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【理念にまつわるエトセトラ】食卓はあなたの半年後を映し出す鏡

健康ブームの波に乗って、「健康」に対する指標がどんどん単純化され、広告やチラシで乱用されているように見えます。

例えば、標準体重や体脂肪量だけを基準にして健康を計ろうとしたり、筋肉量の増加だけに集中したジムトレーニング、または単純に服のサイズダウンを目的とした過激なダイエット方法など、数値化すると成功の度合いが一目で分かるようになるのだと考えられます。計量化できるものは一見正確に体の状態を表しているようですが、実際はそうではありません。


↑分かりやすく、結果が出やすいものほど本質を見失っている

厚生労働省による意識調査において「健康だと感じるために重要とする項目」では、飲食が美味しく感じること、体が丈夫なこと、ぐっすり眠れること、という項目が上位に上がっているように、健康でいるために最も重要な充実感というのは、数値に表れにくいものです。

また、一日の中での体調を考えても、その時の置かれた場所の温度や環境が大きく作用します。さらに環境における感覚、例えば寒いや蒸し暑いといった感覚は個々で異なるものです。そこに精神的な要素、すなわち疲れているのか起床したばかりであるのか等も加わってくるため、数字で健康を表すには誤差が大きくなるのです。


↑健康上の数字は誤差が多く、あくまで「目安」にすぎない

「自分は健康であるか」と考えたとき大切なのは、自分の体の一部を数値化したものを基準とするのではなく、自分が全体として良い状態にあるのかを敏感に感じ取る感覚を磨くことです。ヨガスポーツトレーニングなど数値ではなく、体に意識を置く考え方が広まっています。

日本一の剣豪といわれる宮本武蔵は、「全体を掌握し、それに対応していくためには、何よりもまず自分自身に適合したひとつの原理を極めることが大事だ」ということを述べていました。一流のアスリート達も自身の体の声に耳を傾け、毎日の健康状態から、どういった場面で不調に陥るのか、どういった状態であれば全力を発揮できるのか、常に体と向き合ってトレーニングをしていると言われます。(1)


↑むしろ、これからのビジネスマンはアスリートレベルの健康意識を持つ必要がある

人間における細胞の材料は、人が毎日食べている食事です。年齢や部位によって多少前後しますが、細胞は大体半年に一度生まれ変わると言われています。

つまり、今食べているものが半年後に自分の細胞となり、「あなたは半年前に食べたものでできている」の著者である村山綾氏は、体の声を無視した生活を続ければ、大きなツケを払うことになるのだとして、次のように述べています。(2)

「乱れた食生活を送り、運動もしてこなかった人は、もともと持っていた“体貯金(健康)”を食いつぶし、気づいた時にはゼロになっています。“体貯金”はいきなりなくならないかわりに、いきなり増えることもありません。時間をかけてコツコツ積み重ねていく以外に方法はありません。」


↑細胞は半年で生まれ変わるため、今食べているものが半年後の体を作ることになる

東京周辺で20代を対象にした食生活への意識調査によると、ファミリーレストランやファーストフードを週1回から週2-3回利用すると答えた人は60%を超えており、平均して週1.8回利用しているそうです。中でも単身で暮らしている人の利用率は高く、平均で2.4回であると報告されました。

ケンブリッジ大学の研究報告によると、イギリスでは健康的な食生活は不健康な食生活よりも3倍の費用がかかるため、低取得の人が満腹感を得られて且つ手頃な値段のジャンクフードが蔓延し、肥満の問題が深刻になったのではないかと懸念しています。


↑外食の優先事項は、値段が安いこと

日本でも10代から20代において、外食するときの優先事項においしさやサービスよりも“値段が安い”ことを優先する層が、40代以上に比べて約2倍ほど多くなっていると報告されました。ファーストフード店側も、ターゲットとして若年層や子供を持つ家族をあげており、低収入層や食費の出費を抑えたい家族層は、安価で手軽に満腹感を簡単に得られるジャンクフードに魅せられる仕組みになっているのです。

若い時は、食生活の乱れにより一時的に体調を崩したり、体重が少し増えたりといった程度の小さな差しか見られず、骨が弱って歩くことができなくなる人や、身体の一部を壊し病院で寝たきりになる人ほどの衝撃的な影響を見ることがないため、健康に対する危機感が薄れてしまうのかもしれません。しかし年齢を重ね、50代、60代になると、食生活の乱れは身体に大きく影響し始め、はっきりとした健康・不健康の差を生み出していきます。


