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AI革命をリードする「リーガルブレイン開発部」で、今しかできない挑戦を/リーガルブレイン開発部 部長 稲垣有二
法律とテクノロジーの融合は、私たちの社会、そして仕事のあり方を大きく変えようとしています。特にAIの進化は目覚ましく、その最前線で「Legal Brain」という画期的なAI基盤技術を開発しているのが、弁護士ドットコム株式会社リーガルブレイン開発部です。今回は、リーガルブレイン開発部部長の稲垣に、そのビジョンと、このエキサイティングな分野で働く魅力についてお話を伺いました。
PROFILE
リーガルブレイン開発部 部長 稲垣 有二(Inagaki Yuji)
名古屋大学卒業後、株式会社ワークスアプリケーションズにてエンジニア・プロダクトマネージャーとして大企業向けERP開発に従事。その後、株式会社リクルートライフスタイルでAirレジのプロデューサー、トラボックス株式会社でのSaaS事業責任者を経て、2024年に弁護士ドットコムに入社。現在はリーガルブレイン開発部部長として開発責任者を務める。
弁護士の働き方を変える「Legal Brainエージェント」
今回、Legal Brainエージェントをリリースしましたが、このプロダクトによって実現する未来についてお伺いしたいです。
法務部員や弁護士の基本的な定型業務は、将来的にはこの「Leagal Brainエージェント」に大部分を任せられるようになります。今後できることをさらに増やしていく予定ですが、本当に仕事の仕方が変わると考えています。AIに任せられることは全て任せておき、その待機時間で別の作業を進め、結果が返ってきたらそれを確認する、という働き方が当たり前になるでしょう。まさにChatGPTのリーガル特化版として、法律の専門家の方々に安心して使っていただけるサービスです。
最近よく、ChatGPTがアメリカの弁護士に利用されて、誤った判例が書面に含まれるというニュースを目にします。それでも汎用AIが使われてしまう現状があるのはなぜでしょうか?専門家が安心して使えるAIへのニーズについて、どのように感じていらっしゃいますか?
毎週のようにそういった話が出ていますね。これは結局、便利だから使ってしまう、という側面があるのだと思います。アメリカ、中国、韓国でもリーガル版AIが次々と立ち上がっていますが、どこもニーズは共通しています。ChatGPTやGeminiなどの汎用AIではハルシネーション(幻覚)を起こしてしまうため、専門家は安心して使えないという点が課題なのです。このニーズは非常に大きいと、実際に多くの弁護士の先生方とお話しして実感しています。
具体的な事例があればお聞かせいただけますか?
この間、ある大手法律事務所の先生方とお話しする機会がありました。ChatGPTを社内で導入したので、これをリーガルリサーチに使おうとしたそうです。しかし、すぐに「業務に適していない」ということに気づいたと。
やはりインターネット上の「信頼性が不透明」な情報がベースでは安心して使えないそうです。結局、引用先を全て確認しないといけない手間を考えると、かえって非効率になってしまう。そこで、Legal Brainエージェントを導入したいという話になりました。まさにそれこそが私たちが思い描いていた課題解決です。私たちは、法律事務所や法務部の皆さんに「皆さんが安心して使っていただけるAIはこれです」「文献や判例といったクローズドな情報も集約している弁護士ドットコムのLegal Brainエージェントを安心して使ってください」とご提案させていただいています。
Legal Brainエージェントが弁護士業務にどのように貢献するのか、詳しく教えていただけますか?
リサーチや情報収集の作業は、弁護士業務全体のおおよそ半分を占めることもあります。現状この作業は、主に若手弁護士が膨大な時間をかけて行っていると聞きます。そしてその後に、詳細なリスク検討や顧客向けの資料作成といった、より高度な作業が待っています。Legal Brainエージェントは、このリサーチと情報収集を1分ほどで完了させることができます。まだお伝えできないことも多いですが、今後、より便利な機能を開発予定です。
リーガルAIが切り拓く「法律をもっと身近に」する未来
弁護士さんの負担が減ることで、リーガル分野に普段あまり馴染みのない人たちにとってどのようなメリットがあるのか、もう少し具体的に教えていただけますか?
