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今はもう迷うことがないけど、藝大を出てデザイナーになったばかりの頃はアカデミックに語られるデザインと現場で求められるデザインとのギャップで頭がねじ切れそうになってました。
私がその時いたデザインの現場(制作会社です)は、短時間で量を作ることが正だったので、自分の作ったものや作ろうとしているものを言語化してアウトプットする時間はなくて、それっぽいものを速く作ることにただただ専念していました。
一方で美大の文脈で語られるデザインは、問題解決をするものであるとか、価値創出であるとか、創造的なものだとか、です。デザイナーになってから美大の講義を受ける機会が何度かありましたが、あまりに自分の仕事に活かせる部分がない気がして、「私のデザイナー人生には関係のないことだな」と白けてしまったことを覚えています。
このnoteでは、そんなデザイナーとして闇落ちしそうになる過程で見つけた私にとっての「価値あるデザイン」について書いてみました。
目次
- 「いいデザイン」
- バッド・デザイナーになる
- 意匠とクライアントの利益は相反しない
- さいごに
「いいデザイン」
制作会社ではアウトプットを出し続けるために、デザインの引き出しを増やす必要があって、SNSで話題にあがるようなデザインやPinterestの”イケてる”デザインをただただたくさん見続けていました。とにかくとにかくデザインし続けるために、SNSでトレンドになった「いいデザイン」を日々に注ぎ込みまくっていました。もちろん今でもそういうデザインを見るのが大好きなのですが、この頃はもうただただスクロールしてるだけ、目を肥やしているだけという状態になっていたと思います。
振り返ると私はその時に見ていた一つひとつの「いいデザイン」をほとんど覚えてません。見たら思い出すかもしれないけど、長い間心を動かされ続けるようなデザインには出会えていない気がします。
バッド・デザイナーになる
デザインはアウトプット媒体の性質上、意匠のトレンドに左右されやすいし、消費されやすい部分は少なからずあると思いますが、SNS上と一部のデザイナーに支持される「いいデザイン」は、それにも増して刹那的で享楽的な「いいね」稼ぎの道具になっているように思えてなりません。
これは負け惜しみなんかじゃなくて、私はデザイナー受けする見栄えの良い「いいデザイン」だけがしたいんじゃなくて、「価値あるデザイン」を作りたいのです。
だから私は刹那的な「いいデザイン」を作るグッド・デザイナーではなく、バッド・デザイナーになることにしました❤️(バッド・フェミニストのオマージュです)
バッド・デザイナーはクライアントの成果を最重要課題とするため、必要であればどんなアウトプットも作ります。それが例え世間的に「存在がダサい!」とされているものでも、それが一番効果的ならその手段を易々と選ぶはず。
また、バッド・デザイナーは仕事上のデザインと、自己表現を切り離して考えることができるので、真にクライアントの求める世界観を忠実に表現することができます。
私はデザイナーになってから、ず〜っと見栄えのいいデザインを作るグッド・デザイナーを目指してきましたが、クライアントの利益を追求するバッド・デザイナーを目指すことで、一度自分のデザイナー人生から切り離されてしまった、アカデミックな場でのデザインという言葉を取り戻せる気もしています。クライアントの利益を最優先にデザインすることは問題解決であり、価値創出であり、創造的だと思うからです。
意匠とクライアントの利益は相反しない
バッド・デザイナーになると書いたことで、じゃあデザインの見栄えの良さなど意匠性の高さは追わないのかという疑問を持つ方もいると思うのですが、私は意匠性の高さとクライアントの利益追求は相反しないと考えています。デザイナーである以上、意匠性を上げていくことはむしろ当然で、ただそれだけを目標にデザインをしないということです。
過去の自分を振り返ると、時間に追われながらアウトプットをやみくもに出すようなデザインの仕方をしていくことで、意匠性に対する技術力は確かに上がったのですが、何か頭打ちになった感覚がありました。
しかし、セブンデックスに入社し、クライアントの事業成長や本当に必要としているものを考えながらデザインする機会を得たことで、デザインをするための芯の存在に気づき、意匠性自体の可能性も拡張していくのを感じました。
意匠とクライアントの利益は相反しなくて、むしろクライアントの利益追求という本質を追うことで、意匠性はより高まるし、その二つを研ぎ澄まし調和したものが私にとっての「価値あるデザイン」なのだと思います。
さいごに
デザイナーとしての方向性が多々ある中で、自分にとっての「価値あるデザイン」を見つけ、それを遂行していける場所にいることができたため、なりたいデザイナー像をかなり明確にすることもできました。冒頭にも書きましたが、今はもう私の中で何がやりたい「デザイン」なのかが鮮明なので、迷うことはないでしょう。
藝大で触れてきたアカデミックなデザインの考えと、現場のコスパと意匠重視のデザインで頭がねじ切れそうになった結果、どちらも活かせる道を見つけることができたので、それらの経験全てを「価値あるデザイン」を作るために生かしていきたいと思っています。