上場準備が始まったばかりの2018年7月にジョインした菊池烈(Isao Kikuchi)。公認会計士として監査法人トーマツに8年余り務めた後、フォースタートアップス(以下、フォースタ)へ。上場に向けて様々な課題を一つ一つ、丁寧に対話をしながら解決し、会社としての基礎をつくった。高い実務能力と熱いハートを併せ持つ菊池は、さらなる高みを目指すフォースタにとって、まさに余人をもって替えがたい人物だ。
日本の現状を憂う話で意気投合。輝かしい日本を取り戻す気概に魅かれて入社
「ああ、こういう会社があるのか」。菊池が、初めてフォースタ代表の志水雄一郎と話したとき感想だ。志水は菊池に、なぜスタートアップにチャレンジすべきかを滔々と語った。「思い返すと、新卒の就職活動時にそのような選択肢はありませんでした。僕だけが知らなかったわけではなく、周りもそう。志水と初めて話した2年前も、まだマジョリティではなかった。ここは壮大な布教活動を行い、チャレンジを伝播させていく会社なのだと思いました。30代、40代のマインドが変われば子ども世代も変わる。そうやってチャレンジをつないで未来を変える会社なのだと」。
菊池は、日本の現状を憂う話にも共感した。かつて海外から憧れられた日本。働きに来る人も多かったが、今や憧れの対象ではない。有為の若者も外に出る。その状況が悔しいと、2人の会話は大いに盛り上がった。チャレンジする大人を増やし、成長産業を生み育て、もう一度輝かしい日本を取り戻そうとしているフォースタ。菊池はそのビジョンの大きさに感銘を受けた。同時に、自分のスキルを役立てることができそうだと思い、入社を決めた。
菊池は粘り強い。柔軟で合理的、そして熱い。入社後は上場に向けて、ビジョンは壮大だが、会社としては未熟だったフォースタと四つに組み、山のような課題を1つ1つクリアしていった。各種ルールや手順の順守など、1つ1つは細かなことだが積み重なると大きい。しかも、少なからず今までのやりかたを変えることになる。「たくさん喧嘩もしました」と、菊池は笑って振り返る。
大事にしたのは、フォースタにとって何が適切かを考えることだ。菊池は言う。「監査法人では常に大きい会社を見ていました。社会でもそれがスタンダード。でも、その基準を持ち込んで『大企業ではこうやっています』と言っても、誰も納得しない。確かに、それはいちばん確実だけど歪みも出る。成長スピードも遅くなる。現場に負荷をかけないで済むように頭を使い、現場と認識を合わせて、地に足をつけてやるということを常に意識していました」。この姿勢のおかげで上場に向けた事務的な準備が整い、メンバーの意識も成長した。
上場は通過点。1年でやれることが大きく増え、自ら会社を変えている実感も
しかし、上場日の2020年3月13日は、よりによって新型コロナウイルス対策の改正特措法の施行日で、世界では株価が大暴落した日。その陰で、セレモニーもなくひっそりと上場した。だが「ショックはなかった」と菊池は言う。理由は一通過点でしかないから。その思いの通り、そこからフォースタは確実に成長した。
「上場してすぐにコロナが本格化して、少なからず業績にも影響を受けました。採用を加速して人数が増えた分、一定の退社も出るなど、会社として初めての経験がたくさんありました。
我々は、組織化を図り、売上を上げるために必要な基礎体力をつけるべく取り組みました。結果、タレントエージェンシー(TA)事業は明確に成果が数字に表れ、オープンイノベーション(OI)、パブリック・アフェアーズ(PA)といった新事業も順調に実績を積み重ねています。
上場時と比べると、会社が大きく変わっている実感を持っています」と菊池。失敗もあり、成功もあり、そのなかで「会社が変わっている」ならぬ「会社を変えている」という実感が確かにある。菊池にとって、それは大きなやりがいの一つだ。
そして、それが叶うのは素晴らしい仲間がいるから。菊池は言う。「全員が成長産業支援ということに関して信じてやまない。その一体感、同じ方向を見ているところが、フォースタの良さだと思います。もちろん、まだまだ課題はたくさんあり、会社の礎を築いている段階だけれども、確実にマーケットからも認められていると感じる機会が増えています」。
