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最高のお買い物体験を、お客さまに届けるために── OisixのSREエンジニアが大切にしている信条
スケールするサービスの信頼性を高めつつ、運用負荷を軽減し、拡張性を保ちながら新機能を迅速に実装していくにはどうすべきか。大規模なWebサービスの運用環境では、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング)への注目がますます高まっています。
オイシックス・ラ・大地においても、ソフトウェア エンジニアリング本部内にSREセクションを設置し、各サービスの運用最適化に取り組んでいます。特に、急成長を遂げている食品宅配サービス『Oisix』では、SREの視点を踏まえたシステム全体のアップデートが不可欠です。
お客さまの暮らしに欠かせない「食」を支えるOisix。そのサービスの基盤を支えるSREエンジニアたちは、どのような信念を持って開発や運用に取り組んでいるのでしょうか。SREセクションの青木芽衣さんに話を伺いました。
新しい技術に挑戦できる環境を求めて
── まず、青木さんがオイシックス・ラ・大地で働くことに興味を持ったきっかけを教えてください。
青木さん:オイシックス・ラ・大地は私にとって2社目の職場です。前職ではSIerで約3年間インフラエンジニアとして勤務し、主にクライアント企業が展開するクラウドサービスの裏方として、データセンターにサーバーやネットワーク機器を構築する業務に従事していました。
前職での仕事は多くの学びがありましたが、似たような構成のオンプレミス環境の構築が続く中で、より幅広い技術に挑戦したいという気持ちが強くなりました。また、パブリッククラウドやコンテナ技術など、より新しい技術を実務で扱いたいという思いも強くなり、転職を考え始めました。
そんな中、オイシックス・ラ・大地がSREエンジニアを募集していることを知り、興味を惹かれました。AWSやAzureなどのパブリッククラウドや、TerraformなどのIaC (Infrastructure as Code) ツールの本格活用を始めようとしていたところで、自分が挑戦したい技術に触れられる環境があると感じたからです。
── オイシックス・ラ・大地が「食」を扱う会社であったことも、入社の決め手のひとつだと伺いました。
青木さん:そうですね。私自身、食べることが好きで、旅行が趣味なのですが、旅先で現地の食を楽しむのが一番の楽しみです。そのため、食に関わる仕事には大きなやりがいを感じられそうだと思いましたし、食に関する社会課題に取り組むという企業理念にも共感しました。
入社の理由としては、様々なエンジニア向けのイベントで、オイシックス・ラ・大地のメンバーが登壇していたことも大きいです。向上心を持って仕事に取り組んでいるメンバーが揃っている印象を受け、そうした方々に囲まれて働くことで自分も多くの刺激を受けられそうだと感じました。
売上高3,000億円へ、SREの重要性が加速する
── では、ここからはSREエンジニアとしてのお仕事についてお聞かせください。社内における役割や担当されている業務について教えていただけますか?
青木さん:
私たちSREエンジニアの役割は、お客さまに最高のお買い物体験を安定的に提供するため、システムの信頼性や可用性、パフォーマンスを最大化することです。
具体的な業務内容としては、システムの監視、運用、パフォーマンスチューニング、インシデント対応、キャパシティプランニング、そして開発チームと連携したシステムアーキテクチャの設計・改善など、多岐にわたります。
オイシックス・ラ・大地は、食のサブスクリプション領域における売上高を、会社全体として2030年度までに3,000億円を達成する方針を掲げています。その目標達成には、システムの安定稼働とスケーラビリティの確保がさらに重要となります。
そのため、SREセクションでは、既存システムの技術的負債の解消や、マイクロサービスアーキテクチャを基盤とした新しいシステム基盤の構築に注力しているところです。
── 近年、Oisixのシステム基盤をAWS(アマゾン ウェブ サービス)へ移行したことは、大きなプロジェクトでしたよね。
青木さん:
そうですね。Oisixは2000年のサービス開始以来、事業の拡大に合わせて多くのアプリケーションを追加してきました。しかし、歴史を重ねるにつれシステムが巨大化し、複雑さが増したことで、安定性や拡張性の課題が顕著になってきました。
特に、主要なデータベースはオンプレミス構成で運用していたため、リソースの増強にはサービスを停止する必要があり、拡張性に限界がありました。こうした課題に対応するため、数年にわたり入念な調査と準備を重ね、2021年にOisixのシステム基盤をAWSへ移行しました。
また、この移行ではモノリシックな構造からの脱却も重要なテーマでした。従来のシステムは、さまざまな機能が一体化して巨大な塊となっていたため、新しい機能を追加するたびに予期せぬ影響が出ることがありました。そこで、Kubernetesなどの技術を活用してマイクロサービス化を進め、より柔軟でスケーラブルなシステムを目指しました。
幅広い対応による、SREとしての成長
── 入社されて6年目になりますが、オイシックス・ラ・大地のSREエンジニアならではの特徴は、どのような点だと感じますか?
