「伝えたつもり」と「伝わった」は、まったく別の現象─ 認知科学でひもとく“理解のズレ”の正体
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「何回説明しても伝わらないんです。」
そう感じたこと、誰にでもあるはずです。
でもそれは、説明する側の伝え方が悪いとも、聞く側の理解力が低いとも限りません。
実はそこには、“人間の認知の仕組み”による、避けがたいギャップが存在します。
認知科学では、人が何かを理解する際、頭の中で「既に持っている知識の枠組み(スキーマ)」に新しい情報をあてはめながら理解すると言われます。つまり、人は「聞いたこと」ではなく「自分の知っている範囲で理解できたこと」しか実際には頭に残らないことが多いとのことです。
たとえば、あるエンジニアが「APIのレスポンスが遅い」と報告を受けたとします。
しかし“遅い”という言葉ひとつ取っても、
・数秒の遅延を指しているのか
・処理全体の設計を問題視しているのか
・体感の話なのか、数値データに基づく話なのか
──受け取り方は、人によってまったく異なります。
説明する側が「これくらいわかるだろう」と前提を置いた瞬間、聞き手の頭の中では別の“理解の地図”が描かれてしまう。ここに「伝わらない」原因の多くがあります。
“理解の前提を合わせる”努力が必要。
相手がどんな知識レベルで話を聞いているかを意識し、共通の言葉・共通のイメージを使って会話する。たとえば「〇〇という機能を、△△のように動かしたい」と、図や実例を交えて話すことで、相手のスキーマと自分のスキーマが重なり始めます。
また、相手の反応を観察しながら「どこまで理解できているか」を確かめることも重要です。一方的に説明を繰り返すよりも、相手の言葉で説明し返してもらうほうが、本当に理解できているかを測る指標になります。
本当に伝わるコミュニケーションとは「相手が理解できるように説明すること」ではなく「相手が理解できたかどうかを一緒に確認すること」
何度も説明しても伝わらないとき、それは“相手が悪い”のではなく、“理解の前提が違う”だけ。人はそれぞれ違う知識・経験・思考の地図を持っている。
だからこそ、私たちは“説明する”ではなく、“理解を作る”という視点を持つべきなのでしょうね😊