上場後、初めての株主総会でこんなことがあった。とある株主が、さらなる売上成長を望むと発言。それ自体はごく普通の要望だが、発言の最後に「周りでフォースタのよい評判を聞く機会が増えました。頑張っている従業員の皆さんによろしくお伝えください」と付け加えたのだ。嬉しさとともに、フォースタがもっと成長しなければならないと誓った出来事だった。
フォースタの成長は日本にとって間違いなくいいこと。攻めのコーポレート
今後のフォースタとコーポレートに対して菊池の思いは尽きない。「フォースタはもっともっと大きくならないと。社会的知名度が特に重要な会社であり、それが上場の大きなオプションだとの思いを持っていました」。フォースタの売上が伸びること、人数が増えること、成長することは日本にとって間違いなくいいことだと菊池は信じる。なぜなら、日本中のあらゆるところに散らばっているピースを、日本の未来のために最適に配分する会社だから。
「30年、50年と経ったときに、今のフォースタのクライアントがものすごくビッグになり、グローバルを代表する会社になっているとすごく嬉しい。その基礎にフォースタがお役に立てれば、もう、それ以上のことはないかなと思っています」と菊池。そのために、フォースタの全メンバーが生産性高く取り組める環境を用意することが、コーポレートの務めだ。上場時に意識したフォースタに最適な形は、今も常に考えている。
菊池の入社時と比べ、コーポレートには様々なバックグラウンドとタレントを持つメンバーが集結し、やれることが広がっている。「人は、過去の経験や信頼する人の発言に強く影響を受けてしまいがちですが、それだけをやっていては発展しません。当初想定していたアウトプットが、ほかの人の意見を取り入れることでよりよいものになるという考えで、みんなが働いてほしい。『こうなればいいのに』と思ったら、自分から変えに行く志向を持つことが大事です。やはり、スタートアップのバックオフィスで働くおもしろさは『創れる』こと。会社全体に関わることに自分の意見を反映して、何かしら変えることができる。そういう進化をもたらす動き方をしたい人に集まってほしいです」と、今いるメンバーとこれから仲間になる人に呼びかける。
新しい事業が立ち上がり、TA事業も日々進化する。人も増える。それらに連動して、少し先の未来を見据えながらコーポレートとしても様々な施策を打っていく。フォースタにおいては、バックオフィスであるコーポレートも攻める組織だ。
ステークホルダーを巻き込んで大きな波をつくる。日本の成長のために不退転の決意
「仕事はまったく苦ではない」と菊池は言う。職種柄、マニュアル的な対応も多かった会計士時代。物足りなさを感じて飛び込んだフォースタでいろいろな経験を積み、確実に人生がおもしろくなった。バトルをしながらも培った現場との一体感。総会で株主からもらった温かい言葉。「株主さんの言葉はすごく嬉しくて、このように、すべてのステークホルダーにフォースタのビジョンに共感し、感謝されるような価値提供をしていかなければと思っています。我々1社だけでは日本を、成長産業を盛り上げていくことは不可能です。ステークホルダーを巻き込んで大きな波をつくることが不可欠であり、その意味でコーポレートの役目は大きいです」。
そのコーポレートのトップとして、菊池は自身を追い込む。「自分の限界を超える自己研鑽、学びや成長をしなければ。それでもフォースタの成長のほうが速ければ、自分がボトルネックになってしまいます。そうなるくらいなら、スパッと身を引いたほうがいいと思っています」。そんな不退転の覚悟で臨む。
最後にどんな人と一緒に働きたいかを聞いた。コーポレートも新しい仲間を求めている。「大前提は、この会社の未来にベットしてくれる人。フォースタがやっていることは抽象度が高く、実現するには時間がかかります。1歩1歩積み重ねるしかない。そこを信じた上で、一体感をもって働けるといいですよね。自分の業務でいっぱいになるのではなく、広く社内外の情報にアンテナを張り、常に先を見て、想像力を働かせて新たな取組ができる人。とにかく変化が速いので、そのような姿勢でいないと後手後手になってしまいます。コーポレートを、単に作業をしているだけみたいな部署には絶対にしたくありません」。
公認会計士のイメージも手伝って、一見、いかにも堅い人のようで中身はロックな菊池。バックヤードから見るフォースタも実に熱い。