※2022年7月13日に配信したnoteの内容を配信します
こんにちは、NOT A HOTEL で CTO をしている大久保 貴之 (@okbtks) です。
今年の秋には 青島(宮崎県)と那須(栃木県)で NOT A HOTEL の稼働が始まります。先日発表した NFT の販売 も来月から始まります。スマートホーム、オーナー向けのアプリ、運営ツール、NFT などなど、種々のリリースが近づく中、プロダクトの開発は徐々に QA 期間に移行したり、建築・プロダクトのテストのための試泊を計画したりと、大詰めの時期を迎えようとしています......!
リリース前に振り返るのは早すぎるかもしれませんが、これまでのことを情報が色褪せないうちにまとめることにしました。前編となるこの記事のほとんどは僕がジョインする前の話になります。非常に興味深い変遷を辿っており、まとめると長くなり前編と後編に分けることにしました。ぜひ多くの方に読んでいただけますと幸いです。
NOT A HOTEL プロダクト開発年表
今回はプロダクトの方向性が定まるまでの試行錯誤と、スタートアップの開発体制づくりの学びを書いています。まずはざっくりな経緯を年表にまとめました。
おおよそ1年毎におおきな変化があったため、各年に分けて振り返っていきます。
創業からプロトタイプ開発まで (2020/4-12)
まずは会社設立の2020年4月から、その年末までの初期フェーズについてです。
プロダクトの可能性を探る
立ち上げ時期は、とにかくいろいろな可能性を探るフェーズです。
「暮らす」ことをより自由にするというテーマで議論を重ね、旅の非日常的な体験が日常に溶け込むようなサービス開発に着手しました。現在のサービスに通ずる部分も多くありますが、いまよりも「ホテル」や「旅」に対して重みを置いたものでした。
開発を進めていく中で、わたしたちが描く世界を当時のサービスで実現できるのか、 “NOT A” HOTEL のあるべき形について議論を重ね続けました。そして私たちが解決したい課題はより「暮らし」にあるのだと考えが磨かれていき、ビジネスモデルやサービス構想を更新していきました。
この辺りのことは CXO 井上の note に詳しく記載されているので、ぜひお読みください。
開発組織を持たないという選択
当初 NOT A HOTEL 開発体制は社内に開発組織を持たず、パートナー企業に専属開発チームの役割を担ってもらう形でした。
これには、代表の濱渦の note「2回目の起業ではこうしよう!と決めてた5つのコト」にあるように、会社全体として「超少人数での超自律的な経営」を目指しているという背景があります。システム開発においてもパートナーと協働して大きく事業を成長させていきたいという想いと、NOT A HOTEL を一緒につくりたいと言ってくださるパートナーとの巡り合わせから、この開発体制をとることにしました。
開発着手後もサービスに関する議論を積み重ねていき、サービス自体の構想と作るべきものが大きく変わることがよくありました。その中でも、開発チームは迅速かつ柔軟にこちらの意図を汲み取って対応してくださり、2020年の冬頃には前述した初期サービスがある程度形になっていました。何も決まっていないところから無理難題を一緒に考えてくださり、一番難しいフェーズを一緒に乗り越えてくれたパートナーの方々にとても感謝しています。
再出発 (2021/1-10)
2021年は再出発の年です。1年目で積み重ねた思考と議論を踏まえ、改めてわたしたちが提供すべき価値に向き合いました。
サービスの再定義
2020年での度重なる議論を通して、NOT A HOTEL が提供すべきサービスの根幹が、「ホテル」や「旅」ではなく「暮らし」により重みがあるのだと考えるようになりました。つまり、当時開発を進めていたものとの間にズレが生じてきていたとも言えます。
2021年の初旬、原点に立ち返って NOT A HOTEL が目指している超ワクワクする世界を実現するにはどうすべきかを深い議論を重ねました。その結果、これまで積み上げてきたプロダクトの形に捉われず、改めてあるべきサービスとプロダクトの形を考え、例えその結果0から作り直すことになったとしてもやり切る、という覚悟を決めました。
現在のサービスの大部分がこの頃に設計されました。下表のような言葉の定義やサービスの価格形態の調整、予約可能な期間や優先順位の考え方など、プロダクト・ビジネス・コーポレートなどそれぞれの視点からの意見を出し、NOT A HOTEL のサービスの在り方を会社全体で作っていきました。
“超”自律した開発組織を目指して
サービスの再定義とともに、開発体制についても見直しました。
NOT A HOTEL が描く理想を細部の細部までこだわりをもって創り上げていくには、今まで以上に社内外の様々な職種(建築、会計、法務、営業をはじめとする種々)の人たちと密に連携してサービスの設計から行う開発チームが必要だと考えました。
