はじめに
みらい翻訳CEO&CTOの鳥居(ニックネーム:Danny)です。
みらい翻訳は、先月末に7回目の創業記念日を迎えました。2019年に黒字化を達成し、振り返るとあっという間にも感じる7年間でしたが、今回はあらためて事業や会社の歩み、そして未来への思いを書いてみたいと思います。
なぜ機械翻訳が必要なのか
みらい翻訳は、機械翻訳事業を手がけている会社です。
「機械翻訳」という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
「日常で結構使っている」「翻訳?あまり興味がないな…」という方など、様々な方がいると思います。
近年、時代の流れによって、グローバルな仕事や社員をもつ企業が増えてきています。特に大企業などでは以前より英語の必要性が増しており、今後もグローバル化の流れは拡大し続けるでしょう。
しかし「英語で仕事をする」ということは、メールや書類を1つ作るだけでも(日本語の時よりも)どうしても手間やコストが多くかかってしまいます。グローバルな環境であるほど企業を圧迫するこの大きな問題に対して、その問題を解消するために導入されているのが機械翻訳サービスです。
ちなみに最近「DX」という用語が話題になっていますが、この「DX(デジタルによって人々の生活が良くなる変革)」において、ITシステムに簡単に組み込むことができる「機械翻訳」は欠かすことのできない重要な存在です。実際に、企業全体に機械翻訳サービスを導入したことで、翻訳作業の時間短縮により数億円以上の生産性向上効果を得られたケースも報告されています。
ビジネスにおける機械翻訳は、まさに今、ニーズの高まりとともに大変注目されており、機械翻訳市場も成長中です(機械翻訳を含む自然言語処理の世界市場は、今後も年平均成長率約20%の勢いで成長すると見込まれています)。
世界を変えることができる「機械翻訳」
しかし現在、機械翻訳サービスを全ての企業が使っているわけではありませんし、「一部の専門的な人向けのものなのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、機械翻訳が扱っているのは「言語」です。
「言語」とは、“世界中の人々にとって、身近で大切なもの”です。
私が伝えたいのは、「機械翻訳ってすごい」ということです。
言語を使う世界中の人にインパクトを与えることができるような、本当に世界を変えることができる可能性をもつ技術だと思っています。後半に詳しく書きますが、みらい翻訳はそんな未来をビジョンに掲げて、本気で取り組んでいるところです。
機械翻訳の現状
実は、これまで機械翻訳の技術は「翻訳精度に大きな課題がある」と言われてきました。
私自身も大学院で(15年位前に)機械翻訳を試してみた際、精度が低く、使うのを諦めた経験がありました。しかし近年、機械翻訳技術は、歴史的な大きな進歩を遂げました。
人工知能ブームの中で、その技術を機械翻訳に応用した「ニューラル機械翻訳」が発明され、機械翻訳の精度が格段に向上したのです。(学生の頃から人工知能の研究をしていた私にとって、このことはとても興奮するものでした!)
翻訳精度が上がったことで、より人々の生活や仕事で活用できるようになった機械翻訳は、今では、ビジネスの英文メールを書く際や英文契約書を読む時など、様々なシーンで使われるようになりました。
機械翻訳の課題
現在、機械翻訳サービスを主に利用しているのは、比較的英語が得意な方々です。その理由の一つは、機械翻訳は100%正しいわけではなく、翻訳結果が正しいかどうかを判断できない人にとっては、今の機械翻訳はまだ使いやすいとは言えない状態だからです。
外国語が得意な方々に選ばれているということは、「機械翻訳がすでに高度な翻訳レベルを実現している」と一見ポジティブにも受け取れますが、外国語が得意ではない方々などにとってまだ使いやすいものではないことは大きな課題であると感じています。
機械翻訳が誰にとっても使いやすくなり、(業種や外国語の習得度などに関わらず)あらゆる方々をサポートできるようになることは、とても重要なことです。
私たちが目指す「機械翻訳の未来」
先ほど挙げた課題に対しては、すでに技術的なアプローチとして、翻訳結果が正しいかを確認するための「逆翻訳」などのサポート機能が用意されています。けれど私は、機械翻訳の未来の実現には、そのような技術面だけでなく文化面の変化も必要があると考えています。
以下は、みらい翻訳のビジョンです。
『言語の壁を超え、新しい生活と仕事の様式をもたらす共通語の機能を機械翻訳として2028年までに作る(世界全ての人々に英語を母語とする人々と同じ体験を与える)』
簡単にいうと、
「機械翻訳によって、世界中の人が、あらゆる情報や人にスムーズにアクセスできる世界を作りたい」
ということです。
現在、機械翻訳の技術は、すでに様々な外国語を高い精度で翻訳することができます。
ですが、たとえば今、誰もが、外国の人とスムーズに会話することはできるでしょうか?
