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NOT A HOTELでカスタマーサポート(以下、CS)チームのマネージャーを務める井上凜。2022年10月、井上が入社したのはNOT A HOTELの最初の拠点であるAOSHIMA(青島)が開業する直前の頃だった。三人目のCSメンバーとしてジョインし、走りながら現在に至るまでCSのオペレーションを構築してきた。
NOT A HOTEL参画以前は、新卒入社した営業支援ツールの開発/販売を行うベンチャーにて、toBでのインサイドセールスやカスタマーサクセスに従事。toC領域でのCS経験は持っていなかったものの、創業間もないNOT A HOTELで新しいチャレンジに飛び込んだ。
NOT A HOTELに滞在するすべての人へ最高の体験を届けるために、ソフトウェアチームや運営チームと密に連携し、ゼロから基盤をつくってきた井上は「受け身で“待つ”のではなく、能動的に“つくる”姿勢」とNOT A HOTELのCSチームのあり方を語る。
入社直後の奔走を振り返ってもらいつつ、現在に至るまでCSチームが駆け抜けてきた軌跡と、今後目指すチームの未来像を聞いた。
正解がない状況でも自分で考え、動ける確信があったから、未経験でも飛び込めた
ーtoC領域でのCSは未経験にもかかわらず、NOT A HOTELにジョインした経緯から聞かせてください。
ちょうど転職活動をしてい頃、MEMBERSHIP NFTがリリースされて話題になっていて、NOT A HOTELのことを知りました。「プロダクトに、あくなき探究心や好奇心を持っている会社で働きたい」と思っていたので、NOT A HOTELはまさにそんな会社でした。
NOT A HOTEL NFTNOT A HOTEL NFTは、1日単位から別荘を利用し楽しむことのできる、メンバーシップサービスです。有効期限は47年notahotel.com
ただ当時、NOT A HOTELがCSチームを立ち上げるタイミングで、私はtoC領域でのCSの経験がなかったので、「楽しそうだけれど、無理かも」と正直思っていたんです。それでも、すでにCSとして働かれているメンバーの方や経営陣とのコミュニケーションを重ねるにつれ「自分の経験が活かせるかもしれない」と思うようになり、チャレンジしてみることを決めました。
井上 凜:明治学院大学国際学部卒。新卒で営業支援ツールを開発/販売するベンチャーに入社し、toBでCSとインサイドセールスを担当したのち2022年10月NOT A HOTEL MANAGEMENT参画。
ー具体的に、前職での経験を活かせそうだと思ったポイントとは。
前職のベンチャーも大規模な組織ではなかったため、役割を問わず「お客さまが望んでいるもの」を自らで考え、実行までするような動きをしていました。開業間もないNOT A HOTELはまさにそれでした。正解がわからないながらも、試行錯誤しなければならない状況で、自分なりに動き続けられるイメージをなんとなく持つことができたんです。
ー開業前後の渦中に入社したと思うのですが、入社時の印象はどうでしたか。
記憶がほとんどない(笑)、本当にバタバタだったので。現地の運営チームと一体となり、オペレーションを一つずつ構築する必要があったので、当時は私も宮崎に引っ越し、同じ解像度で業務に取り組んでいました。
当時は予約管理のシステムツールやオーナーが利用するアプリも完成したばかりで、不具合が度々発生する状況。最後は「どうすればオーナー体験がよくなるか」を突き詰めることにみんな集中していました。それはソフトウェアチームや建築チームも同様で、今よりも少人数だったため、日常的にタフな議論が繰り広げられていたのを覚えています。全員が必死になって、NOT A HOTELという理想の体験を追い求めていたと思いますね。
CSチームの同僚とNOT A HOTEL AOSHIMAでの一枚
“作る”ではなく、“創る”にこだわる
ーあらためてNOT A HOTELのCSがどんなことをしているのか、具体的な業務内容を教えてください。
基本的にNOT A HOTELのオーナーはアプリを通じて予約、チェックイン/チェックアウト、あるいはお部屋の中の空調をはじめとしたホームコントロールを行います。そのアプリのなかには、さらに「コンシェルジュ」という機能があります。
ワンタップでチャット画面に遷移し、そこから滞在中のお困りごとや各種質問をしていただける仕組みです。この有人対応を行っているのが、CSチームのオペレーター。一部ではAIコンシェルジュ「Kevin」が対応していることもあるのですが、基本的には有人対応している現状になります。
コンシェルジュ業務以外にも、新しい拠点ができた際は、ご案内方法のオペレーションをつくるのもCSチームの役割です。他にも、NOT A HOTELでは次々に「あれやろう、これやろう」と新しいアイデアやサービスが生まれるので、それを実現するためのオペレーションやフロー構築にも携わります。
ーカスタマーサポートとはいえ、かなり幅広いんですね。
そう思います。「カスタマーサポート」と聞くと受け身な印象があるかもしれませんが、NOT A HOTELのCSはどちらかというと、能動的に“創る”ことに特長があるかもしれません。これまでにない、まったく新しいプロダクトだからこそ、常にゼロイチの発想が求められる。それが醍醐味とも言えますね。
もう一つの大きな特長は、CS内で拠点ごとにチームを分けるのではなく、一つの組織で拠点横断で業務を行っていることです。通常であれば、拠点ごとにサポートチームを分けることも多いかと思うのですが、NOT A HOTELでは一つのチームですべての拠点に対応しています。NOT A HOTELのオーナーは各拠点を相互利用することができます。そのため、各拠点間での体験のズレを発生させず、なるべくシームレスなNOT A HOTELオーナーの体験を守る目的でも、拠点横断のCS組織は理に適っていると思います。
ーCSの精度を上げるために、取り組んでいることはありますか。
NOT A HOTELのオーナーにはいわゆる富裕層の方々が多く、食事や宿泊など、これまでさまざまな体験をされてきています。ですので、どんな感覚で物事を捉えているか、どんな体験やサービスを欲しているのか、常に想像力を張り巡らせなければいけません。ただし、私一人がその想像力を高めても、CSチームとしての対応力が上がるわけではない。そのため、オーナーのプロフィールや滞在傾向をしっかりシステムに蓄積するようにしています。
たとえば、とにかく早いレスポンスを好むオーナーもいらっしゃいますし、ラフなコミュニケーションを楽しまれるオーナーもいらっしゃいます。そうした情報はなるべくCSチーム全体で共有し、仕組みとしてサポート体制を強化するように努めています。効率すべきところと、オーナーへ寄り添うようなサポートは区別して考えてますね。
滞在するお客さまへ、想像を超えた感動体験を|NOT A HOTEL
ー私(インタビュアー)が実際に宿泊したときに驚いたのが、CSからのレスポンスの早さと質。どれほどの目標設定がなされていて、実際の数値はどうなっているんですか。
基本的に20秒以下で返信するのを目標に設定しています。
ー20秒以下ですか!
