいけれど、あえて制作ルールは厳しく設けていません。ハイカジは、ゲームの面白いところや気持ちいいところを最初につくって、「これは好きですか?」と世界中のプレイヤーに聞きながらゲームをつくれるところが魅力です。こんな風に遊びたいというニーズに、的確に届けられるんです。
村上
あと、「Park Master(パークマスター)」のゲームのモチーフは分かりやすく美しいです。駐車場と車のモチーフだけで、ルールや遊び方が世界中の人に理解してもらえます。
佐藤
例えば、絡まっているロープがあれば「これを解いていくゲームなんだな」と、共通感覚で理解できますよね。車を枠に入れたいとか、絡まったロープを解きたいとかって、人間の潜在的欲求なんでしょうね。
◆つくり方にも個性がある。カヤックのユニークなクリエイターたち
ーひとりでなく色々なメンバーがヒットを出せているところが強み、ということですが、クリエイターについても教えてもらえますか。
佐藤
例えば、先ほど話した「Ball Run 2048」や、「ScaleMan(スケールマン)」「Type Spin(タイプスピン)」などをつくったクリエイター、彼はヒットメーカーですね。ゲームが大好きで、自分自身がつくったり遊んだりした中で培った「見て楽しい、触って気持ちいい」をナチュラルに再現できる。
村上
入社前からTwitter(現X)で活躍していて、映像づくりや画づくりで話題化するセンスがすごいです。
佐藤
センスに頼るだけでなく、インプット量も膨大です。ストアの上位ランキングのゲームを全て試し、ゲーム広告、YouTubeも常にチェックしてから、アウトプットしています。
あと、「Draw Saber(ドローセーバー)」「Mannequin Downhill(マネキンダウンヒル)」の平山尚も面白いクリエイター。カヤック転職前は大手ゲーム会社でビッグタイトルをつくり、著作も出版している、歴戦のプログラマーです。
村上
社内の勉強会も主催してくれていますよね。キャリアをいったん白紙にする覚悟でカヤックに入社し、今ではハイカジという全く違う新領域に挑戦しています。
佐藤
そういうところが尖っているし、まさに技術の人だと思います。ゲームづくりも、技術検証や表現力を高めるという視点から始まっています。実装力の追及というか、他のメンバーとは全く違う角度からのアプローチが面白いです。
また、今同席している村上は異色のヒットメーカー。経営やマネージメントに関わる立場で、エンジニア職でもなくどっぷりゲームにはまっているタイプでもない。わりと飽きっぽいメンバーが多い中で、彼は粘り強く検証するところが強いです。
僕はある程度感性をベースにロジックを立てることが多いけれど、村上はもう少しマーケティング的な感覚なのかな......?
村上
いちばん論理的なタイプかもしれませんね。プレイヤーの好みや、世の中の流行にどうアジャストさせていくかを考えるアプローチというか......。もともと理系の大学院で実験や研究をしていたので、理論を組み立ててテストすることにやりがいを感じます。
僕がつくった「Number Master(ナンバーマスター)」は、「Ball Run 2048」の「精神的続編」と呼んでいます。「Ball Run 2048」が大ヒットしたので、ビジネス視点で同じようなゲームをつくりたいと思っていました。超シンプルなルールに、当時流行っていた数字のモチーフを組み合わせてみたんです。
佐藤
数字というモチーフは世界中でいちばん強いんじゃないか、と感じさせられました。スクショで理解しやすいという意味で、広告的にも100点だと思います。
それから、「Draw Action(ドローアクション)」「Eating Simulator(イーティングシュミレーター)」「Ragdoll Break(ラグドールブレイク)」をつくった藤井厚太朗は、カヤックゲームユニットのベストクリエイター賞(2023年)を受賞しましたね。
村上
彼はリサーチ力がすごい。カヤックでもランキングをチェックできるツールを購入しているのですが、最適ではないからとWebアプリを自作しています。ランキング1000位までを網羅して、パッと目につくようなスクショや関連動画を日々チェックしているんです。
佐藤
ランキングに無いゲームをつくりたい、と言っていますよね。
村上
キャラもユニークです。遊び心やふざけていたい感じとか、カヤックに波長が合っていると思います。カヤックでは四半期に一回役員と面談するのですが、なぜか爆弾解除のおもちゃをつくっていって、役員と勝負する様子を動画で発表していました(笑)。
ーそんな面談、想像がつきません(笑)。それにしてもみなさん自由だし、自作とか、自分なりに面白がることが本当に好きなんですね。
佐藤
その思いはやっぱり大切にしたいんです。ハイパーカジュアルゲーム制作が最終目的というよりは、それは手段であって、「面白くゲームをつくりたい」という願いから生まれたチームなので......。
特に、型にはめないことは意識していました。そういう意味では、職業で役割分担をしていません。エンジニアが企画や広告もつくるし、デザイナーもプログラミングをする。AIで一本ゲームをつくってしまうデザイナーもいますし、3Dモデリングが得意ならキャラデザインも担当します。
メンバーのいいところや強みを発揮できるチームづくりが、ここまでの結果に結びついているのではないかと思います。
村上
「自走できるチーム」という話はずっとしていましたよね。
佐藤
「面白くゲームをつくる」ことを、自分で考えて動ける強いチームでいたいですね。細かいルールをつくっても、誰も言うことを聞かないかもしれないし(笑)。
村上
クリエイターが独自のセンスを活かして、こんな風にのびのびとゲームをつくれる環境はなかなか無いですよね。約5年間の過程で、柔軟性とスピード感のあるいい組織に育っていると思います。
ー最後に、今後の抱負を教えてください。
佐藤
ハイカジは手軽にプレイできる反面、遊び続けてもらうのが難しい。長く遊ばれる、愛着をもってもらえるゲームをつくりたいですね。
前述したようなユニークなクリエイターと交流できるイベントも開催予定なので、興味がある人は遊びにきてください。面白くゲームをつくりたいとか、ゲームづくりのプロセスも楽しみたい人は大歓迎です。
(取材・文 二木薫)
カヤックサイト インタビューより引用-https://www.kayac.com/news/2024/02/hypercasual_interview
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