目次
外食店長の年収が2000万円になる時代、小売業はどう変わるべきか?
外食業界の店長もついに年収1000万円が可能に!
なぜ、外食業界に着目したのか?
小売業界の店長職はどうか?
外食産業と小売業の働き方の課題は?
小売業界が今後学ぶべきこととは?
私たちの挑戦
ミライへの問いかけ
外食店長の年収が2000万円になる時代、小売業はどう変わるべきか?
丸亀製麺を展開するトリドールHDが、店長の年収を最大2000万円に引き上げる制度を導入しました。
この意思決定は容易なものではなく、業界の常識を覆す画期的な事例だと感じます。
特に、単なる報酬が桁違いに増加したのみの話ではなく、店長の役割を「現場の経営者」として再定義する動きだと考えます。
特に印象的だったのは、評価対象です。
売上はもちろん、従業員満足度・顧客感動・地域貢献といった、定性的な価値の創出が評価対象となっているのです。
つまり、店舗が“地域の価値創出装置”として機能することが求められているのです。
外食業界の店長もついに年収1000万円が可能に!
改めて、業界の平均年収をおさらいしておきたいと思います。
フランチャイズ店長かチェーン店長かによっても変わってくるものの、店長昇格時点では、450~600万円が平均となり、そもそも年収1000万円には程遠い賃金水準のようです。
「外食産業は他の産業に比べて、賃金水準が低い」とのイメージが持たれがちですが、まさにその通りと言わざるを得ません。しかし、そんな外食産業がイマ変わりつつあります。
すかいらーくHDが、2025年4月、店長(社内呼称はマネジャー)職が1,000万円超の年収を得ることを可能にする新人事制度を導入し話題になりました。
具体的には、最重要基準だった店舗の売り上げ規模を指す「店格」制度を廃止し、店舗の業績(利益)、QSC(Quality、Service、Cleanliness=清潔)という店舗の状態を表す指標、顧客満足度といったマネジャーの能力を重視し、「どう店舗運営しているか」がより問われる仕組みとしたそうです。
(参照:【店長年収ランキング】フランチャイズ vs チェーン店|塾・飲食業界で年収1000万は実現可能か? - フランチャイズ情報ならグリッドベース , すかいらーく、「店長で年収1,000万円超」の新人事制度 幅広い業種からの採用を促進 | ビズリーチ)
なぜ、外食業界に着目したのか?
外食業界は、私たちが取り組むスーパーマーケット事業と同じく店舗という「箱」を持ち、そして消費者に食品や生鮮品を提供するビジネスモデルがスーパーマーケットであれば、お客様にお食事を提供するビジネスモデルという点で類似する部分があると考えております。
その意味で、外食産業における店長の役割や評価制度の変化は、小売業、特にスーパーマーケットにも大きな示唆を与えるものだと感じています。
小売業界の店長職はどうか?
さて、ここまで外食業界の店長職についてみてきましたが、私たちが事業化に取り組むスーパーマーケット業態を含めた小売業の店長はどうでしょうか。今回は、スーパーマーケットと比較的親和性が高いコンビニエンスストアとドラッグストアを取り上げ、同様に店長職の平均年収や評価軸を見ていきます。
なお、皆さまもご存知の通り、この2業態は、近年、生鮮食品の取り扱いも増え、スーパーマーケットとの親和性が高まってきています。
■ コンビニ店長(雇われ店長)
- 平均年収:約357万円(東京都:約399万円)
- 評価軸:売上・人員管理・店舗運営力
■ スーパー店長
- 平均年収:約347万円
- 評価軸:売上・在庫管理・接客品質・人材育成
■ ドラッグストア店長
- 平均年収:400万〜600万円(大手では800万円以上も)
- 評価軸:売上・推奨品販売・店舗マネジメント・スタッフ満足度
- 登録販売者資格の有無が年収に影響
外食産業と小売業の働き方の課題は?
