電子決済等代行業者との連携及び協働に係る方針|住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行の勧誘方針を確認できます。
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/api_policy
こんにちは。マネーフォワード広報です。
巷に溢れるFintech関連のニュース。色々あるけれど、先月は何があったっけ...?今年スタートした当社Fintech研究所長の瀧によるFintechニュースの振り返り「月刊瀧」では、瀧さんの日常...ではなく、Fintechに関連する月毎のニュースをお伝えします。ということで、今月のトピックは以下です。
1. APIの連携協働方針
2. ローソン銀行
3. John Maedaさんのデザイン・イン・テック
今月の瀧的ニュース:引越しをした話、ルンバハンパないという話
それでは瀧さん、よろしくお願いします。
※本インタビューは2018年3月27日(火)午前に実施いたしました。
青木:最初のトピックはAPIの連携協働方針ですね。
瀧:です。昨年6月2日に成立した改正銀行法で、そこから9か月以内に「各銀行でAPIの協働連携方針を出しましょう」という決まりがあったんですね。そこで、各行の方針が出揃ったのが3月1日でした。項目としては、個人向けと法人向け、参照系と更新系、それぞれの対応時期についてです。元々日本の銀行では「2020年までに80行でAPIを公開する」というのが、昨年の未来投資戦略2017のKPIになっていましたが、今回、それを大きく上回る形で各行が方針を発表しました。
青木:今回方針を出した銀行のデータをまとめたものがあり、それを元にお話を伺っていきます。社内向けにまとめたもので、ここでは展開できないのですが...全部で130行以上ですか。すごいですね。
瀧:本当にすごいんですよ。ウォッチャーとしては、各行で方針を記載したページのURLの末尾が非常に興味深いと思います。
青木: URL、ですか。
瀧: 例えば三菱UFJさんは「houshin」、三井住友さんは「collaboration」、みずほさんは「api」、楽天さんは「cooperation」です。ほかにも電子決済に引っ掛けて「e-payment」、そして「api_collaboration」「common_html」とかもあります。
青木:なるほど...。collaborationが多いようですね。「dendai」というのは...?
瀧:「dendai」は、おそらく電子決済等代行業者の略で「電代」ですね。個別の銀行の方針もぜひ見ていただきたいんですが、要は、決められていないものに対する反応って、非常に趣があるなと。URLについてではないですが、日経FinTech編集長の原さんがメルマガでも取り上げていたくらいです。
青木:URLに使われている言葉を見ると、APIに対する各行の捉え方がわかるということでしょうか。
瀧:そうですね。ただ、事務的な理由で決まることもあるし、住信SBIネット銀行さんは「api_policy」ですが、ここはマネーフォワードとの連携についても触れてくれています。
マネーフォワードとの公式連携やレンディングの他に、WealthNaviさんのことも記載しています。つまり、APIを使って何ができるかというのをしっかりと示しているんですね。こういうのはすごくUser Focusの精神で、なんかいいなって思います。
青木:住信SBIネット銀行さんは、国内で初めてAPIを公開されましたよね。
瀧:そうですね。だから、そんな風に載せてくれたのは非常にありがたいですし、嬉しいんですよね。
青木:ところで瀧さん、これだけだとURLの話になりますが...。
瀧:わかっております。かれこれ今まで200回以上「なぜAPI開放が必要なんだっけ」という質問に答えてきた人間として、その必要性をお伝えします。
青木:200回以上お話されている気がします...。
瀧:(笑)。そもそもですが、昨今のインターネットの利用状況は、基本的にはPCからではなくスマホだと思います。インターネットをPCでみる場面って仕事がメインで、それ以外で何かを調べる時は、基本的にはスマホを使ってるわけですよね。
青木:大抵の場合はそうだと思います。
瀧:スマホの画面は、1アプリ1タスクであることがほとんどじゃないですか。楽天やYahoo!など、いろんなサービスが裏側にあるものを使うことはありますが、基本的には1イシュー、1アプリの世界かと。
青木:何かをしたいと思った時に選択するアプリは基本的にひとつ、ということですね。
瀧:はい。そのイシューって、「○○を買いたい」「○○をしてみたい」とかですよね。ちょっと話は逸れますが、例えば「お金を借りる」という場合、根源的には人間は「お金を借りたい」と思っているわけではなく、「お金を使いたい」と思っているんですよ。
青木:「お金はないけど○○が欲しい、だからお金を使いたい」ってことでしょうか。
瀧:そうです。それが正しい表現で。だから住宅や車のローンを組むわけです。今お金はないけど、お金を使いたいというのが裏側にあるはずで。そういうニーズにすっと寄り添える金融サービスがあると、その金融機関ってもっと使われるようになるはずなんだよね。
青木:お金を使いたくなるUXってことでしょうか...?