「“超”自律的な組織」を目指している点は変わらないので、大々的に採用情報を出して正社員を増やすことはせずに、この時点ではフリーランスや複業として手伝ってくれる方たちの力をうまく取り込んだ開発体制をとりました。
黒岩 (@wa_kinchan) が中心となって知り合いに声をかけたり、Twitter や YOUTRUST などの SNS で募集をかけていき、幸運にも各分野の非常に優秀なエンジニアの方々が集まって手伝ってくれることになりました。
技術選定もこのタイミングでごっそりと見直しました。一番は仲間が集まりやすいこと、ある程度メンバーの入れ替わりが起こり続けることを想定して考えました。
アプリ開発では Flutter による Android / iOS 両アプリを開発することを辞めて、Swift でのネイティブ iOS アプリ開発のみに集中することすることにしました。これは、ネイティブアプリにした方が妥協のない体験をオーナーに提供できると考えたためです。
また、立ち上げ期から両アプリを同時開発するよりも、リソースを集中させて完成度を高めたかったこともあります。初期の NOT A HOTEL オーナーの属性として iPhone ユーザーが多いだろうという見込みがあり、仮に iPhone を持っていないオーナーがいれば、わたしたちからプレゼントすれば解決できるのではと整理しました。
現在の iOS 開発事情については、@wa_kinchan の記事が参考になります。
Backend や Web の開発には Go、Nuxt.js (今はさらに変わって Next.js)を選定しました。こちらも仲間の集めやすさを鑑みてのことでした。インフラ周りはコスト面や当時の開発メンバーの経験値、今後の開発と運用のイメージを描きやすいなどの理由により、AWS から GCP へと変更しました。
このようにして @wa_kinchan + 業務委託のエンジニアで開発が行われるようになったことで、かなり柔軟かつ迅速に開発ができるようになってきました。
各プロダクトごとの開発チームも形成されていき、2021年の夏頃にはエンジニアと PdM あわせて13名ほど(社員:3名、業務委託: 10名ほど)の開発チームができていました。
この体制でよかった点としては、より柔軟かつ迅速な仕様の策定と開発が進められるようになったことです。業務委託で参画してくれた優秀なエンジニアの方々の知見のおかげで、おそらく多くのエンジニアがワクワクするような開発環境が整っていきました。
採用ページにもある今の技術スタックは、このタイミングで固まっていきました。詳細は下記を参照してください。
Frontend: https://open.talentio.com/r/1/c/notahotel/pages/60930
Backend: https://open.talentio.com/r/1/c/notahotel/pages/60928
iOS: https://open.talentio.com/r/1/c/notahotel/pages/60929
試行錯誤で見えてきたこと
今回はNOT A HOTEL 設立の2020年4月から2021年10月まで、プロダクトの立ち上げから現在のおおよその骨格ができあがるまでを振り返りました。サービスのあるべき姿を追求し続け、思い切った決断も行ってきました。今もなお多くの変化を重ね続けていますが、改めて振り返ってみても全て必要なプロセスだったと感じています。
時にはホテルとしての最高の体験を追求し、またある時はホテルではなく暮らすことについて深く考え、結果 NOT A HOTEL が目指す新しい暮らしを実現する上で不可欠な本質的なものがそこに残り磨かれてきました。
開発組織についても、さまざまな試行錯誤を重ね、NOT A HOTEL のあるべき姿を速度感を持って実現させていくために「自分たちでやるべきこと」と「パートナーの力を借りるべきこと」との境界線がくっきりとしてきました。結果、体制強化が進み現在に至ります。
次回の note (後編)では、この体制強化の話、そして2021年10月から現在までのプロダクト開発の状況やリリース後の先に描いている世界について構想を書こうと考えています。
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NOT A HOTEL はエンジニア・PdM をはじめとした様々な職種を積極採用中です!まだない「あたらしい暮らし」を共につくりたいと思ってくださる方は、ぜひお声がけください。業務委託や複業からも可能です。カジュアル面談もやっていますのでお気軽にお待ちしています。
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