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「できるデザイナー」はなにが違う?先輩アートディレクターに聞く、成長の秘訣

さまざまなアイデアを形にしていくデザイナーという専門職。広告・Web業界では企業や商品の「顔」を魅力的に見せる大切な役割を担っており、その華やかなイメージに憧れる人も多いことでしょう。

しかし、実際にアイデアを形にしていくプロセスとは、どのようなものなのでしょうか?また、デザイナーとして成長するには、なにが必要なのでしょうか?

デジタルエージェンシーTAMのデザイナーとして活躍する村松歩美さんが、先輩デザイナーでアートディレクターの杉本正隆さんにその秘訣を聞きました。

株式会社TAM アートディレクター 杉本正隆
システムエンジニアからWeb未経験でデザイナーに。何社か制作会社でデザインとコーディングを経験し2019年11月にTAMに転職。アートディレクターとしてTAMTOチームに所属。主にコーポレートサイトのWEBデザインに関わる。
株式会社TAM デザイナー 村松歩美
2021年2月に入社しTAM歴は2年目、社会人は5年目。デザイナーとして、広告チームとTamsterdam(タムステルダム/TAMのオランダ支社)の2チームに所属。広告チームではバナーやSNS用のクリエイティブの制作など、タムステルダムではwebサイトのデザインに関わる。

デザイナーの成長とは?

杉本:村松さんとはチームが違うから、あまり仕事で一緒になることはないですが、今はどんな仕事をしていますか?

村松:私はTAMの広告チームとオランダの「Tamsterdam」のチームに半分ずつ所属していて、広告チームのほうではデジタルのバナー広告やランディングページを作ったりしています。オランダのチームでは、もう少し大きめのWebページのデザインをしています。杉本さんは?

杉本:僕は大企業のWebリニューアルが結構多いですね。アートディレクターとしてデザインの指針となることを言語化したり、デザインのクオリティを管理したりしています。

村松:「Slack」の社内チャンネルに杉本さんが投稿している、アウトプットの途中経過をいつも楽しく拝見しています。杉本さんはどういう思考プロセスで作っているのかな、と気になっていたので、今日はお話できるのを楽しみにしていました。杉本さんはもともと新卒からデザイナーなんですか?

杉本:僕は大学を卒業してからシステムエンジニアを約5年間やってました。やってみて、どうせ大変な仕事だったらもっと楽しいことやってみたいと思って、半年間ぐらいデザインの勉強をやって、Web業界に入りました。

そこから何社か転職して、TAMに来て今年で4年目です。村松さんは?

村松:美術大学でグラフィックデザインをやっていたんですけど、UXとかに興味を持ったので、Webサービスを運営する事業会社に就職しました。そこではデザインよりも、コーディングのほうが実務としては多かったですね。

でもその後、表現にも挑戦できるような仕事をしてみたいと思って、TAMに転職しました。

TAM歴は2月で3年目になりますが、今ちょっと疑問なのは、自分がデザイナーとして成長できているのかな、というところです。

杉本:そうですね。デザイナーってなにをもって成長したかって分かりづらいですよね。

村松:営業だったら売り上げが伸びたとか、エンジニアだったらこういう技術が使えるようになったとかあると思うんですけど……。

杉本さんのキャリアの中で、このポイントは達成感があったなとか、成長を感じられたタイミングはありましたか?

杉本:自分でいいものを作れたと思えるか、というのがありますよね。喜んでもらえたか、とか。

僕はいつも、世の中に出たときに絶対に恥ずかしくないものを作ろうと思っていて。「お客さんのため」と言いつつも、「僕が作ったんですよ!」って、正直自慢したいんですよ。それが結構モチベーションで、上手くなるための秘訣でもあるのかなと。

村松:最初の一歩は「ドヤれるのか?!」なのかもしれないですね(笑)。

杉本:デザイナーって、ドヤってなんぼじゃないですかね。もちろん、コンバージョンとかKPIとか、数字も大事ですけど、自分が作ったものを自信を持って「作りました」と言えることが成長できた証かもしれないですね。

クオリティを上げるために大切なこと

村松:まだ自分としては、今の段階ではフィードバックしてもらって直すので必死みたいなレベルなんですけど。杉本さんはフィードバックする側として、どのようにクオリティを管理しているんですか?

杉本:1つは、見た目の美しさですね。素人くささを感じさせず、プロが作ったと分かるもの。デザインアーカイブサイトと見比べて、ここに掲載されるにはどうしたらいいのかを自分の中で考えています。

あとは、アイデアですかね。これがプロジェクト全体のクオリティを上げるポイントかな、と思っています。これは1人で考えるものではなくて、ディレクターと一緒に考えていきます。

村松:たしかに、杉本さんはよくディレクターとお話をされている印象があります。

杉本:ディレクターが作ったワイヤーフレーム(ページのレイアウトを定める設計図)について、もっとこうしたほうがいいとか、意見を出し合っている感じですね。

TAMでは上流でリサーチを丁寧にやっていて、お客さんのことがよく分かるので、デザイナーはやりやすいと思います。でも、お客さんの要望通りにやることが正解でもない。

ディレクターから出てこないアイデアって、デザイナーにはたくさんあると思うので、僕は結構意識してデザイナーらしくやっています。お客さんを感動させるにはどうするか……情緒的な部分をどう表現するか意識しています。

ただ、その面白いアイデアを形にしたり、予算に収めたりといったところで、バランスも大事になってくる。そこの精度を上げたいというのが僕の課題です。

ワクワクする体験を形にするプロセス

村松:これまでに杉本さんから提案したアイデアにはどんなものがありますか?