瀧:そうそう。「借りられる」じゃなくて「買えるよ」と言ってあげるとか、そういうのが重要かなと。そんな風に「欲しい」という欲求が生じた時に、それを円滑に進めてあげるような役割が大事で。
青木:そうすると、お金がないのにお金を使ってしまう、結果破産...みたいなリスクはないんでしょうか?
瀧:もちろん、借入れをする側は返済する責任がありますし、貸出をする側にも返済できない人には貸してはいけない、という責任があります。それは、金融の世界で用いるテクノロジーに関係なく、必ず満たさなければいけない仕組みです。ただ、本来金融の語源って「お金が融ける」と書いて、取引や資源が滑らかに流通することを意味しているのですよね。何らかの取引ニーズが発生した際、「その時にやりたいことが実現する」というのがとても大事なこと。そこを、現時点であれば支払いという観点でスムーズにするのが、APIの在り方かなと思うんですね。
青木:みんなの想いをすぐに達成するための存在ということでしょうか。例えば、Google マップなどのAPIもそうですよね。あれにより、いろんなWebサイト上で「目的地を示す」という目的がスムーズに実現されるようになったのかなと思います。
瀧:そうですよね。昨今は銀行取引の場合だけ、わざわざそのために立ち止まって、別の場所で手続きをするというのが、日常生活の中で極めて異質なアクションではないでしょうか。似たようなことってなんだろうね。
青木:なるほど。とはいえ、それが日常というか、自然になっていますよね...。
瀧:例えば、郵便局やコンビニに行って切手を買う行為とかでしょうか。今ならメールなどを送った方が早いですし、可能なものはそのように済ませますよね。他に、本人限定郵便の受け取りとか。そういうこと以外は、いろんな物事が結構滑らかになっていると思うんです。
青木:確かに...その辺りはもっと楽になるといいかもしれませんね。
瀧:APIは、そういう「手間」のラストワンマイルを埋めやすくするはずです。本来は、そのためのアプリを銀行が自社開発するという目線はあるべきですが、それには時間もかかります。また、作りきった頃には新しいものが流行っている可能性もあるわけで、そうなるとリスクになります。だから、新しい人の好みに応えられるものを提供したい場合は、オープンイノベーションを使った方が楽じゃないかというのが、本質的なAPIの機能のあり方だと思います。
マネーフォワードもそういう便利なユースケースを作っていく側なので、今回多くの銀行で方針が示されたことをFintech産業にとってはチャンスとして捉え、便利なものをどんどん出していく責任があると思っています。
青木:ふむふむ。
瀧:ところで、各行の連携方針はFintech研究所所属メンバーの鈴木くんに調べてもらったんですが、すごいデータですよ。彼は今、神田さんに鍛えてもらっています。海外のサービスも調べてくれています。
青木:これは確かにすごいです。ここで展開できなくて申し訳ないのですが...。
瀧:彼は、もともと英語は得意ではなかったけれど、当社の海外プレゼンを頼んだら、英会話学校にもごりごり通う努力家。そういう種類の努力ができる人は滅多にいないから、偉いですね。
で、この話がAPIの話にどう繋がるかというと、各行の連携協働方針が公表された日って、2月末と3月1日にものすごく偏ってるんですよ。
青木:確かにその辺りの日程が多いですね。
瀧:わりと皆さんギリギリまで出さなくて、おそらく他行の様子見だったんでしょう。というのは、まさに締切り効果があったよねと言うところでございまして。鈴木くんの英語の勉強も含めて、人間は締切りがあったり必要にせまられると、意外といけるものなんですよ。いろんなジャンルで「35歳限界説」とか言われているのは、本当はそうでなくて「雰囲気」の問題だと思うんです。限界の前提次第だなと思っていて。
