目次
- ■エジプトの現状は?
- ■エジプトで訪問した大学やコミュニティ
- ・Ahram Canadian University (ACU:アラムカナダ大学)
- ・Nile University (NU:ナイル大学)
- ・Canadian International College (CIC:カナダ国際大学)
- ・Misr University for Science & Technology (MUST:ミスル科学技術大学)
- ・Egypt-Japan University of Science and Technology (E-JUST:エジプト日本科学技術大学)
- ・Egyptian Japanese Korean Community In Egypt (Ejkcom)
- ■ASIA to JAPANの取り組み①|エジプト学生向けオンライン日本語講座
- ・学生にとってのメリット
- ・日本語講座「All Egypt」の最終目標
- ■ASIA to JAPANの取り組み②|新たに2大学とMOU締結
- ■ASIA to JAPANの取り組み③|コミュニティ「Ejkcom」向けにイベント実施
- ■エジプト現地の学生の声
- ■まとめ(エジプト学生にとっての日本市場)
【出張レポート】就職氷河期で苦難するエジプト国内学生の現状とは?〜日本市場に興味を抱いたその理由〜
弊社ASIA to JAPANは、2024年3月3日〜14日にかけてエジプトを訪問し、現地大学の視察や日本語を学ぶコミュニティを招待したイベントを開催しました。弊社で実際に就職サポートする学生の状況についての情報をシェアいたします。
■エジプトの現状は?
昨年の出張レポートでも紹介していますが、エジプトは「観光業」が産業の中核を担っているものの、コロナの影響による観光客の激減や、政変の影響で国内の産業が引き続き冷え込みを見せています。(過去の記事はこちらから)
突如行われた利下げ
今回訪問していた期間中、突如エジプトの通貨であるエジプトポンドの利下げが行われました。
ニュースサイトのBloombergによると
ポンドは過去1年間、1ドル=30.9ポンド程度で推移。だが、闇市場では大幅に安く取引されてきた。今回の切り下げでポンドは闇市場での相場水準に近づき、1ドル=45ポンド前後で売買されていた。国際通貨基金(IMF)はエジプトに対し、30%近いインフレ率に対処するため金融政策を強化し、より柔軟な公式為替レートを採用するよう促していた。
出展元:Bloomberg「エジプト通貨が35%安、当局が切り下げ-600bp緊急利上げ後」※一部意訳
と闇市場と異なる自国通貨の為替レートを統一させるために行なった施策だということでしたが、事前通知がなく突然対ドルで35%近く下落しました。そのため、外貨と交換をする際にかかる金額が大きく変わることになりました。
各所訪問に同行してくれたエジプト人学生からは「ここ数年で2度大きな下落があり輸入品の値上がりが酷くなっている一方で、(就職氷河期も影響し)若者はなかなか仕事を見つけることができていない。そういった背景から海外で働きたいという意欲が高い若者が増えている」という声が聞かれました。
レートが急激に下がってしまう自国通貨の影響により、私生活もひっ迫しており、現状に悩む学生の考え方に変化が現れていると言えるでしょう。
■エジプトで訪問した大学やコミュニティ
今回訪問をした大学やコミュニティを紹介します。
・Ahram Canadian University
(ACU:アラムカナダ大学)
ACUはエジプトの6th of October市に構える私立大学で、メディアやコンピューターサイエンス、また薬学など理系分野に秀でています。
・Nile University
(NU:ナイル大学)
NU は、エジプト・中東/北アフリカ (MENA) 地域におけるテクノロジーおよびビジネス教育のリーダーとなることを目的としたエジプト初の国立非営利大学です。コンピューターサイエンスや情報技術、工学部など理系を中心とした学部だけでなく、一般企業と合同でプロジェクトを実施するなど、研究向きの大学です。授業に組み込まれるプロジェクトはチームで稼働をするため、役割やチーム内コミュニケーションなど企業が必要とする連携力を学生のうちに養われています。
・Canadian International College
(CIC:カナダ国際大学)
CICはカナダの学士号を提供するエジプトで唯一の高等教育機関で、エジプトの高等教育省、エジプト大学最高評議会、および NAQAAE (国家教育質保証・適格認定機構)によって認定されたエジプトの学士号だけでなく、デュアル プログラムではカナダのケープ ブレトン大学によって認定されるカナダの学士号を得ることができます。
