企業にとって、“IT・AIの活用”が経営に大きく影響する時代。シャープでは本社直轄組織として「IT戦略統轄部(以下IT戦略)」を置き、全社のDX化を強力に推し進めています。最大のテーマは、原動力となるIT人材をいかに育てるか。IT戦略の「人材強化チーム」を率いる八野さんに、育成の考え方や取り組みなどを聞きました。
〈PROFILE〉 八野 英典/IT戦略統轄部 DX推進部課長
ITシステム開発から運用保守まで幅広く経験した後、2021年8月にマネージャー職としてキャリア入社。ベトナム開発保守センターの立ち上げ時から、現地IT人材の採用や育成に携わる。その後、IT戦略統轄部の人材強化チームのリーダーに抜擢され、シャープが挑むIT改革の中枢で活躍中。
全社DXへの挑戦を、人材育成でサポート
――人材強化チームの役割について教えてください
まずは、私が所属する「IT戦略統轄部」についてご説明します。読んで字のごとく、シャープのITシステム改革を戦略的に推し進める部署なのですが、経営陣からの期待値は年々高まるばかり。というのもシャープは近年、モノづくりとデジタルを融合させた「新しいビジネスの創出」に挑んでおり、その基盤となるのが、全社的な業務プロセスのDX化だからです。
その期待に応えるためには、高い水準でプロジェクトを遂行できるエンジニアが必要不可欠。そこで、エンジニアの採用や育成に特化した、『人材強化チーム』が発足しました。
私たちのチームが取り組んでいる業務は、大きく3つあります。まず、毎年実施している「新卒採用」。2つめが、若手人材を指導し、プロジェクトを動かすリーダーの採用。いわゆる「キャリア採用」ですね。そして、現場での指導や教育をレベルアップする“仕組み”をつくる「人材育成」。この3つを軸に日々、様々な施策を企画し実行しています。
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教えあう仕組みづくりや、学ぶ機会の創出がミッション
――「人材育成」の基本的な考え方は?
考え方としては、“座学よりも実践”!もちろん、外部研修やセミナー参加などのプログラムもありますが、それよりも現場でのOJTを重視しています。自分たちが蓄積してきたノウハウを若手エンジニアにしっかりと伝えていくことが、育成の基本だと考えているのです。その中で、私たち人材強化チームのミッションは、“社内で教えあう仕組み”を構築していくことですね。
たとえば各部門から、「こんなノウハウを標準化したい」「こういうことを若手エンジニアに伝えたい」などの声を集めて、その声をもとに社内講義の企画を立てるなどしています。誰が講師となり、誰を対象として、いつどんな形式で行うのかプランニングするわけです。
――仕組みづくりで、新たな取り組みなどありますか?
以前は集合形式の講義が多かったのですが、コロナ禍以降はオンラインがメインになってきました。いずれにしても、単に話を聞くだけでは“受講して終わり”になりかねません。もっと能動的に、ワクワクしながら学べるような仕組みがつくれないかと考えているところです。
「オンライン動画」の活用もそのひとつ。よくYouTubeなどで、予備校の人気講師が特徴あるしゃべり方で分かりやすく解説する動画がありますよね。そういう、人を惹きつけるような仕組みづくりができたら、面白いのではと思っています。講師もひとりではなくて、二人で掛け合いながら教えていくというのもアリです。こうした構想をカタチにしていきたいですね。
――人材強化チームとしての、これまでの成果はいかがですか?
目に見える成果としては、部門ごとのルールブックやフォーマットができたことです。設計書や仕様書など、以前はソリューションごとに異なるフォーマットだったものを標準化しました。これにより、作る人・見る人双方が、複数のフォーマットに習熟する必要がなくなって生産性が向上しました。実際のコンテンツを作成するのは、現場を知り尽くしたそれぞれの部門のリーダー。私たちは、その方向づけをするという立場ですね。言い換えれば、IT戦略統轄部のミッション・役割に照らして技能・ノウハウを整理して、必要な研修を企画・推進するというのが、私たちの役割です。
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20代中心の組織の中で、“キャリア採用”こそが人材育成のキーワード。
――若手育成において力を入れていることは何ですか?