青木:限界の前提という観点は面白いです。
瀧:例えば、APIに関してもAPIというものに触れて初めて、オープンイノベーションを考えはじめた人たちがいるんですよね。それはきっと35歳を超えた人たちも多かったはずです。
青木:なるほど...。
瀧:だから人間きっかけがすごく重要だと思うんです。Fintech関連においても、ここ数年で政府が良いきっかけを与えているという点で、今の動きはすごく重要だと思っていて。
青木:「やってね」と言うシグナルが重要ということでしょうか。
瀧:「政策上これは大事だよね」と言うゆるいコンセンサスができると、どの業界にも頭が良い人はいるから検討しはじめるんですよね。
青木:人間にはそういう力があるよねという話でしたね。
瀧:いい話。
青木:つぎに、ローソン銀行設立のニュースです。私たちにお馴染みのコンビ二系の銀行といえば、セブン銀行ですが、新しいコンビニ系の銀行の誕生ですね。
瀧:セブン銀行は、イトーヨーカ堂とセブンイレブンが主体となり、アイワイバンク銀行として2001年に設立された銀行ですね。今回のローソン銀行は、2011年に大和証券グループの大和ネクスト銀行が開業して以来、7年ぶりの新しい銀行設立だったんですよ。
青木:おおお、7年ぶりですか。
瀧:2016年に準備会社はできていて、その出資比率は95%がローソン、5%が三菱東京UFJ銀行(当時)でした。今年の秋に開業する方針ですが、まだ何をやるのかは明確になっていないですね。
青木:日本の三大コンビニといえば、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートですよね。
瀧:ファミリーマートは元々ゆうちょのATMなどと連携していますし、自ら銀行をつくるというより、いろんな金融機関と提携を進める形な印象がありました。そもそも、人間と銀行の大きな接点というのは現金引き出しですよね。だから、銀行が自らATMを作らなくても、コンビニと連携すればいいよねという話があって。コンビニのATMにおいては、毎回100円以上の手数料が生まれますし。
そのビジネスでいえば、セブン銀行は財務的にも非常に成功している会社です。2017年3月期決算ですと、全体の収益が1131億円、ATM収益が1037億円なので、90%以上がATMの手数料ですと。
青木:す、すごい...。
瀧:普通の銀行では、貸したお金と預金の金利の差から収益が生まれるわけですが、それとはまったく異なる収益体質の会社です。株式の評価を測る時って、まずはPER(株価収益率)や、PBR(株価純資産倍率)といった指標を使うんですね。PBRは、その会社が持つ純資産につき何倍の株価がついているかをみる尺度で、メガバンクとかだと0.5~0.6倍程とされている中でセブン銀行はその数値が1.9倍、つまり3倍以上の評価がついています。
ただ、このビジネスモデルは便利なシステムインフラを提供していますが、僕がよく「現金なくなってしまえ」と話すのって、「ATMなくなってしまえ」と言うのと同義ではあるなと...(苦笑)。
青木:なるほどなるほど。
瀧:だから、ローソンがこのモデルに参入するとなると、意外な感じではあるんですよね。もう少し丁寧に考えると、現金がなくなった世界でのセブン銀行やローソン銀行って、どういうモデルになるのかと思うわけです。例えば、セブンイレブンやローソン自体が、現金だけでなく銀行店舗的な役割をもっと追うことだってできるはずなんですよ。
青木:確かにそうですよね。しかも、それはユーザーにとっては非常に便利です。
瀧:海外では、スーパーなどの小売が銀行をやるというモデルが昔からあります。例えば、イギリスのTescoではTesco Bankを運営しています。伝統的なスーパーSainsbury’sが運営するSainsbury's Bankという銀行もあります。そういった流通系の銀行は、昔からあったんですよね。
