「流れを信じて飛び込む人は、奇跡を引き寄せる」人と組織を進化させる考え方|福岡でコツコツまじめにやってる会社の平凡な日常
皆さんは日々のなかで、「流れ」を意識することはありますか? コウダプロでは「流れ」という言葉が度々登場します。ひとりの人間としても、組織としても、流れが来ているとき、それを察知して乗っていけるかが重要だ--と。 ...
https://note.com/koudapro/n/n34a6e286e7d5
お盆明けに行われたコウダプロの朝礼では、2名の社員をめぐるエピソードが取り上げられ、そこから「感謝」と「職業的良心」というふたつの大きなテーマが語られました。
いずれも、日々奮闘しながら成長を重ねる社員の姿から派生したお話です。期待される人材でありながらも、社内で率直なフィードバックを受け、その場で気づきを得られる機会に恵まれていること自体が、大きな価値を持つと感じさせられます。
今回取り上げられたテーマは、コウダプロに限らず、すべての働く人にとって普遍的で、そして極めて大切な指針となるものでした。
こんにちは、プレスラボ(@presslabo)の池田園子です。月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
前回(2025年7月)の朝礼noteはこちらから。
夏季休暇中、社員Aが「辞めたい」「転職したい」と考えていたのではないか? そんな想像をしていたと話し始めた幸田さん。
休み明けには「連休中、何日くらい辞めることを考えていたの?」「気持ちに蓋をして働き続けられる?」と問いかける場面まで解像度高くイメージし、その社員が「……無理です」と答える可能性を「2~3割あると想定していた」と語りました。
こうした想定をしていた理由について、幸田さんは社員Aの気になった行動をふたつ挙げました。
・社内チャットに既読をつけるのがこれまでにないくらい遅かった
・同期2人が「アタマとココロの中(コウダプロ社員皆が社内チャットに書いている所感)」をアップしているなか、ひとりだけ書いていなかった(書けない理由があったのか? と考えた)
普段とは異なる社員Aの行動の違和感から、幸田さんは「望ましくない事態」を想像したのです。それについて「自分が豆腐メンタルだから」とおっしゃいましたが、経営者として常にリスクを考える姿勢の一端であるとも捉えられます。
一方で、当事者である社員Aは連休中に「自分の地元は関西なのに、福岡で働く意味って何だろう?」と自問していたそう。久々に地元に帰って過ごし、働く場所と離れたからこそ、浮かび上がってきた問いでした。また、社会人としての経験を重ねる過程で「面白い人や会社はコウダプロ以外にも世の中にたくさんある」と思うようになった一方で、「でも、自分はコウダプロでなければ働けないし、成長できない!」と気づいたといいます。
その思いを皆の前で率直に言語化したことは、本人の決意を示すだけでなく、組織の魅力を改めて浮き彫りにする出来事となりました。
その後、幸田さんは社員に対し「今のあなたの話で欠落している要素は何だと思う?」と問いかけ、その答えは「感謝」だと示しました。
さらに「人生、多少の回り道は大事だけど、感謝がなければあなたは確実に回り道をする」とも語り、人や組織における成長に不可欠な要素として感謝の重要性を強調。
対象となった社員については「才気を感じる」と高く評価する一方で、「この人の“環境の一部”が感謝という観点においては良くない影響を与えている可能性がある」とも指摘しました。
幸田さんは、感謝の気持ちの有無は環境に大きく左右されるとし、たとえば「勤め先に感謝しているか」と問われても「そうは思わない」と答える人もいると説明します。なかには「搾取されている」「こき使われている」といった考えを抱いている人もいる、と。
もしそうした人たちからの影響によって、所属先に感謝の気持ちを持てなくなっている場合には、逆に「感謝の気持ちを持っている人たち」と関わることが大切だと説きました。
日常的に感謝を抱く人々と接することで、自らも感謝の心を持ちやすくなり、それが行動や成長につながるのは間違いありません。
「感謝の対象」について、幸田さんは具体的に言及しました。幸田さん自身は「日本という国」に対しても強い感謝の念を抱いていると語ります。
毎年お盆の時期には終戦記念日を迎えることもあり、日本が戦後80年にわたり戦火に巻き込まれていないことについて、その恵まれた環境に心から感謝するといいます。
そのほかにも、水道をひねれば安全で美味しい水が飲めること、女性がひとりで安心して歩けるほどの治安の良さなど、私たちが当たり前に享受している暮らしは、国家がそのような社会づくりに努めてきた結果である、ともいいます。
幸田さんは「無力な自分は国家の庇護がなければ1日も生きられない」とも述べます。他国の軍隊から守ってくれるのは自衛隊であり、犯罪から守ってくれるのは警察です。万一、外国で大変な事態に巻き込まれたとしても、大使館に駆け込めば国家権力が守ってくれる。このように「国が常にバックに立って守ってくれているから、無力な自分でも生きていける」と、日々国家への感謝を忘れない姿勢を示しました。
