弁護士ドットコムは、“専門家をもっと身近に”を理念に掲げ、人々と専門家をつなぐポータルサイト『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS(ビジネスロイヤーズ)』、Web完結型クラウド契約サービス『クラウドサイン』などを提供するリーガルテックのリーディングカンパニーです。
現在主軸となる事業が『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS』などを管轄する『専門家プラットフォーム事業本部』と『クラウドサイン事業本部』。それぞれの事業を束ねているのは、ともに弁護士資格を持つ2人の取締役です。そこで、両事業の責任者2人に事業・サービスの過去、現在、未来をインタビューしました。
今回は、専門家プラットフォーム事業本部長・田上さんのインタビュー第2弾。事業の“現在”について話を聞きました。
【Profile】 取締役・専門家プラットフォーム事業本部長 田上嘉一(たがみ よしかず) 早稲田大学大学院法学研究科卒業。アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、企業のM&Aや不動産証券化などの案件に従事。 2010年Queen Mary University of Londonに留学。2012年アンダーソン・毛利・友常法律事務所に復帰、2013年グリー株式会社に入社、法務や新規事業の立ち上げに携わる。2015年7月に当社入社、2017年4月より執行役員に就任、2019年6月より取締役に就任。 弁護士のインフラ的な存在でありたい ――2019年に弁護士ドットコム本部長に就任されてから、注力している事業は?
法律相談ポータルサイト『弁護士ドットコム』は、弁護士に無料相談できる公開型Q&A『みんなの法律相談』を中心に、法律トラブルを抱える一般ユーザーの皆様にご利用いただいており、累計法律相談件数は約103万件にのぼる圧倒的なデータベースにもなっています。また、プロフィールを掲載する弁護士も増加して業績は堅調に推移していますが、既存サービスのスケールだけでなく、新規サービスの立ち上げにも注力してきました。
これまでは主に法律相談ポータルサイトによって、弁護士に潜在顧客を獲得することができるマーケティング支援を中心に展開してきましたが、多くの弁護士と接する中で、マーケティング活動に限らず、弁護士業務や学習など、様々な場面でニーズや課題あることがわかってきました。そして、成長を続ける『弁護士ドットコム』では組織も大きくなってきていましたから、自分たちであれば弁護士が必要とするあらゆる場面でサービスを提供できるという願いと自信が培われていました。そこで、弁護士の案件管理に特化した『弁護士ドットコム 業務システム』を2020年7月にリリース。そのほかにも、法律書籍の定額読み放題サービス『弁護士ドットコム LIBRARY』や弁護士のための動画学習サービス『弁護士ドットコムオンラインセミナー』などの新規サービスも提供を開始しています。
――弁護士に特化したサービスを拡充していると?
はい、弁護士ドットコムは弁護士が仕事をする上でなくてはならない、インフラのような存在を目指しています。なので、提供するサービスはITツールに限りません。人手を増やしたい法律事務所には、『弁護士ドットコムキャリア』で弁護士をご紹介しています。
業務の効率化を行いたいのであれば業務システムを使っていただければいい。また、新しい情報をインプットしたい場合はオンラインセミナーで各分野の第一人者が講師を務める動画を見ることができますし、電子法律書籍によってリーガルリサーチをすることも可能です。
私たちのサービスによって弁護士業務をもっと効率的にできると思いますし、多くの弁護士が弁護士ドットコムのサービスを何かしら利用しているという状況を作りたかったんです。おかげさまで現在、国内弁護士の半数を超える、21,000人以上の弁護士に会員登録をいただいています。
――弁護士ドットコムがここまで事業を拡大した要因を、どう分析していますか?
やはり創業者の元榮が弁護士であるということが、圧倒的な強みだったと言えますね。たとえば、Web関係の会社が運営する『弁護士ドットコム』と似たような法律相談サイトはありますが、『弁護士ドットコム』は、弁護士である元榮が弁護士の業務にフォーカスして立ち上げたサービスです。
――弁護士だからこそ、ニーズがわかるということでしょうか?
それもありますが、創業当時はディスラプションが流行っていた時代。新規参入者が既存の業界と軋轢を起こすことも多かったのですが、元榮は既存の枠組みを壊すような失礼なことはしてはいけないと考えていました。というのも、弁護士ドットコムが社会から信頼されるのは、弁護士という看板がついているからであり、弁護士という職業が社会的に信頼を得えているのは過去の先生方の実績があるからこそという考えがあったんです。そんなリスペクトを持って事業を進めてきたことが、弁護士の間でじわじわと支持を広げることができた最大要因だと考えています。
2021年、専門家プラットフォーム事業本部が誕生 ――それぞれ独立して事業運営してきた『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS』の組織が専門家プラットフォーム事業本部として一本化しましたが、その経緯は?