青木:流通系ですと、日本ではイオン銀行などもそうですね。
瀧:それらのビジネスモデルでは、例えばイオンの中で、日常的な買い物の延長線で住宅ローンの説明を受けたりしますよね。そんな風に意外と生活接点があるよねということから、銀行業が位置づけられてきたんです。日本では、こういった銀行のことを新業態系、新業態銀行と呼んでいます。流通系のイオン銀行、セブン銀行、ネット系ですと住信SBIネット銀行、ジャパンネット銀行、ソニー銀行、楽天銀行などですね。
青木:みなさんご存知の銀行ですね。
瀧:ピュアな銀行と比べると様々なタイプのオーナーがいて、そのDNAや経営資源と融合することで、様々なタイプのサービスが提供できているんですよ。例えばTesco Bankでは、最初に出てくるメニューが預金、積立で、他にはクレカ、融資、住宅ローンなども取り扱っていて、普通の銀行なんですよ。こうなると、普段行くお店の銀行の方が、そうでない銀行よりも利用するかもしれないですよね。その方が便利なこともあるよねと。
青木:それはその通りで、だからみんなコンビニでおろすんですもんね。それこそスタバに銀行とかあったらみんな使うのでは...。
瀧:スタバ好きですね。
青木:好きですね。
瀧:そう、スタバ銀行ってあってもいいよね。日本の銀行の流れを知る上ですごくいいサイトがあって。これですね。
青木:おお、これはすごいです。
瀧:これ、ずーっと眺めてられるよね。
青木:ずーっと...そ、そうですね。
瀧:(笑)。新業態銀行って、個人的にはもっといろんなチョイスがあって良いと思っています。もちろん銀行が乱立するのはもったいないことではありますが、ピュアな銀行では不可能なクオリティのサービスが提供できることもあると思います。「ナチュラルローソン銀行」とかができてもいいですよね。それでデビット決済できたらいいよね。
青木:女性に人気が出そうです。1月の月刊瀧で瀧さんが仰ってましたが、そこで使うことがステイタスになるお店だといいですよね。
瀧:そうそう。私はローソン銀行じゃなくて、ナチュラルローソン銀行ですけどなにか?みたいなね。
青木:(笑)。それこそスタバだと、そこで使いたいカードみたいな存在になりそうです。
瀧:ローソンは三菱商事の連結子会社でもあるので、普通に大きくて面白いことができるんじゃないのかなと。新しい銀行の話は、瀧ブログでも取り上げているトピックスなので、本当に注目しています、という話でした。
青木:最後がJohn Maedaさんの話です。
瀧:John Maedaさんは、アメリカですごく有名なデザイナーです。彼が毎年、「Design in Tech」というレポートを出しています。これって英語が使えて、デザインを大事にしている人達が毎年定期的に楽しみにしているものなんですよ。「今年はJohn Maedaさんは何を取り上げてくるのか」と。今年は出た翌日頃に、社内で読み合わせをやりました。デザイナーの方に向けてデザインを話すという(笑)。
昨年、一昨年はテーマとして、マッキンゼーなどの大手戦略コンサルがデザインチームを買収したりデザイン系組織を拡充したりしていて、要はデザインがただの専門領域ではなく、戦略上非常に重要になっている、という話題が目立ちました。他に、中国のサービスのデザインがきれいになってきた、ということを取り上げていたんですね。
青木:興味深い話題ばかりですね。
瀧:そして、今年はAIとマイノリティのためのデザインを取り上げています。AIの方はシンプルで、デザインには2つの時代があって答えがありますと。著名なデザイナーが描いたものが正解みたいになって、みんながそれを真似て作っていくというようなクラシカルなデザインがありますと。実際にスケッチをたくさん重ねて、時間をかけて作りあげるとか、デザインってそういうイメージがありますよね。それが一般的なデザインのあり方ですと。