今後法令や判例のリーガルリサーチだけではなく、資料作成やチェックといった領域までAIで担うことができるように、領域を広げていこうと思っています。これは弁護士の先生方の業務の大幅な生産性向上をもたらしますが、我々にとっても間接的に影響があると考えています。
日本の司法においては「二割司法」という言葉があり、本来法的トラブルを抱えている人たちのなかで2割しか司法サービスにアクセスできていない状態を指します。司法制度改革もあり弁護士の人数自体は20年前の倍以上に増えていますが、「二割司法」の状態が解消されたわけではありません。それは、先述しましたリサーチなどの作業に時間がかかってしまい、一人の弁護士が持てる案件数が限られてしまうことが1つの要因だと思ってます。AIを活用し弁護士業務の圧倒的な生産性向上が進めば、助けられる人が増えると考えてます。
また、将来的には一般消費者向けのリーガルAI製品も展開していきたいと考えています。今は専門家向けの製品から始めていますが、ゆくゆくは一般の人々が法律の相談をしたり、質問したりできるような世の中にしていきたいです。例えば、ご近所トラブルなど、身近な問題でも弁護士に相談すると費用がかかるため、躊躇してしまうことがあると思います。しかし、誰もがAIに気軽に話しかけられる時代が来れば、泣き寝入りをせざるを得ない人を減らすことができるのではないかと考えています。AI技術のさらなる進化や関連法規制の動向などに合わせて悩みを抱える人を包括的に支援する製品も開発していきたいです。
まさに弊社が大事にしている「専門家をもっと身近に」という想いが、AIによって実現に近づいているのですね。
その通りです。弁護士ドットコムは、インターネットの力を使って多くの人が気軽に法律相談するきっかけをつくってきました。それだけでも画期的なことでしたが、AIによって、よりプライバシーが保たれた状態で相談ができ、必要であればそこから弁護士を紹介してもらえるという世界も実現できる可能性があります。そんな世界が作れたらまさに革命だと感じています。もちろんその場合いくつか法的な問題をクリアする必要はありますが、そういう世界がいつか来るだろうと考え、検討していきたいと思います。
今やChatGPTを話し相手として使うのが当たり前になっていますが、それの法律版があったら非常に便利ですよね。これって法的にどうなんだろうということがあったら「ちょっと聞いてみようかな」と。
そうですね。情報格差の解消にもつながりますよね。知らないから相談しない、あるいは「こういうことは法的解決手段がある」ということを知らないから、行動を起こせない、ということがよくあります。そんな時に「ここに聞けばいい」という存在があれば、どれだけ心強いか。本当に法的アクションをとるという段階になれば、人間の弁護士を紹介する。その手前の段階で、「それ相談していいことだよ」「それは結構深刻だよ」と教えてくれる存在は、非常に価値があるのではと思います。汎用AIでは不確実性の高い情報も入り混じっているかもしれませんが、Legal BrainのようなAIリーガルツールであれば、限りなく正確で信頼できる情報を得ることができます。
ナレッジグラフが支える弁護士ドットコムの圧倒的優位性
弁護士ドットコムの優位性はどこにあるのでしょうか?
Legal Brain エージェントは質問に関連する文献の検索精度が非常に高いんです。多くのお客様から「Legal Brainは検索精度が高い」というお言葉をいただいています。
その理由は、「ナレッジグラフ技術」にあります。このナレッジグラフというのは、私たちのLegal Brainの中に組み込まれているグラフデータのことです。これは技術的には非常に面白いもので、一つ一つが知識の塊になっていて、例えば、「昭和の何番の判例」や「何かの本の一節」といった情報が大量にあり、そこから引用している別の文献といった形で、どんどん辿っていけるようになっています。例えるなら、論文の引用データベースのようなものが組み込まれているんです。
私たちはこのナレッジグラフをシステムに搭載しており、判例、法令、ガイドライン、当社が運営する企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」の記事、そして書籍のすべてが、このグラフ技術で繋がっています。このナレッジグラフは、関連性から辿っていくことで「これだ!」という情報が取得できるんです。直接的に探せないものを知識データを辿ってから取りに行くので、まさに弁護士さんが行っているような思考回路が実現できるんです。
その結果、お客様からは「質問の意図の理解力が高いですね」と言われることが多いです。これが私たちの強みですね。せっかく知識を読み込ませても、それを探せなかったら意味ないですからね。
そして、これがまたどんどん新しい法令が出たり、改正されたり、新しい政府から通達が出たり、書籍が出たりする度に、それがすべて内部で解析され、このナレッジグラフに自動的に入ってくるアルゴリズムができています。だから、知識が増えれば増えるほど、この網の目が細かくなっていくような感じなんですよ。
弁護士ドットコムの「挑戦権」
これらの将来的な機能実装は、エンジニアの技術力がいかに重要かを感じさせられます。プロダクトマネージャーの視点から見て、エンジニアがどれほど重要なのか、今後のチーム作りの中で求める人材像を含め、メッセージをいただけますか?