幸田さんが語った「国家への感謝」は大きなレベルでの話ですが、より身近な視点で考えれば、隣にいる同僚や先輩、そして自分が所属する会社に感謝することが、日々の行動を確実に変えていくと思います。
会社や国を「搾取する存在」と捉えるのか、それとも「感謝の対象」と捉えるのか。その見方の違いによって、働き方や発想のあり方は大きく変わってくるはずです。
この日の朝礼では、もうひとり別の社員にもスポットが当たりました。上司からの指摘とそれに対する社員Bの受け止め、さらにそれを俯瞰した幸田さんの考えが共有されたのです。
上司がオンラインチャットツールで社員Bに伝えたフィードバックのひとつは、「仕事が早いけれど雑な人」と「遅いけれど丁寧な人」がいた場合、安心して任せられるのは後者である、というものでした。
さらに、社員Bの現状について「120点の顧客満足を目指すというよりも、80点で怒られない対応にとどまっているように見える」と指摘し、最終的なカギは「お客様に対する想いや愛をどれだけ持てるか」であると示されました。
この言葉を受けた社員Bは「確かに、と思う指摘をいただいた」と素直に認めました。自分は効率を重視するあまり、人から見ると雑に感じられる部分があると振り返りつつ、「強みは伸ばしながらも、弱みは最低限人並みに整えていきたい」と前向きに宣言します。
さらに「上司の指摘は、自分にとって極端に凹んでいる部分だと感じる。だからこそ意識して改善していきたい」と語り、改善への意欲を皆の前で明確にしたのです。
このやり取りを受けて、幸田さんは社員Bの姿勢を「ヘレン・ケラーにとっての『ウォーター』に匹敵するものがある」と表現しました。
かつてヘレン・ケラーの本を読んだけれど、細かいエピソードを失念した……という方向けに説明します▼
ヘレン・ケラーは生後19ヶ月で視覚と聴覚を失い、言葉や世界との接点をほとんど持たないまま幼少期を過ごしました。6歳のとき、サリバン先生がポンプから流れる水を手にかけながら「w-a-t-e-r」と指文字で示し、その文字の動きと冷たい水の感覚が結びついた瞬間、初めて「ものには名前がある」と理解することに。この“最初の理解”こそが彼女の暗闇を開き、言葉と世界の意味が一気につながる突破口になりました。
幸田さんは、このエピソードになぞらえて「それまでは“点”でしかなかった経験や言葉が、ある瞬間に“線”となってつながる」「『こういうことだったのか』と自ら掴み取った瞬間から、世界の見え方は大きく変わる」と語ります。
そして社員Bに対しても、「あなたはいずれ必ず、その最初の突破口を掴むときが来る」と伝え、さらなる成長の可能性も示唆したのでした。
上司から社員Bへのフィードバックにあった「お客様に対する想いと愛をどれだけ持てるか」という言葉に関連して、幸田さんはさらに話を続けました。
たとえば「1,000万円払うので、つくってほしい商品がある」とお客様から依頼を受けたとします。それをそのまま引き受ければ、確実に1,000万円の売上に。しかし、コウダプロとして「これは売れない商品ではないか?」という疑問が少しでもあるならば、「そのまま受けてよいのか」と自らに問い、適切な行動をとることこそが職業的良心の核心だと述べました。
もし「売れない」と考えられる理由があるなら、率直にお伝えし、お客様に最終的な意思決定を委ねるべきだといいます。さらに「仮に数億円を提示されても、職業的良心を失って得るお金なら受け取らない」と断言し、会社として大切にする思想の核を犠牲にしてまで利益を追求するくらいなら、むしろ潰れた方がよいとまで言い切りました。
そのうえで幸田さんは、バブル期に流行した書籍『清貧の思想』を挙げて、「清貧」ではなく「清富」という言葉に共感を寄せていると話しました。清く貧しくではなく、清く富むことは可能であり、良心を大切にしながら最高の提案を行い、お客様も自分たちも良い仕事を実現していくことにこそ意味があるのだと語りました。
社員Bの一連のエピソードに触れて、ある社員は「相手のことを想うこと」「その先を考えること」「『この仕事は何のためにしているのか?』を問い直すこと」などを挙げて「そういった姿勢が仕事との向き合い方を変えていく」とコメントしました。こうした考え方は、当事者の社員にとっても大きな学びとなったに違いありません。
今回の朝礼も、多くの気づきを与えてくれる時間となりました。まず「感謝」のお話です。自分でも感謝の気持ちを大切にしたいと思いながら、日常の中ではそれが「当たり前」にすり替わってしまうことがあります。
しかし、「当たり前は当たり前ではない」という考えを持ち直し、環境や人への感謝を言葉や態度で示していくことの大切さを改めて感じました。
また「職業的良心を失わない」というテーマでは、結局のところ仕事に愛があれば、相手に対して不利益を与えるような行動をとらないはずだと再認識。
関わるすべての人にとって可能な限り良い選択をしようと努めるのは、その仕事に愛情を持っているからこそです。今回の朝礼を通じて、改めて「愛を持って仕事に向き合うこと」の大切さを実感したのでした。
Text/池田園子