それに対して彼が挙げているのが13ページ目にある「コンピューテーショナル・デザイン」です。これは正解がなくて、いろんな人にあったデザインを提供するっていうものなんですよね。
青木:瀧さんと私で向いているデザインは異なるっていうことでしょうか。
瀧:ですです。例えば「フライドポテトを食べたいと思わせる」というゴールに成功していればいいわけです。その裏には、「どう出したら喜ばれた」みたいな実験結果がたくさん含まれているはずで、昨日よりも今日、今日よりも明日見たデザインの方がよい、というような感じです。それをさらに「自動で改善していく自動化の仕組みがあるとより良い」というように、デザインもついにそんなことが叫ばれる時代になったのかと。
青木:ふむふむ。
瀧:デザインって、見たことないものを見せることで人生観を変えさせるとか、美しいものには人生観を変える力があるとか、元来そういう部分があると思います。ただ、その側面に加えて、目的関数が「CVRが一番高い方法を考える」という、いわゆるWebマーケティングに近い発想になってきた感があって。そういう組織の作り方とかについて詳細を説明しているのが、今回の発表内容です。
青木:与えたいものに対してCVRが一番高い方法となるデザインってことですね。
瀧:そうですね。もうひとつの論点は、コンピューテーショナルなデザインにおいては、マイノリティの人たちがちゃんとケアされるデザインが大事という話題が出てきています。
青木:メルカリとかは、それがケアされているから大勢の人が使うようになったんですよね、きっと。
瀧:メルカリは間違いなくそうですね。マネーフォワードは、港区に本社のある、割とお金の問題意識が高い人達が働いているインターネットの会社なわけですが、そういう人たちが良いと思って作るものではないサービスの方も大切かもしれなくて。
青木:なるほど...。
瀧:マネーフォワードがそうだという意味ではなく、例えば何も考えずに、いろんな層の人たちに配慮せずにものづくりを進めてしまうと、いろんな弊害が起こるのではと。人間は思っている以上に欲しいものとか、考えていることを強化するためのメッセージばかり受け取りたがるんですよ。フェイクニュース議論でよく言われるのは「フェイクニュースはニュースじゃなくてポルノグラフィだ」ということで、ほしいものを与えていると思えば、それはそれで立ち位置があるんでしょうけど。
ただ、そういう世界観の中でそんなことばかりだと、ダイバーシティってなんだっけみたいな話になるわけですよ。人間が今ほしいものだけに開発やものづくりの在り方を寄せてしまうと、究極的にはメディアで閲覧する情報とかがすごく偏ってしまって、そうなると弱者排除が強化されてしまうみたいな話があります。
青木:マネーフォワードのサービスや様々なFintechサービスも、そういった視点を持ってUI・UXなどを設計するべきだという話ですか。
瀧:マネーフォワードは、インターネットバンキングを使っている人に便利なサービスなので、逆にいうとインターネットやインターネットバンキングへのアクセスが限られている人に対してはどうすべきなんだろうかと。例えば、マネーフォワードが「みんなのためのインフラになります」と言った時、インターネットが使えない人へのお金のプラットフォームってなんだっけとか。
資料の83ページにあるインクルーシブデザインというのは、言葉での説明がいらない、あんまり考えなくてもわかるデザインのことで、そういう観点を持ってつくろうみたいなことが言えるんですよね。
青木:誰がみても直感的にわかるデザインが大事ってことでしょうか。