↑今、食べるものに投資しないことが大きな後悔につながる

例えば、女性に多く見られる骨粗しょう症は若い時にしっかりとカルシウムを摂取し、蓄えることで予防できますが、カルシウムを蓄えていなかった人は、年をとって小さな転倒で骨折をしてしまい、そのまま寝たきりになってしまうことも少なくありません。

また、若いときに脂肪を溜め込む食生活や、無理なダイエットをして筋肉量を落とすと、運動をしてもやせにくい体質を築いてしまい、年をとるほどに痩せにくくなるだけでなく、筋肉量の減少が著しく早まって活動的で健康な老後を送ることが難しくなります。

前述の村山氏が、人生を大きく捉えて設計していけば、どのような職につくか、どのようなパートナーを選ぶのか、という人生の選択と同じくらい、毎日何を食べるのかということも重要な選択肢になると言うように、食事という行為は人が活動するためのエネルギーを与えるだけでなく、その人の身体自体を創り出すためのものであり、例えば、妊娠中の女性が何を食べれば赤ちゃんが元気に育つのだろうか、と考えるように重要なことなのではないでしょうか。(3)

専門的な栄養の知識がなくとも、身体は必要な食べ物を知っています。本来必要とする栄養素が足りなくなると、「食欲」というセンサーが出されて、私たちは食事をとるように促されます。このセンサーが正しければ、体にとって必要な栄養素を自然と欲し、正しい食事に導き、健康な細胞を創ることで健康体が保たれるのです。

もし、食欲のセンサーが狂ってしまうと、身体に不足している栄養素が何であるのか認識できず、「何か食べたい」という信号だけを脳に送り続けてしまいます。私たちは「食べたい欲」を満たすためだけに、手当たり次第食べてしまうことになります。


↑食生活が乱れることで、本来体が持っているセンサーが壊れてしまう

また「加速する肥満 なぜ太ってはダメなのか」の著者ディードリ・パレット氏は、安い植物油や脂肪分を人工的に加えてジューシーさを増したハンバーグや、果汁という商品名でありながら砂糖を多く含んだ飲料など、見た目や味からは体に悪いと判断できない加工食品がこのセンサーを狂わせる一因であり、脳に快楽を与え、食べるのをやめると不安を感じさせるため、結果、人が自分で食べることを止められなくなるほどの中毒を引き起こすと警告しています。(4)

正しいセンサーで正しい食事を選ぶためには、身体を動かすことが一番であると言われています。運動後に身体や精神がリフレッシュしている感覚で「食べたい」と思った食品を摂る習慣を積み重ねていけば、どんどんセンサーが磨かれていきます。

身体を十分に動かし食事をするという活動は、野生動物が自然の中で行う活動と同じであり、不自然に食べ物が溢れた世界で自分を苦しめる「食欲」を手放せば、健康な自然美を持つ生き物たちと同じように、好きなものを好きなだけ食べて、健康的な体を維持することができるのです。


↑野生の動物には「肥満」という文字はない、太って動きが鈍くなれば、命が狙われる危険が高まる

食事により自分自身が新しく創り出されていることを意識し、体が本当に必要な食べ物を食べられるよう日々体調と向き合えっていけば、50代や60代になったとき、「健康な身体があってよかった」と若いころの自分に感謝をすることになるでしょう。

村山氏は「本当に知ってほしいのは、『何を食べるべきか』ではなく、自分は今『何を食べているのか』である」と言いますが、体を動かす習慣を始め、一口一口、体が食べたいと思う食べ物を選び取る能力を磨いてみることが、まずは大事なのかもしれません。(5)

参考書籍)
1. 宮本武蔵「五輪書」Kindle
2. 村山彩「あなたは半年前に食べたものでできている」(サンマーク出版 2013)Kindle
3. 村山彩「あなたは半年前に食べたものでできている」(サンマーク出版 2013)Kindle
4. ディードリ・パレット「加速する肥満 なぜ太ってはダメなのか」(NTT出版 2010)p45
5. 村山彩「あなたは半年前に食べたものでできている」(サンマーク出版 2013)Kindle

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