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「新しい資本主義の形を探る仕事」へ転職してみて思うこと。カヤック・ちいき資本主義事業部長

長年携わった広告・マーケティング領域の仕事から、40代で地域に関わる仕事へ転職した中島さん。カヤック『ちいき資本主義事業部』の事業責任者として活躍する中で感じたこと、鎌倉での職住近接の暮らしや子育て、今後の挑戦についてインタビューしました!

中島 みき
1976年生まれ、2019年カヤックLiving入社、後に合併・2020年カヤック入社
ちいき資本主義事業部/事業部長・プロデューサー

大阪市生まれ、長野・千葉・東京など様々な地域で暮らす。鎌倉市と熱海市と都内の3拠点生活を経て、現在は鎌倉に移住して子育て中。国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」委員。内閣府「関係人口創出・拡大のための中間支援組織の提案型モデル事業」委員。令和3年度デジタル田園都市国家構想推進交付金(地方創生テレワークタイプ)有識者委員。

40代で訪れた転機、広告事業から地域の資本を広げる仕事へ

ーカヤックに入るまでどんなお仕事をされてきましたか。

新卒後は、広告会社での営業を経て、都内大手インターネットサービス事業会社の広告事業やマーケティング領域で働いてきました。広告の営業・戦略だけでなく、プラットフォームを持っている事業会社での企画や商品設計にも携わってきました。

ーなぜ、カヤックに転職しようと思ったのですか。

10年以上同じ領域の仕事が続いていたので、もっとインプット・アウトプットを広げたいと思い、個人的に色々な地域に出かけて「大人の社会科見学」をしていたんです。自分に何ができるのか見つめなおしていたというか......。そこでカヤック社長の柳澤と出会い、「地域資本主義」を知ったことが大きいですね。

▲カヤックが提唱する新しい指標「地域資本主義」

カヤックのオフィスがある鎌倉に遊びに行ったり、一緒に地域をまわったりする中で声をかけてもらい、「暮らしをつくろう」をビジョンに移住関連のインターネット事業を展開していた『カヤックLiving※』に入社しました(※旧子会社、2020年面白法人カヤックに吸収合併)。『カヤックLiving』の代表取締役を経て、現在はカヤック『ちいき資本主義事業部』の事業部長をしています。

転職の決め手になったカヤックの魅力は、本社のある鎌倉で、地域の資本を広げる活動を自ら実践しているところ。机上の理論ではなくリアリティがあって共感できました。地域の事業はやってみないと分からないものが多いのですが、目で見て手で触って五感に感じられるものがカヤックの事業にはあったんですよね。


ー転職後はどんなことをやりたいと思っていましたか。

転職前は中間管理職的なポジションが続き、マネジメントが主な仕事だったんです。もう一度、プレーヤーとして直に手応えを感じられる活動がしたいと思っていました。そこは期待通りでした。印象に残っているのは、柳澤から「カヤックでは役職者も皆自分で手を動かすからね。手を動かさない人は信頼されない」と言われたこと。階層構造がほとんど無いところが、カヤックの特徴だと思います。
また、「地域に関わる仕事は収益化が難しく、ビジネスとして成功しづらい」という意識を変えられたら、という思いもありました。

ーカヤックで働いてみて、自分が変わったと思うことはありますか。

社会の在り方や環境問題に対する「ジブンゴト化」が高まりました。毎日、毎日、地域資本主義について語っているので、すり込まれますし、体感しますね。
鎌倉に引っ越したことでさらに拍車がかかったと思います。ゴミの問題をはじめ、暮らしについて真剣に向き合っているまちなので、私だけでなく家族も含めて、意識が高まっていると感じます。