瀧:そうそう。広い視点でみた時に、インターネットには優しさが欠けているかもしれないなと。もっと優しくなろうぜっていう話です。
青木:そういう意味では、FacebookやTwitterって、前提の説明がなくても、英語がわからなくても使えますよね。
瀧:そうだよね。みんなにとってわかりやすいの?限られた人たちの中で満足しているものじゃないの?みたいな。そういうものじゃないかなという。
青木:ディズニーランドとかもそうでしょうか...?英語が話せなくても楽しいという。
瀧:あれは本当そうだよね。本当に落ち込んでいる人でも楽しくなるし。あと、70ページにデザイナーの分布があるんですが。NYとかサンフランシスコとかによってるわけですよ。
青木:わ、これは面白いですね。
瀧:米国であれば中西部や、低所得層の人たちのことを考えたデザインになってないのではと。高所得者の人たちが、低所得者の人たちをケアできるんだっけという観点があって。2016年に米国でベストセラーになったヒルビリー・エレジーとかが特徴的ですが、想像以上の文化・経済の分断と、付随する薬物中毒の問題とかもあるんですよ。
「ユーザーをみているつもりが、実はバイアスかかってるかもだよ」ってわざわざこのレポートで言うって...John Maedaさんにも、なんかあったのかなと(笑)。なんかすごく感じ入るイベントがあったのか、この1年トランプ大統領がもたらしてきたいろんな影響であったりとか。
青木:なるほどなるほど。
瀧:人間はデザインや情報の与え方で変わってしまう部分があって。それに対して自覚的であろうというのは良いメッセージだけど、このレポートで書いていてすごいなって思いました。
青木:さてと、今月の瀧的ニュースの時間です。
瀧:引越しをしました。
青木:そうでした。
瀧:僕はいろんなサービスを試しているので、すごくいっぱい銀行口座があるんですよ。
青木:わ、たくさんありそうです。
瀧:それ以外でもたくさん...クレカも10枚以上もっていて。今は定期入れの中だけでクレカが4枚入っています。
青木:撮影させてください。
瀧:(笑)。クレカは使う場所によっても変わりますし、時期によってポイント還元率がアップする時期にはこれを使おうとか、そういうメリットがあるんですが、問題は30以上の金融関連口座がある状態で引越しをすると死ねるという話です。
青木:ひぃ、それは凍ります...。あ、でも、そんな人あんまりいませんよね...?
瀧:たぶんあんまりいないと思う(笑)。でね、そんな折に、内閣府で「引越しワンストップサービス」を検証しているプロジェクトがあって、先日そこに呼ばれたんです。本当はマイナンバーとかが普及しきった世の中であれば、こういった手続き系作業を全て自動でやってくれるはずなんですよ。
青木:なるほど...。
瀧:マネーフォワードっていろんなデータをお預かりしているので、サービスローンチしたころは、次の引越しの頃にはマネーフォワードがそのサービスやっていたいなと。今回間に合わなかったので、大いに反省しています。
それで、なぜ引越しの話をするかというと、引越しというのは住所が変わることですが、日本の場合は住所って本人確認の手段として非常に重要な地位を持っているんですよ。エストニアの場合、eメールアドレスが本人確認の手段になっています。
青木:エストニアは電子国家と呼ばれていますよね。
瀧:エストニアって、ものすごく理想郷に近い世界なんですよ。北寄りの東欧で、すごくリッチなわけではないですが、国民は130万人くらい。そこでは政府がそれぞれの人にeメールアドレスを付与します。そのメールをひらくことができると、本人確認になると。
青木:便利ですね。本人確認の手段としては、住所とeメールのどちらが適切でしょうか。
