「自分によって自分の人生を切り拓き、自分の意思によって社会を変えていく」一度FoundingBaseを離れ、戻ってきた彼女が目指す「豊かな社会」とは?
Education Div. Director / 国見team
1993年生まれ。大阪府出身。高校卒業後、大阪大学外国語学部でデンマーク語を専攻。大学時代の活動を通して、教育や格差問題に関心を持つようになる。デンマーク留学から帰国後、2年間休学をして、FoundingBaseのメンバーとして岡山県吉備中央町の町営塾kii+のスタッフとして塾立ち上げと運営に携わる。大学卒業後、教育系の民間企業を経て、FoundingBaseに再ジョイン。福島県国見町の公営塾の立ち上げに携わる。
自分の好きなものを表現することが楽しかった幼少期
私は大阪にある羽曳野市という、自然豊かで田舎の風情が残る場所で育ちました。
一人っ子の私は、父と母からそれはそれは大事に育てられました。小さい頃は好奇心旺盛で、自分が挑戦してみたいことは何でもやらせてもらっていて、月曜日から日曜日まで、毎日のように習い事をしていました。
その中でも大好きだったのが、「お絵かき教室」。水彩画や油絵を描いたり、粘土で動物をつくったり。そこで自分のつくりたいものをかたちにすることの楽しさを知りました。自分が好きなものを表現できる時間こそ、私にとっては一番安心できる時間だったのだと思います。
周囲からの期待に敏感に反応するようになった中学受験
転機となったのは、中学受験でした。一人っ子で、比較的遅い子どもだったこともあり、「いい学校へ行き、いい会社へ就職して、ちゃんと自立できるようになってほしい」という願いから両親は私に中学受験をさせることを決めました。私は、当時やっていた習い事をすべてやめて、受験への道をスタートさせます。学校が終わると、すぐに塾へ行き、帰ってきたら、日付が変わるまで塾の勉強と学校の宿題に追われる日々・・毎日泣きながら勉強をしていたことを鮮明に覚えています(笑)この頃から、周囲からの期待や目線に対して敏感に反応するようになりました。親の期待、先生の期待、周りの友だちからの見られ方。「ちゃんと勉強が出来ていないと、認めてもらえないのではないか」そんなことを考えることが多くなったように思います。当時は、ただがむしゃらに目の前の勉強にくらいついていました。
中学受験を終え、第一志望だった私立の中高一貫校に無事合格しました。部活はなぎなた部に所属。全国大会やインターハイで優勝するくらいの有名校だったこともあり、厳しい上下関係や練習によって精神面はかなり鍛えられました(笑)部活内では、実力のある人たちがたくさんいる中で、いかに下から這い上がれるかが問われつづけたため、「負けん気」「ど根性」が身についたと思います。
人生を変えた、高校での出会い
高校時代は、自分の人生に大きく影響を与える出会いがありました。
私が通っていた高校では短期長期問わず留学にいく人が何人かいたこともあり、「留学」というものがかなり身近にありました。留学に行った人たちの話を聞く中で、自分がいかに「井の中の蛙」なのかを知り、同時に私が知らない広い世界を知っている人たちに強い憧れを持つようになりました。
そんな私の憧れだった人の一人は、高校の生徒会長として、先生たちにも一切物怖じせず「おかしいことはおかしい」と高校をよくするために行動しつづけていました。またほかの一人は2011年の東日本大震災が起こった直後、学校を飛び出して現地に向かい、ボランティア活動に参加していました。そんな彼彼女の姿が”周囲の視線を気にしたり、大人の「期待」に応えなければならない”という、目には見えないけれどずっと自分をどこか縛り付けていたものから、私を解き放ってくれました。
そこから私は、まずは自分の知らない世界を知るために日本から飛び出してみたい、「自分のため」だけではなく誰かにとって「プラスになる」ことをアクティブにやっていきたい、と強く思うようになりました。
大学時代、「教育」との出会い
1年間浪人をした末に晴れて大阪大学に入学した私は、高校時代に抱いた思いを実現するべく色々な活動に参加するようになります。国際協力の活動に参加してみたり、タイの孤児院のボランティアに行ったり、自分が興味を持ったことはとことんやってみようと決め、毎日動き回っていました。しかし、充実感とともに、どこか地に足つかない感覚がありました。一緒に活動していたメンバーたちとの知識量や思考量の差にも日々圧倒されながら、そんな周りのメンバーに追いつくことに必死でした。
ただそこにじっとしがみついていても何も変わらないのではないか、と感じた私は、自分が本気で取り組みたいと思えるものを探し始めます。
そんなときに、ひとり親家庭の教育支援をしているNPO法人と出会いました。活動に参加する中で教育格差の問題に触れ、日本の子どもたちを取り巻く社会に疑問を持つようになりました。同時に、子どもたちと実際に関わる中で、目の前で子どもたち一人ひとりが変化していく様子に心から感動し、教育の現場で働く面白さを感じるようになりました。
この経験をきっかけに教育に関心を持つようになった私は、「教育」を学ぶためデンマークへ留学に行くことにしました。ずっと夢だった留学。現地ではフォルケホイスコーレに半年間+教員養成大学の特別プログラムに半年間参加しました。演劇や音楽、芸術を通じて、子どもたちの社会性をいかに育んでいくのか、実践をベースに理論と結びつけながら議論し、学びを深めていく。そんなデンマークの学習スタイルも、そこでの学びも、すべてが刺激的でワクワクするものでした。