・Misr University for Science & Technology
(MUST:ミスル科学技術大学)
MUSTはエジプトで初めて設立された私立の工科大学で、学生数は約20,000 名を超えています。情報技術や情報システム、薬学など理系を中心とした学部が設置されています。また、現在150名近くの学生が日本語を学んでいます。
・Egypt-Japan University of Science and Technology
(E-JUST:エジプト日本科学技術大学)
E-JUSTはエジプト政府によって設置された、日本型の工学教育の特徴を活かした「少人数、大学院・研究中心、実践的かつ国際水準の教育提供」をコンセプトとする大学です。日本国政府が国際協力機構を主体に技術的指導などの支援を行っています。
ASIA to JAPANでは昨年9月に提携を結びましたが、提携前に先行して進めていた日本語講座も半年を過ぎ、参加学生は全員日本語力0からのスタートでしたが、今では簡単な会話であれば問題なくできるレベルまで成長しています。
成長具合を鑑みると、プログラムが終了する今年の夏までに日本語で面接を受けられるN4レベルまでの到達が見えてきました。また、今年の夏には第2期目が始動します。
・Egyptian Japanese Korean Community In Egypt
(Ejkcom)
Ejkcomは、エジプトに在住する2000人以上の日本人と韓国人をサポートするコミュニティです。エジプトでは1万人以上の学生がアジア言語に興味を持っており、Ejkcomではイベントの開催や、授業の開講、関連する仕事の提供など、学習を促すためのあらゆる環境を提供しています。
■ASIA to JAPANの取り組み①|エジプト学生向けオンライン日本語講座
ASIA to JAPANはエジプトの理系大学生を対象に、オンライン日本語講座「All Egypt」を開講しており、この度第2期目となる新講座を4月より開始します。
通常の日本語授業では、提携大学の理系大学生を対象に1年半かけたプログラムを作り、大学ごとに募集をかけオフラインにて無料開講しています。All Egyptでは、1年半のオンライン用プログラムを作成しており、学生は無料かつ場所を選ばず受講することができるのが特徴です。
第2期目ではエジプトの26大学の理系大学生を対象に、最大100名までの募集を行います。
・学生にとってのメリット
エジプトでは何かを学ぶ時「自分への投資として対価を払い、時間を費やすこと」が当たり前という考え方があり、成長と自己価値を高めるために率先的に学ぶ場へ参加をする傾向があります。
また「日本語を学びたい」「日本語に興味がある」というエジプト人も多くいるものの、独学以外で教育を受けるには、通常であれば、ある程度の費用がかかります。
そのような文化があるためか、今回の訪問先で学生に対しAll Egyptを紹介した際、ほとんどの学生が“無料”という言葉に疑念を抱いていました。以前に日本語授業を受け日本企業への内定が決まった学生から体験談を丁寧に説明した所、学生が抱く不安を解消でき、さらに少ないチャンスをモノにしようと前向きな質問を多くいただくことができました。
・日本語講座「All Egypt」の最終目標
All Egyptの最終目的は、「日本語で面接ができるレベルに理系大学生を育成すること」です。日本企業の面接担当者の多くが「日本語で面接を行いたい」と希望していますが、理系大学生で日本語を話せる学生はほとんどいません。そのため理系外国人材の日本語話者を育成するべく、学生に無料で授業を開講しています。
当プログラムを修了した学生は、ASIA to JAPANの就職支援サービス「FAST OFFER」への登録が可能となります。
日本就職の支援サービス「FAST OFFER」説明会も開催
FAST OFFERは、ASIA to JAPANが提供する理系海外大生と日本企業との面接イベント(※)です。今回の出張で、訪問した大学やコミュニティでFAST OFFERや日本就職についての説明会を実施しました。
各所50〜80人の理系や日本語学科の大学生が集まり日本就職について熱心に聞き、そして質疑応答でも多くの質問をいただきました。
(※)アジア各国・各地域のトップクラスの大学で提供する「理系学生向けの無料の日本語授業」の受講学生を中心とした独自データベースから、参加する企業各社が面接したい学生を選びます。3社以上の企業から選ばれた学生を無料で日本に招待し「日本で実施する、対面での面接イベント」となります。
■ASIA to JAPANの取り組み②|新たに2大学とMOU締結