瀧:ハッキングがない世界であれば、情報がなくならないメールの方がいいと思います。
青木:本人確認はFintechの世界でもすごく重要なトピックですよね。
瀧:はい。やっぱり本人確認がネックとなって、資金移動型の電子マネーが普及しなかったりしますし、本当は便利なものだったらすぐ使えた方がいいですよね。今は各界のいろんな人たちが、そこが改良されるよう努力し始めています。
一方で、本人確認ができていないと、テロリストにお金が渡るという初回の月刊瀧でお伝えしたような話になりますと。FATFの2019年に向けた審査の話もあるので、あまり甘い話題ではないんですよ。でも、これを便利にしていかないと、お金はなかなか身近にならないと思います。
青木:...瀧さん、今月の瀧的ニュースはやや真面目です。
瀧:はっ、確かに。こぼれ話なのに、こぼれてないね。えーっと。
青木:無理してこぼさなくて大丈夫です(笑)。
瀧:いや、こぼします。そんなこんなで、瀧さんは1Kの部屋から1LDKに引っ越しましたと。
青木:ご夫婦で1Kにお住まいだったのがすごいです。
瀧:起業時にお金苦しくって、切り詰めてたんですよ。ワンルームにしては広い部屋だったんだけど、比べればそりゃそうですが、1LDKっていいね。ひとつの部屋からふたつの部屋にという超絶的な進化を遂げました。それで、当初妻の抵抗に合いながらもアイロボット社のルンバを購入しまして。
青木:なぜ抵抗に...?
瀧:「ルンバがいろんなものを撒き散らす」みたいな評価を読んだみたいで。前はクイックルワイパーとかで処理しがちだったんですけど、やってみてわかったのは...ルンバハンパないなと。
瀧:ルンバの専用アプリがあって...この画像は4日分の挙動でして、ルンバが考えた我が家の間取りなんですよ。風呂の中とかまで掃除しに行っています。
青木:ほへぇ〜〜〜。すごいですね。
瀧:家に帰った時にこれをみるのが楽しみでしょうがなくて(笑)。お見せしたのが、ルンバが考えるうちの間取りで、すごく丁寧に壁を認識できています。例えば、先日ベッドを買い換えたんですが、それまで下までくっついてるタイプのベッドで、壁と認識されていました。新しいベッドは下に空間があるタイプなので、そこは壁だと認識しなくなったんですよ。
青木:ええ、賢いんですね。
瀧:すごく面白いなと。毎日みるのが超楽しみ。これまたアイロボット社の「ブラーバ」という拭き掃除ロボットもあって、そろそろ買うだろうという予感があります。これは、水を吹いて、前方にセットしたクイックルワイパー的なもので掃除してくれるんですが、自分で水を吐く動作がすごく面白くて。で、何が言いたいかというと、ランダムに目の前で動くものって可愛く思えるんだなって。
青木:「ルンバ可愛い」って、よく聞きますよね。
瀧:こんなもの誰がって思ってたんですが、本当可愛い。数少ない日常の癒しになるんですよ、きっと。
青木:ルンバが置いてあるオフィスもありますよね。
瀧:うちも昔置いてたんだよ。恵比寿のオフィスの時に、ルンバがエンジニアの中平さんのiPhoneのコードを好物にしていて。
青木:えっ(笑)。
瀧:ルンバって、コードを巻き込むとそこで止まっちゃうんですよ。高級な純正のコードばかり巻き込むから、こいつグルメだなと。
青木:あ、なるほどですね(笑)。
瀧:その次のオフィスにも連れて行きましたが、その夜に警備会社から「不審者がいるかもしれません」と電話が入ってしまって。要は戸締り後のオフィスでルンバが動いていると、反応しちゃうんですよ。
青木:不審者になっちゃうんですね...。
瀧:だけど、ルンバは可愛いと言う話で、おかげで掃除が苦にならないですね。みんなもぜひ買ったほうがいいんじゃないかな。けど、ルンバに仕事を奪われないようにしないとですね。
青木:よし、がんばります。
瀧:(笑)。