ー中島さんは東京・熱海・鎌倉の三拠点生活を経て、現在は鎌倉で子育てされているんですよね。鎌倉での暮らしはどうですか。

職住近接を推奨する社内制度や、カヤックが運営する『まちの保育園』にもお世話になっています。カヤックはパパママ関係無く子育てに積極的で、男性も育休を取る人が多いことが印象的でした。社内で子供服のお下がりをもらったりあげたりすることもよくあるんです。みんなでシェアして使う、みんなで育てる、そんな仲間に出会えた場でもあります。
足を伸ばせばすぐに自然があるし、神社の脇や山に続く坂道などのかっちり管理されていない情景がまちの中にあって、暮らしが豊かなんです。

ただ、こういう暮らし方を話すと、「バリバリ働かずのんびりしたいんだね」とか「もうリタイアするの?」とよく言われるんです。そこは誤解してほしくない部分でもありますね。ぬるいお湯に浸かろうと思って転職したのではなく、熱々のお湯に飛び込んだんです。「ここからまた自分の手を動かして、ひと汗かこう!」という意気込みですから。
自然を身近に豊かな生活を送ること、仲間と夢中で働くことの両方がここにはあって、双方が原動力になっています。

地域のイメージを開き、巻き込まれたくなる人を増やす

ーでは、あらためて現在の仕事内容について教えてください。

『ちいき資本主義事業部』の事業全体を見つつ、移住スカウトサービス『SMOUT(スマウト)』の事業責任者として活動しています。子供が小さいので回数は減ったものの、地域の現場に出向くことも多いですね。また、培ってきた営業面での専門性を、使うほどにつながるコミュニティ通貨『まちのコイン』のサービスに活かしています。

ーこれまでの自信作や紹介したい取り組みを教えてください。

印象に残っている案件は、『SMOUT』の『みんなの移住フェス2020・オンライン』(2020年6月開催)。新型コロナウイルスの発生で対面コミュニケーションができなくなって早々に、オンラインイベントを開催したんです。
移住関連イベントの中止や延期が相次ぐ中、メディアでも話題になり、ご相談件数も相当の数でした。アイデア力と技術力を活かしたスピード感はカヤックならではですね。『SMOUT』の利用者も毎月1000人から1800人位伸びており、今では約4万8000人に成長しています(2023年1月計)。

▲アフターコロナの移住を見据え、潜在移住希望者と地域との繋がりや、関わりの構築(関係人口)のきっかけとなる場をいち早くオンラインで提供した

ーたしかに、働き方や暮らし方を変えてみたいという人は増えていますよね。他に印象的な案件はありますか。

最近の取り組みですと、全国40ヶ所以上で地方創生事業のプロデュースを行う『さとゆめ』と事業提携しました。「多業多福」をキーワードに、マルチワークに特化した情報提供などを行っています。マルチワークやライフワークへの興味関心が社会的に高まる中、両者の強みやノウハウをバネに、地域にマルチワークの事業を創出し、人生の新たな選択肢を提供していきたいですね。

▲「多業多福」事業の支援メニューは、適宜総務省の「特定地域づくり事業協同組合」の制度を活用。複数の生業を持ったり、季節や時間によって仕事内容を変えたり、自分らしいライフワークを柔軟に見つけられる

ー中島さんが事業責任者として意識していることは何でしょうか。

まず、メンバーが「この仕事に関わることで成長につながる」と感じられる場づくりです。そのプロセスを考えながら、サービスをつくることを意識しています。その為にも、難しいことも分かりやすく言語化して伝えるようにしているんです。

伝えるといえば、事業の価値を高めていくための対外的なコミュニケーションも重要です。広がりを持たせて、巻き込まれたくなる人を増やすことが事業責任者の大きな役目。想いを込めてつくり、成長促進につながっているものがどんなサービスなのか、どんな風に共感してもらえるのかを、外にもしっかりアピールするようにしています。
それがあるからこそ、カヤックと一緒に組みたいと思う人が出てきたり声をかけてくださるようになる。自分たちだけでやっていても、どんどん小さくなるだけですから。事業部の名前を「ちいき」と平仮名にしているのも、「地域というものに対して閉じた形ではなく開いたイメージを持ってもらおう」という意味が込められているんです。