- 冒頭より、外食業界の店長職の好待遇にシフトしつつある現状を紹介してきました。
しかしながら、働き方についてはいかがでしょうか、外食産業の店長に関し、かなりハードワークなイメージを抱かれる方も決して少なくないと思います。
そこで、ここからは外食産業の働き方にフォーカスして、課題がないか見ていきましょう。
■外食産業の課題「長時間労働」 「休日の少なさ」
以下に挙げているいくつかの記事等から、外食産業においては、「長時間労働」と「休日の少なさ」が課題とわかりました。これらの課題に対し、既に何らかの取り組みを行っている企業さんもおありかとは思いますが、業界全体でみると、まだまだ「長時間労働」が定着してしまっているようです。
参考:
日本フードサービス協会:業界統計・労働環境に関する報告 - 厚生労働省「労働時間等総合実態調査」:業種別の労働時間・休日数
- 東洋経済オンライン:「外食業界の働き方改革は進んでいるか?」特集記事
- 日経MJ: 外食業界の人材確保に関する記事
■小売業界コンビニ・スーパー・ドラッグストア業態の課題「高頻度な転勤・異動」
他方で、コンビニ、スーパー、ドラッグストアにおいては、特にドラッグストア業態の店長に言えることかもしれませんし、はたまたコンビニ、スーパーの業態にも言えるのかもしれませんが「高頻度な転勤・異動」がいくつかの以下の記事等で聞かれました。
特に、全国規模での転勤ともなると一定の負担があると容易に想像できることから、当社でも、地域密着型のスーパーマーケット法人を買収を進めるうえで、店長職の働き方を見直す必要性を感じています。
参考:
労働政策研究・研修機構(JILPT)「転勤に関する実態調査」:業種別転勤頻度・負担感 - OpenWork、転職会議:ドラッグストア・スーパー・コンビニの転勤制度に関する社員口コミ
- 経済産業省「産業別雇用動向調査」:業種別雇用形態と人材移動
小売業界が今後学ぶべきこととは?
次に、小売業界3業態の評価軸に注目してみていただきたいです。3業態で「売上」が最重要視されていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
確かに、店舗経営においては売上や利益は当然無視できない要素となります。一方で、対お客様のビジネスモデルであり、お客様に喜んでいただくことでサービスが成り立つという点ではトリドールHDやすかいらーくHDのように従業員満足度、顧客満足度、地域貢献といった要素を重視できる評価の仕組みを導入していくことが必要ではないでしょうか。
また、転勤の多さについて見直しをしたり、転勤があれど店長自身が働きやすいと感じられるような制度設計の構築なども急がれます。
- 売上だけでなく、店舗の雰囲気やスタッフ満足度を評価する仕組み
- 地域貢献や顧客との関係性を重視する定性評価の導入
- 転勤制度の見直しと、キャリアパスの多様化
- 店長自身のウェルビーイング(健康・働きがい)を支える制度設計
私たちの挑戦
当社では、店長職を「現場の経営者」として再定義しながらも、地域密着型のスーパーマーケット法人の買収に挑む当社だからこそ、その地域に根差した働き方と、持続可能な人材育成を両立させる制度設計を進めていきます。
特に、当社では、店長職について、上に挙げたように全国的な出向を視野に入れており、転勤が発生する可能性があるからこそ、店長の皆さまの働きやすさとの両立をどのように設計できるか?この社会・産業課題に真っすぐに向き合ってまいります。
- 年収以外の評価軸(地域貢献度、チームビルディング力など)の導入検討
- 店長自身のウェルビーイングを支える制度設計(休暇、健康支援など)
- 転勤以外のキャリアパス(教育担当、地域連携担当、本部職など)の充実
ミライへの問いかけ
- 地域の暮らしを支えるスーパーを、次の世代につなぐために。
事業の再生を通じて、地域の誇りを守るために。
「地域の暮らしを支える存在として、店長はどんなミライを描けるのか?」
私たちは、店舗型小売業の未来を、人と地域に寄り添う働き方の再設計から考えていきます。