ASIA to JAPANは新たにNUとMUSTの2大学とMOUを締結いたします。
締結に至った背景は、共にASIA to JAPANが提供する日本語学習プログラムに興味と将来性を感じていただけたからです。
NU:ナイル大学
NUでは学長やコンピューターサイエンスの教授とお話しをする機会がありました。NUでは、他言語を学び単位が与えられる一般教養のカリキュラムがあり、新たにN3レベルを目標とした日本語を選択コースの一つに加え、修了した学生のみ次ステップとしてFAST OFFERを紹介する形式で進めていくことになりました。
MUST:ミスル科学技術大学
MUSTでは国際関係の学部長にお会いしFAST OFFERの説明を行ったことがきっかけで、学長と直接お話をする機会を得ました。ASIA to JAPANのプログラムによって「学生の機会を広げられる」点を特に評価いただき、今回のMOU締結の話まで進めることができました。そして、こちらも日本語の授業を大学のカリキュラムに追加されることになり、今後は新学年となる10月に授業開講することを目標に引き続き大学関係者と内容を深めていきます。
またMUSTの卒業要件には「60時間のインターンシップ」があり、ASIA to JAPANでは学生のインターンシップを受け入れることにしました。
■ASIA to JAPANの取り組み③|コミュニティ「Ejkcom」向けにイベント実施
IT関連の学部生(大学は問わず)を中心に、Ejkcomに参加している大学生約50名に向けて、ASIA to JAPANやFAST OFFERについて説明会を実施しました。
大学での説明会と同様に日本企業の内定が決まったエジプト人学生に登壇してもらい、日本語講座のプログラムや内定までの経緯について説明し、日本就職を見据える現役学生からの質疑に応対することで学生の不安解消に努めました。
説明会の他に日本語でのスピーチコンテストが開催され、代表の三瓶が審査員を務めました。登壇した多くの学生が日本語を話すことができるのを見て、改めてエジプトの日本語力の高さに気づきました。説明会の終了後、内容に興味を持った学生がFAST OFFERへの登録を行なってくれました。
■エジプト現地の学生の声
昨年9月に提携を結んだE-JUSTへも訪問した際に、他校ではなかった質問があげられました。それが「兵役問題」です。
大卒後の兵役
エジプトには徴兵制度があり、18〜30歳に該当する男性(※)は1年〜3年間軍隊への入隊が義務付けられています。
該当者の多くが高校もしくは大学を卒業するタイミングで入隊をします。入隊の1年前は準備期間とされており、無断で国外に出てしまうと逃亡したとみなされるため、安易に海外旅行にも行くことができません。
”徴兵される1年前は国外に出ることができない”という点で「日本で面接を行うFAST OFFERに参加できるのか」、また「兵役問題に対応してもらえるのか」など多数質問をいただき、ASIA to JAPANとしてもこの兵役問題については、今後向き合うべき課題だと認識を新たにしました。
(※)必ず該当年齢の男性全員が入隊するわけではなく、一人っ子や世帯の長男など将来家督を継ぐ場合や、ハーフで30歳までの間に他国の国籍を有する場合、そして障害がある場合などは入隊を義務付けられていません。
■まとめ(エジプト学生にとっての日本市場)
冒頭にも記載した通り、エジプトではいまもなお就職氷河期が続いており、学生の就職が難しくなっています。また、ITエンジニアの数が飽和状態で優秀な人材でもなかなか内定を掴み取ることができず、最近では国外で就職口を見つける動きが増加傾向にあります。
その現状もあり、日本はエジプト学生や教授にとっても魅力的な市場であると認知されています。ACUでお会いした日本語の教授は学生に対し「こんなチャンスはありません。ぜひ日本で働きましょう」と学生の背中を押していました。
また、Ejkcomでのスピーチで感じたことは「日本語の発音がとても綺麗」ということでした。どうやら日本語に近しい発音をするアラブ語が多いと言うところも起因しているようです。実際に日本語の堪能なエジプト学生と電話で話すと「日本人と話しているような感覚」になります。しかし、日本語レベル自体はN2やN3レベルと差があるものの、綺麗な発音で話すことができるのは他のアジアの国ではあまり見ない、エジプトならではの特徴だと感じました。
理系人材の充足に悩む企業の方も多くいるかと思います。しかし世界に目を向けると日本の就職を夢見る優秀な学生が、チャンスを掴むため日々研鑽をしています。法人営業経験がある方で、海外の高度人材採用の採用コンサルタント(法人営業)に興味がありましたら、是非ご応募ください。