AIエンジニア、ML(マシンラーニング)エンジニアは、我々にとって非常に重要な存在です。私自身、これまでSaaSやWebサービスを開発してきましたが、これまでと全く違うなと思う点が一つあります。それは、LLM(大規模言語モデル)という技術が新しすぎて、常に常識が書き換わっていくような状態だということです。
昨日までの常識が、翌日にはもう変わっている、というようなことが毎日のように起こり得ます。AI系のニュースを日々追っても、もう追い切れないくらいです。AI系のツールも、毎日新しいものが出てきますよね。技術面も全く同じで、裏側では凄まじい技術革新が起こりまくっているんです。とにかくこのLLMのトピックというのは、そういう状況なんです。
技術的なブレイクスルーを考え続けなければ、良い製品は作れない。だから、いくらプロダクトマネージャーが、優秀だったりしたとしても、技術まで分かって製品設計をするわけではないので、やはりそれを実現するエンジニアの技術力、そしてそれをどう製品に活かすかという力が問われます。
つまり、エンジニアの力が変数Xとなって、製品の価値Yが全く変わるんですよ。プロダクトマネージャーが描くビジョンももちろん重要ですが、エンジニアの力によってプロダクトの価値を異次元に高めることができる。それがAIプロダクトだと思うんです。「この技術を使って、こういう風にやったらできるんじゃないか」など、研究開発ではないですが「まだないやり方」を探していき、フットワーク軽く、業務をきちんと理解し失敗してもどんどん試す。そうすると、すごいブレイクスルーが起こるんです。例えば、今回お話ししたナレッジグラフも、実はエンジニアから提案してきたソリューションです。エンジニアから私が話を聞いて「確かにそれはすごい未来が実現できるな」と言って「絶対につくろう」となったんです。だから、エンジニアによってもたらされる変数の幅がとてつもなく大きい、というのが今の我々のプロダクトの特徴だと思います。
そういう意味で、本当に面白いんですよ。大学や企業でAIの研究はしていても、ビジネスとして成立するものってすごく少ないんです。研究開発というのは、究極的にはそこを度外視してもいいのですが、Legal Brainは違うんです。私たちも実際に研究開発をしていますし、大学の先生方とも一緒にプロダクトを作っていますが、それ以上に市場のニーズがある。そこが面白いんじゃないかなと思うんですよね。自分の仕事が研究開発的にもビジネス的にも役に立つという、すごいチャンスが弁護士ドットコムにはあるんですよ。
インターネット革命に匹敵する「AI革命」の最前線へ
それでは最後に、リーガルブレイン開発部に入社することの魅力と、求職者へのメッセージをお願いします。
私が学生だったインターネット革命の時代、すごいことが起こっているのは知っていましたが、よく分からなかったんです。後で振り返ると、あの時こそ本当の時代の変わり目だった。あらゆるインフラがインターネットによって再解釈され、本当に社会構造が変わりました。その時に「なんで俺、あの場所にいられなかったんだろう」と、すごく悔しい思いをした記憶があるんです。当時私は高校生だったから仕方ないですが、せっかくそういう革命が起こっている時に、その場所にいられなかったのは悔しいことだと感じています。
技術的にも社会的にも当時と匹敵するかそれ以上の大きな変化が今、まさに来ているなと思っています。そんな時に挑戦できる場所にいる、というのは大事なことだと思います。当社は今、「AI革命」の最前線で挑戦できるチャンスを得ています。AIを有効活用するために最も重要なのは「データを持っている」ことだということは明確だと思います。当社には20年にわたって各事業で培ってきた膨大なリーガルデータが存在し、また大きな価値を求めている大きな市場もある。そう考えていった時に「こんなにエキサイティングな場、他にあるんだっけ?」と思うんです。そんなシチュエーションや場所を求めている人にこそ、挑戦してほしい。そういうチャレンジャブルな心や、自らが成長したいという人に飛び込んできてほしいと思います。