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地域移住・関係人口促進のためのマッチングサービスSMOUT(スマウト)を立ち上げたのは、カヤックLivingの吸収合併でカヤックに入社した中村さん。前職からずっと地域に関わり続けてきた彼がどんな仕事に取り組み、何に面白さを感じているのか、話を聞きました。
中村 圭二郎
1977年生まれ、2020年カヤック入社
ちいき資本主義事業部/プランナー・ディレクター
カヤックは「関わるきっかけをつくる会社」
― 前職では何をしていましたか?
前職はカヤックの連結子会社だった株式会社カヤックLivingでした。「SMOUT(スマウト)」のサービス立ち上げや導入支援を担当する傍らで、自治体から課題をヒアリングして企画提案も行っていました。その後、カヤックLivingがカヤックに吸収合併されて入社に至ります。
― カヤックに入社してどんな印象を受けましたか?
ルールがあるようでないような印象です。
カヤックLivingは小さい会社だったので判断や手続きの小回りが効きましたが、カヤックは上場企業なのでルールがしっかり整備されています。もっと自由な環境かと思っていましたが、想像よりも上場企業としてしっかりしていました。大企業っぽい部分もありますね。
一方でベンチャースピリットが残っている部分もあります。社員一人ひとりの裁量が大きいからでしょうね。整備されている部分とそうではない部分のバランスが自分には合っています。曖昧さや不安定な状態に耐える能力をネガティブ・ケイパビリティと言うそうですが、そういう柔軟な人が向いている会社だと思います。
― 入社して良かったことはありますか?
前職までは顧客と関わるときに、自分のキャラクターを売りにして仕事をすることが多かったのですが、カヤックに入社して“面白法人”ブランドの知名度を使えるようになりました。カヤックを知っている人には強く興味を持ってもらえるので、提案時に楽できることもあります。
でも面白法人って名乗っていることで、知らない人が眉をひそめることもありますね。Webサイトを見てもたくさんの事業を展開していて、何の会社か分かりづらいので。
地域の方には「関わるきっかけをつくる会社です」と説明することが多いです。商品と消費者や、地域の内と外をつなぐ会社という意味です。商品や地域を伝えるときに一般的には魅力だけを発信しがちですが、弱点みたいなものも関わるきっかけになります。それが自虐的なコンテンツにならないように意識をしているのですが、その分かりやすい事例として、埼玉の魅力を集めたWebサイト「タサいたま」を紹介することもあります。
― ちいき資本主義事業部では、どんな仕事をしていますか?
元々はSMOUTの営業やプランニング、サービスの導入支援を担当していました。その後「まちのコイン」でも導入支援やカスタマーサクセス(CS)の仕事をやるようになりました。他には地方自治体から受託している地域活性化などのプロジェクトを担当したり、現在は「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」を活用して八尾市の週1在宅公務員として働いていたりします。
地域のコミュニケーションを可視化する「まちのコイン」
―「まちのコイン」はどんなサービスですか?
「まちのコイン」は地域内外の人と地域を繋げるコミュニティ通貨です。地域の中でコミュニケーションできる人や場所を見える化するサービスだと考えています。地方では人は車で移動するので、消費を伴う場所、例えば大型ショッピングモールなどでしかコミュニケーションが発生しなくなっています。そんな中で本当は価値があるのに埋もれてしまう地元のスポットに光を当て、地域の価値を高めるのが「まちのコイン」の役割だと思います。
―「まちのコイン」のカスタマーサクセス(CS)として、どんな取り組みをしていますか?
自治体のもつ課題を、「まちのコイン」を通して解決するために伴走するのがCSの仕事です。
「まちのコイン」でどんな体験が利用されているか、どのエリアに人が集まっているかといったデータを分析し、どのエリアでどんな施策を実施したらいいか企画提案します。「まちのコイン」の活用では、アナログとデジタルを往来しながら、ユーザーが楽しめるイベントを考える必要があります。ITやスマートフォンのリテラシーが求められるので、そのサポートもしています。
一般的なCSはサービスの中における顧客の成功に寄与しますが、私の場合は「まちのコイン」の活用のみに留まらず、地域活性化の企画提案をしています。そこでCSを「ちいきサクセス(Chiiki Success)」と言い換えてしまおうというアイデアもあります。それくらい何でも取り組んでいますね。
―「まちのコイン」の好きなところや面白いところ、可能性を感じる部分を教えて下さい。
お店など「消費ができる場所」は、すでに見える化するアプリやサービスが溢れています。しかし人同士のコミュニケーションなど、消費以外の活動を見える化するサービスはあまり多くありません。「まちのコイン」はそれを担うサービスだと考えています。
自分の地元だったら消費以外のコミュニケーションの場所を知っていて簡単にアクセスできると思いますが、少しでも地域と距離があるとそれがうまくできません。地域に根づいたコミュニケーションの場を可視化して、そこに関わるサポートをできるのが、このサービスの面白いポイントですね。
誰かの人生を変える「SMOUT」の魅力
― 「SMOUT」はどんなサービスですか?
