AIの進化によって、設計やコード生成の精度は飛躍的に向上しました。
プロンプト一つで複雑なシステムのコードをアウトプットし、テストコードすら自動生成できる時代です。AIがいずれ仕様決定も担うようになってくるのか。考えてみました
少なくとも現時点では「No」な気が個人的にはします。
そして、今後もしばらくは「人間にしかできない仕事」であり続けるんじゃないかと思っています。
その理由を、いくつかの視点から整理してみます
1. 「仕様」はビジネス戦略と密接に結びついている
仕様決定とは単なる機能一覧の作成ではありません。
顧客の課題、ビジネスモデル、現場の業務プロセス、競合との差別化要因など、
あらゆる要素を踏まえて「どのようなシステムにするか」を決めていくプロセスです
たとえば、教育業界向けの学生管理システムを開発するとして、
・顧客の学生数は多いのか?少ないのか?
・現場はタブレット運用?紙文化?
・受験データや資格管理など、独自のニーズは?
といった情報は、ヒアリングや現場観察を通じて初めて把握できます
こうした文脈的・感覚的な情報の解釈と判断は、AIより人間のほうが上手かと。(現時点では)
2. ユーザーの「本音」をくみ取るのは人間の仕事
顧客が「こうしたい」と言っていたとしても、それが本当に求めているものとは限りません。
たとえば、「学生の出席管理を簡単にしたい」という要望の裏には、
・教員の勤怠と連動させたい
・保護者への通知機能がほしい
・欠席理由を一元管理したい
など、潜在的なニーズが隠れていることがあります
こうした言外のニーズを読み解くには、相手の表情・声色・背景事情など、
非言語情報を含む深いコミュニケーションが必要です
ユーザーの言葉を超えた「意図」をくみ取る力。これは、やはり人間ならではの強みです。
3. 「この仕様で本当にいいのか?」と問い続ける力
仕様は一度決めて終わりではありません。
実装を進めながら「この方向で合っているか?」を見直し、修正を重ねていく柔軟さが求められます。
たとえば、初期の想定どおりの設計で動くものができたとしても、
「ユーザーが想定外の使い方をしている」
「一部のフローで著しく時間がかかっている」
といった現場のフィードバックに対し、仕様を再検討する必要があることも。
この「問い直し→再定義→再実装」の繰り返しは、まさに意思決定の連続です。
そしてこの意思決定には、価値判断・優先順位付け・将来の見通しといった、
人間的なバランス感覚が欠かせません。
AIは強力な“補助ツール”。だが、仕様を決めるのは人間だ。
AIが「仕様書からコードを生成する」「レビューを支援する」など、開発プロセスの一部を代替する未来はすでに始まっています。
しかし、そもそもその仕様書に「何を書くか」を決めるのは、今も変わらず人間です。
そこには、ビジネス視点・顧客理解・倫理・責任など、単なる正解では割り切れない要素が山ほど詰まっています。
だからこそ「仕様を決める力」こそが、これからのエンジニア・PM・ビジネス職の武器になる。
そしてその力は、現場と対話し、悩み、問い続ける中でしか磨かれません😊