IT戦略統轄部の特徴のひとつは、20代が多いことです。所属するエンジニアのうち、実に半数以上が20代というとても若い組織。逆にいうと、指導する側の30代後半~40代の中堅層がかなり少なく、50代のベテラン社員が育成に当たっているというのが現状です。ですから、今最も力を入れているのは「キャリア採用」。ITエンジニアとしてある程度経験を積んでこられた方を、リーダー職として積極的に迎えています。
――中堅エンジニアの方が、シャープに転職する魅力は?
キャリア採用でアピールしていることが、2つあります。ひとつは、経験を活かして思う存分活躍できること。特にIT戦略では社内の全てのシステムのDX化に挑んでいますから、自分たちの手で、自社のシステムをつくることができます。当然ながら自由度も高いので、これは大きな魅力だと思いますね。
もうひとつは、「若手を育てる醍醐味を味わえる」ことです。育てるのは、伸び盛りの20代。もっと学びたい!経験したい!という好奇心も向上心も旺盛な若手エンジニアたちを指導し、目の前で成長していく姿を見るのはとても面白いはずです。どこをどう伸ばすか考えながら、自分の得意なことをどんどん教えていただきたいですね。
実際、私もキャリア採用で道が拓けたひとり。開発の現場からは離れましたが、これまでの経験を、次世代のエンジニア育成に活かせることにワクワクしています。
企業規模を感じさせない「きめ細やかさ」が、シャープ流
――エンジニア育成の具体的な取り組みを教えてください
IT戦略全体のスキルを上げるためには、エンジニア一人ひとりに応じた教育やサポートが必要です。そこで年に数回、1on1の面談を実施しています。ここでは、自分がどんな仕事にチャレンジしたいのか気兼ねなく相談できますし、そのためにはどんなスキルを身につけるべきかなど丁寧なアドバイスを受けることができます。冒頭でお話した通り、私たちは“座学で知識を得る”よりも“実践で活かせるスキルを身につける”ことに重きを置いているので、上長との面談はかなり役立っているようです。
ここできめ細かく“方向性”を決めて経験を積み、試行錯誤を繰り返しながらエンジニアとして確実に成長していくということが、きちんと実践できているように思います。
また、若手エンジニアを対象とした「スキル台帳」なるものを作っていますね。これは、自分が取り組む仕事(プロジェクト)で得られる知識が、台帳のどこに位置しているのかを見ることで、自分の現在地を可視化するためのもの。それが分かった上で、この先の計画を立てていきます。
たとえば次の半年間でJava開発に携わって、いくつの設計書をつくるなど、具体的な「成果・結果」を決めていくわけです。私たちは、こうした仕組みをつくることで、知識だけでなく実践力が身につくようサポートしています。
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新たな取り組みが次々生まれるIT戦略には、活躍のチャンスが多い
――シャープのグループ戦略を支えるエンジニア像とは?
シャープは、従来型の製品メーカーから“AIを活用したサービスを展開する企業”へと変わろうとしています。つまり、AI・ITの領域が経営の大きな軸になるわけです。その中で、IT戦略統轄部の役割は非常に大きいもの。ここで活躍するエンジニアには、今後さらに高い水準のデジタルスキルが求められていくでしょう。たとえば、生成AIをシステムに組み込んでいく取り組みは、すでに進んでいます。そうしたAI領域に長けた人材の育成が、この先ますます求められていくと思いますね。
それはそのまま、私たち人材強化チームの課題です。けれども私たちだけで成し遂げられるものじゃない。IT戦略統轄部全体で連携しあいながら、時には社外の専門家も巻き込みながら取り組んでいきたいと考えています。
――最後に、シャープで働く魅力について教えてください
ひとことで言えば、チャンスが多い会社。特に今、AIの領域にどんどん踏み出そうとしているタイミングで、活躍の場は非常に多くあります。しかも20代中心の組織の中で、チーム作り・組織づくりにも携わることができます。「チームの力を活かして、ひとりではできないようなことを成し遂げたい」という方にぜひ加わっていただきたいですね。きっと視野が大きく開けるはずです。
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※記事内の部門名、役職名、内容はインタビュー当時ならびに掲載当時のものです。
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