移住したい人と地域を結ぶマッチングサービスです。ただし、移住だけに限定したサービスというわけでもありません。例えば、その地域が好きになって何度も足を運んでくれる人を関係人口と言いますが、そういう人が増えることも含めてサポートするサービスだと考えています。
私は地域が抱える本質的な課題を「少子化に伴う人口減少」だと考えていますが、これは日本全体の問題でもあります。移住という形で国内の人を動かすだけでは、国全体で見ると状況が変わらないですよね。
そこで、一人が複数地域に関わる「人材のシェアリング」が本質的な課題解決になるのではないかと考えています。だから移住の促進だけではなく、関係人口の増加も大切にしているんです。
― 「SMOUT」に関わる面白さは何ですか?
移住するつもりはなかったけど、SMOUTを通じて地域の人とコミュニケーションしていたら、その人達に会いたくなって、気がついたら移住していたという人の話を聞くことがあります。これはとても嬉しいことです。このサービスがその人の人生を変えたと言えますよね。単なる移住サービスというより、予想もしない人生の転機を生み出すサービスになっているのがSMOUTの面白いところだと思います。
新しい指標をつくる。地域資本主義の面白さ
― カヤックでは「地域資本主義」を掲げて、地域に関わる事業を展開しています。その実現に関わる面白さは何でしょうか?
新しい指標をつくることが「地域資本主義」の一番面白いところです。
現代では、SNSアカウントでフォロワーが100万人いたらある種の社会的信用が生まれますよね。実際にフォロワーの数で仕事を獲得しているインフルエンサーもいると思います。これはインターネットがつくった新しい指標だと思うんです。
このように新しい指標を地域の分野でつくっていくのが「地域資本主義」です。例えば山は経済資本の観点では、資産価値が著しく低下しています。ですが、山が影響を及ぼす川や海までつながる生態系の一部という視点でみると環境資本として価値づけできると考えます。また、山をコミュニケーションが生み出される場として活用すれば社会資本と捉えることができるかもしれません。そういう部分に面白さを感じますね。
― 逆に「地域資本主義」の実現に関わる難しさは何でしょうか?
新しい考え方なので、これを具体的にイメージできない方も大勢いらっしゃいます。夢みたいなことを語っていても食えないと言われることもあります。シンプルでわかりやすく説明しながら人を巻き込んでいくことが難しいポイントです。
自治体の予算は1年ごとに区切りがあるので、長期的な取り組みには地域の方との関係性が重要になります。「地域資本主義」を理解し可能性を感じてもらうためには、それだけの信用を得るコミュニケーションが必要です。
カヤックはソーシャルビジネスの実験場
― カヤックはどんな会社ですか?
仮説を立てられる人が楽しめる会社かなと思います。「地域資本主義」という新しい資本主義の形を追い求めているカヤックでは常に挑戦と変化を求めているので、固定化されたやり方や考え方はすぐに通用しなくなります。揺るがない公式や正解を持っている人は長続きしないイメージですね。逆に仮説を持って色々実験したい人にとってはいい会社だと思います。
― チャンスがあれば会ってほしい社員はいますか?
まずは経理の渡辺さんです。私は渡辺さんに迷惑ばかりかけているんですが、それでもなぜバックオフィスの人たちがクリエイターを支えてくれるのか、どういう価値を感じているのかを聞くと、この会社の面白さが分かるかもしれません。(渡辺さんのインタビューはこちら)
あとは中島さんです。初の女性役員である彼女がなぜカヤックで仕事をつづけているのか、カヤックにどんな可能性を感じているのかという点に、カヤックが持っている面白さの片鱗があると思います。(中島さんのインタビューはこちら)
― カヤックに入りたいと思っている方へメッセージがあればどうぞ
売上と利益を度外視でクリエイティブをやっていると思われがちですが、それでは持続可能なソーシャルビジネスは実現できません。ですので、ビジネス視点で成立するかもしっかり考えている会社です。ビジネスの全体像を掴みたい人にとってはいい環境だと思います。例えば将来起業したい人には学びの場としておすすめです。
(取材・文:高田一史)
カヤックサイト インタビューより引用-https://www.kayac.com/news/2024/01/interview-nakamura
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