実際の数値としては、15〜17秒程度に抑えています。コミュニケーションの一次対応はAIコンシェルジュのKevinが対応するのですが、一回の往復で解決が難しそうであれば、すぐにCSチームにパスが回ってきます。私たちがスピードにこだわるようになったきっかけは、開業初期にあった「なんでこんなに遅いんですか」というオーナーからの声でした。
滞在中のお問い合わせに対し、CSチームではすぐに回答ができなかったため、一度運営チームに確認する必要があり、オーナーを数分間お待たせしてしまったことがあって。滞在中のオーナーからすれば、数分間返信が来ないだけで、「結構待ったな」という感覚になると思うんです。以降は、オーナーが持っているであろうこの感覚を大切にしながら、スピードと細かなコミュニケーションを意識するようになりました。
つい先日も、SNSでNOT A HOTELのCSに関する、お客さまからのありがたい投稿を目にしました。期待を裏切らず、さらに超えていけるような対応を心がけたいですね
ラブレターを書けるのは人間だけーーNOT A HOTELならではのCSを追い求めて
ー返信のスピード以外で、CSチームとして追っている指標があれば教えてください。
シンプルにオーナーからのフィードバックです。NOT A HOTELではチェックアウト後に、毎回フィードバックをもらっています。評価の大きな内訳として「最高」「いいね」「イマイチ」の三段階があるのですが、「最高」以外の評価については、必ずその原因を探る運用になっています。
当初、私は「いいね」は及第点なのだから、原因を探る必要があるのだろうかと疑問に思っていました。そのことについて社内のSlack(コミュニケーションツール)で触れたところ、NOT A HOTEL MANAGEMENT代表の舩山さんから「我々は『最高』を目指しているんだから、なぜ『最高』ではなく『いいね』になっているのかを探るのは当然のこと」と諭されたんです。当時マネージャーになったばかりだったこともあり、なんて浅はかな発言だったんだろうと反省しました。NOT A HOTELでは「最高(の体験)」を目指し続ける組織風土が強力に根づいていると思います。
ー具体的にはどのように「いいね」の原因を探るのですか。
オーナーの滞在時のチャット履歴をすべて見直します。
ーすべて、ですか。
場合によっては、OR(オーナーリレーション)のチームの方と連携し、直接オーナーにヒアリングを依頼することもあります。改善点があれば運営チームやPMS(社内向けオペレーションツール)を開発するチームともコミュニケーションをとりながら、より良い体験に向けた取り組みを行います。
冒頭で話したオーナーのデータ管理も運営やCSチームからPMSチームに相談をして、開発してもらったシステムです。他にも、CSチームのリソースが圧迫される原因になっていた請求業務を改善するためのフローとスプレッドシートも作成してもらいました。これにより、工数が半分に縮小しました。PMSチームが開発するツールは直接オーナーに触れるものではないので、目立たないのですが、私にとってPMSチームは神様のような存在です。オーナーにとってのよりよい体験のための改善を「ワンチーム」として行えている実感があります。
ー最後に、井上さんがマネージャーとしてどんなCSチームをつくっていきたいか、未来像を教えてください。
CSチームは正社員が2名(業務委託やアルバイトを含めて10名程度)の小規模なチームです。そのため、一人がオールマイティに対応しなければいけない範囲が広いのが現状です。今後はメンバーを増やしながら、それぞれの役割分担を明確にし、効率化を図っていきたいと思っています。同時に、オーナーの滞在履歴やお問い合わせ内容のデータを活用した改善にも引き続き取り組んでいきます。また、CSに貯まるデータをNOT A HOTEL全体にも活用、還元し、より良い体験を実現する一助にもなりたいと思っています。
もう一つ、将来的に目指したいのはNOT A HOTELならではのCSの形を実現することです。ある面談のとき、NOT A HOTEL代表の濵渦さんから「CSは芸術的な仕事だよね」と声をかけられたことがあります。この言葉は、私が前々から抱いていた「AIはテキストは書けるけど、ラブレターは書けないのではないか?」という思いにも通じるものがあります。情報ではなく、メッセージを届けることができるのは、人間ならではの営みのはず。だからこそ、CSチームとしてはその時々の状況やオーナーの属人性に応じたコミュニケーションを追求したいと思っています。
NOT A HOTEにしかできないCSを実現して、「(NOT A HOTELは)CSも最高だね」と言っていただけるようになりたいですね。
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