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執筆者:株式会社UPSIDER VP of Engineering 泉雄介, CFA
現在UPSIDERでVPoEを務めている泉です。
自分は音大を卒業してから、作曲家としてキャリアを始めました。
その後映像製作からウェブ製作に興味が移り変わり、ウェブ系のシステム開発業で起業する道を選びます。当時「お金」については全く理解が足りておらず、経営は愚か“金勘定”ですら怪しかった私ですが、ひょんなことから金融業界で7年間働いたことによって、資本市場そのものを深く知るようになり、金融自体への面白さに目覚めました。
その後はゲーム会社、ネット印刷、物流等、スタートアップの経営などに技術的側面から関わるようになり、2023年からはUPSIDERにジョインし、今に至ります。
今回みずほフィナンシャルグループの話をTORUから聞いたときに感じたのは「ワクワク」でした。
むしろあとから「でもこのニュースを聞いた人は、『ついにUPSIDERもGiantの傘下・・・』みたいに思う人もいるかもしれない」と聞いて「あ、なるほど・・・そういう見方もあるのか」というくらいに、なにかに怯んで挑戦しなくなるみたいなことは微塵も思わなかったことを覚えてます。
前回の記事でも書きましたが、失われた30年を経てもなお、リスクマネーが供給されにくい日本。けれどテクノロジーを前提にすれば、金融はもっと速く、もっと挑戦者を増やせる世の中に生まれ変われる──そんな野心について書きつつ、今回のパートナーシップを経て、我々が率直に変わっていくべきこと、変わっていかなくても良いことについて触れたいと思います。
1. 金融のいまのあり方を問う
元来金融は必要以上に複雑に作られていると思います。
いまの金融インフラ、特に日本の商業銀行が提供する法人向けの金融サービスは、長年にわたり高い安全性と信頼性を築いてきました。一方で、現行のインフラには、依然として時間や手間がかかる場面も残っています。
たとえば、法人の銀行口座を開設しようとすると、最初はWebで入力できても、最終的には紙の申請書や押印が必要になり、記載ミスによって処理が数週間止まることもあります。これは、過去の安全性や確実性を重視した設計が生み出したものであり、金融機関としては当然の背景がありますが、挑戦者にとっては大きな負担になり得ます。
一方UPSIDERでは、クレジットアカウントを最短20分で開設可能です。私たちは、こうしたスピード感こそが、挑戦者が資金にアクセスする際の理想的な体験だと考えています。これからの金融は、従来の安全性を守りながらも、「挑戦者にとっての使いやすさ」をさらに進化させていくことが求められます。
ユーザー体験だけではありません。たとえば為替リスクのヘッジのような機能を提供するまでには、数ヶ月程度の時間がかかることも珍しくありません。私たちはそれを数週間で提供できる組織を目指しています。
なぜなら金融とは突き詰めれば情報とデータの世界であり、それはすべてソフトウェアで実装できるからです。
資金移動も、信用審査も、リスク管理も、必要なのは紙や人手ではなく、テクノロジーと設計思想です。法務、リスク、財務、UX、これらの知識がITの上で統合されることで、はじめて「次世代の金融プラットフォーム」が成立します。
次の時代はそうした「混沌とした金融サービスニーズをいかに早く市場投下できるか」が鍵になるはずです。
テクノロジーは、金融にとって単なる裏方ではなく、構造そのものを進化させる手段となりえます。そして今、それを最も早く・柔軟に・正確に実現できるプレイヤーこそが、次の金融インフラを担うと信じています。
2.「金融は“情報システム”そのものである」
かつて「金融機関」といえば、石造りの立派な建物に金庫があって、そこに地金や有価証券、あるいは宝石のような資産が物理的に保管されているイメージがありました。銀行の絵文字が「🏦」であるのはまさにそれに由来していると思います。
けれど今、私たちが扱っている資産のほとんどはすでにデジタル化されている。これこそが、近代金融における世代交代の最初のステップでした。
日本でも、「ネットバンキング」という形でこのシフトは始まりました。すべての体験がスマートフォンやWebアプリで提供され、現金との接点としてATMが残されるのみ──セブン銀行やソニー銀行などがその代表例でしょう。
しかし、その裏側のレガシーシステムの存在が、今もなお進化を妨げています。明言は避けますが、それは主にメインフレームによって支えられている世界です。