青木さん:
幅広いシステム基盤を少人数で管理している点が特徴的だと思います。現在、SREセクションにはマネージャーを含めて4名の社員と、業務委託の5名が在籍していますが、その体制で多岐にわたるシステム基盤を管理しています。
たとえば、Oisixをはじめ、『らでぃっしゅぼーや』や『大地を守る会』といった複数ブランドのECサイト基盤、さらに生産者と購入者をつなぐ物流システムとしての在庫管理や配送システム、全社員が利用するコーポレートITシステムの管理も行っています。
特にOisix以外のブランドやコーポレートITには、今でもレガシーな技術が使われている部分があります。最新技術を駆使しながら、こうしたレガシー技術についての知見も深められる点が大きな学びです。エンジニアとしての視野が広がり、成長を実感しています。
── 幅広いシステムを担当するにあたり、各部門との連携も重要になってきそうですね。
青木さん:
そうですね。たとえば、全社員が利用している共有フォルダのサーバー環境をクラウドへ移行するプロジェクトに携わっているのですが、ファイルサーバの移行といっても、そこから派生するタスクは多岐にわたります。
膨大なデータがアップされている中で、データの欠損で業務に影響を与えることがないよう、各部門と連携し、データの用途を確認しながら慎重に進めています。
また、オンプレ環境からクラウドへの移行に伴い、ネットワーク経路も変わるため、移行後にネットワークが詰まるリスクがないかを事前に調査し、必要があれば対応するなど、細部まで注意を払う必要があります。
入社6年目になりますが、いまだに日々新しい発見があります。「なぜこの構成にしたのか」「今なら、もっと管理しやすく、コストも抑えられるのではないか」と考える場面も多く、改善し続ける楽しさがある仕事だと感じています。
チームとしての信条をまとめた憲章を策定
── 最近では、SREエンジニアに求められるスキルがますます広がっているように感じますが、青木さんは日々どのようなことを意識して働かれていますか?
青木さん:
技術が急速に進化する時代なので、変化を恐れず行動し続けることを意識しています。クラウドネイティブをはじめ、IT技術の進化は加速していますが、変化しないことは安定ではなく停滞であり、それではサービスが進化する機会を逃すことになってしまいます。
オイシックス・ラ・大地の行動規範『ORDism』にも、「前例はない。だからやる」という言葉があり、正しいと思える打ち手であれば、積極的に挑戦していくことを会社として推奨しています。
他にも価値観として大切にしていることが幾つかあります。私たちSREセクションでは、ORDismに基づきながら「SREチーム憲章」を策定しており、そこに定めた信条(Tenets)を大切にしながら、日々の業務に取り組んでいます。
── SREチームとして信条をまとめた憲章を策定している組織は珍しいかと思いますが、どういった経緯でその策定に至ったのでしょうか?
青木さん:
チームとして信条を共有することで、意思決定や方針に一貫性を持たせることができます。特にSREのような役割では、システムの安定稼働を守るために迅速かつ的確な判断が求められます。そこで、何か決断が必要なときや判断に迷う場面で、この信条を基盤にして意思決定ができるようにするために策定しました。
たとえば、他のチームからシステムのバージョンについて相談を受けた際に、「ソフトウェアのバージョン選択は我々の戦略に基づく厳格なルールとポリシーに従います。安定バージョンと最新リリースのギャップは2世代以上許容しません」といった規範に基づき、必要に応じてバージョンアップを促す判断を行います。
また、チーム全体で同じ方向を向いて日々の業務に取り組むためにも、共通の価値観や指針を明文化することが重要だと考えています。この憲章をもとに、チームの連携や一体感をさらに強めていきたいと考えています。
お客さまファーストの視点を第一に
── 幅広い対応が求められるSREセクションですが、現在のセクション内で特に課題と感じているテーマは何でしょうか?
青木さん:
直近の課題として挙がっているのは、インフラ基盤の低コスト化です。長引く円安の影響もあり、AWSのコスト増加に悩む企業は多いと思いますが、弊社も例外ではなく、SREセクションが中心となってコスト削減に取り組んでいます。
その中でも特に可能性を感じているのが、オートスケーリング可能なシステムの導入です。お客さまのアクセス状況に合わせて自動的にスケールする仕組みが、まだ一部の基盤にしか適用されておらず、そのために無駄なコストが発生している部分もあります。各サービスの利用状況を見極め、効率的にシステム費用を抑えていきたいと考えています。
また、開発側との連携を深めることも大きなテーマです。開発の初期段階からSREセクションが関わることで、システム設計に信頼性や運用、コストを考慮した視点を取り入れることができるはずです。
正直なところ、数年前まではこのような連携ができておらず、結果としてシステムの安定性や信頼性が欠けていたり、莫大なインフラコストが発生してしまったケースもありました。こうした事態を防ぐためにも、エンジニア組織における連携をさらに強化していきたいと考えています。
── 最後に、どのような方にSREセクションに加わってもらいたいか教えてください。
青木さん:
やはり、「お客さまファースト」の視点でエンジニアリングに取り組める方でしょうか。私たちにとっては、オイシックス・ラ・大地のサービスを利用してくださるお客さまはもちろん、社内システムを利用する社員も「お客さま」です。
システム基盤を担当していると、エンドユーザーと直接関わる機会が少ないため、つい「言われたことだけをやる」という姿勢になりがちです。そうではなく、「お客さまのために何ができるか」を考えられる方が望ましいと感じます。
たとえば、サーバーコストの削減が結果的に商品の価格を抑えることにつながるかもしれませんし、サイトのパフォーマンスを改善することで、より快適な買い物体験を提供することも可能です。
実際、オイシックス・ラ・大地のサービスはお客さまと直接繋がっているものが多く、お客さまの顔が見えやすいのが特徴です。自分たちのサービスが、お客さまの暮らしにどれだけの影響を与えているかを実感することで、モチベーションや責任感も高まります。
SRE憲章にも「1.サービスの可用性の担保と、妥協のない信頼性の向上を通じて、お客さまに最高のショッピング体験を提供することに貢献します。」とあるように、こうした信条に共感し、一緒に働いていただける方に加わっていただけたらと思っています。