デンマークでは豊かな社会を創るために、一人ひとりの自由と平等を重んじ、全てのひとが社会に参加すること、それを教育を通して子どもに体得させることを大切にしています。もちろんデンマークの教育にも様々な課題はありますが、目指すべき社会があった上で、その社会を構成する人を育てる教育の大切さを、留学を通して改めて実感しました。
FoundingBaseとの出会い
帰国後、就職活動を始めます。教育に関わりたいという気持ちはあったものの全く関係のない業界のインターンや面接に行き、自分の将来に対してモヤモヤとしていました。そんなとき、たまたま高校時代ずっと憧れていた人と再会をします。生徒会長として、大人にも一切物怖じせず行動しつづけていた先輩です。
その人は当時FoundingBaseで人事として働いており、彼をきっかけにFoundingBaseの存在を知りました。当時、彼からFoundingBaseの目指す世界観や実際の取り組み、これからの展望についての話を聞き、ものすごく胸が熱くなったことを今でも覚えています。FoundingBaseに興味を持った私は、実際に教育事業に携わっているメンバーたちと話をさせてもらいました。”命を燃やしながら”現場で働く彼らとの対話を重ねる中で、次第に「私もここで働きたい」という思いが強くなりました。こうして、大学を休学して地域の教育事業にプレーヤーとして飛び込むことを決断します。
この選択には、家族は猛反対でしたが、最終的には「あんたがそこまで言うってことは、止めても行くんやろ」と半分諦めに近いかたちで送り出してもらいました。
"豊かな社会"とは?小さな「社会」で気づいたこと
FoundingBaseにジョインをした私は、岡山県の吉備中央町の町営塾「kii+」でスタッフとして働き始めます。
意気揚々と働き始めましたが、最初はうまくいかないことだらけ。想いとガッツだけはありますが、何をやっても空回り。そんな状態でした(笑)本当に迷惑ばかりかけていたように思います。その中で、自分の不甲斐なさと向き合いきれず、他責思考になっていた時期もありました。ですが、そんな私に対しても、必死に向き合いつづけてくれたメンバーたちの存在が、私を大きく変えてくれました。当時、あるメンバーからこんな言葉を投げかけられました。
「他人に期待することは自分に期待すること。だからまずは自分から行動してみて。」
当時の私には、この言葉がぐさっと刺さりました。人のせいにしてばかりで自分は全く行動していないじゃないか。まずは自分が、目の前のチームやコトをちゃんとジブンゴトとして捉えて行動しつづけるしかない。そう気づいた私は、「ジブンゴト」という言葉を大事にしながら仕事をするようになりました。
私は2年間、kii+のスタッフとして働きました。大変なこともたくさんありましたが、そこには、kii+の子どもたちの成長や変化はもちろん、自分自身の成長、そしてチームや組織の成長がありました。
"「ジブンゴト」として行動しつづけた先には、こんなにも素晴らしい景色が広がっているんだ"、そう感じさせてもらった2年間でした。
そして、その素晴らしい景色を見ることができたのは、間違いなく、FoundingBaseの仲間がいたからです。本気で叱ってくれる上司や、落ち込んだときには一緒に頑張ろうと声をかけてくれるメンバー、そんなことやってると置いていくぞと言って奮い立たせてくれるメンバー。そんな仲間がいたからこそ、ジブンゴトとして行動し仕事に本気で取り組み続けることができました。今の自分がいるのは仲間のおかげだと、本当に感謝しています。
そんな風にして、周囲のひとに対して「ありがとう」の気持ちでいっぱいになると、自然と他のひとに対しても「ありがとう」を届けたい気持ちが芽生えてくる、そしてそれがまた自分に返ってきて、また他の人に「ありがとう」を返したくなる。そういった循環が回っていくことが、きっと自分の人生を豊かにし、社会を豊かにしていくのだということに気づかされました。
新たなチャレンジ
大学に復学した後、一度新卒で教育系の会社に就職しましたが、また縁あって今回FoundingBaseに戻ってきました。これから私は、福島県国見町の公営塾の立ち上げに塾長というポジションで関わっていきます。新たな土地での新たなチャレンジ。新たなメンバーと新たな公営塾を立ち上げていくことに、とてもワクワクしています。
FoundingBaseに戻ってきて、私がこれまで大切にしてきた「ジブンゴト」という言葉は、現在のFoundingBaseのミッションである ”「自由」をUpdateする” という言葉に変わりました。
”自分によって自分の人生を切り拓き、
自分の意思によって社会を変えていく”
私たちはいま、そんな人を増やし、そんな社会を創るために活動しています。私の言葉で言えば、まずは私自身が「自分に由って」生きることで、現場で関わる子どもたちや地域のひとたちにとっての「ありがとう」を届けられる存在になること。そしてそれを受け取った人たちが、また誰かにとっての「ありがとう」を届けられる存在になること。こうした「ありがとう」の循環が生まれていくことで、豊かな社会を創ることができると私は信じています。
国見という新たなフィールドで、そんな循環を作り出すために、日々活動していきたいと思います。