方程式が無いから面白い。地域の仕事は、仮説の海で楽しむこと


ー地域に関わる仕事で大切にしていることはありますか。

『ちいき資本主義事業部』がつくったサービスの原点は、カヤックがまちづくりを「ジブンゴト化」してきた経験です。鎌倉に暮らす人と一緒にまちづくりを面白がり、ブレストをし、アイデアを持ち寄る中でたくさんのヒントを見つけました。どのサービスも「地域の問題を解決する」のではなく、「それぞれのまちが面白く、多様であるために何があるといいか」という視点から始まっています。

特に大切なのは、地域が主役であり、そこで暮らす人や活動する人が主体であるということ。そして、どこの町に行っても同じ社会になるのではなく、それぞれの価値観や多様性こそが大事にされるべきだと思っています。
前提有りきで取り組まず、カヤックが今までの経験や強みを活かしてどう寄り添えるのかを常に考えていますね。『SMOUT』がプラットフォームである意味もそこにあるんです。

ーカヤックが答えを用意するのではなく、各地域の主体性や価値観を重視されているのですね。活動していてどんなことを感じますか。

この仕事の楽しさは、色々な価値観を持った人に出会えること。学びも大きいし、考えさせられる機会もたくさんいただいています。そこからメンバーと意見交換したり、対話する時間もすごく好きです。皆ずっと議論しています。ただ、効率は悪いかもしれませんね、笑。

以前はバリバリの経済資本主義の会社にいて、「PV、リーチ数がとにかく大事!」と言っていたのですが、今は拡散することだけが施策ではないと言い続けています。お金を持っていることで勝つ仕組みに対して、勝負するつもりは無いというか......。

とにかく仮説の連続で、トライアンドエラーしていくしかない。そこが難しさですね。地域の仕事には決まった方程式が無く、基本的に壮大な仮説のもとに展開していくんです。だからこそ、面白い。
例えば、民間企業向けのマーケティングの考え方がシェア30%を取れれば「シェアを勝ち取った」状態になると言われる一方、自治体の取り組みは基本的に「誰ひとり取り残さない」ことが前提にあります。とはいえ、一気にシェア100%を取る方法は無いので、仮説を立ててスケジュールを引き、打ち手を実行しながら考え続け、実行し続けていきます。期間の長いプロジェクトが多いですが、仮説を立てていくからこそ、モチベーションが維持されるともいえます。その間に、地域の方々と話す機会も多く、気づきの機会にもなりますし、学びの機会でもあります。
つまり、「何か困っていることに対して取り組めば喜んでもらえる、成功する」と思われがちですが、そんなに単純では無いため、仮説はすごく大事。私たちの仕事は「仮説の海の中で楽しむこと」だと言えると思います。

ー今後、どんな人と一緒に働きたいですか。また、チャレンジしたいことは何ですか。

事業をつくりたい、開発したいという熱いモチベーションがあって、自分も「つくる人」になりたいと思う人と一緒に働きたいし、ぜひお話してみたいです。
あと、カヤックの人は凸凹している人が多い。私もそうなのですが、すごくできることと、すごくできないことがある。思い当たる人は、もしかしたら水が合うかもしれませんね。ポンコツな部分も愛してくれる会社です、笑。

今後のチャレンジについては、カヤックの事業成長と合わせて、「まだ解明できていない評価の指標づくり」にも取り組みたいですね。経済資本主義的な価値でしか測れないゆえに正しく評価されないものに対して、ソーシャルインパクトをきちんと見せていきたい。
それによって、従来の偏重なお金の使い方や、生き方もどんどん変わっていくようになると期待しているんです。その為にも、仮説を積み上げて研究し続けていきたいです!

(取材・文 二木薫)

カヤックサイト インタビューより引用- https://www.kayac.com/news/2023/03/interview_nakajima

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