杉本:例えば、今は書籍を扱うWebサイトのリニューアルプロジェクトに取り組んでいますが、まずはアイデアを考えるネタを見つけるために実際に本屋に行ってみて、ワクワクするタイミングとかを実感してみて、「この体験おもしろい!」というのを一応頭の片隅にインプットしておくんですね。それを実際にWebの形に落とし込むときにアイデアとして引っ張ってきて、プレゼンのときにストーリーを作ってお客さんに話したりします。

実際のデザインでは、単純に書籍のビジュアルを大きく見せるだけでもワクワクしたり書籍の魅力を伝えられることに気づきました。

杉本さんは実際に本屋さんを訪れてインスピレーションを得る

村松:体験したことの記憶をもとに形にしていくんですね。それはどの段階で行うんですか?

杉本:実際に形にしていくのは、デザインを作る段階です。僕の場合は手を動かしながらアイデアが出てくるタイプなので、試行錯誤してたくさん失敗して、失敗して、失敗して……そこから削っていって、「これいいじゃん」っていうデザインを残して、どんどんクオリティを上げていくというやり方です。

この案件はワイヤーの精度もある程度高かったんですが、「Adobe XD」(デザインツール)できれいに作ったワイヤー通りに作るだけじゃつまらないじゃないですか。あえてずらしたりとか、このあたりでデザイナー的なアイデアが必要になってくるのかな、と。

村松:そのときに本屋さんへ行ったときのワクワクが生きてくるんですね。すごくイメージがつかめました。

できるデザイナーは「ホウレンソウ」から

村松:私の場合、規模の小さめなバナー広告とか配信期間が短いものに関わることが多いんですが、クリックしてもらうことが大事なので、デザインもコピーライティングも、広く浅くやったりします。飽き性なのでそのほうが合っていると思っているんですが、美しさをちゃんと積み重ねてクオリティを上げていくみたいな経験がまだすごく浅くて……。

杉本さんのお話を伺っていて、「これはいいものなのか?」と見極めたりするのは、自分1人ではまだ難しそうだな、と思いました。

杉本:僕が村松さんぐらいのキャリアのときは、アートディレクターにフィードバックをもらいまくっていましたね。「千本ノック」的な感じで、何回もフィードバックをもらって戻して……そうやっているうちにだんだんうまく作れるようになってくると思います。

村松:たしかに、フィードバックを受けて直していくと視野が広がるというか、「こうするとなんかうまくいく」みたいな発見もちょっとずつ増えていきますよね。最近、「独学でWebデザイナーに!」みたいな広告とか見ますけど、現実問題として1人ではなかなか難しいですよね。

ほかに、いいデザイナーになるための秘訣は?

杉本:「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」じゃないですかね(笑)。意外と大事なんですよ。デザインが下手でも、素直でホウレンソウができれば、結構成長できそうな気がしますね。

村松:そうなんですね。物怖じせずにホウレンソウします(苦笑)。

杉本:僕もできなかったので、結構怒られていました。だから、今は結構意識してますね。自分で考えても時間の無駄なので、5分以上悩んで分からなかったら聞いちゃうとか、ある程度ルールを設けてやっています。

村松:自分も含め、新人のころに特につまずくことですね。「相手の時間を奪って迷惑かけるんじゃないか」と思って、ホウレンソウがうまくできない人は結構いるなと思って。

昔上司に、「迷惑かどうか決めるのは相手だから、とりあえず聞きなさい」と言われて、ようやく聞けるようになりました。

杉本:それができる環境だったらいいですよね。

若手こそドヤっていい

村松:こうやってみると、デザイナーとして成長するのってホウレンソウとか、千本ノックとか、意外と地道ですよね。

杉本:まったくその通りだと思います。デザイナーって結構泥臭いんで(笑)。

村松:本屋さんに行って、そのときの体験を形に落とし込む能力みたいなのがいちばん大事だし、難しいところなんだろうなと思いつつ、そこができるようになったら、またもう一段楽しくなりそうだなと思いました。

千本ノックで精度を上げていく過程は辛いけど、そこに向き合う元気みたいなものが結局すごく大事なのかな、と思ったりもしました。

杉本:その元気の源は、さっきの「ドヤれる」ことかと。

村松:たしかに人に自慢するという目標があれば、元気になりますね。

杉本:会社のSlackでどんどん成果物を共有すればいいんですよ。下手でもいいからいろんな人に見てもらったほうがいい。

村松:なるほど、下手だから出さないでおこう、みたいに思いがちですよね。

杉本:それ、結構もったいないなと思っていて。若いデザイナーさんこそドヤっていいんじゃないですかね。「これ見て!」って。

村松:杉本さんが愛のあるエールを飛ばしてくれると思うんで(笑)。そういうモチベーションを自分で見つけるのも大事かもしれませんね。

今日はお話できて楽しかったです。ありがとうございました!

[文] 山本直子 [編集] 岡徳之 [撮影]渡辺弘幸
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