答えは「No」です。
技術自体はあっても、残念ながら、まだ世界中の人々をサポートできる段階には至っていません。
もし「機械翻訳」を世界中の誰もが手軽に使えるようになれば、その人の母語によらず、「機械翻訳」という共通語によって、誰もが世界中の人や情報とつながれる世界が実現できます。
私たちは「あらゆる人が機械翻訳を使える機能」を作ることで、新しい世界を作りたい!と考えています。これによって実現する新しい世界は、たとえば
・(機械翻訳によって)あらゆる国の人々が、同じようにチャットができたり
・(機械翻訳によって)あらゆる国の社員が、1つの資料を閲覧編集できたり
・(機械翻訳によって)あらゆる国の情報を、ネットで同じように読めたり・・・
今のように「これは外国語だから翻訳しなくちゃ」と考えることもなく、日本語にも外国語にも同じように自然にアクセスすることが可能になります。
このような「言語の壁自体がなくなる」未来が実現できたら、言語の違いによって離れている「人や情報」の壁がなくなり、あらゆる人々の人生が大きく変わり、世界中で圧倒的な生産性向上が起きるでしょう。
これはつまり「機械翻訳を共通語とするコミュニケーション文化」という、新しい文化ができた状態です。技術面の進化だけでなく、文化面でもこのような変革を起こすことができれば、誰もが自然にグローバルな活動や交流ができる、新しい世界になるでしょう。
私たちは現在、このような未来に向かって、翻訳精度に更に磨きをかけながら、同時に、新しい文化の創造とコミュニケーションを支える技術開発についても進めているところです。
みらい翻訳のこれまでとこれから
会社としては、設立直後の0→1期をこえて、今は1→10、10→100にするフェーズに来ています。
振り返ってみると、創業期(0→1期)は決して順風満帆とは言えませんでした。
当初は、自社製品もなく中々売上も伸びず…。
「このままではダメだ。自信を持ってお客様に提供できるものを自社開発しよう!」と決意して準備を進めていたところに、ニューラル機械翻訳の技術が登場したため、早いスピードでその新技術を採用した商品を自社開発することができました。
文章で書くと簡単に聞こえますが、会社として「挑戦する気持ち」と、それを支える「技術力と熱意を持った社員達」がいたからこそ、自社開発による売上拡大を果たし、困難を乗り越えることができました。
創業期を越えたといっても、今もたくさん課題はありますし、ビジョンの実現のためには会社全体がさらにステップアップしていかないといけません。
今の会社の大きな課題としては、組織面に力を入れています。
創業時より社員もだいぶ増えましたが、組織としてはまだ不完全で整備されていないところがあります。
目指しているのは「オペレーショナル・エクセレンス」な組織です。
「オペレーション(現場の業務遂行力)」が「エクセレンス(徹底的に磨き上げて卓越している状態)」な組織になるためには、現場が「今より良いオペレーションはないか?」という視点を常に持ちながら業務にあたり、小さな改革を積み重ねていくことが重要です。
現状に甘んじることなく、より良くできる点を皆で発見・改善しながら成長していくことで、(個人としても会社としても)さらに大きな力を発揮できる組織になっていきたいと思っています。
社風としては、言われたことをただやりたい人には合わないかと思いますが、新しい技術やツールや情報に興味がある人、やりがいや成長を感じたい人、小さな改善点に気づける人などは合うかもしれません。
組織作り真っ只中なので「(ガチガチにルールが決まった会社ではなく)自分も組織作りに関わりたい」という方も大歓迎です。フラットな雰囲気なので、入社直後でも誰でも気軽に発信しやすい環境だと思います。
私たちは、「技術で世の中を変えたい」と思っている技術者が多く在籍しており、それに共感賛同してくれた社員達の集まりです。
扱っているものは機械翻訳ですが、特に機械翻訳の知識や経験は問いません。
誰にとっても身近な「言語」を扱っているため、応用可能領域も広く、様々な経歴や経験をもった社員一人ひとりのアイデアが重要なヒントになります。
技術に興味がある方、世界中の人と話してみたい、今の社会を変えたい、世の中にインパクトを与えたい!など、ビジョンに共感してワクワクしながら一緒に働ける方と出会えたら嬉しいです。