『税理士ドットコム』は、現在6,000人を超える税理士が登録する日本最大級の税務相談ポータルサイト。2017年からは執行役員である吉田奨さん(現・社長室長)が、2020年からは根垣昂平さんが事業責任者を務め、2017年当時は売上規模が2億程度だったところから、現在は5億を超える規模にまで成長してきました。
企業法務の総合ポータルサイトである『BUSINESS LAWYERS』はリリースから5年で月間サイト訪問者数は約76万人、会員数は6万人を超えるメディアに成長。弁護士による法改正などに関する解説記事や、法務の実務に役立つ法律Q&Aなど、コンテンツを中心にサービス提供していましたが、2020年には法律書籍・雑誌のサブスクリプションサービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」の提供を開始。現在までに大手法律事務所、大企業を中心に450社以上に導入いただいています。
これまではそれぞれのサービスをスケールさせていくことをミッションとし、サービスごとの事業部制を敷くことによって、スピード感を持って事業運営を行うことに重きを置いていました。その利点は基本的に活かしつつも、士業・専門家に向けたそれぞれのサービスを互いに連携させながら、限りあるリソースを有効かつ柔軟に活用すべく、“専門家プラットフォーム"という大きな括りで事業運営していくことで、より幅広いサービス提供ができると判断し、組織を一本化しました。
――現在、専門家プラットフォーム事業本部はどのような組織体制なのでしょうか?
事業本部長は私が務め、3人の副本部長がそれぞれのセクションを管轄しています。
島津忠昭さんには、『弁護士ドットコム』の販売や業務システム・オンラインセミナーなど弁護士向け新規サービスの企画・開発をお任せしています。島津さんは、弁護士向けのマーケティング支援サービスの営業として事業立ち上げに大きく貢献したという経験もあり、弁護士のことを誰よりもよく知っている男です。口から生まれたのかというくらいになめらかなトークが持ち前の武器としており、さらに数字にも非常に強い頼れるやつです。それだけではなく、法律問題に悩む人を一人でも多く弁護士の先生につなげることによって、2割司法を解消し、泣き寝入りをなくすという事業の理念に強い共感をもって取り組むという熱い一面もあります。
(以下、2019年当時の島津さんのインタビュー記事です)
根垣昂平さんには、『税理士ドットコム』『弁護士ドットコムキャリア』の事業推進と新たな収益の柱となっている広告事業をお任せしています。根垣さんは、事業開発・推進のみならず経営者としての経験をもっていることから、大局観に基づいて事業全体を俯瞰してみることができる稀有な人材です。ビジネス経験が豊富だからなのか、年齢の割に貫禄があり、私自身彼から学ぶことが多々あります。
高橋弘法さんには、各サービス・コンテンツの開発をお任せしています。高橋さんはエンジニアで、これまで『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS』と、当社のサービスのほとんどに関わってきました。私は技術に関してはまったくといっていいほどのド素人ですので、技術的なことは彼に全幅の信頼を置いて常に相談しています。常に冷静で温和な性格で、高橋さんが怒ったのをみたことがないんですよね。非常に合理的な物の考え方をするので、どちらかというとその場のノリと勢いで突っ走りがちな私とはいい組み合わせだなと思っています。
(以下、2019年当時の高橋さんのインタビュー記事です)
『BUSINESS LAWYERS』など法人向けの事業は私が直接管轄しています。
社内コミュニケーションを活性化するために、役職者が率先して楽しむ ――現在は会社全体で350名を超えるまでに成長しました。そして、専門家プラットフォーム事業に関わるメンバーも増えていますが、組織が大所帯になっていく中、マネジメントで意識していることは?
事業本部長に就任したときの挨拶では、会社を支える基幹事業なので頑張っていきましょうというメッセージとともに「今までとは違う、多くの人と仕事をしてほしい」と伝えました。
営業、編集、エンジニアなどセクションごとに組織化されてきているため、固定メンバーとの仕事が多くなっていたんです。隣の席の社員がどんな仕事をしているかわからない状況下だと、KPI設計をしても業務が重複したり、互いに逆効果を引き起こしたり…と調整しきれない事態が起きかねません。だからこそ、より多くの、これまでとは異なるメンバーと組んで仕事をしてほしいとお願いしました。
――社員同士がお互いの業務や課題を共有することで、関係性を深めることができますね
あとは、まるで学校のようですが、レクリエーションのようなイベントを取り入れました。新型コロナウイルスの感染拡大前は、全社員参加で弁護士ドットコムの歴史がわかるクイズ大会を開く、事業部ごとの紹介を行う機会を作るなど、誰がどんな業務に携わっていてどういう人柄なのかがわかるような機会を設けていました。
コロナ禍ですべてオンラインになってからは、zoomの機能を使ってルームを分けてランダムなメンバーの組み合わせでコミュニケーションするような機会を作っています。リモートワークが多くなり、仕事の会議はあるもののどうしてもメンバーは固定されてしまうし、仕事以外の雑談はしづらいところがあるので、そういった社内コミュニケーションを取り入れるべく心がけています。私自身がいちばん楽しんでいるのかもしれませんが(笑)、役職者が率先して面白がっていると、社員たちのコミュニケーションも円滑になると考えています。
次回は、これから目指していく事業ビジョンなど、専門家プラットフォーム事業の展望をお送りします。
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